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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第三章 王女レフィアラと王国滅亡の預言

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第84話 非日常~問いかけ~

~前回までのゼユウ~


なりゆきで魔王と戦った俺は、奴に一矢報いる事に成功。

しかしそこが限界で、無様に空を眺める事に。すると、二人組に助けられた。

賢者ホーメナ、天使クーノ。助けてくれた二人と一緒に、俺は魔王を追う。


◇登場人物◇

ゼユウ  :主人公

ホーメナ :賢者

クーノ  :天使

エンビッケ:魔王

 負傷した魔王は何処へ行く?


「当然、拠点へ戻るでしょうね。魔王城よ。」


 賢者の森の北西、崖端。遠くに、魔王の城が見える。


「間違いなく、いる。魔力の質がいつもと全然違う。」


 流石は賢者。俺はそこまでは分からない。

 精々、眺めていると気分が悪くなるくらいだ。


 ホーメナが魔法を発動。

 

 土属性、ストーン

 魔力で石を作り出したり、飛ばしたりする基礎魔法。


 極めれば、大きさも、硬度も自由自在。

 つまり実力者なら、ちょっとした足場くらい余裕で作れるし、自身が乗れるほどの岩だって作れる。


 現れたのは、ユニークな形の岩。

 掴まる箇所と座るイスなんかもある。


「いや、突っ込むのは違うんじゃないか!?」


 発射した魔法をコントロールするなんて、熟練者でも難しい事。


 しかもこの大きさだ。左右の細かな移動なんて無理だろうし、勢いを殺せず、上手く着陸できないだろう。ホーメナであってもだ。


 つまり彼女の想定は、乗り捨て。

 これで近づき、途中で脱出。岩はそのまま魔王城にぶつける気だ。


 魔物退治の時、たまに見る戦法。

 だから、技量的には出来るだろうが、そうではなく。


「こっそり行って、奇襲したほうが…。」


 言っていて、気づく。


 拠点にいる魔王に、隠密行動なんて出来るイメージはない。

 なら、建物ごと壊すような奇襲が有効的なのか?


「ごめん、確認なんだけど、目的は『魔王の討伐』でよい?」


 魔王と戦う。その覚悟は決めてきたが、肝心の目的を聞いてなかった。

 討伐か捕縛かでは、全然違う。


「魔王はあるものを盗んだの。」

「あるもの?」


「…。」

 

 ホーメナは答えない。

 これはあれだ。彼女自身も、何が盗まれたのかを聞かされていない可能性がある。


「第一目標は、魔王の捕縛。そして隠し場所を吐かせる。

 第二目標は、魔王の討伐。その後、頑張って探す。」


 それは、捕縛一択ではないだろうか。


「なら、建物を壊すのはよくないだろ。盗品が魔王城内にあってもおかしくない。」


「私は、ぶつけていいと思うよ。」


 天使、クーノだ。


「まず、あの魔法壁を壊さないと、中に入れない。」


 …城の周りには、壁があるのか。まあ、そうか。


「じゃあ、行くわ。二人共、ついてきてね。」


 物凄いスピードで、ホーメナは飛んで行った。

 見るのは初めてではない。でも、圧倒されてしまう。


 (あんまり、危ない事はしてほしくないんだが…。)


 無理な話だろう。だから俺が支えないといけない。

 『ホーメナを守る。』それが俺のやりたい事。ハンネとの約束でもある事。


「おいてくよ?」


 クーノに声を掛けられる。

 彼女は、光輪と白い翼を出している。


「大丈夫だ、行ける。」


 ウイングを発動し、ホーメナを追いかけた。




「無傷か。」


 魔王城の正門前。


 ここまで近づけば、俺にも感じ取れる。

 猛スピードの岩の直撃でびくともしない魔法壁の存在を。


「でも、中には入れるみたいだよ。」


 魔法壁が唯一張られていない場所。それが正門。


 俺とクーノは、魔法を解いて着地。ホーメナと合流した。


「完全に罠だけど、乗るしかないわ。」


 ホーメナは躊躇わず、門を開ける。

 反射的に止めたくなるが、別案はない。


 警戒しつつ、彼女の後に続いて門をくぐる。


「!?」


 前を歩くホーメナが消えた。隣のクーノもいない。

 どころか、外だ。大草原。いい風が吹いている。


 (移動させられた?もしくは幻覚?これが、魔王城の罠…!)


