表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第二章 魔王クリガナンの祝賀

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/166

第77話 リガーナ~勇者と魔王~

~前回までのリガーナ~


魔王となった私は、殺されて、転生するを繰り返す。

そんな生活が嫌になり、逃げだした先で、ロストンと出会う。

ロストンは死んだ。ついでに私も死んだ。今度は、彼を助けたい。

 私は初めて転生したいと思った。


 初めて自分の意思で転生した。


 今の私には目的がある。

 私がロストンを助けるのだ。


 家を出る前に手紙を書く。

 今までの感謝と謝罪。両親宛てだ。


 初めて転生能力に感謝したし、あなた達の期待には応えられないから。


 前世、孤児院での生活はちゃんと覚えている。

 盗んだり、密航なんて事はしない。


 しなくてもすむ知恵がある。

 ロストンが死ぬまで、後、四年。


 私は一歩を踏み出した。




『おかしい…。』


 ロストンがいない。


 三年で、ロストンがいた町までやってきた。

 そこから一年かけて、町中、それこそ近隣も含めて探したのに。


 転生直前、ぼんやりだけど、世界を選ぶようなイメージがあった。

 二つか、三つあって、選んだ世界には、確かにロストンがいる気がしたのに。


 (この三年で、何かがあって、ロストンはいなくなった?)


 分からない。

 分かるのはロストンがいたお店はなくて、町の人は誰もロストンという名前を知らなかったという事。


 (世界のどこかにはいるけど、この町には元からいない?)


 世界の仕組みが、自分の天法がよく分からない。


 (世界中を周ってロストンを探す?確かにロストンには会いたい。

 けど、別の町に生まれ、別の人生を歩む彼は、私が助けたかったロストンなの?)


 しかも、こうなった原因は不明なのだ。

 これだとまた転生しても、ロストンに会える保障がない。


 この後、どうしようかと、私は途方にくれる。


 その時だ。


 妙な気配を感じた。

 何だか分からないけど、懐かしいような?


