第74話 魔王クリガナン~決着~
~前回までのロストン~
トワのコズミックヘブンブラスターが地竜を粉砕した。
しかし、リガーナの奇襲で俺と魔王は捕まってしまう。地竜も復活し、ムンタも捕まった。
囚われた俺は、トワとサニアを力の限り応援する。まだ、諦めたくないから。
「!?」
リガーナが勢いよく振り返る。
感じたのだろう。魔力の高まりを。
俺も視認できた。ちょっと小高い山の上、二人が見える。
きっと手を繋いでいるのだろう。
「真向勝負なんて、随分強気じゃない!
あの魔法が、もう使えないのは分かってる!
尋常じゃない魔力消費だったもの!
それでも勝負を挑むなんて素敵よ!
うっかり殺しちゃったらごめんなさいね!」
頭と尻尾が二人に狙いをつける。
「ディルガンツ!」
「!?」
ハッタリは成功し、リガーナのタイミングがずれる。
前世の最後、倒したはずの魔王に殺られた記憶は残っているから。
「「炎吹雪!!」」
荒れ狂う灼熱の猛吹雪。
火と水と風の混合魔法。
(相反属性を交えた三種混合。使えるようになってるじゃないか。)
首輪に苦しめられてきた、だけじゃない。
誘爆に注意しながらも、解析をつづけた勇気の成果。
首輪の効果は消せなくとも、仕組みは、ものに出来たのだ。
「この!」
悪態をつきながら、リガーナが防御に入る。
頭と尻尾が魔法を放つが、全部を防ぎきれない。
余波だけで、めちゃくちゃ熱いし、寒いし、痛い。
しっかりダメージは入っている。
さらに爆音、足元が揺れる。
竜の腹に穴が空く。勢いよく吹きだすのは真っ赤な炎。
ハッタリがハッタリじゃなくなった、魔王はしぶとい!
驚愕しているリガーナの隣。
べ、っとムンタが口から何かを吐き出した。
(意識を取り戻していた?そして気を伺っていた?いや、それよりも。)
何か口に入れていたのか?
「リガーナ君。身体検査は、もっとしっかりやったほうがいい。」
突風が巻き起こる。
(トワの指か!)
義手の基節部あたり。風を仕込んだやつだ。
俺を拘束している柱と鎖が、突風で砕ける。
炎吹雪でダメージを受けていたから。
色んな事が立て続けにおきて、ワタワタしていたリガーナと目が合う。
その瞬間、彼女の中で第一優先が決まったようで。
狙いを俺にして、笑顔で、手を伸ばし、そして、彼女はムンタにタックルされた。
「行くんだ!ロストン君!」
突風に吹き飛ばされる。俺は宙を舞う。
「いや、俺、腕輪が!」
魔力抑制装置がついたまま。このままでは魔法が使えない。
落下死。でもそれは杞憂だ。
「ロストン、まだ、頑張ってもらうよ!」
空中にいたトワにキャッチされ、そのまま加速。
サニアの所まで行くのだろう。
「待ってくれ、ムンタは!?」
「魔王がいるから大丈夫。」
眼下では、リガーナと対峙する、ムンタと魔王が見えた。
(勇者と魔王の共闘!熱い展開じゃないか。)
安心して離れる。
サニアの所まで辿り着くと、彼女は腕輪を真っ二つにして外してくれた。
「ロストンの応援、凄くよかった。ありがとう。
またお願いしてもいいかな?トワなら出来るって応援して。
魔法の真髄を見せてくれたトワなら絶対できるって。」
「トワ!頑張れ!」
「状況も分からず、応援するんじゃないよ。
頑張れない時に応援されるのは、苦痛だよ?」
「分かってない訳じゃない。」
サニアとトワをしっかり見て、続ける。
「炎吹雪はかなり良かった。
でも、もう少し威力がほしい。
そんな中で、俺をわざわざ救出したという事は、更なる火力アップ。
つまり、光天法と闇天法だ。
でもそんな種類の混合魔法は想像できない。
トワが尻込みするのも分かる。
だから応援する。
頑張れないなら、サニアが応援しようなんて言わない。
俺だって知っている。トワはカッコイイ奴だ。
リガーナにも、魔法の失敗にも、恐れたりしない!」
目をパチパチさせた後、トワはゆっくり息をはく。
「分かってるなら、いいよ。」
そっぽを向きながら、左手を出してくる。
その手を掴む。
「もちろん、協力するからね。」
サニアが右手を出してきた。
その手を掴む。
「魔力なんて全部くれてやる。好きなだけ持ってってくれ。」
二人は頷いて、手を前に突き出した。
トワは義手を、サニアは左手を。
魔力が動く。大気がざわめく気配がする。
ワクワクする。
コズミックヘブンブラスターは、一つの道を極めたような美しさがあった。
今から見るのは、別のベクトルのものだろう。
例えるなら、そう、新たな道を切り開く力強さだ。
(いけ、トワ、頑張れ!)
