表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第二章 魔王クリガナンの祝賀

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/166

第69話 魔王クリガナン~仲間達~

~前回までのロストン~


13代目勇者パーティーは、魔王と相打ちとなり、全滅した。

再び幽霊となった俺は、リガーナと話をする。

そして思い出した。リガーナにどれほど感謝していたかを。


だから今度こそ、彼女の為に生きる。

 目を覚ました。


 日付と時間を確認する。

 今日はトワの手術の日。その朝。


「よし。」


 気合を入れて起き上がり、訓練に出かけようとしているムンタを引き止めた。



 

 目的の確認をする。


 俺はリガーナと共にありたい。

 彼女にも、そう思ってもらいたい。


 彼女は魔王で、傍にいるには力がいる。

 その力が俺にあると、彼女を納得させる必要がある。


 つまり戦って、彼女を倒す。


 命を絶つのが目的ではないから、拘束する。


 転生できる、できないは問題ではない。

 俺は勇者パーティー五人全員で生き残りたい。今度こそ。


 その為に、皆の協力が必要だ。共にリガーナと戦ってもらいたい。


 話をして、説得する。

 何を何処まで話すべきか。


 心情として、全てを話してしまいたい気持ちはある。 


 転生している事も、今世、いやもう前世か。

 前世でトワとサニアを殺した事も。


 事情を話せば、サニアは、許してくれそうだ。


 でも、許されてはいけないし、甘えてもいけない。


 謝罪しなければならない相手は、前世のサニアとトワだ。

 もう会う事は出来ない二人、だからずっと抱えていく俺の罪。


 だから、伏せる。転生関連は言わない。


 前世でトワが言ってくれた事と、その謝罪。


 今の俺の思いを伝える事がスタートだ。




 手術に向かう前、皆を部屋に集めて話をする。


「まとめると、君はリガーナに脅されて僕らを殺そうと企んでいた。

 弱点を探る為、一緒に旅をしていたら、僕らの事が大好きになって、殺したくなくなった。

 でも、リガーナの事も大好きだから彼女も殺したくない。

 皆で彼女をボコボコにして、考えを変えさせよう。

 そうゆう事だね?」


「申し訳ございませんでした。」


 所々引っかかる所はあるが、大体あってる。

 俺は、床につきそうなほど頭を下げた。正座して、手も揃えている。


「そして、どうか協力して下さい。」

「嫌だね。」


 トワは即答した。


 前世のトワの様子から、上手くいくと思っていた俺はショックを受ける。


 (リガーナは自信満々だったが、やはり前世とは違うのか?)


 トワの右腕は無いし、サニアのベルトは太いから、大体一緒だとは思うのだが。


「自己中がすぎるんじゃないかな?

 謝罪とお願いを一緒にするものじゃないよ。

 焦っているのは分かるけど、心証はよくないね。」


 トワは不機嫌オーラを隠そうとしない。


「そもそもリガーナの目的はなんだい?

 なぜ僕らを殺したいの?」

「それは…。」


 分からない。何らかの事情があるのだろうけど、具体的には。


 だから適当なストーリーを言いそうになる。

 王国の図書館でサニアにしたように、魔王の別荘で魔王にしたように。


 でも、もう嘘はつきたくない。

 本当の意味で仲間になりたいから。誠実でありたい。


 言い淀んでいるとトワが続ける。


「ご立派な理由があるかもしれない。

 僕は清廉潔白とはほど遠い。悪行もしたし、恨まれてもいると思う。

 だから文句はないよ。

 命を狙われても、ボコボコに殴られて、爆弾を着けられて、連れまわされてもね。

 だけど、黙ってやられてやる訳ないだろ。

 素直に受け入れる事も、やられっぱなしも嫌だ。

 僕はリガーナが嫌いだよ。

 皆で戦うのはいい。でも、助ける気はないね。」


「…。」


 それは、そうだ。


 浮かれていた。いや、甘えていた。トワに。


 何だかんだで、俺につきあってくれるトワの優しさに頼りきりで、あいつの気持ちを考えていなかった。


「だいたいあのリガーナが、ボコボコにされたぐらいで改心するとは思えないね。

 人を殴る時の、あの笑顔を忘れたのかい?