 しかも町の中から感じる。

 魔力と似ているが、違う…。


『天力だ!』


 思わず叫んで、周りの人を驚かせてしまう。


 一度そうだと思ったら、そうとしか思えない。

 自分以外に、扱える人がいるなんて知らなかった。


 興奮のまま、その人物に近づいて、正体が魔王討伐の旅の途中の勇者だと判明した。


 もう私の警戒心はMAXだ。


 私は魔王と呼ばれているし、しかも、ロストンの仇ではないか。


 仲間が風邪を引いたらしく、何日か滞在するそうで。

 私は勇者の情報を集める事にした。


 天力の事が気になったし、場合によっては仇を討ってやるつもりだ。


 勇者の名前は、ガットル。

 十七歳で男性。得意魔法は黒炎ブラックファイアー。間違いなく天力を使っている。


 仲間は三人。

 アレストワ、サニア、ムンタ。


 ちなみに風邪を引いたのはムンタだ。


 評判は、中々いい。

 魔物を積極的に退治してくれるみたいだし、町のお願いも断らないらしい。


 結構いいように使われるお人よし。

 そう判断した私は、更なる情報を求め、接触する。


 結果、私は勇者パーティーの一員となった。

 いや、もちろん仲間になる気なんてなかった。


 天力、天法の話をしたら、めちゃくちゃ興味を持たれて。

 凄い凄いと散々言われ、ちょっと気分がよくなったと言うか。


 何一つほしい情報は増えなかったが、近くで観察するのは手だと思った。


 ガットルの天法は、私の天法とは異なる。

 魔法に、火や水の属性があるように、天法にも、属性があるのかもしれない。


 ロストンに会えず、やる事もない。

 だから今回は、勇者達と行く。


 私以外の魔王に、興味がない訳じゃないし。




 それは、冒険と呼ぶにふさわしい旅。


 私は人生経験豊富な女。

 当然魔法にも自信がある。


 パパ達にも教わった。孤児院でライバル達と競い合った。

 魔力量は引き継げなくとも、経験や技術は覚えてる。


 しかも前世で魔物に殺された経験を活かし、この四年間も鍛錬を続けた。

 ロストンも、護りたかった訳だし。


 でもそんなもの、本物には届かない。


 勇者パーティーは、覚悟が違った。

 剣戟に、魔法の応酬に、命の奪い合いに。


 私は圧倒されたのだ。

 それに私は、なめていた。町のお願いを。


 お願いって、なんか可愛いイメージがあった。

 小さい子供が大人にせがむような感じ。


 実際は、数十人規模の盗賊団の壊滅に、ドラゴン退治、暴走した古の魔導超兵器の破壊とかだ。


 『私達の為に、死んでくれ!』を容赦なく言ってくる。


 私とムンタが今回はダメだ、諦めようと説得しても、何だかんだ引き受けて、どうにかこうにか何とかする。


 死線をなんどもくぐり抜け、私達は仲良くなった。

 だから聞いてみた。


 どうして、勇者なんてやっているのかと。

 ガットルは答えてくれた。


 五歳の時から天法が使えた自分は、特別な存在だと信じていた。

 鍛錬を欠かさず続けていたが、ある日、本物の勇者と出会った。


 一つ年上の少年で、名前はレーラス。

 ブイブイ言わせていたガットルは、上下関係をはっきりさせる為、レーラスに決闘を挑んだらしい。


 結果は敗北。


 レーラスの子分となったガットルは、彼と共に行動し、だんだんとその魅力に惹かれていく。


 何より、レーラスがキラキラした目で語ってくる、彼の父親の冒険譚が、歴代の勇者達の活躍が、ガットルも大好きだった。


 レーラスが事故で亡くなった後、ガットルは勇者になった。


 昔からの友達であるムンタと、自分と同じようにレーラスに惹かれていた、サニアとトワ。

 三人と一緒に魔王討伐の旅へ。


 レーラスと、歴代勇者達の想いを継いで。


 町のお願いを断らないのは、それがガットルの思う勇者像だから。

 きっとレーラスも、そういう勇者が好きだったはずだから。


 ひねくれている私は、ガットルに続けて聞く。


『前に倒した、いえ、斬り殺した盗賊がいたじゃない?

