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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第三章 王女レフィアラと王国滅亡の預言

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第91話 恋のキューピッド大作戦~社交パーティー~

~前回までのゼユウ~


俺は、ビッケとサダキと一緒に、魔力制御訓練を行っていた。

訓練終了後、ホーメナに呼ばれる。

俺達コーホは、いい服装に着替えて、貴族の主催するパーティーへと向かった。


◇登場人物◇

●ゼユウ:主人公●ホーメナ:賢者●クーノ:天使●ビッケ:魔王●サダキ:天使

〇チゴマ:王宮の偉い人〇ドットテカ男爵:ルフロンの町周辺の領主

「援助を受けたい、と思っているわ。」


 パーティー会場に向かう馬車の中、ホーメナは言った。


 このタイミングで言うという事は、

「貴族から?」


「そう。今回のパーティーには、貴族が集まる。

 出来るだけ、支援者を増やしたい。」


「そもそも、誰が、何の目的で開いたパーティーなんだい?」


 ビッケが聞いた。


「ドットテカ男爵よ。爵位を引き継いだから、そのお祝い。

 ちなみにパーティー会場は、彼の家よ。」


 聞いた事のある名前だ。


「ルフロンの町周辺の領主だよな。確か、今年で20歳の。」


 王都にも家を持っているのか。


「ああ、僕も知ってるね。

 そのルフロンって町は私兵を持っていて、ラゼン山脈の魔物退治も行っているそうじゃないか。」


「二人共、正解よ。土地も町も私兵も全部、病死した父親から受け継いだ訳。

 相当な金持ちよ。ぜひ、支援者にしたい。」


 ホーメナが、声のボリュームを落とした。


「強化の為に、魔法塔を増やす予定なのよ。

 高質なのを建てたい。そうなると、材料も特殊だし技術も必要。

 オスノに外注する事になり、…お金がかかる。」


 フレン王国の隣がアイーホルという国。アイーホルの隣が、オスノという国だ。


 (オスノから職人を呼んで、色々持ち込んで…。

 一日で建つ訳ではないから、宿泊してもらって…。

 森は魔物が出る可能性があるから、護衛も必要で…。)


 いくら、かかるんだろ?


「勝算は、あるのかい?」


 ビッケは、試すような上から目線で聞いた。


 本当は、足を組んで頬杖をついて、余裕たっぷりな態度で言いたかったと思う。

 でも今は、縮こまった状態で言った。狭いから。


 そう思うと笑える。


「…。」


 ホーメナは即答しなかった。


 (支援を得るのは厳しいのか?国の一大事なのに?)


 気づく。事情を、国の危機を話せないのか?


「パーティー会場内、というより、表面上の話になるのだけど。」


 ホーメナが話題を変えた。いや、説明の為の前振りか?


「コーホは、『賢者の森を盛り上げる為の広報部隊』という事でよろしく。」


「欺く為の仮の姿って訳かい?いいね、そういうのは好きだ。」


 (なら最初から広報でよいのでは?でも、それだと本物の広報と紛らわしいのか?)


 ビッケと同じように単純に考えた方がいいのかもしれない。

 心なしか、サダキも嬉しそうだし。


「それで今度、魔王城を完全に取り潰して、新しいテーマパークを作る。

 森から行けるように橋も造る。

 その企画が進行中で、その為のお金が必要で…。」


「初耳ですけど!?」


 魔王城の持ち主が、叫んだ。


「そういう設定よ。最後に企画は頓挫するわ。

 その可能性もある事を、事前にちゃんと説明する。」


 上手くいく、いかないの前に。


「いや、ダメだろ。

 使用目的を偽って金を集めるのは、詐欺だ。

 防衛費なんだろ?悪い事に使う訳じゃない。

 支援をしてくれる相手には、正直に説明すべきだ。」


 相手を騙す行為を、ホーメナにしてほしくない。


「魔法塔は十分建っているのよ。これ以上建てるなんて、お金の無駄。

 戦争でも始める気かって言われ始めているわ。

 でも、預言内容を考えたら、全然安心できない。」


 静かに、ホーメナの話は続く。

 最新の魔法塔は、見えないような細工をしてあると、どこかで聞いた。


「預言内容を説明して、協力を求めた貴族は、国を去って行ったわ。

 懇意にしていたアイーホルの貴族も音信不通。

 お金が払われる事は無かった。」


 魔法塔を建てるから金を貸してくれと言えば、必要ないと断られる。

 魔法塔の必要性を説明すると、国から逃亡され、金を貸してもらえない。


 (だから適当な嘘をついて、金を調達するって?

 全ての貴族が、そうだと限らないだろ…?)