 あれは、本物だよ。

 人が苦しむ様を眺めるのが大好きなんだ。

 制御なんて出来ない。生きている限り、害し続ける。

 あんなのが好きだなんて、ロストンも趣味が、もが!」


 トワの口が塞がれる。

 サニアがトワの頭を、自分の胸にうずめるように抱き寄せた。


「私はロストンに協力したい。

 私にとってもこの旅は、貴重な経験だったし、皆とも仲良くなれたと思っている。

 だから最後に殺し合いなんてやりたくない。

 もちろん、リガーナはやりすぎる時がある。

 トワの首輪とか、絶対にダメ。

 だからちゃんと教えないと、ダメな事を。

 あの子はまだ、子供だから。

 私達で、しっかり教育しましょう。」


 最後の方、トワよりも怖い雰囲気だったが、サニアが賛成してくれて嬉しい。


「俺は…。」


 ムンタが口を開く。


「リガーナ君の行いを聞いた時、なんて恐ろしい子なんだと恐怖した。

 しかし、彼女に助けられた事も覚えている。

 殺したいかどうかなら、当然、殺したくはない。

 必要なら戦う事に躊躇いはない。

 その後で、もし可能なら話し合いをしたいと考える。

 だからロストン君、俺も君に協力しよう。」


 マジュイメの総帥も信じたムンタなら、そう言ってくれると思っていた。


 三対一。

 これでトワは拒否できない。


 トワが戦闘に参加しないと言うのであれば、二人はその意思を尊重するだろう。

 しかし、戦いで俺が死んだらトワも死ぬ。一緒に戦うしかない。


 トワは戦う事には賛成で、生け捕りに反対した。

 きっとトワは気づいている。リガーナの攻略法に。


 奇襲。不意打ちの一撃必殺。


 前世で魔王ディルガンツが、リガーナを倒したのはこれだ。

 その前の、ムンタのキックも躱せずに当たっている。


 まともに戦っても勝てるか分からないが、暗殺は有効。

 であれば、トワは確実な勝利を手にしたかったのだろう。


 そうすれば、無事に四人は帰れるから。


 (すまないトワ。俺は五人で帰りたいんだ。)


 サニアが手を放し、トワが開放される。


「…酷いねサニア。物理的に言葉を遮るなんて、横暴だよ。」


「意見ならちゃんと聞くけど、あれはただの愚痴だし。

 八つ当たりっぽかったしね。

 そういうのは、後でちゃんと聞くから安心してね。」

「…。」


 トワが俺を見る。


「僕はロストンが嘘を言っているとは思わない。

 けど、ロストンを信じきるのは早いと思う。

 劣勢になったらリガーナ側に寝返る事だってありえると思うよ。

 リガーナの事が大好きなんだから。

 ロストンは、どうやって僕達を信じさせるんだい?」


「リガーナにとって俺の命は特別じゃない。

 だから寝返りはリガーナが認めない。」


 彼女にとって全ての命は、世界そのものが、やり直し可能な物であり、きっと、作り物のような、芝居を見ているような気分なのでと思う。


 飽きているのかもしれない。

 だから目新しいものをみたら、あんな子供みたいな態度になる。


 そんな彼女の特別になりたい。


「俺はトワ達の事も大好きなんだ。だから裏切らない。

 また五人で、酒が飲みたい。」


「それはいいわ。ロストンの奢り?」


「あなたに借金してもよければ。

 というか、サニアは飲めるのか?」


「スーフリンでも飲んだから、大丈夫よ。

 この戦いが終わったら、酔っ払うまで飲んでみたい。そんな気分。」


 サニアが笑って、ムンタが頷いてくれる。


 トワは、

「ボコボコにした後、話し合いをして、あいつの態度を見て、処遇を決めるって事で納得しておくよ。」


 そっぽを向きながら、納得してくれた。

 



 話は続く。


「ロストン君、本当なのか?

 魔王が君の命を狙っていて、しかもこの町にいるというのは。

 …正直リガーナ君の件より気になるぞ。」


 ムンタは勇者で、勇者パーティーの目的は魔王討伐。

 当然の反応だろう。


 次の俺の言葉は言いづらい。が、話す。話さないといけない。


「レーグの魔王とは停戦したいと考えている。可能ならば、共闘したい。」

「な!?…ん…。」


「レーグの魔王よりリガーナのほうが強いと、ロストンはそう思うんだ?」


 驚愕のムンタと、息を飲むサニアと、質問してくるトワ。


「真向勝負をしたらリガーナだと思う。

 ルール無用の命の奪い合いなら、魔王だとは思うけど。」


「…リガーナは寝込みを襲われるのに弱そうだからね。」


「いや、二人共、割り込ませてもらってすまない。

 ロストン君、君は魔王と交渉する気なのか?」


「ああ。一応、見込みはある。」

「…魔王は、人語を話せるのか?」


 (あ。)


 気づく。

 王国に伝わる魔王の姿は、ドラゴンだった気がする。


「魔王は、魔力の高い人間の事らしくて。」


 俺はストーンを使う。

 前世の記憶を頼りに魔王の土人形を作る。


 リガーナほど上手くできないが、旅の道中、ずっと練習してきたのだ。


 その成果もあり、なかなかよく出来たと思う。

 およそ十分の一スケールの土製魔王人形の誕生だ。


「レーグの魔王は、こんな見た目だ。」


 三人とも、土人形をまじまじと見ている。

 結構な、沈黙が流れる。


 (なんだ…この間?)


