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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第二章 魔王クリガナンの祝賀

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第78話 リガーナ~研究成果~

~前回までのリガーナ~


転生を繰り返し、勇者と魔王に憧れた。

私だって魔王なのだから。受け継いだものがあるのだから。

私は、ゾトの魔王の使命を果たす為の、旅を始めた。

 それから私は、使命を果たす為に生きた。


 必要なのは天法を使いこなす洗練された技量。その為の知識、情報。


 ロストンと出会ったワイバン大陸の東側にはいかない。

 もう大分詳しいし、沢山情報を得られたから。


 ライダ大陸中を周る。ワイバン大陸の中央や西にも。


 何度も、何度も転生する。


 どこもかしこも物騒で。


 無駄骨と無駄死にが多いけど。


 希望はいつも小さいけれど。


 それでも、私は旅を続けた。




 研究成果。

 天力について。


 魔力量は、その土地その身体の物だから、転生で繰越す事は難しい。

 少なくとも、今の私の技量では、少量が限界。


 しかし、天力量は大半を引き継げる。記憶と共に。

 ひょっとすると魂なんてものと関係しているのかもしれないが不明。


 天力の増やし方は不明。研究中。


 魔力と違い、使えば総貯蓄量が増えて休めば回復する訳ではない。

 いつの間にか増えている、という状態だ。


 意図的に増やせない以上、天力消費の大きい転生は控えたい。

 もとより、好きで死んでいる訳ではないのだが。


 ディオルやガットルは、魔力を天力に換えられたが、私にそれは出来ない。

 彼らは転生が出来ないから、そういう性質の天法使いなのだろう。


 他の属性の天法使い、例えば天力の譲渡が出来るような人物も探しているが、この辺りは全然見つからない。




 転生について。


 あくまでイメージの話だけど。

 私という軸と、縦の軸、横の軸がある。


 横の軸がパラレルワールド、縦の軸が異世界、私の軸が時間だ。

 右と上には行けるけど、左と下にはいけない。

 つまり一度、手放したり、通り過ぎたら、もう戻れない。


 私の時間も一緒。今の私の転生後の年齢は十一歳。

 これは大失敗だ。戻れないなんて思わなかったから。


 両親が死んでいたり、遠く離れた知らない土地で目覚めるなんて事もある。

 可能性を狭めない為にも、私の軸は動かさないほうがいい。


 不幸中の幸いは、世界吟味が必須になり、続けている内に技量が上がった事。

 その世界へ行かずとも、過去や、少し先の未来を覗くなんて事が出来る。


 そして上に手を出す前、つまり異世界へ行く前に気づけた事。


 観光がてら行ってしまったら、二度と戻れず、全て終わっていた可能性がある。

 本当によかった。




 天力の扱いにも慣れてきた頃、パパとママを転生させた。

 研究成果である、強制的に幽霊にする薬の試作品を試して。


 喜んでは貰えなかった。

 まあ当然と言えばそうだ。


 ホールのケーキを頼んで、ショートケーキしか出されなかったのだから。

 やはり完成品でなければならない。


 だから完成品に成る為に、ママに協力にしてもらう事にする。

 頭を割られて殺された腹いせである事は、否定できない。


 私はママに転生し、身体の主導権を賭けての戦いに勝利。

 パパをやる気にさせ、仲間達と共に研究をして、その一つの成果として、魔力精神体という名称も決めた。


 そして、笑いながら炎に消えるという最高に魔王らしい最期。

 …ママは魔王じゃないのだけれど。


 想像よりも得る事の多い人生だったが、後に残るのは罪悪感。

 助けようと思っている相手に、何をしているんだ私は。


 こういう事を。

 大事な誰かを犠牲にする事を繰り返して、パパ達は、ああなったのかもしれない。


 乗っ取り転生が出来るという事は分かったが、使う事はないだろう。




 異世界人について。


 今までに、四人、会った。それぞれ違う異世界だ。

 苦労しつつも、逞しく生きているようだった。帰り方なんて分からないから。


 ただ一人。どうしても帰りたいと言う人がいて。

 私の天法なら、転移が、世界を渡る事が出来る。


 帰せる可能性はあるけれど。

 彼のいた世界が分からない。


 世界の特徴を聞いてみて、それっぽい所は見つけられたけど。

 確証なんてない。


 それどもいいと、彼は言った。可能性に賭けてみると。


 私だって果たせるか分からない使命の為に、途方もない旅を続ける者だ。

 可能性に賭けたいという気持ちは分かるし、転移なんて天法、使った事がないからやってみたかった。研究の為に。


 天法自体は上手く出来たと思う。


 後は転移先が、彼の故郷であっているかを祈るだけ。

 それ以来、彼には会えていない。何度、転生しても。




 気になる噂がある。

 並行世界を跨ぐ噂だ。


 天上の国の人間が、この世界にいる可能性がある。

 監視の為らしい。


 真偽はともかく、私の探し人の一人だ。


 天力、天法に詳しいだろうから、是非聞いてみたい。

 天法使いと同様、一度も会えていないけど。


 会った所で、正体を明かしてくれるとも思えない。


 でも一つ、確かめる術はある。


 天上の国の人が、もしもこの世界で死んだなら。

 魔力精神体となって、天上の国へ戻るはずなのだ。


 天使の伝承や、研究成果から、そうだと言える。


 だからって無差別に人々を殺しまわるとかは、もちろん無い。

 そんな魔王は、本の中だけ。


 私は時間を戻しているのではなく、世界を渡っている。

 個々の世界で、人々は精一杯生きているのだから。




