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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第二章 魔王クリガナンの祝賀

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第79話 リガーナ~冒険~

~前回までのリガーナ~


ゾトの魔王として、何度も転生を繰り返す。

ある時、偶然、ロストンと再会した。

彼と話をして、私は。ロストンと冒険する事にした。

 ロストンには腹が立った。


 彼を脅して、捨てるように放置した帰り道。

 一人で夜道を歩きながら、そこらの石を蹴飛ばす。


 だって一人で盛り上がっていた私がバカみたいじゃないか。 

 この三年、必死に準備したのに。


 ディオルを王国に呼び寄せたり、ムンタを勇者にしたり、まさかスキンヘッドになるなんて思わなくて驚いたり。 


 他にも色々。

 まあ、でも、結果オーライかもしれない。


 第一目標は、トワとサニアを殺す事。

 第二目標は、ロストンを活躍させる事。


 ロストンに二人を殺してもらう予定だったけど、あの様子では難しそうだ。


 だから二人を殺すのは私になるだろう。

 今回の私は、悪役でよい。




 トワをボコボコにした後、想像以上に疲れを感じた。


 ボコボコにするのは予定通り。

 トワのヘイトは間違いなく私に向いている。


 共通の敵を得たロストンはトワと仲よくなるはず。

 彼女の協力があれば、ロストンはもっと強くなる。


 強くなれば、きっと活躍だって出来る。


 計画通りなのだけど。


 トワの怯えた顔を見て。

 大昔の自分を思い出して。


 ノリノリで首輪を用意している時には気付かなかった。

 トワにやった事は、ママにされた事と同じだ。


 こんな所は似なくていいのに。


 死ぬほど嫌いだった行動を、無意識にしていたという事がショックで、逃げるように離れた私は、そのままふて寝。


 警報が聞こえても二度寝。


 それでも鳴りやまない警報がうるさくて。


 結果的には起きてよかった。


 病気で死んだドラゴンが、魔物化して攻めてきてたから。


 確かあの子は、遠い昔、王国の王子と友達で。

 だから王国に攻め入る事はしないのだけど。


 魔物化して知性がなくなって。

 王子を求めて、やってきたのかもしれない。


 真相は知らないけれど、私は鬱憤を晴らせた。

 ロストン達も助けられて万々歳。




 流石に反省する。


 魔力抑制装置のパフォーマンスは中々良い感じ。

 皆の反応は、まさしく私の求めるものだった。


 そう、今の私は悪の魔王。

 このまま力を見せつけていこうじゃないか。


 ねえ、トワ、サニア、ムンタ。

 私は強くなったのよ。あの時と比べてね。


 だからこれもパフォーマンスのつもりだったのに。


 まさか毒にやられるとは思わなかった。


 これで死んだら、私史上もっとも間抜けな死に様だ。


 トワの腕を切断した時は、思わず謝りそうになる。

 殺す予定なのに、どの面さげて言うのかと。


 恥ずかしさで荒れる私はサニアに八つ当たり。

 魔力量の調整にも失敗する始末。


 めちゃくちゃだった。


 頭を冷やす為、屋根の上で精神統一。


 何かロストンが様子を見にきたらしいけど、適当に誤魔化しておいた。




 謎の失踪を遂げたディオル。

 それを心配したディルガンツが、バクー王国にいた。


 アトレーナの町で、こちらをじっと見ているのを見つける。


 彼に天力は無いから、私の探知には引っかからない。

 だから接近を許してしまった。


 逆に魔力探知に優れている彼は、ロストンに気づいている。


 ロストンはともかく、トワがこの不審者に気づかないなんて。

 きっと、大金で浮かれているのだ。


 私がいたから、ディルガンツは近づいてこなかった。


 でも放置なんて出来ないから、私のほうから接触した。

 なんとか誤魔化そうとしたけど、間違いなく納得していない。


 戦闘は避けられない。


 私はこの後の事を考える。

 ディルガンツは、この旅の目的。彼を倒せば、旅は終わり。


 あの魔王がトワとサニアを殺し、最後ロストンが彼を倒す。

 それが、私的に最高の終わり。


 でも、そんなに上手くいくだろうか?