 トワにはよく見せている。上手いと褒めてもらった事もある。


 そのトワも沈黙しているのはなぜだ?


「僕がこの旅に同行しているのは、リガーナに脅されているから。

 ロストンと同じだね。

 だから、ぶっちゃけリガーナ問題が片付けば、魔王はどうでもいい。

 でもムンタは違うよね?

 倒すべき相手と停戦は、不味いんじゃないかい?」


 正しくトワの言った通り。ここが一番、難しいと思っている。


 それでもムンタには納得してもらう必要がある。


 レーグの魔王は強い。リガーナ抜きは相当厳しいだろう。

 リガーナ戦の前に消耗したくないし、最悪全滅もありえるのだ。


 かと言って、魔王を放置してリガーナと戦うのもダメだ。

 前世と同じ末路なんて、絶対に嫌だから。


 最低でも停戦。

 可能なら共闘。


 ムンタが口を開く。


「そうだな。皆に話した事はなかった。

 今こそ話そう、なぜ俺が勇者になったのか。」


 ムンタの話は長かった。


 昔、仲の良かった友達と出会いから始まって、その友達と過ごす日々を楽しそうに話し続ける。


 話がずれていると指摘するべきなのだろうが、気が引ける。

 楽しそうなムンタはレアだから。


 長すぎて、途中でトワの手術の時間になった。

 皆でトワの付き添いに行く。


 魔王が俺に声をかけたのは偶然ではない。


 魔王は俺の位置を把握している。

 俺が一人になるのを待っている。


 悪いがもう少し待っててもらう。話がまだ、まとまっていないんだ。


 サニアがムンタの話の続きを聞いている。

 手術が終わるまでに、話も終わっているとありがたい。


 (リガーナはどうしているだろう。)


 魔王の説得方法と、リガーナの現在に思いをはせながら、時間は過ぎていく。




 無事、手術が終わる。


 トワは順調で、しばらく休めば動けそうだ。


 入院を勧められたが断る。おそらく前世でもそうしたのだろう。

 それでも数時間は休んでいくよう言われたので、その場でムンタの話が再開される。


 まとめるとこうだ。

 1、ムンタは中のよい友達がいた。

 2、十二年前、友達が流行り病にかかる。

 3、友達の父親は研究員で、病気を治す為に尽力する。

 4、結果を急いだ父親は、非人道的な実験を繰り返す。

 5、結果父親は王国を追放され、友達も亡くなった。

 6、その父親の名前はレンバト。マジュイメに入り、後に総帥となる。


「優しい父親だった彼を、俺は覚えている。

 だから彼の噂を聞いた時はショックだった。

 なんとかしたいと、思った。

 魔王打倒の功績があれば、何とか出来るかもしれなかった。

 だから俺は勇者になった。

 それから彼に会って、結果は皆の知っている通りだ。

 彼は俺を覚えていたのか、亡くなった息子の為に動いていたのか、復讐の為だけに動いていたのか、正気が残っていたのか。

 その辺りは全部、もう分からない。」


 昔話は終わり、ムンタは結論を出す。


「俺の目的は、達成できずに終わっている。

 皆を巻き込んだ責任があるから、最後まで、つまり魔王討伐は果たすつもりだった。

 もともと王国は、40年前に魔王の襲撃を受けた事で、打倒魔王を掲げた。

 しかし討伐は難航し、魔王の更なる襲撃もない。機運は年々下がり続ける。

 昔ほど、魔王討伐にこだわっていないのが現状だ。

 かまけている余裕がないとも言える。

 実は俺達は、そんなに期待されていない。失敗しても、罰とかもない。

 だから俺は、交渉してもいいと、いや、交渉したい。

 犠牲になった人達がいるし、今までの勇者とその仲間達の思いもある。

 分かっている。軽視はしない。それでも。

 変化は必要だと、考える。未来の為に。

 一歩踏み出す。停戦とは言わず、終戦を目指そう。

 それが、13代目勇者の意思だよ。」


 ムンタが右手を差し出してきたから、両手で握り返す。


「サニア君はどうだろうか?」


「私も大丈夫。

 私は魔王城にあるかもしれない資料が必要なのだけど、討伐後に魔王城を捜索するよりも、本人に聞ければ一番いいし。」


 これで皆の了承を得れた。

 後は、魔王本人だ。


「ありがとう皆。改めて、作戦を聞いてくれ。」

仲間を集めて、魔王に挑む。

その、最初の一歩。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