 瞬間的に移動する魔法なんて、本の中でしか知らない。


 (レーグの魔王を倒した勇者の仲間は、幻惑魔法を使えるらしいから、そっちの方が可能性はあるか?)


「やあお兄さん、また会ったね。」


 聞き覚えのある声がして、振り返る。

 ルートレスの魔王がそこにいた。地面から突き出した岩に腰掛けている。


 俺のつけた傷がない。治ったのか、幻影だからか…。


「…姿を見るなり、襲い掛かってくると思ったんだけど、こないの?」


 こんな訳が分からない状態で、そんな事しないだろ。


「…冷静になって、キャラを取り戻したんだ。お前の言う、クール系だ。」


「よかった。話が出来そうだ。」


 正直、殴りかかりたい気持ちはある。

 けど、まずは情報がほしい。だから、頷く。


「お兄さん、何者?」


 質問の意図を考える。しかし、下手に情報を渡すのはよくない気がする。

 無難に名前を言って…。


「ちなみに、名前を聞いている訳じゃない。知ってるしね。

 ゼユウさんでしょう?賢者の森の管理の仕事をしている。」


「…。」


「不思議そうな顔しないでよ。あなたも風属性、音制御ノイズコントロールを使っていたじゃないか。

 音制御ノイズコントロールで遮断された音を、音制御ノイズコントロールで拾いにいくとどうなると思う?

 当然、精度の高い方が勝つ。

 『どうしよう!?ゼユウさん!!』って、言ってたじゃないか。ハナ先輩が。」


 …こいつにハナ先輩の名前を言われると、イラっとくるな。


「なら、どういう意味で聞いたんだ?俺の情報は、それぐらいだ。」


 魔王に、睨みつけられる。そして、盛大に溜息をつかれる。

 やれやれといったジェスチャーをして、魔王は口を開けた。


「戦闘中にも言ったけど、ウイングを使えるなんて只者じゃない。

 ましてや、君は気竜エアドラゴンを斬り裂いた。

 実は伝説の勇者ぐらい言ってもらわないと、納得できない。」


 穏やかな雰囲気の中に、苛立ちがある。気がする。


 仮に俺が「実は、伝説の勇者で…。」なんて言ったら、「例えだよ!舐めんなっつってんだろ!」と逆切れされるんだろうな。


 しかし、駆け引きなんて出来そうもない。正直に言うか。


「二年より前の記憶がないんだ。

 だから俺が何者かは、自分でも分からない。

 少なくとも今の俺は、勇者でも賢者でもない。そういう肩書は、一つもない。

 ウイングは使えたんだ。便利だから使っている。

 気竜エアドラゴンを斬れたのは、…色々試した結果だ。

 もう一回斬れと言われても、無理かもしれない。」


 言ってから、不味いと思った。

 正直に言い過ぎた、最後のは余計だ。次戦ったら勝てないかもと自白してどうする。


 しかし魔王は俺の言葉に反応せず、何か、考え込む。

 何故か、頬っぺたをさすっている?


輝刃ブレイズブレイド…。」


 魔王が呟いた。


「まずは魔力を集めるんだ。触れれば焼き切れるほど、濃くね。

 その集めた魔力を圧縮し、爆発させる。

 威力が分散しないように、制御する。

 お兄さんが使ったのは、きっとそれ。」


 …夢中だったから、覚えていない。


「集めたり、圧縮するのは、魔力を剣状にする工程と似ているね。

 風剣ウインドソードとか、火剣ファイアーソードとか。

 だから、原理的には、どの属性でも使用可能なんだ。

 でも、そもそも焼き切れるほど集められないし、爆発するまで圧縮も出来ない。

 完全な、失魔法ロストマジックさ。」


 確かにそんなのが使えたら、何者だと聞きたくもなる。


 ハンネはいい魔法の先生だった。でも、教え方どうこうじゃあないだろう。

 勿論、無我夢中でやって偶然できるとも思えない。


「でも、本当に分からない。」


 魔王の勘違いじゃないか?