 一騎打ちで彼を倒すより、よっぽど難しい。


 トワとサニアの二人だけで魔王を相手させ、終わった後にロストンとムンタと私で魔王を倒す。

 いや、魔王は二人を放置し、ロストンを狙う為、こちらにくる。


 だったら始めから皆で。

 でも乱戦になれば、ロストンが死ぬかもしれない。


 そう、私は。

 ロストンに活躍してほしいけど、それ以上に死んでほしくない。


『…。』


 もう、いいんじゃない?


 これまでの旅で、ロストンは十分活躍した。

 だって、前世まで一般人のロストンだよ?


 それが、骸骨竜スカルドラゴンと激戦を繰り広げ、国を荒らす大集団の壊滅に貢献した。


 だから。

 私がディルガンツを殺し、ロストンの安全を確保して。


 その後私が二人を殺せば、それでいい。


 考えている途中、トワとロストンが何か言いに来たけど、頭に入らず、から返事になってしまう。


 大丈夫。きっと後少しで全部終わるから。




 想定と大分違ったけど。

 私は目的を果たした。二つとも。


 天力の、天法の探知を全力で行う。


 首輪は間違いなく爆発した。トワは頭が吹き飛んで絶命した。

 でも、魔力精神体になる事はなかった。


 ちょっと前に死亡したサニアも同じだ。


 二人は天上の国の人物ではない。


 二人は、そうね。

 どんな環境でも努力するし、才能もあるから力を持つ。


 一生懸命生な所も、仲間思いな所も、純粋な所だって。

 魔王打倒の理由になりやすい。


 そんな二人は仲間にも好かれやすく、死んでほしいと思う奴はいない。

 だから仲間は、二人を守る。結果、生き残る。


 それだけの話なのだ。

 そんな事を確認する為に。


 可能性を潰す事は大事、とはいえ。

 ムンタも、巻き込んで殺してしまった。


 ロストンにも、辛い思いをさせた。


 折角、いい感じに、一緒に魔王を倒したのに。


『あ。』


 完全に気の抜けていた私は、あっけなくやられた。

 即死ではない。魔力も残っている。


 ディルガンツのしぶとさには驚かされたが、瀕死には違いない。

 回復魔法ヒールで回復し、反撃すれば、勝てる。


 でも。

 もう目的は果たした。


 だから、次の世界へ行ってもよい。


 私がディオルの仇には違いないのだ。

 ディルガンツに討たれるのはいいかもしれない。


 そう考えて、目を閉じる。

 しばらくしたら、近くで音がした。


 その後少しして、身体に衝撃が。

 目を開けたら、ロストンがいた。


 どうやら刺されて、倒れたらしい。

 全くロストンは詰めが甘い。


 最後の力で、ロストンに回復魔法ヒールを。


 (ほら、頑張って。こんな状態のディルガンツなら倒せるよ。)


 それで、どうか、幸せに。




 (相打ちかぁ。)


 まあ、回復魔法ヒールの効果が薄かったから、私の所為でもある。


 でも、まあ、これも。

 綺麗な落ちだと言えるのではないか。


 そう思ったのに。


 また転生したいなんて。


 しかも希望条件がやばい。


 ロストンは知らないからしょうがないけど。

 スタートをどんなに似せても、三年も経てば綻びは大きくなるもの。


 再現なんて出来ない。


 もし、やるとしたら。

 現状に限りなく似ている世界を探して、そこから始めないと。


 つまり、スタート地点を変えないといけない。


 待って待って待って待って。


 いや、流石によ。

 ここで私の軸を三年もずらすなんて。


 すでに私が死んだ世界だって多いはず。

 自身への転生と違い、他人への乗っ取り転生は、リスクもデメリットも大きすぎる。


 これからも長く続ける予定の、転生計画に甚大な影響が出るはず。

 これが原因で、詰む事だってありえる。


 そうしたら、今までの苦労は?

