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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第二章 魔王クリガナンの祝賀

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第67話 清算~罪~

~前回までのロストン~


レーグの魔王ディルガンツと、ゾトの魔王クリガナンが戦う。

最初はディルガンツが優勢だったが、最後はリガーナが勝利した。

俺も、少しは役に立てただろうか?

「勝ったのか?」


「見ての通りよ。お疲れロストン。」


 周りを見る。酷い有様だ。

 抉れた地面と魔物の死体だらけ。そして煙い。


 先程までの轟音が嘘のような静けさ。


 ゆっくりと、戦いの終わりを実感していく。


「さあ戻りましょう。皆の所へ。」


 もう一度、リガーナが手を差し出してきて。

 でも俺は、その手を取らない。


 自力で立ち上がり、リガーナを見る。


 キョトンと、不思議そうな顔をしていると思った。

 でも違った。


 真っすぐ俺を見つめる彼女は小さく笑う。

 寂しそうな、残念そうな、どこか諦めたような表情だ。


 そんな彼女に、俺は問う。


「皆の所へ戻ってどうするんだ?」

「…。」


「魔王を倒した。その報告をして、その後、」

「殺すのよ。」


 心変わりを期待していた。


 俺が傍にいて、嬉しいと、言っていたから。

 だから。


「どうして!」


「そういう話でしょう?

 魔王と遭遇して、なんとか撃退に成功。

 皆にはそう説明すればいい。

 そのまま魔王城まで行って、クライマックスよ。」


「本気か?」


「何?もう旅に飽きた?

 なら倒したと伝えましょう。

 祝賀会でも開きましょうか。最期の晩餐よ。それもいいわ。」


「本当に、あいつらを殺したいのか!?」


 思わずリガーナの両肩を掴む。

 あんな恐ろしい魔王とは思えないほど、華奢だった。


 リガーナは顔色を変えない。憐れむような笑み。


「ねえロストン。落ち着いて。

 あたなが復讐に興味がない事は、最初の夜から分かっていたわ。

 最初は腹が立った。でも、もういいの。

 サニアとトワの二人を殺してくれたらそれでいい。

 ムンタはどっちでもいいわ。」


「は?」


 二人の死が目的?


 過程が目的だと思っていた。


 二人が泣き叫んだり、命乞いをしたり、騙されたと怒ったり。


 それで俺が、良心の呵責で苦しんで、それでも最後は屈して、後悔する。


 その様を眺めるのが好きだから、こんな手の込んだ事を、魔王討伐の旅に同行するなんて事をしていると思っていた。


 だからそれを満たせるようにして、交渉して、全員生きて帰るようにしようと考えていたのに。


 リガーナが俺を軽く押した。

 手の力が緩まっていた俺は、簡単に尻もちをつく。


「ロストンは私に脅されて、仕方なく殺すの。

 悪いのは私、魔王なの。

 ロストンは、同情されるべき被害者よ。

 だって従わないと、殺されてしまうもの。

 分かるはずよ、あなたは考えられる人だから。」


 天柱ヘブンピラーで空いた大穴から、石の鎖が伸びてくる。


 先端に何かぶら下がっていて、リガーナがそれを掴む。


 魔王の剣だ。

 その切先を俺に向ける。俺の、喉元へ。


「でもそうね。どうしても嫌なら、しょうがないわ。」

「え?」


「ロストンは何もしなくていい。何なら、もう帰ってもいい。

 私が二人を殺すから。」


「…二人を殺す事に、どんな意味が…?」


「…大した理由じゃないわ。個人的な事よ。

 ロストンには関係のない事だから安心して。

 強盗に盗んだお金の使い道を聞いても、いい事ないわ。

 好奇心は猫を殺すの。」


 ここは従うべきだ。

 わかったと、頷くだけでいい。


 それでこの場は収まる。


 魔王城を目指そう。そうすれば、数日の猶予が出来る。

 その間に、また作戦を練ればいい。


 剣はまだ喉元だ。

 手を上げて降参の意を示しつつ、ゆっくりと立ち上がる。


 (策なんて、ない。)


 何日考えても、打開策が浮かぶとは思えない。


 (全員生きて帰るなんて。)


