薄れていく青色の世界
最新エピソード掲載日:2025/12/30
多摩川の川べり、風の強い夕暮れ。イラストレーターの桐谷詩織にとって、スケッチブックを広げるその時間だけが、誰にも侵されない神聖なものだった。かつての恋人に個性を否定されたトラウマを持つ彼女は、孤独であることを自由と呼び、色鮮やかながらも静謐な青の世界に閉じこもっていた。
しかし、友人の誘いで渋々参加したバーベキューで、その世界は揺らぎ始める。そこで出会った佐原律樹は、理想を絵に描いたような青年だった。彼は詩織の孤独を肯定し、無理に合わせなくていいと優しく微笑む。誰も踏み込んでこなかった領域に、土足ではなく、丁寧に靴を揃えて上がってくるような彼の知性と包容力に、詩織の警戒心は次第に解けていく。
連絡先を交換し、距離が縮まる二人。律樹の言葉は甘く、凍り付いていた詩織の心を溶かしていく。だが、その蜜月には微かな違和感が混じり始めていた。「君の絵、僕が守ってあげたい」「ここはもっと明るい色の方が、君らしいよ」。
彼の提案は常に善意に満ちている。けれどそれは、詩織が守り抜いてきた自分だけの色を、彼好みの色へと静かに、確実に塗り替える行為でもあった。握りしめられる手首の強さ、呼吸を奪うような抱擁。愛される喜びの裏で、詩織の体は警鐘を鳴らす。これは美しき支配ではないのか。
自分の輪郭が曖昧になっていく恐怖と、それでも彼なしではいられない甘い依存。聖域だったスケッチブックが彼の手で開かれた時、詩織は気づく。自分がもう、一人では息ができなくなっていることに。愛という名の添削に溺れていく。
しかし、友人の誘いで渋々参加したバーベキューで、その世界は揺らぎ始める。そこで出会った佐原律樹は、理想を絵に描いたような青年だった。彼は詩織の孤独を肯定し、無理に合わせなくていいと優しく微笑む。誰も踏み込んでこなかった領域に、土足ではなく、丁寧に靴を揃えて上がってくるような彼の知性と包容力に、詩織の警戒心は次第に解けていく。
連絡先を交換し、距離が縮まる二人。律樹の言葉は甘く、凍り付いていた詩織の心を溶かしていく。だが、その蜜月には微かな違和感が混じり始めていた。「君の絵、僕が守ってあげたい」「ここはもっと明るい色の方が、君らしいよ」。
彼の提案は常に善意に満ちている。けれどそれは、詩織が守り抜いてきた自分だけの色を、彼好みの色へと静かに、確実に塗り替える行為でもあった。握りしめられる手首の強さ、呼吸を奪うような抱擁。愛される喜びの裏で、詩織の体は警鐘を鳴らす。これは美しき支配ではないのか。
自分の輪郭が曖昧になっていく恐怖と、それでも彼なしではいられない甘い依存。聖域だったスケッチブックが彼の手で開かれた時、詩織は気づく。自分がもう、一人では息ができなくなっていることに。愛という名の添削に溺れていく。