第86話 容疑者達~滅亡の預言~
~前回までのゼユウ~
天使と戦い、魔王と戦い、謎の少年と戦った。
訳も分からず戦い抜いて、最後には気を失った。
とりあえず皆、無事みたいだったけど?
◇登場人物◇
●ゼユウ:主人公●ホーメナ:賢者●クーノ:天使●ビッケ:魔王
〇チゴマ:王宮の偉い人
「城に戻った僕は、ヒールリングで傷を癒した。
そして、城の罠を発動させたんだ。ゼユウさんも体験した、あれだよ。
侵入者に、疑似的な幻惑魔法をかける。
異空間に閉じ込めて、僕とお話が出来るスペシャルな仕掛けさ。」
俺が倒れてから、丸一日経ったらしい。
ここは、王都の病院の一室。
魔力欠乏により、俺はここに運ばれた。
魔力が足りないだけなら、魔力贈物なんて魔法がある。
自分の魔力を譲渡する魔法で、ホーメナも使える。
しかし、この魔力贈物。回復魔法なんかもそうなんだけど、あくまで応急処置みたいな物だ。
後から、思い出したかのようにダメージがくる場合だってある。
時間があるなら、ゆっくり休むほうがいいんだ。
つまり、一週間ほど入院。
検査着みたいな寝間着姿で、ベッドの上にいるのが俺。
その横で、イスに座りながら喋り続けるのが、魔王だ。
「僕は幻惑魔法に詳しくないけど、二つ前の魔王がスペシャリストでね。
その人の自信作なんだよ、あの魔王城は。
魔法の範囲内、つまり建物内では時間を操れる。
簡単に言うと、僕は同時に何人とでも会話が出来たって訳。」
目を覚ました時、最初に目に入ったのは、この男だ。
悲しかった。ホーメナやハナ先輩がよかった。
…別に、女好きという訳ではない。この男以外の人がよかったってだけだ。
「ただ、あの天使、と言うか天法使いには幻惑魔法が効かない。
あ、天法って知ってる?
最近、フフゴケ商会って所が、別系統の魔法みたいな情報を流しているらしいから、名前くらいは聞いた事あるかもしれない。
まあ、天上の国の魔法の事なんだけど。
ともかく、あの女は異空間へ行かず、僕の本体の所までやってきた。
僕は楽しくお話し中で、気づかなくてさ。無抵抗のまま縄でグルグル巻きさ。
天使に平手打ちをされて、ようやく現状を把握して、ビックリしたよ。
異空間内の時間を遅らせて、まずは天使の対処をする事にしたのさ。」
そう言えば、頬をさすっていた場面があった気がする。あの時、殴られてたのか。
考え込んでいるように見えたのは、天使の対応中だったと。
ホーメナの方でも、似たような場面があったと想像すると笑える。
「天使の事情は、そこそこ知っていたからね。
速攻で説き伏せてやったさ。
天使に襲わせる為に、賢者を開放した。
疑似幻惑魔法には、魔王城の魔力を消費するからね。永遠に閉じ込めるなんて出来ないのさ。後は、ゼユウさんの知ってる通りかな?」
「なるほどな。最初から同士討ちさせる事が目的か。」
「まあ、そうなんだけど。
言ったでしょう?異空間内で言った事は、全部、本当だって。
あなたに興味がある。仲間になったっていい。」
「…。」
俺が反応に困っていると、病室の扉が開いた。
ホーメナと、天使と、知らない男性。
男性は、ピシッとした高級そうな服装の初老の人だ。
(天使、無事だったんだな。もう歩けるようだし、よかった。)
ホーメナへの攻撃を止めてほしかったから、攻撃したのだ。
殺したかった訳じゃない。
「ゼユウ、調子はどう?」
ホーメナが聞いてくる。優しい声音だ。
「大丈夫だ。頭はスッキリしている。」
身体は動かないが。
「魔王は、どこまで話してくれた?」
「彼が気になっているだろう事を一通り。
彼に傷を負わされた僕が、魔王城へ戻り、如何にして君達を追い詰めたのかを、じっくりと。」
「OK。何も話してないという事が分かったわ。」
男性がイスを持ってきて、ホーメナと天使が座る。男性は立ったままだ。
「こちら、チゴマさん。王宮の偉い方。」
偉い方を立たせたままなのは、不味いんじゃないか?