 俺はそんなの使ってなくて、魔王が油断しまくってて、たまたま気竜エアドラゴンに薄い所があって、そこを偶然攻撃できた…。


「手を組まない?ゼユウさん。」


「いきなりどうした?」


「僕はあなたに興味がある。仲間にしたい。」


 意味がわからない。

 ひょっとして、俺にホーメナを裏切って、彼女を攻撃しろと言っている?


「まあ、聞いてよ。

 賢者や天使を裏切れなんて言わない。

 あなたの過去を、二年前より前の事を、一緒に調べようと言っているんだ。」


 ホーメナとクーノの事は知っているんだな。

 なら俺達の目的も知っているか?


「お前の仲間になれば、お前は俺に捕まってくれるのか?」


「はは、そうだね。考えてもいい。」


 意外な反応だ。そんな訳あるかー、と戦闘に突入かと思ったのに。


「僕は捕まる。盗んだ物も返す。そしてあなたは、自分の過去を明らかにする。

 僕が捕まっている間は協力できないから、一人でやってもらう事になる。期限はそうだね、半年以内。どう?」


「俺から話を振っておいてなんだが、魔王は捕まったら、その、処刑とかされないのか?」


「されないさ。僕の罪は盗みだけ。しかも、物は返すんだ。

 海の上のこの城は、一応、独立国家でね。悲しい事に認められていないけど、王国の領土ではない事は確実。税金未払いとかにはならない。

 まあ、それども難癖つけて、開放されないかもしれない。

 その場合も、期限までは大人しくするから安心してよ。」


「期限が半年なのは、何故だ?」


「あなたの謎には、僕の半年を無駄に浪費する価値がある。

 ただ、一年とか二年とかになるなら、そこまでじゃないかなって事。

 期限がないと、人はサボるっていうしね。」


「…期限を過ぎても謎が解けなかったら、どうなるんだ?」


「天使を殺す。」


「…。」


 魔王が吹きだした。何か、おかしい所はあったか?


「いや、ごめん。ゼユウさんは分かりやすいね。

 もし、さっき僕が、賢者を殺すって言ったら、斬りかかってきたでしょう?」


 確かに。

 これは、あれか?情報を盗られている?


「僕がゼユウさんを仲間にしたいって言った時、凄く怖い顔をした。

 『裏切りという行為に嫌悪感を抱いている』か、『絶対に裏切れない、裏切りたくない人を、裏切れと言われたと思って、怒った』かの二択。

 僕が『天使を殺す』と言った時の反応でわかった。

 ゼユウさんは、賢者を裏切りたくないんだ。」


 …まあ、クーノとは会ったばっかりだし。


「ならさ、別の提案もあるんだけど。

 僕とゼユウさんと賢者で、天使を倒さないかい?」


 振り回されているな、こいつに。

 あまり楽しい状況ではない。


「…。」


 魔王の提案を断る為に、ホーメナは魔王の捕縛の命令を受けているから、みたいな反論をしようとした。

 でもその事と、天使が繋がらない事に気づく。


 いや、ホーメナと一緒にいたし、目的も一緒だった。

 だから王国の関係者だとは思うけど。


「そもそも、天使って何者だ?」


「異世界人。天上の国の住民。」


 …とりあえず、絵本に出てくる『神様の使いで、死者の魂を導く存在』ではないようだ。


「僕はね、驚いたんだ。天使を客人として扱っている事に。

 その真意を確かめる為に、王宮へ忍び込んだんだ。」


「待ってれ、天使の事が分からない。

 天上の国?の住民だと、客人として扱ってはダメなのか?」


 ビシリと。異音が聞こえた。

 見ると、空間に亀裂が入っている。


「残念だけど、時間切れだ。」


 魔王が立ち上がった。

 亀裂は大きくなる。その奥から、光が溢れる。


「ゼユウさん。もう一度、言うよ。

 僕とゼユウさんと賢者で、天使を倒そう。」


 光に包まれて、俺は目を閉じた。

現状を把握できないまま、戦闘突入!

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