 彼にも事情があったはず、やむを得ない事情があって、盗賊になったはず。

 そういう人は、助けないの?勇者様は?』

『…。』


『子供がいたかもしれないわ。その子の為に、どうしてもお金が必要で。

 だから、だからかもしれないわ。』

『…。』


『ねえ、ガットル、答えてよ?』

『助けてあげたいなあ、そういう人は。』


『だったら…。』

『でも、その人を助けられるのは、勇者じゃないよ。』


『え…?』

『リガーナの言う通り、敵にも事情がある。勇者の敵になるほどの。

 絶対に退けないし、止められない。俺達だってそうだから。』


『…。』

『対峙したという事は、もう殺るか、殺られるか。

 助ける、助けないの段階は過ぎた後だよ。』


『でも、相手を昏倒させるだけとか、命を奪わなくても…。』


『もちろん、余裕があるなら、構わない。

 でも、命を奪わないのと、助けるのはまた別だよ。

 相手は死に物狂いの盗賊。昏倒させて放置は論外。

 起きて、縛った縄とかを何とかしたら、また別の人を襲うだろうし。

 同業者に殺されるかもしれない。

 しっかり町まで連れていって、然るべき所に引き渡す。

 その後に、助ける為の行動が必要になる。

 そこまでの余裕は、俺達にはない。

 そしてあの時は、町に戻る余裕もなかった。

 急いで助けないといけない人がいた。』


『…。』

『だから理想は、盗賊になる前。隣人や家族が、助けてくれる事。

 でも、それだって難しい。

 不安や問題が多すぎて、余裕がない人で溢れている。

 その問題の一つが魔物。そして、魔王。

 だから勇者は、魔王を倒すんだ。』


『…。』

『あ、いや、何かカッコつけたけど、つまり勇者って万能じゃないんだ。

 やってる事は退治屋と一緒。魔王を倒す退治屋が勇者ってだけで。

 いやいや、退治屋の人を大した事ないって言っているんじゃなくて…。』


 泣いている私に気づいたガットルが、慌てている。


 どうしてロストンは、前世で殺されたのか、知りたかった。

 ガットルがやったかは分からないけど、勇者の意見は参考になると思ったから。


 ロストンを殺したのは勇者。

 だから、ロストンが死んだのは勇者の所為だと思ってた。


 でも、今の私は、ガットルの意見がもっともだと思ってしまう。

 詳しい状況は知らないが、命のやりとりが始まったら、そりゃあ余裕なんてない。


 その道を、歩ませてはいけないんだ。

 助けられるのは、悪事を行う前。


 つまり、私なら止められたかもしれない。

 玩具やお菓子を我慢して、もっと早く向かっていれば。


 ロストンが死んだのは、私の所為ではないか。


 異変に気付いたトワがきて、ガットルが悪者になってしまったが、今の私にどうこう出来る余裕はない。

 謝るのは後日にして、その日はそのままサニアに甘えた。




『俺達は勇者パーティーで、一刻も早く魔王を倒した方がいい。

 でも、困っている人を助けたいから、結構寄り道してると思う。

 そう、俺の我儘なんだ。

 だからリガーナも、我儘言ったっていい。』


 あれからガットルに変な気の遣われ方をされている。


 気にしてないと言っているのに。

 寧ろ悪いのはこちらなのに。


 でもそこが、ガットルのいい所でもあるのだ。


 私は好きだ。

 他の三人の事も。


 だから、魔王を倒して、皆と一緒に帰りたいと、思ってた。

 思ってたのに。


『うっぐ、ぎっく、ひっぎ…。』

『うう…。』


 眼下で、サニアとトワが泣いている。


 魔王ディルガンツは強かった。

 真っ先に私が殺されて、ムンタも殺られた。


 最後はガットルが、相打ちの形で終わらせた。


 私は幽霊になって、一部始終見守った。


 幽霊にはたまになる。

 条件は分からない。


 私の他に幽霊はいない。

 三人くらいいても、おかしくないのに。


 二人と一緒に私も泣いた。


 涙は出てないだろうけど。

 結局は二人を残して、私は消えていく。


 どうか二人が、立ち直って、また歩き出せますように。




 気になる事を言っていた。

 誰が?魔王が。


 ガットルは天力の事を全く知らなかった。

 でも魔王は知ってそうだったのだ。


 ロストンも、ガットルも気になるが、やはりここは天力だ。


 私は更に手際よく動き、二年で、魔王の居城に辿り着いく。


 そこには知らない男がいた。

 ディオルと言うらしい。


 そして私は驚愕する。

 魔王ディルガンツが死んでいた。


 今はこのディオルが魔王らしい。

 ディルガンツに色々聞く計画は、あっけなく瓦解した。


 絶望していた私を、ディオルが慰めてくれる。

 冷たそうに見えたが、良い人なのかもしれない。


 自分がゾトの魔王クリガナンだと名乗ると、なんとディオルは私の事を知っていた。


 天法についても詳しい。

 なんなら、使えるそうだ。


 私はディオルの弟子になった。

 私の想像以上の事を教えてくれる。


 天上の国。天法の使い方。魔法の使い方。四体の魔王。レーグの魔王の事。ゾトの魔王の事。


 気付けば二年、経っていた。


 なぜ気づいたか?勇者が来たから。


 トワとサニアと、あと知らない二人の女性。まさかの女子パ。


 トワが勇者で、レーラスを名乗っている事も、ガットルやムンタがいない事も、確かに気にはなったが。


 もうこれくらいだと驚かない。

 それだけ、意味のある二年だった。


 恩に報いる為にも、ディオルの弟子として勇者達と戦う。


 トワやサニアと戦いたくはない。

 まだあの泣き顔は覚えている。


 でもそれでも。

 対峙したという事は、もう殺るか、殺られるか。


 全力で戦って。

 私達は負けた。


 私もディオルも、勇者パーティーの名前の知らない二人も死んだ。

 今度もトワとサニアだけ生き残り、また二人を泣かせてしまった。




 ディオルと過ごした二年間で、思った事がある。


 レーグの魔王の居城には地下があって、そこに研究資料が眠っていた。

 だからもしかしたら、ゾトの魔王の居城。というか研究所には、地下があるのではないか。


 パパ達は何も知らなさすぎる。


 何百年も続く中、途中で伝達が途絶える事があったのだろう。


 調べると、昔の研究者が住んでいた館を見つけた。

 さっそく侵入して家探しだ。


 魔法のレベルがかなり上達した私にとって、それは造作もない事で。

 予想通りの地下室を見つける事に成功する。


 パパ達に教えようとも思ったが、やめた。

 彼らは研究を続けたいのではなく、結果がほしいのだ。


 沢山の資料がある。

 でもディオルの元で学んだ私は、動じない。


 取捨選択をしていくと、私に必要な物は、ちょっと大きめな本、三冊だ。


 (なら別に、こんな所で読まなくていいか。)