 俺が二人を殺さない場合、リガーナが二人を殺す。

 リガーナを倒さないといけない。


 リガーナも殺したくない場合は説得が必要で。説得するには事情を聞く必要があって。

 この様子では話さないだろうから、一度、拘束する必要まである。


 (倒す事すら困難なのに、拘束。しかもその状態で全員生存は…。)


 現実的ではない。


 (だから。)


 狙うなら、今だ。


 魔王との闘いで、消耗した今が、最後のチャンスだ。


「!?」


 リガーナが吹き飛ばされる。

 ムンタの飛び蹴りが炸裂したのだ。


「ロストン君!」

「任せろ!」


 眼帯は外してある。

 黒炎を纏った石の鎖がリガーナに巻き付く。


 リガーナは、汎用性のある探知系魔法が無く、奇襲に弱い。


 トワの見解だ。


 あれは、少し前の夜。




『マジックストックみたいな魔装具があれば、本人の使えない魔法でも使える。

 きっと僕の首輪も、そういう仕組みさ。リガーナが火魔法を使っているのを見た事がないし。

 それも含めた上で。

 リガーナの今までの行動を見ていると、探知系の魔法を使っているとは思えない。

 彼女は、探知系の魔法を重要としていないのさ。

 ハプニングを楽しんでいるのかもしれない。それだけ、彼女は強い。』


 トワにそこまで言われて考えると、確かにその節はある。

 到着が遅かったり、対応が後手になりがちだから。


『でも、俺はリガーナが探知系の魔法が使えないとは思えない。

 だって、リガーナが作った首輪は、俺の魔力を探知し続けているんだろ?

 起爆の根幹を担う場所に、道具便りの魔法を使うはずがない。

 使いこなせるぐらいの信頼のある魔法だから、トリガーにしたんだ。』


『探知系の魔法と聞くと、火属性の熱検索ヒートサーチと、風属性の音制御ノイズコントロールが浮かぶね。どちらも、範囲内の敵を発見するのに便利な魔法だよ。

 でも、そういう魔法ではロストンの魔力を探知する事は出来ない。

 別の方法が必要だ。』


『…魔法じゃない、という事?』


『魔法ではあるよ。

 個人の魔力を探知する事は、めちゃくちゃ手間で、難しいんだ。

 魔力は一定じゃなくて変動するからね。ただ立っているだけでだよ。

 個人差がある、質がある、色がある。そう言われていても、似たような魔力の持ち主は多いんだ。

 精度を上げるには、長い観察期間、データが不可欠。

 逆に、データを持っている実力者なら、対象が範囲内にいれば見つけられるって訳。

 名付けるなら、『ロストンサーチ』。君にしか使えない、専用の上級魔法さ。』


 なんて恐ろしい魔法だ。


『ロストン。君は、だいぶ昔から目を付けられていたようだね。』


 意地悪そうに、トワは笑った。




 きっとリガーナは、三年で俺のデータを集めたのだ。

 だから、俺の居場所は分かる。首輪の根幹に使える。


 でも、それだけだ。

 いくら俺の居場所が分かったとしても、関係ない。


 事実としてムンタの奇襲は成功したのだ。


 マジックブーストで強化した、闇土混合の黒石鎖ブラックストーンチェーン


 通常時ならともかく、今のリガーナに脱出できる魔力は残っていないはず。

 ダメ押しに、魔力抑制装置をつけようとリガーナに近づく。


「ロストン。これは、蛮勇よ?」


 ゾワリと、した。反射的に飛びのく。


 地面から土の槍が飛び出す。


 なんとか躱したが、魔力抑制装置を落としてしまう。


 黒炎纏う石の鎖は簡単に砕かれた。


 そして飛んでくる石の塊。

 体勢を崩した俺は避けられない。


「ロストン君!ぐあ…。」


 ムンタが俺の前に出て、代わりに石に当たる。


 力なく倒れるムンタに近づきながら眼帯をする。

 回復魔法ヒールを使いつつリガーナを見た。


「どうして…。」


 まだ、そんな力が。


 リガーナが、上着を一枚、脱いだ。


「あ…。」


 首に何か下げている。立派な装飾がされたネックレス。

 腕輪もしている。左腕に三つも。


「全部魔装具よ。

 魔力を回復できる物が二つと、魔法の威力を上げる物と、魔力変換効率を高める物ね。」


「…俺の力なんてなくても、魔王に勝てたって事か。」


「言ったじゃない。とても心強かったわ。」


 (最悪だ、完全に判断を誤った。)


 リガーナが、一歩近づく。


 思わず目を閉じてしまう。殺されると、思ったから。


「…。」


 しかし、その時は訪れない。


 恐る恐る目を開ける。

 リガーナはいなかった。


 (見逃して、くれたのか?)