「どうも、チゴマです。私は、王宮と皆さんの連絡係のようなものです。
ですので、お構いなく。
何か、ご要望がありましたら、遠慮なく、仰ってください。」
そう言って、チゴマさんは微笑んだ。
よく分からなかったが、何というか、その佇まいには貫禄がある。
執事のような感じの人だろうか?
とりあえず、様子をみよう。話を進めてもらいたい。
「私はホーメナ。賢者よ。一先ずこの場を仕切らせてもらうわ。」
「クックヌーノ。天使だよ。気軽に、クーノと呼んでほしいよ。」
「エンビッケ。魔王だ。親しみを込めて、ビッケと呼んでくれ。」
「…ゼユウだ。賢者の森の従業員、よろしく。」
自己紹介が始まったから参加したが、俺だけ場違い感が、凄い。
(え?何の集まり?ホーメナは何を始める気だ?)
「さて、まずは共通認識としておきたい事があるわ。知っている人もいると思うけど、改めて。クーノ、お願い。」
クーノが、こほん、と咳払いをして、言った。
「一年以内に、フレン王国は滅ぶ。
領土内全てが、光に包まれて消える。
建物も、血脈も、人もなくなって、それで滅亡。」
いきなりそう言われて、取り乱す人はいないだろう。
単純に、信じない。
「正確には、一週間後の夜明けから数えて、一年以内ね。
天使の預言は正しいものとして、王宮は動いている。
防衛計画は進んでいるの。
でも、絶対の保証なんてない。だから、女王の妹のヘメレイ様含む、一部の王族や貴族は避難したり、長期間の旅行に出たり、逃げ出していて…。」
「…ちょっと待ってくれ。」
ホーメナの説明を遮る。
王国の現状を説明してくれるのは分かった。
なら、ちゃんと理解したい。
「どうして、預言は信じられたんだ?」
すまないが、そこから頼む。
「実際、預言を当ててるのよ。
レーグの魔王とゾトの魔王の陥落とか、…半年前のテロとか。」
レーグの魔王の件は知っている。けど、ゾトの魔王なんて、存在すら知らなかった。
しかし、問題は、そこじゃない。
「…それは、凄いな。」
何とか、絞り出した返答がこれ。
半年前のテロといえば、ハンネが死んだやつではないか。
「…。」
思う事はある。知っていたのに、何故?とか。
いや、その時はまだ信じられていなくて、被害を出してしまって。
だから今回の、滅亡の預言は正しいものとして動いている…?
いや、そもそもとして…。
「何で、天使は、預言なんて出来るんだ?」
魔王の件は分からないが、テロに関しては、マッチポンプの可能性だってあるんじゃないか?
「天使だからだよ。」
クーノが言う。
それで納得するしかないのか?
そもそも天使とはなんだ?
前に、同じような質問をした気がする。『異世界人。天上の国の住民。』
魔王の言葉が浮かんだ。あの時は、時間切れで追及できなかったが…。
「覚えてる?
ゼユウが私達と出会って、二、三か月くらい経った頃、訪ねてきた人。」
ホーメナが聞いてきた。
(ハンネに拾われて、二、三か月くらいで訪ねてきた奴?)
賢者なんて、何でも知ってそうな名前だ。
だから、その知恵を借りたいとやってくる人はいる。
俺が覚えている中で、一番前の人は。
「『自分は異世界からやってきた。帰りたいのだが、方法を知らないか?』
そう言ってきた人なら、覚えている。」
ハンネと何度かやり取りをして、何とかなったと聞いた。帰れたのだろうか?