 さっき、なんでトワとサニアとムンタは死んだの?


 だから、これは無理。断るべき。


 それなのに。


 そんな顔をされたら、期待したくなるじゃない。


 私に、新しい世界を見せてくれたのはロストンだから。


 お願いね?


 この選択を後悔する事がないような、素敵な物語を私に見せて。




 ディオルもディルガンツも、魔王としての実力は申し分ない。

 でも、やはり私の中で魔王と言ったら、クーランのお爺ちゃん。


 地竜グランドドラゴンは、お爺ちゃんの得意とするドラゴンフォーム。


 山が動くとはまさに、あれ。

 天へと伸びる、八本の竜頭は、もう、世界観が違う。


 10人の勇者と仲間達が、為す術なく敗れ去ったのも納得だ。


 だから、もし、そんなのを倒せたら、とんでもない事よ。

 大見得を切ったロストンには、是非、倒してもらわないと。


 とはいえ、私のは、全然小さいし、竜頭も二本だけ。


 まあ、それでも。

 ラスボスに相応しい貫禄じゃあないかしら。


 さあ、最後の戦いを始めましょう。




 死ぬかと思った。


 トワは、どの世界でも優秀だったけど、あんな魔法は初めてだ。

 魔王が、魔法の恐怖で取り乱すなんて恥ずかしい。


 ディルガンツに少し感謝。


 二度ほど殴られて、この野郎と思う事で冷静になれたから。

 まあ、殴ってくれたお礼はするけど。


 もう一度、地竜グランドドラゴンを発動。流石に次の発動は無理だ。

 蜃気楼ミラージュからの闇討ちも考えたが、より勝率が高いのはこっちだろう。


 おそらく、トワは同じ魔法を撃てない。魔力残量的に。

 なら、攻略法の無い、地竜グランドドラゴンだろう。


 私は手を抜かない。だからこそ、もし、彼らが勝利できたなら。

 気絶しているロストンの頬を撫でる。


「ほら起きて。私はまだ、満足していないわ。」




 綺麗な夕焼けだった。

 あの、ロストンと手を繋いで帰った日と同じくらい。


 私が思い出に浸っていると、ロストンが起きた。

 私はロストンとお話する。


 (いいわね。まだ、諦めた顔をしていないわ。)


 しかし、逆転はもうなさそうだ。

 トワ達は、じり貧。後は、各個撃破して終わり。


 (一回は撃破したけど、あれはトワが一人でやったようなものだし、私の魔力は残っているから、あれで勝利にしてあげられないわ。私はゾトの魔王なのよ。)


 その上で、ロストン達の勝利を期待したのだけど。流石に無理か。


 (でも、頑張ったと思う。)


 レーグの魔王と和解というのは、勇者レーラスで見た。

 でも、ディルガンツと和解は初めてだ。


 見た事ない魔法だって開発した。


 功績としては、十分じゃないか。


 (…。)


