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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第三章 王女レフィアラと王国滅亡の預言

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第92話 恋のキューピッド大作戦~暴漢撃退大作戦~

~前回までのゼユウ~


魔法塔の増築の為、資金が必要。

クーノ達は、パーティー会場でドットテカ男爵と知り合った。

彼が意中の相手へ告白するのを手伝うと、支援してもらえる話になり…。


◇登場人物◇

●ゼユウ:主人公●ホーメナ:賢者●クーノ:天使●ビッケ:魔王●サダキ:天使

〇チゴマ:王宮の偉い人〇ドットテカ男爵:ルフロンの町周辺の領主

〇カナミア:アイーホルの勇者。ドットテカ男爵が一目惚れした。

 コーホの住居は、二階建ての一軒家だ。

 そこまで古くなく、中々の物件だと思う。


 しかし五人で暮らすには、やや狭い。

 何なら、森の中のホーメナの家の方がデカい。


 当然、一人一部屋なんて無い。

 俺とビッケとサダキ、ホーメナとクーノが相部屋だ。


 サダキをどっちの部屋にするかで、最初に揉めたりもしたな。


 話が逸れた。

 要するに、何を伝えたいかというと。


 (よく男爵を招いたな。)

 理由は聞いたが、それでも思わずにはいられない。




 社交パーティーの翌日。


 コーホの自宅の居間にいるのは、六人。

 俺、ビッケ、サダキ、クーノ、チゴマさん、そしてドットテカ男爵。


 男爵は変装している。

 黒帽子、カツラ、サングラス、付け髭、黒マント。

 立派な不審者。正体を隠すという意味で完璧だ。


「今回、作戦リーダーになったクーノだよ。よろしく。」


 いつになく張り切ってらっしゃる。


「具体的な作戦を話す前に、状況の確認をするよ。」


 ホーメナは、防衛の打ち合わせで、ここにいない。

 だから、クーノが仕切る。


 いや、いたとしても、今回はクーノが仕切ったかもしれない。

 熱量の差で。


「男爵は、どうしてカナミアの事が好きなの?」


「一目惚れだよ。めっちゃ可愛いじゃん、あの子。」


 いっそ清々しい。

 最近、思い悩む事が多いから、わかりやすくて助かる。


「でも、周囲は快く思っていない。そうだよね?」


 男爵が、うちにきた理由は二つ。

 一つ目がこれだ。


 男爵の所有する場所では、必ず誰かの目がある。快く思っていない人の耳に入る。

 『告白をする前に、妨害などされたくない。』それが、彼の主張。


 二つ目は敬語問題。

 男爵自身、気を遣わない意見を求めている。世辞など不要らしい。


 だから、話し合いはタメ口で行われる。

 それを誰かに聞かれる訳にはいかない。


「そうなんだ。カナミアさんは勇者とはいえ、平民の出だからな。

 もうそういう時代じゃないんだけど、気にする人がいるのも事実。

 しかも、一目惚れをバカにする輩もいる。

 きっかけとしては、十分だろうに。」


「そうなんだよ。

 仲良くなりたいと思った。仲良くする為に、お話がしたい。

 何も間違っていないよ!」


 一瞬、クーノに後光が差す。演出で天法はやめろ、光輪を出すな。

一応、天使である事は隠しているはずだが、え?バラしたいの?


「はーい。」


 ビッケが挙手した。


「ビッケ、どうぞ。」


「勇者は今、王都にいまーす。なんでも、ラゼン山脈から強力な魔物が森に侵入する事態が増えていて、その調査らしいでーす。」


 (いや、それ原因、お前だろ?魔王の魔力に釣られてきてるとかじゃ、ないのか?)