「そう、その人。
異世界、異次元の世界、別世界。そんなのが、ある訳よ。」
ハッキリ喋る事の多い彼女が、なんとなく自信がなさそうに言う。
把握しきれていないのだろう。
突っ込んで聞いても困らせるだけ、そういうモノだと思っておく。
「その異世界の中にね、天上の国と呼ばれる場所があるの。」
魔王の話とつながる。
「千年前、天上の国は私達の世界に接触してきた。
小競り合いもあったみたい。
そして、圧倒的な力の差を思い知らされて、恐怖した。
いつの間にかいなくなった彼らの存在を、接触した事実ごと隠すほどに。
これを知っているのは古い王族とか、一部の人だけね。」
多分、隠された歴史の真実なんてものを聞かされているはずなのだが、元々歴史に詳しくない。
だからあまりピンとこない。
「11年前。
フレン王国の女王様、いえ、王宮は、大きな問題を抱えていた。
解決方法は存在せず、もしも何とか出来るとしたら、それは、全知全能、そう神様だけ。
そう思われていたほどね。
だから神様に頼む事にしたのよ。正確には、神様レベルと恐れられた、天上の国にね。」
「…。」
コンタクトを取る方法が、あったのか。
いや、可能だとしても。
相手に利のない一方的なお願いを、よくやろうとしたな。
怒らせるような事でもあれば、国どころか世界が滅ぶ危険があるのに。
(封印した禁忌に手を出してまで解決したい問題、か。)
「王宮による、召喚の儀式は成功したわ。
天上の国の使者、天使が現れたの。それがクーノ。」
クーノが照れたように髪を触る。
11年前からいる異世界人。見た目通りの年齢ではないかもしれない。
「クーノは王宮の問題を解決したらしいわ。
そして王宮も、クーノに出来る限りのお礼をした。
彼女は大変満足したみたいで、王宮と天使は、良好な関係となった。
それから…。」
ホーメナが言いよどむ。眉が動いて険しい顔になる。
でもそれは一瞬。いつもの感じで、続ける。
「話が逸れたわ、ごめんなさい。
クーノの預言は、天法。天力を使う、天上の国の魔法の事ね。
確か、レベル3なんだっけ?」
「そう、レベル3の閲覧、という名前の天法。
消費天力が膨大で頻繁に使えない。そして制御がとても難しくて詳細までは分からない。
でも、そもそも使える事が凄いんだよ。管理者レベルの天法だから。」
クーノはドヤ顔だ。
しかし残念ながら凄さが分からない。レベル3は高いのか低いのか基準もないし、管理者と言われても、何の?って話だ。俺だって賢者の森の管理をしている。
その空気を感じたのか、クーノの補足が入る。
「四属性魔法が、初級とか中級とかの、階級制なのに対して、天法はレベル制だよ。
レベル0からレベル4までで、レベル4は、神様レベル。現在存在していないと言われているよ。
私のレベルは2+。レベル2相当までが軒並み使えて、レベル3も、ちょっと使える。試験に合格して、証明書だって貰っているよ。」
なんか悪いな。余計な事を喋らせてしまった。
まとめると。
「クーノは天法の力で、王国の滅亡を知って、それを伝えてくれた。
今までの功績から、王宮はその預言が正しいと思っている。
って事で合ってるよな。」
「正解よ。合ってるわ。」
ホーメナが、話を先へ進ませる。
「王国滅亡という結果だけは分かっているの。
でも、『誰が』『なぜ』『どうやって』が分からない。
『いつ』かというのも、一年以内って感じでアバウトだし。
クーノもチラッと言ったけど、預言でこれ以上の情報は増えないの。
この状態で、私達は王国を守らないといけない。」
「全員で逃げる、という手段は?」
一年以内に滅ぶ国なら、放棄するしかないんじゃないか?
「全員で逃げたら、滅亡と同義よ?
もちろん、人命が優先というのも分かる。
でも、何処へ?どの国へ?
どんなに分散しても、半数を受け入れてもらう事も厳しいと思うわ。
一時的な退避だとしてもよ。期間は一年。その後、帰れる保証なし。
仮に出来たとしてもよ?滅亡原因は不明なの。
全員が国へ帰ったら、また一年以内に国が滅ぶなんて言われる可能性はある。
考えた結果、逃走は不可能だという結論になったわ。」
「…。」
「私達は、どうにかこうにか滅亡しないように、抗うしかないって訳。」
どうやって?
危うく、声に出してしまう所だった。
それを考えようという話なのに。
「一息入れましょうか。まだ、長くなるし。
チゴマさん、飲み物をお願い出来るかしら。」
「かしこまりました。」
チゴマさんの後ろ姿を見ながら、俺は小さく息を吐いた。
予言か預言で考えた結果、預言。
予測ではないし、神託を受けたって方が、まだ近いかな~と。
つまり予言とあったら、深い意味はなく、ただの誤字です(笑)