 しかし、協力してくれる貴族が見つかるまでに、何人の貴族が逃げ出すのか。


 当然、信用していた貴族から声をかけたはずだ。それが、真っ先に逃げ出した。


「借りるにしても、理由は聞かれる。真意を調べられる。

 隠し通せる訳がない。いつかは絶対に、バレる。

 だから、王宮が嘘をつく訳にはいかない。つくなら、私達。」


 賢者の信用で金を借りて、賢者の名で責任を取る気か?

 ハンネの顔が浮かんだ。


 (そんな、自己犠牲をさせられるか。)


 そんな、楽しくない事を。


「お金は返すわ。何年かかったとしても。

 王国を守り切った後、でね。」


 ホーメナは覚悟を決めている。


 それが声と、表情で伝わって。

 俺は冷静さを取り戻していく。


 (王国を守り切る…。)


 まずは、そこだ。

 そこが一番の問題なのだから、最優先にしているホーメナが正しい。


 王国滅亡を防ぐ事に比べたら、詐欺罪で訴えられるホーメナを助けるのは簡単だ。

 王宮は事情を知っている。恩赦だってあるだろう。


「…悪かった。」


 その一言だけ、伝える。

 ホーメナと争うなんて、本末転倒だ。


「…目星はつけてるの。私とクーノの二人で交渉に行く。

 あなた達三人は、呼んだら来て。

 それまでは、楽しんでいていいわ。食事もあるらしいし。

 ただ、あんまり騒がしくはしないでね。」


 それから俺達は、無言で馬車に揺られる。




 そうして、会場に到着した。


 冒頭に男爵からの、あいさつ。


 その後は料理が運ばれて、立食形式。

 参加者同士の交流が始まる。


 男三人は、言われた通り大人しくしていた。

 隅っこの壁際で。


 サダキは、ちょこちょこ料理を取りに行く。

 物珍しい食べ物を口に入れ、驚きの表情の後、笑顔になる。


 ビッケは、数名のお姉さんに声を掛けられていた。

 意外な事に、ちゃんと会話をしている。


 適度に褒め、話を聞き、しっかり話題を膨らませてから相手に返す。

 話の締め方も見事だ。相手に不快感を与える様子はない。


 (変な事を知っている。それから観察力、情報の所得が上手いんだな。)


 サダキと一緒に謎肉を頬張りながら、その様子を眺める。


 (気を遣わない間柄と言えば聞こえはいいが、もう少し俺達にも、あの会話スキルを使えないものだろうか。)


 ふと、視線が女性陣二人の方へいく。


 一緒にいるのは、長い銀髪を後ろに縛った、長身で身なりのよい男。

 ドットテカ男爵だ。楽しそうに見える。


 (……いや、俺はそんなんじゃない。)


 視線を逸らした。

 苛立ちを自覚して。


 まさか、ホーメナが他の男と喋っていたからジェラシーを感じたなんて事はない。

 きっと、ホーメナの役に立てていない自分の不甲斐なさに、イラっとしたんだ。


「気づいたかい?あれ。」


 隣にきたビッケが、耳打ちしてくる。


「あそこにいるのは、アイーホルの勇者だよ。」


 ビッケの視線の先にいるのは、金色で短い髪の、小柄な女性。


 俺はアイーホルの勇者を見た事はないから、分からないが、ビッケが言うなら本人なのだろう。


 (…何か、普通の人だな。)


 美人ではある。魔力量が多いのも分かる。

 しかし、拍子抜けしたのも事実。


 身体の動かし方というか、立ち振る舞いを見ていると、俺でも勝てる気がする。


 賢者と、天使と、魔王と生活しているのだ。

 今更、勇者一人にビビる事はない。


 (…カッコ悪い。苛立っている事に、苛立って、考え方まで攻撃的とか。)


 楽しくない。


 などと考えていると、勇者がこっちを振り向いた。

 ジロジロ見過ぎたか?会釈するように視線を外す。


 幸い、勇者がこっちに来るなんて展開にはならなかった。

 そして、ビッケが俺を盾にするように隠れているのに気付く。


「やっぱり、相性が悪いのか?」


 魔王と勇者だしな。


「ああ。くそ、帽子さえ被れれば、挨拶に行くのに。」


 気にするのは、並んだ時の色彩かよ。




 数時間後、パーティーは終わった。

 最後までいた訳だが、トラブルも、俺達がホーメナに呼ばれる事も、一度も無かった。


 現在建物の外。ビッケと二人。

 女性陣を呼びに行ったサダキと、馬車を取りに行ったチゴマさんを待っている。


 (色んな想定をしていたのだろう。それこそ、ビッケの見た目が刺さりそうな貴族がいる場合とか。そういうのが無かったから、呼ばれなかっただけだ。急だったし、出席者の事前確認なんて出来ないし。だから、仕方のない事で…。)


「まったく、僕達、来た意味あったかい?」


 意味を必死に見出そうとしている俺の横で、ビッケが簡潔にまとめる。


「…いい飯が食えただろ。」

「数時間、拘束されたんだ。不満の方が大きいね。」


 サダキが二人を連れて戻ってきた。

 チゴマさんも馬車で来てくれた。


 後は帰るだけ、というタイミングで。


「写真を撮ろう。」


 ビッケが言った。


 (数時間の意味を見出したいんだな。)


 その気持ち分かる。


「何でよ?」


 ホーメナの顔は険しい。支援者は得られなかったのか?