 私は、ロストンやガットルや、ディオル、トワ、サニア、ムンタに会いに行く。


 今度は誰がいて、誰がいないのか。

 そんな事を楽しむ余裕まである。




 その私も、これには驚いた。

 レーラスがいる。本物の。男の子の。


 旅に出るはずが、出られない人。


 まだ二回しか経験していないのだけど、なんとなく、そういう星の下の人かと思っていた。


 初めて見た彼は、中々爽やかな好青年。

 ちゃんと勇者をやれているのが、感慨深い。


 パーティーは、レーラス、トワ、サニア、ディオル。


 (ん?ディオル?)


 魔王では?と思ったが、私が最初に魔王に挑んだ時、ディオルは魔王ではなかったから、別におかしくはない。


 天法あたりの話で、また仲間に入れてもらえる。

 ガットルがいなくて不安だったが、ディオルが興味を持ってくれた。


 ちなみに、今回もロストンには会えなかった。


 そして今回の旅の、私の感想。

 恐ろしく順調。


 やってる事は、ガットルの時とほぼ一緒なのに。

 ディオルもいるけど、レーラスが怖いくらい強い。


 レアキャラなだけある。


 旅に中々出れないけど、出れたら最強みたいな?

 強すぎるから、今まで神様が制限をかけていたのかも。


 まあお陰で本も読み進められるし、分からない所はディオルに聞けるから、個人的には助かるけども。


 (大丈夫、ガットルはよくやってたよ。レーラスがおかしいだけだから。)


 初めて私が出会った勇者様に同情する。




 レーラスの伝説は続く。


『ディオルってさ。魔王だろ、実は。』

『…。実はそうなんだ。よく分かったな。』


 バクー王国の宿屋の一室でそんな会話が炸裂した。


 冗談だと思っていたサニアとトワも、会話が続き、何だか本当っぽいと感じてきて、青ざめていく。


 更に私達三人を困惑させたのは、そのまま旅が続いた事。


 そして魔王城にて、レーラスとディオルの一騎打ちが始まった事。


 最後にレーラスが勝利して、ディオルと和解がなされた事。


 よく分からないうちに、勇者パーティーは、全員生存で魔王討伐を終えていた。


 冗談みたいな笑い話。

 こんなに笑えたのは、初めてかもしれない。


 打ち上げの後、私は皆と別れた。


 実家に帰った。

 やりたい事が出来たから。


 世界を渡る力を得た後、訳も分からず殺された。


 なんとかしようと、もがいてみたけど、どうにもする事が出来なくて。


 逃げ出した先でロストンと出会い、彼を救うと心に決めた。


 結局それは出来なくて、代わりに勇者と魔王を知った。


 彼らの想いと、受け継がれてきた願いと歴史の事を。


 全部抱えて戦った勇者と魔王はカッコ良かった。憧れた。


 私も、そうなりたいと思った。

 私だって魔王だから。


 それに、思った事もある。


 ロストンは優しい時と、悪事を働く時があった。

 サニアも仲間の時と、敵の時は当然違う。

 ディオルの語るディルガンツは、誰だそいつ状態で。

 トワも、勇者ガットルと勇者レーラスの時で別人。


 だからパパ達も。


 二週目か三週目の私に、パパも根は優しい人なんだから我慢しろ、なんて言う奴がいたら、そいつの首をしめていた。


 でも今の私は。

 遠い昔の楽しかった思い出は、きっと嘘じゃないはずだと信じられる。


 受け継いだ夢の重圧に苦しんで、研究成果の失敗を認めたくないだけなんだ。


 (今は無理でも、いつか、私なら助けられる。

 失敗なんかしていない事を証明し、そして、ゾトの研究者達の想いも叶えたい。

 それがきっと、ゾトの魔王の使命。)


 一年ぐらいで戦争が起きた。


 知らぬ存ぜぬのスタンスだったら、いつのまにか巻き込まれた。

 魔王の存在はデカいらしい。


 追い詰められて、魔力の尽きた私は、焼け落ちる館の中で、先人達の記録を握りしめながら、死んだ。

リガーナに目的が出来て。

それの達成を目指す中で、魔王の使命に気づいたという話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