「私の方でも把握していて、私兵と共に山へも行った。

 だからこそ、カナミアさんを見かけて、心を奪われたという訳だ。」


 男爵は、その時の光景を思い出して、にやにやしている。


 (ビッケがキューピッドだった?その翼の色、黒いですよ。)


「勇者がよく行く酒場、僕、知ってまーす。」


「どこだ!?」


 男爵が勢いよく食いついた。


「クロスパスって名前の所でーす。」


 クーノが、静かに用紙を配る。

 ビッケの言った酒場の情報が書かれている。


 え、ビッケってクーノの仕込みなのか?


「ほぼ毎日、決まった時間に訪れているよ。

 だから今日の夜にでも会える。」


「凄いな、賢者の森の広報部。大した情報収集能力だ。

 何か、いいプレゼントはあるかな?」


 男爵は、ウキウキしている。ポジティブというか、純粋な人なんだな。


「実はシンプルに、宝石とか好きだよ。だから、相性はいい方。」


 そんな事まで調べたのか、国の力で。


「やった!」


「焦らないでほしい。

 古来より、女勇者に酒を片手に近づく自信家なチャラ男は、無下にされるに決まっているよ。

 第一印象でコケるのは避けないといけない。

 衝撃的な、ファーストコンタクトでなければならないよ。」


 いや、既に面識がある訳だが?


「策が、あるんだね。」


 男爵が、鋭い眼光を見せる。

 こんな内容でなければ、…いや、本人は真剣なんだ。


「カナミアは、六年も勇者をしている強者。

 そこは男爵もご存じのはず。

 男爵がカナミアよりも、優れている点。それは?」


「財力だ。」


 男爵は即答。

 もう、普通にカッコいいな。


「それを活かしたいと考えているよ。

 世の中には、武力だけでは解決できない事がある。」


 クーノが説明をし終えると、男爵は、彼女と熱い握手を交わした。


 作戦は、今夜、決行予定。




「ビッケは、何でこの作戦をやってくれるんだ?」


 俺と一緒に作戦準備中のビッケに聞く。単純な興味からだ。


「何か、意外かい?」

「天使の事、好きじゃないって言ってたから、クーノの考えた作戦に乗るとは思えなかった。」


「そりゃあ、天使は好きじゃないさ。

 でも、クーノさんとは一週間も同じ屋根の下で生活して、同じ釜の飯を食ってきたんだ。彼女本人への理解は深まってきた。もう別に嫌ってないよ。」


 正直、もっと薄情な奴だと思っていた。

 自分が大好きで、それ以外は道具、みたいな。


「それにあれだね。天使に頭を下げられてお願いされるというのは、気分がいいね。

 子供の頃、いじめっ子だった奴が、今は部下で、自分にへこへこしているみたいでさ。」


 なるほど。俺がビッケを理解するまでは、まだ掛かりそうだ。


「ゼユウさんこそ、どうなんだい?」

「ん?どう…どれの事?」


 作戦に対して、どう思っているかって事?


「ホーメナさん、この件に関しては乗り気じゃないみたいじゃないか。」

「…ああ。」


 ホーメナに作戦内容と、今夜決行だとは伝えた。

 『…ほどほどにね。』彼女の反応は、その一言だけ。


 ホーメナとサダキはお留守番だ。


「ホーメナ的には、かなり勝算が低いからな。だから、失敗した後の次の手を探しているんだと思う。お金を稼ぐ、別の方法を。

 とはいえ、俺達は他にやる事もないから、作戦を中止にしたりしない。」


「なるほどね。賢者様は、色恋話が苦手なんじゃなくて、全然期待されていないから、あの塩対応って訳か。

 となると、ゼユウさんの感覚としても暇つぶしかい?」


「まさか。俺は男爵の願いを叶えて、たんまり資金援助をしてもらうつもりだよ。」


 ホーメナにとっても、それがベストだろ。

 ビッケは、にやにやしている。


「いや、サダキさんが困っていたよ?皆のスタンスが見えなくてね。

 でも、これで教えてあげられる。熱量の差はあれど、作戦に反対な人はいないってね。」


「それは悪い事をしたな。でもサダキにやる気があっても、連れて行く事はできない。」


 最後に、カツラを被り完成。ガラの悪い退治屋の出来上がりだ。


「とても見せられた姿じゃない。」

「これはこれで、ありじゃないかい?」


 向こうもやるな。ビッケだと言われても、分からないぞ。




 作戦名、【ドッキリ!暴漢撃退大作戦!!】。


 1、カナミアはガラの悪い二人組に絡まれる。

   (絡む側は、冷たくあしらわれても、めげずに頑張る事。)