『やってくれる…。』


 今回私は、リハネという名前の女勇者に殺された。


 出身国のゾトに留まった場合は、だいたいあの女に殺されている気がする。


 相性が悪いというか、奴の持っている魔竜殺の炎剣が強力で、ドラゴンフォームが一瞬で壊される。


 なんとかしたいとは思う。

 なんとかしないと、隣国に捕らえさせている両親を家に戻せない。


 魔力精神体で漂いながら攻略法を考える。


 真向勝負で勝てないなら、暗殺。

 しかし奴の仲間に、探知のスペシャリストがいる。


 リハネは、ゾトの勇者。

 そりゃあ、自分の国に魔王を名乗る奴が現れては放っておけないだろう。


 私としては、ゾトの研究者の意思を継いでいるつもりだから、ゾトの魔王を名乗り続けている。看板を背負っているのだ。


 しかし、それで妨害され続け、研究が進まないのはよろしくない。

 私は、頑張っている証明より、実益が、成果がほしいのだ。


 (いっそ魔王は死んだことにして、館を放棄する。

 あ、それだと結局パパ達を戻せないじゃん。)


 いい考えの出ないまま、私は風に流されていく。


 死闘の後なのだ。

 疲れている。考えが、まとまらなくても仕方ない。


 何も考えず、しばらく、ぼーっとして。


 それに気づいた。


 私は常に、『天法の発動を探知する魔法』を使っている。

 天法使い、そして天上の国の人を探す為だ。


 今、それに、何か引っかかった。

 しかし天力は感じない。


『…。』


 心当たりが、ある。


 今の私の状態。魔力精神体。

 魔力ではあるのだが、この状態を維持する仕組みは天法に近い。


 ママの身体で実験していた事を思い出す。


 天法を使わずに、この状態という事は。

 大量の魔力を摂取して、魔物になった人がいる。




 懐かしい顔。

 ちゃんと覚えてる。


 こんな形で、ロストンに出会えるなんて思わなかった。


 向こうは私を知らない。

 大丈夫、私は理解している。


 テンションが高いまま声をかけた。


 ああこの顔だ。よく私の言動に困惑していた。


 話をするのが楽しくて、つい一緒に転生しないか、なんて言ってしまう。

 しかも異世界に。


 そんな事をしたら戻ってこれないのに。


 パラレルワールドっていうより、異世界のほうが通じるかな?って、思ったから。それだけのはず。


 でも、もしかしたら。


 終わりの見えない旅に私は疲れたのかもしれない。

 何もかも捨てて、ロストンと一緒に、異世界に行きたかったのかもしれない。


 もし彼が、一緒に行こうと言ってくれたら。


 でもそれは杞憂。

 断られた。


 大丈夫。これで、いい。


 (でも折角だから、彼が消えるまで、お話でもしようかな?)


 そう思いつつ、彼の視線の先を追ってみた。

 これまた懐かしい。ガットルじゃないか。ディオルも。


 サニアは相変わらず勇者パーティーのようで。


『…!』


 衝撃が走った。

 とある事に思い至って。


 確かめないといけない事が出来て、私はロストンと別れる。

 魔力を消費するが構わない。どうせ魔力は、大した量を持ち越せないし。


『やっぱり…。』


 王国へ向かうトワを見つけた。


 近づいて、会話を盗み聞く。

 間違いなく、トワは今回も勇者パーティー。なんなら勇者だった。


 少し離れて、私は転生を試みる。


 実際はまだしない。

 転生先候補の世界を少し確認したいと思ったからだ。


 あんまり長く世界を覗くと、その分、天力を消費するから、必要な箇所だけざっと見る。


 こんな事があるだろうか。


 十個近くの世界を見たが、どの世界でも、トワとサニアは勇者パーティーの一員で、しかも魔王討伐後、生還している。


 他の仲間は変わったり、死んだりしているのに。


 もちろん、二人はそういう人、なだけの可能性はある。


 でももしも、ちゃんとした理由があるとしたら?

 二人は特別な存在だとしたら?


 例えば、二人は、天上の国の人物なのだとしたら?


『…。』


 本物レーラスの旅の時。

 ディオルは天上の国の話をした。


 その時の二人の様子は、特に変に感じなかった。


 演技かどうかは分からない。

 知らないと言われれば、それまで。


『…。』


 方法があるとすれば、二人を殺して、魔力精神体になるかどうか。


 私は首を振る。

 流石にそんな薄い理由で二人を殺したくない。


 この話はここでお終い。


 あの女勇者の対策や、次の世界で何をするかを考えるべきだ。


 (やはり何かあるとすれば、城塞都市ヨダーシル。

 それか、もっと北西のフレン王国。)


 今までの事を思い出して、天上の国の住民の手がかりを探す。


 そうしている内に。

 ふと、別れたロストンを思い出す。


 (まだ消えずにいるだろうか。)


 私は彼の元へ行ってみる事に。


 港町まで戻る。きっとライダ大陸に行ったはず。

 海を越え、サーチの範囲を広げたらそれっぽいのを発見。


 そして。

 消える前の彼と、その叫びを聞いた。


 (トワとサニアを、殺す?)


 それは、私も考えた事。でも、私一人の都合では出来ないと諦めた事。


 (でも、ロストンも、それを望んでいる。)


 久しぶりだった。他人と、同じ目的を持てるなんて。


 しかも、あのロストンと。


 (ならもうこれは、あれだ。)


 私は、笑った。


 トワとサニアは、天上の国とは一切関係なく、本当にただただ悪い事をする事になるかもしれないけれど。


 (私は、ロストンと旅がしたい。)


 私の疑念を解消しつつ、ロストンが大活躍する物語。

 その始まりだ。

【第47話 パラレルワールド~ロストン~】に、リガーナの回想が追いついた!

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