声には出さない。集中力を乱したくないから。
でもきっと思いは伝わっているはずだ。
静かに、トワが息を吸った。
「カオスフレイムブリザード!」
夕陽の輝きをかき消して。
色が、放たれた。
火、水、風、光、闇の五種混合天法。
赤く、青く、白く、黒く。
それとは別に、竜から赤い線が離れていく。
ムンタを抱えた魔王だ。
色は、竜の頭と尻尾を飲み込んで、そのまま身体全体を飲み込んで。
通り過ぎた後、ゆっくりと竜が崩れていく。
地竜、二度目の撃破だ。
「リガーナは!?」
これで灰になるような奴ではない。
きっとまた奇襲してくるはずだ。
「見つけた!」
サニアが飛び出す。
山を駆け下り、途中で火剣を振りぬいた。
何もない所で、その剣は止まる。
「よく、分かったわね?」
剣と斧がぶつかり合う体勢で、リガーナが姿を現した。
「地面に落ちた血が、隠せてないよ?」
リガーナは、ボロボロ。
にやりと笑うその顔は、泥まみれだ。
服は破けていて、覗く魔装具は、ネックレスと腕輪が二つ、壊れている。
腕からは今も血が流れている、つまり回復魔法の効きが悪い。
魔力の回収が追いついていない。
ドラゴンフォームも、遠距離攻撃も、もはや、ない。
(俺達は、リガーナを追い詰めている!)
蜃気楼からの奇襲が、逆転の一手。
しかもそれは、サニアに潰された。
「リガーナ!」
このチャンスを逃せない。
リガーナを捕まえる為、石鎖を発動する。
しかし、彼女の方が速い。
鎖が巻き付くより先に彼女は浮いた。
石で、この場から離れる気だ。
しかも、フラッシュボムというお土産まで置いて。
サニアはそれを、爆発前に蹴り飛ばす。
「二人とも!お願い!」
その叫びと共に、俺を抱えたトワが飛ぶ。
爆発音を聞きながら、リガーナの超高速の石を、トワの超高速の風歩で追う。
俺の予想は正しかった。
二人とも、何だかんだで、俺を気遣ってくれていたのだ。
そんな余裕のない今の二人は、こんなにも速いのだから。
それこそ、魔王の噴出炎並みだ。
リガーナが森の中へ逃げる。
よく石で、細かい動きが出来るなと感心してしまう。
当然トワは追いかける。
激しいデッドヒートは続く。
「9、8、」
トワが何か言い出した。
「6、5、」
カウントダウンだ。
これは、きっと!
「2!1!」
トワが俺を放り投げた。
(大丈夫、準備は出来てる。)
あんな大魔法を何発も撃ったんだ。
寧ろ魔力がよく持った。
浮遊感の中、トワを見る。
失速しながらも、サムズアップ。
(全く、最後までカッコイイ奴だ。)
俺もサムズアップを返し、そして着けていた腕輪を使う。
四つのマジックストック。
一つは黒炎を入れ、サニアに。
一つは黒炎を入れ、魔王に。
一つは光射を入れ、ムンタに、その後トワへ、更にムンタに。
そして最後の一つは、今、俺が着けているこれは、魔王の、噴出炎。
最初はサニアが持っていた。誤って落ちた時の保険に。
『二人とも!お願い!』の時に、投げ渡されたものだ。
決闘の時、リガーナに石をぶつけたり、投擲のスキルは高いんだよな。
遠距離魔法は使えないけど。
「!?」
トワが散々追い回した。残りの魔力が尽きるまで。
リガーナの残り魔力は僅か。もう、最初のスピードはない。
だからこれで、追いつける!
俺は、細かい動きなんて出来ないから真っすぐ進む。
目の前の木々を粉砕しながら。
眼帯が、何かに引っかかって取れた。
そして、リガーナは目の前だ。
「ロストン!!」
リガーナが吠える。
俺を撃墜する為、土魔法の斧を振りかぶる。
躱せない。躱す気はない。
「リガーナ!」
振り絞る。魔力を。
込める。両手に。
振り下ろされる斧に合わせて、黒炎を放った。
黒炎は、斧を、そしてリガーナを包む。
リガーナの両目が開かれた。
驚いたのだろう?
俺が、思ったより強くて。
もしくは、俺が抱きついたからかもしれないが。
石鎖で俺ごとリガーナを拘束する。
消火の為でもあるし、もう、逃がすつもりはないから。
リガーナの石も、腕輪の噴出炎の効果も消える。
俺達は、そのまま落下した。
次回。
この旅は、この物語は、何の為のものだったのかが語られる。
…かもしれません。