「無粋だね。写真を撮る理由なんて、思い出を残す以外にないじゃないか。」


 帽子を被りながら、ビッケは続ける。


「折角お揃いの、いい服を着ているんだ。いい記念になる。」


 いつの間にか、チゴマさんが写真機を構えている。

 クーノとサダキも異論はないようで、横に並び始める。


 ホーメナも大人しく並んだ。さっさと撮った方が早く終わると考えたのだろう。

 もちろん、俺も並ぶ。


「皆、ちゃんと笑っているかい?いい顔をしてくれよ?エンディングで使うんだから。」

「何だって?」


 思わず聞いてしまう。何を言い出すんだビッケは。


「生き残った一人が、この写真を見て思い出すんだ。ああ、こんな日も、あったなぁってね。」


「焼野原になった王国の跡地に、焼け残った写真が、はらりと落ちる方かもしれないわ。」

「ホーメナ!?」


 驚いたさ。ホーメナが言った事に。


「冗談よ。そういう結末の本を読んだ事があるから、乗っかっただけじゃない。」


 パシャリと音がする。


「はい、もう一枚、撮りますよ。」


 写真は二枚とも貰った。


 一枚目は酷い。向いてる方向はバラバラだし、変な顔をしている。

 でも見ていて楽しいのは、一枚目。




 馬車での帰り道。

 クーノが切り出した。


「ほとんどの貴族に、支援を断られたよ。」


 それは残念だ。


「でも一人、交渉継続中の方がいて。

 それが、ドットテカ男爵。」


 パーティーの主催者。長い銀髪の、金持ち。


「男爵に、【二人の色気で篭絡作戦】を仕掛けた訳だけど…。」


 男を遠ざけた訳だから、「だろうな」とは思ったが、口にされるのは嫌だな。


「上手くいかなかったよ。でも、私達の魅力が足りなかった訳じゃない。

 彼には意中の人がいたんだよ。」


 クーノが興奮気味に話す。鼻息が荒い感じ。

 珍しいというか、俺は、こういう彼女を初めて見た。


 酒が入っているのかもしれない。


「彼の希望を叶えられれば、無条件で資金援助をしてもらえるそうよ。」


 ぶっきらぼうにホーメナが言う。


 嘘をつかなくてもいいんだから、俺にとっては最高の条件。

 しかし、ホーメナの態度が物語る。簡単ではないのだろう。


 クーノが続ける。


「男爵が好きな人は、アイーホルの勇者だよ。

 名前はカナミア。先月で19歳。

 勇者試験は、3年に一度。

 秋の試験に合格すると、3期連続勇者になるよ。

 これは歴代トップの記録に並ぶ偉業。

 史上初の4期連続も期待されている。彼女の年齢を考えると十分ありえる話。

 そんなスーパー人物。」


 詳しいな。


「ラコボーンの戦いで名を上げて、そこから派生した魔物、血鬼ブラッドオーガを東の果てまで追いかけて討伐。

 最近だと、海から現れた大型魔物の悪魔蛸デビルオクトパスを倒したね。

 彼女の戦績は、そんな所かな。」


 ビッケが得意げに語る。

 俺が知らないだけで、有名人らしい。


「ドットテカ男爵が、勇者カナミアに告白するよ。

 私達はそれのサポート。

 大丈夫。私に、いいプランがあるよ。」


 クーノが乗り気だ。

 色恋事に興味があるとは思わなかった。


 (恋のキューピッドって、確かに翼があった気はするが、少年じゃなかったっけ?

 つまり、クーノというよりは、サダキ…。)


 そんな何処で得たか分からない知識を思い出しつつ。


 (サポートするだけで、いいんだよな?)


 成就させる事が条件となると、難易度が全然違う。

 …だから、ホーメナは諦めた顔なのか?


 クーノとホーメナ。両極端な温度差のまま、馬車は進むのだった。

思ったより金がなくて、お金をくれる人を探す…。


第一章でも、第二章でも、第三章でも。

お金に困って、金策に走る…。

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