 2、イラついた彼女は、つい手が出てしまう。

   (手を出されるくらい、うざい感じで。)


 3、それで、絡んできた男は豪快に吹っ飛ぶのだ。

   (カナミアの様子次第。軽く押された程度でも、可。)


 4、そして、たまたま歩いていた店員にぶつかる。

   (リアリティを出す為に本物の店員さん。間違っても怪我をさせるな。)


 5、店員は高級な酒を運んでいた。それが割れる。

   (こちらが用意したお酒。香りでバレないように、こだわったよ。)


 6、お前が押すからだぞ!っと相方が騒ぐ。

   (店中に響く声でお願い。雰囲気大事。)


 7、酒に詳しい常連客が現れて、酒の解説をする。

   (ドッキリ企画って言ったら協力してくれたよ。香りの監修も、彼。)


 8、一般客がざわざわしだす。カナミアが弁償しないといけない空気になる。

   (所謂、サクラ。今日のお店は貸し切り。)


 9、頃合いを見て、男爵が、颯爽と登場。

   (登場セリフは、男爵が考えている。場合によってはフォローしてね。)


10、さっと料金を払い、カナミアの手を取り、店を出る。

   (茫然と見送る事。野次とか、いらない。)


11、喧騒を抜けたら、決め台詞。クールに去る。

   (長ければ長いほど蛇足。例え引き止められても、逃げろ。)


12、次に会った時、『あ、あの時の!』となる。

   (早ければ翌日。カナミアの様子を観察して、再会日を決める。)

   ※あまり時間をかけたくないから、最長でも一週間。




「二人同時でウザ絡みして、ダブルKOされたら、大間抜けさ。

 僕一人が絡んで、ゼユウさんは少し離れて様子を見た方がいい。

 実際、勇者カナミアは、絡んできた酔っ払いを投げ飛ばした事があると聞くね。

 でも、その反省があるから、大人の対応をしてくるかもしれない。

 僕への反応が薄いようなら、ゼユウさんに加勢に入ってもらう感じかな。」


 夜。店の裏手で最後の打ち合わせ。

 もうすぐ決行の時間。


 (…。)


 ここまできて。

 不安になってきてしまう。冷静さが戻ってきたのだ。


 (クーノも男爵も、ビッケまで、やる気だった。

 演劇みたいで楽しそう~みたいな空気で、だから何か、皆で頑張ろうという雰囲気に流されてしまった。

 よく考えれば、これはマッチポンプ。

 しかも、俺がカナミアの立場なら嫌だ。血の気が引く思いなんてしたくない。

 悪意がなかったとしても、関係者は全員殴り倒してやりたいと思う。)


 つまり、楽しくない。


 でももう店も貸し切りにしたし、エキストラも雇った。

 後には引けない。


 (これはもう、今日という日が笑い話になるように、男爵に頑張ってもらうしかないぞ!)


 自棄気味に覚悟を決めると、丁度、通信端末に連絡が入る。


 決行だ。

企画担当者のクーノは、面白い企画だと思った。


ビッケは、これはこれで、ある意味面白いんじゃないかと企画を止めない。

ゼユウは、場の雰囲気がよくて楽しそうだと思ってしまい企画を止めない。

サダキは、よく分からなくて、だから企画を止めない。

ホーメナは、どうせ失敗するだろうけど、他にする事もないからやるといい。経験にはなるだろうと企画をとめない。


結果は次回。

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