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最強ギルドごと異世界に転移した最強種たち、暇なので世界を滅ぼしてみた  作者: 朝雨 さめ
第二章

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第五話 フレイムリザードマンだから……?



「止マレッ!!!!!!!」


――突如として場の静寂を切り裂いたのは、鼓膜を震わせる鋭い怒号とともに向けられた銀製の鋭い槍を携えた小さな影だった。


槍を握りしめ、重心を低く構えているそれは、人間と同じほどの背丈を持つ蜥蜴顔の戦士。

全身を覆う赤黒い鱗は使い込まれた鎧のように幾重にも重なり、その隙間からは熱気が陽炎のように立ち上っている。

爬虫類特有の縦長に裂けた瞳孔が、現状でいえば侵入者? である俺たちを鋭く射抜き、半開きになった口元からは、獲物を噛み砕くための鋭い牙を覗かせている。

尾の先に、微かながらも意志を持つように灯る橙色の火種を持つこいつは―――かつてのゲーム【ユグ:ドライアス】においても馴染み深い、灼炎種の最下位個体―――炎蜥蜴戦士(フレイムリザードマン)


「侵入者……ッ! ココ灼炎種ノ領域! 一歩デモ動ク、命ナイゾ!」


切迫したように発せられるその言葉は過去にどこかで聞き馴染みのある訛りのような気もしないでもないが……まぁなんにせよ、最初の迷いなく首を狙う動きといい、開口一番がこのセリフということは―――。


「……サクさん、どうするのこれ? 見た感じからプレイヤーじゃなさそうだけど?」


と、槍を向けられつつも呑気に問いかける俺に対し、サクさんは眼窟の奥に灯る青い光を苛立たしげに揺らした。


―――俺が彼をプレイヤーではないと即座に判断した根拠は二つある。


一つはエンカウント直後のこいつの挙動だ。


暗闇からの奇襲で俺らの首元を狙うのは俺からすれば悪くない策だと思うけれど、初エンカウントにしてはその動きにあまりにも迷いがなさ過ぎた。


仮にプレイヤーだったとするのならば、目の前に骸骨や岩の巨人、ライオンが現れたならそもそも動揺から入るのが定石だし、なんならまずは話を聞こうとするだろうに……しかしこいつは一切、それらをする気が見られなかった。


つまりそれは、こいつにとってはどんな姿の相手であろうとも変わらず"敵"であるということで。

即ち、こいつは生まれながらにこの世界の灼炎種であるということを示している。


加えてもう一つの根拠が、先に発した彼の言葉だ。


まず……開口一番に「一歩デモ動ク、命ナイゾ!」なんて言うやつが人間だと思うか???


い~や、俺は思わないね。

っていうかむしろ、これを言うのが正気を保ったプレイヤーだったのなら俺はそっちのが怖いね。


―――ごほんごほん。

まぁつまりだ。

今挙げた二つの観点から鑑みれば、こいつはほぼ間違いなくこの世界のNPCであると判断できるというわけ。


んで、そして当然、そんなことはとっくに理解しているサクさんの骨の指先が不吉な魔力の残滓を纏って微かに動く……って、魔力……?


「……ふん。これほど知能レベルの低い生き物に足を止められるのは不愉快だ。……だが、一思いに『精神隷属(ドミネート)』でも刻んでやれば、道案内くらいには使えそうだな」

「うわぁ……」


脳内に響くその冷徹な提案に、俺は思わず苦笑いを浮かべた。

サクさんの効率重視なプレイングはいつものことだけど、即座に人格破壊が選択肢に出てくるあたりがなんかもう……。


当然、彼の恐ろしい提案にすぐ後ろにいたゴラクZさんが慌てたように大きな手を振って割り込んだ。


「サクラノヴァ、それはよしてくれ……。一応はこいつも俺と同種だから、そう物騒な術を向けるのは勘弁してほしい……」


燃え盛る鬣を困ったように揺らし、武骨な顔を歪めるゴラクZさん。

彼らしい同族への情けに、未だ槍を構えている蜥蜴を除いて少しだけ場の空気が緩むが、そんなやり取りの裏では、猫バイトさんがジロリと冷ややかな視線を後方へ投げていた。


「ねぇねぇ、サラマンダーく~ん? これってどういうこと~? もしかして僕たちを罠に嵌めちゃった感じ~?」


いつもの軽薄な、けれど核心を突くような猫バイトさんの問いかけに思わず視線を向けると、岩石の巨体から発せられる威圧感にサラマンダーは目に見えて狼狽し、短い手足をバタつかせていた。


「ひ、ひぃっ!? と、とんでもございません!! わわわわたくしがそんな大それた真似をするはずが……! こっ、これはいわば、その、不慮の事故というか、行き違いというかぁ!!」


必死に首を振るその様子は単なる誤解への焦りにしては少し過剰な気もしたが、しかしそんな俺たちの疑念を置き去りにするように、槍を向けた蜥蜴戦士が首を傾げた。


「……む?」


戦士の視線が俺たちの背後にいるサラマンダーへと注がれる。

その瞬間、俺の喉元で固定されていた銀の穂先から、ふっと力が抜けた。


「……ん? どうし――――」


俺がそう、疑問を零し始めたのとほぼ同時。

やがて戦士の瞳が零れ落ちそうなほど大きく見開かれ、尾の先に灯っていた橙色の火種が一瞬だけ消えかけたかと思えば、今度は爆発したように激しく燃え盛り――。


「……ま、まさか……サ、サラマンダー殿……!? ご、ご無事だったのですかぁぁぁぁぁ!!?」

「お? おぉ……!? おやおや、君はフレリーか!? 生きていたのかーーーー!!?」


なんと、サラマンダーによってフレリーと呼ばれた炎蜥蜴戦士は、つい先刻までのカタコトの脅し文句もかなぐり捨てて槍を放り出し。

対するサラマンダーもちぎれんばかりに尻尾を振り上げ、二匹はまるで強力な磁石に引き寄せられるように勢いよく抱き合い始めた。


「生きていたのですねぇぇぇ!!」

「フレリーこそ! 生きていてよかった……!」


互いの肩をがっしりと掴み、涙目で激しく揺さぶり合う二匹。

さっきまで殺気を撒き散らしていたはずの尻尾は、今やそんな過去を想起できないほどに再会の喜びに震える犬のようにブンブンと振り回され、地面の灰や小石を派手に跳ね飛ばしている。