 私は、誰一人として殺す気はない。


 ロストンに話した計画には穴がある。

 地竜グランドドラゴンは、王国まで持たない。


 どころか、バクー王国の途中で魔力切れだ。

 陸路ではなく、海路を行くのも無理。海を渡れない。


 だから私は、脅しじゃなくて、落としどころを。

 この物語のエンディングを考える。


 とりあえず、このまま全員捕まえて。

 一応、バクー王国の国境までは行こうかな。


 そこで、ロストンに勝利のVサインだ。

 それから、楽しかったお礼を言う。トワの首輪も外す。


 で、フラッシュボムだ。お別れの花火。


 私は姿を消す。もう二度と会わないつもり。

 どこかに潜伏して、天力の回復を待って、ヨダーシルにでも行こうかな。


 ロストン達は王国へ戻り、幸せに暮らす。


 まあまあじゃない?ノーマルエンディングってやつ。

 全滅エンドより、ずっといい。


 そんな結末に一人で満足していると、気づいた。


 ロストンのトワ達への応援は、まだ続いている。

 ぼんやりとそれを眺めて、私は彼に近づいた。


「ねえ、ロストン。私は気づいたわ。」




 そこからは、怒涛の展開だった。


 トワとサニアの混合魔法による反撃。


 ディルガンツの復活。


 ムンタの隠し玉。


 ロストンが救出されて。


 勇者と魔王が共闘して。


 ロストンと、トワとサニアの、混合天法。


 色が、どこまでも広がっていく。


 ああ、なんて綺麗な景色。

 私は、これを見る為に旅をしてきた。そう、思えてしまうくらい。


 でも、同時に思い出した事がある。


 私は、景色を見たかったのではなく。

 私が作る景色を、パパに、ママに、ゾトの研究者達に見せたかったのだと。


 私は全力で魔法を使う。

 生き残る為に。夢を繋ぐ為に、足掻く。




 投降はしたくなかった。


 だって、ムンタは私が殺したのよ?トワやサニアだって、私が殺したようなものだし。

 それなのに、甘えるなんて、嫌。


 魔力量的に、バクー王国方向へ逃げれば追いつかれてしまうだろう。


 だから、レーグ半島に潜伏するしかない。

 避難所は、ここにも作ってある。


 フラッシュボムで攪乱し、その隙に逃げ込む。

 魔力回復薬だってある、私は逃げ切れる。


 スッキリ勝たせてあげられないのは申し訳ないと思う。

 でも、私を焚きつけたのは、そっちだ。


 ロストンは、本当に。何度でも見せてくれる。見た事の無い景色を。

 可能性を。


 だから、弱音なんて、もう言わない。

 この窮地を脱し、いつか必ず、ゾトの魔王の使命を果たす。




 (と、思ったんだけどな…。)


 見事だった。完敗だ。


 奇襲を察知し、フラッシュボムの処理までやってのけたサニア。


 私の全力についてくるトワ。


 そして、ロストン。


 消耗が激しかったとはいえ、魔王に魔法勝負で勝つなんて。

 大金星だ。もう、勇者じゃん。


 (…これは、ダメね。)


 死んだ回数には自信がある。

 だから、分かる。私は、死ぬ。


 魔力はすっからかん。

 天力は、どうだろう。転生する分は、足りないかもしれない。


 (…何て顔をしてるのよ。)


 ロストンは泣きそうだ。

 折角、魔王を倒したというのに。


 安心させる為に嘘をついたが、もっと不安な顔になる。

 あ、泣いちゃった。


 (…でも、少し、嬉しいかも。)


 私と別れる事を、悲しんでくれるのだから。


 (やめてよね…。私まで悲しくなるじゃない。)


 もっと、ロストンとお話がしたいとか。

 ましてや、皆と、もっと一緒にいたいだなんて。


 私には、願う資格なんてないんだから。


「ねえロストン。仮によ。」


 言う気なんて、無かった。

 でも、最後だと思ったら、伝えたくなった。


 あの時、幽霊のあなたと出会えた事は、私にとって嬉しい事だった。

 色々あったけど、この旅は、楽しかったの。


 あなたが、魔王を倒した事が、生きていてくれる事が、本当に喜ばしい。




 ねえ、ロストン。


 私はね。


 パパ達を恨んだ事も、笑顔になってほしかった事も本当。


 勇者と魔王の、想いを継ぐという事に憧れたのも本当。


 そんなに綺麗ではない、寧ろ歪んだ色をした、夢の残骸。

 落ちていたそれを、勝手に担いで歩きだしたのは、私の意思。


 そう、私が決めたのよ。ゾトの魔王に成る事を。

 他の生き方は、たくさんあったの。


 共に過ごした仲間達は大好きだし、殺し合った事を間違いと思わない。


 背負った荷物を放り出して、ロストンに駆け寄った事も間違いと思わない。


 節操がないがないように見えるかしら?

 その場のノリで生きているように見えるかしら?


 そうかもしれないわ。

 だって、私の周りには、それだけ魅力的なもので溢れていたのだから。


 全部、本当で本気だった。

 胸を張って言える。


 後悔なんて、ない。


 だからね。

 これでよかったのよ。

次回、第二章の最終回!

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