――――当然、そのあまりの温度差に、俺たちは言葉を失いながらぽかんと口を開け、互いに顔を見合わせた。

そして、大抵こういう時に真っ先に場を和ませてくれる猫バイトさんがなんとか呆気にとられながらもなんとか小声でつぶやいた。


「……なに、これ……?」


岩の頭をポリポリと掻きながら漏らしたその一言は……うん、極めて妥当な反応だと思う。


「……何を見せられているのだ、俺たちは……」


猫バイトさんに次いでサクさんも思わず冷ややかな言葉を落とすが……これも、実に妥当だろう。


いきなり槍を突き付けられたかと思えば、次の瞬間には肩を組み、尻尾を絡ませ、涙を流しながら抱き合っている蜥蜴が二匹。


……いや、マジでなんなのこれ????


とまぁ、俺も仲間たちと同様の感想を脳内で反芻していたとき、サラマンダーが「あっ」と短い声を上げ、こちらをちらりと見やった。


「そ、そうでした、フレリーさん! 紹介が遅れましたが……こちらの方々がなんと! わたくしの命を救ってくださった素晴らしい御方なのです!!」

「おおぉ! 貴方様方が……! 先は失礼な態度を取ってしまい、申し訳ありませんでした……!」


その言葉にフレリーは感極まったように胸に手を当て、尻尾の炎を揺らしながら俺たちを見回しながら頭を深々と下げた。


「えぇ……」


その姿に思わず誰が零したか……。

というかさっきまでのカタコトな喋り方は一体何だったのかと問いたくなるほどに流暢な謝罪の弁に、おそらく俺たち全員の口元が引き攣っていたことだろう……。(感情の読めないサクさんを除く)


けれどもそんな事実はお構いなしに、サラマンダーはこれ以上ないほど誇らしげに胸を張り、ピンと立てられた尻尾がビシッと空を指し、前足で突然、隣にいた猫バイトさんを示した。


「まずはこちらの方が猫バイト様です!」

「うぇえ!? 急だね!?」


あまりにも唐突に始まった"紹介"に、猫バイトさんは虚を突かれたように岩の瞳を丸くしたが、とはいえそこは屈指のムードメーカーたる彼の機転か。

すぐさまサービス精神を発揮して、重厚な岩石の体をこれでもかと大きく見せてポーズを取った……が。


「そして―――」

「い~や、僕の紹介適当すぎない!?」


一瞬にして終わった自分の紹介に、猫バイトさんの鋭いツッコミが飛ぶが、サラマンダーはまるで次のページへ進むボタンでも押したかのように、あっさりと視線をサクさんへ移した。


「そしてこちらが……サクラノヴァ様です! この方に逆らうと死よりも怖いものが待っているので……てっ、丁重に扱うように!!!」

「……おい、余計なことを言うな」

「ピィッ!!」


まぁこいつも間違ったことは言っていないと俺も思うが、サクさんは眼窟の奥の光を細め、低く不気味な声を漏らした。

その瞬間、サラマンダーはもちろんのこと、事情を知らないはずのフレリーまでもが本能的な恐怖に震え上がった。


「ひ、ひぃっ……!? こ、これは確かに……っ、て、丁重におもてなしをさせていただきます……!」


慌てて地面に頭を擦り付けるフレリーだったが、その過剰な怯えが余計にサクさんの機嫌を損ねたのか、突き刺さるような冷たい視線がいっそう鋭くなる。

それを見てしまったサラマンダーはとにかく死に物狂いで話題を逸らすべく、必死の形相で次の紹介へと逃げ込んだ。


「い、いやまぁしかしフレリーさん! 重要なのはこの御方ですとも!!! この御方を見て……何か感じませんか……!? ほらっ! ねっ!? ねぇっ!!?」


尻尾をバタバタと地面に叩きつけ、必死に次の話題へ逃げ込む哀れな大蜥蜴。

そんな姿にフレリーは困惑しつつも、サラマンダーが指し示す方向――腕を組んで佇むゴラクZさんへと視線を向け、再び首を傾げた。


「ムム……? 妙ですね……? なぜこの方からは懐かしい熱が感じられるのでしょうか……?」


最初は、単なる違和感を確認する程度だった。

だが次の瞬間、フレリーの表情がみるみるうちに硬直していき、それと呼応するようにサラマンダーの口角が吊り上がっていく。


「ム……? ムム……? この熱は……ム? この熱は……こっ、ここここここの熱はっっっ!?!?」


やがてフレリーの尾の先の炎が一気に膨れ上がり、激しい火花が周囲の岩肌に飛び散った。

爬虫類特有の瞳孔が針のように細く鋭くなり、荒くなった呼吸が熱い蒸気となって口元から漏れる。


「そ、そんな……!? だって……あの方はもう……!」


声が震え、視界と膝が揺れる。

フレリーは、目の前の存在を前に、信じられないものを見たと言わんばかりに、呆然と立ち尽くすことしかできなかった―――――。





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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!

 

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何卒よろしくお願いいたします!

 

更新は第二章は毎日【AM7時】更新予定です!

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