 辺りを見回す。

 俺も探知系の魔法は使えないから、目で探すしかない。


「あ。」


 見える範囲にリガーナはいない。


 しかし、離れた所に見覚えのある人影を見つけた。

 トワとサニアだ。


 ムンタと一緒に来たのだろう。


 おそらく彼は、俺とリガーナと知らないおっさんが町を出るのを、目撃した。


 猛スピードで離れる俺達を、追いかける術を持たない彼は、サニアの元へ急いだだろう。


 トワを置いていく訳にはいかない。首輪があるから。

 手術は終わったのか、中断させたのかは分からない。


 とにかく三人で捜索に出る。


 トワの魔法の射程距離まで近づけば、ここまで辿り着けるだろう。

 戦闘音が聞こえたはずだから、ムンタが先行して様子を見にきた。


 そのムンタが中々戻らないから、二人が出てきた。


 そんな所か。


 (トワには怒られそうだ。)


 生きた心地がしなかったはずだ。本当に悪いと思っている。


 (しかし魔王が相手だったんだ。)


 しっかり説明すれば分かってくれるだろう。


 (なんにせよ、これで。)


 一安心。リガーナが消えたのは不気味だが、心強い仲間と合流できた。


 ようやく一息つける。


 説明の順番が重要だ。何から話そうか、まずは謝罪か。


 とりあえずムンタを起こして、

「?…ムンタ?」


 傷は塞がりかけている。回復魔法ヒールを使っているから。


 俺はリガーナほどの力がないから、一瞬で治すなんて出来ない。


 だから、数秒はかかる。

 でも数秒で治すだけでも凄い事だ。


 前世の俺ならもっとかかるし、治せないなんて事もある。


 この身体の魔力と、マジックブーストのおかげだ。


 そう。

 いつもなら、もうとっくに、傷が塞がっていてもいいはずなのに。


 今も回復魔法ヒールをかけている。

 傷は塞がらない。回復魔法ヒールが効いていない。


「おい!ムンタ!しっかりしろ!目を開けろ!」


 ここで。

 ここまできてやっと気づいた。


 ムンタは、死んでいる。


「!?」


 そんなに大きくない。拳よりずっと小さい。


 そんな石ころ一つで、こんなにあっさり勇者は死んだ。


 (当たり所が悪かった…。軽く見えても魔王の攻撃だった…!)


 いや、今考えるのはそんな事ではなく。

 混乱の為か、俺の思考は定まらない。


「ムンタ…死んじゃったの…?」


 ビクっと俺の身体は跳ねたと思う。


 ぎこちなく振り向いた先、サニアがいた。

 彼女の表情にあるのは、悲しみと、困惑と、疑念?


「違う!俺じゃない!」


 勢いよく立ち上がろうとして、出来なかった。


 足が何かに縛られ、バランスを崩したのだ。

 風縄ウインドロープ。トワの魔法。


「そうだよ。君はムンタを助けようと回復魔法ヒールを使った。

 でも、間に合わなかった。

 そう見えるし、そう思うのに、なんで無実を訴えるのさ。」


 トワの右腕は義手になっている。無事、手術は成功したようだ。


「あ、ああ。悪い、混乱しているんだ。」

「何か、心当たりがあるのかい?」


 バレた?俺が、トワとサニアを殺そうとしているのが。


 (ここは謝罪して正直に言うしかない!前は考えていたが、今はもう、いや、ムンタが死んでいる。こんな状況で言ったって信じてもらえる訳、いやそうじゃない、そもそもこれは、トワのカマかけで、つまり沈黙がまずい!)


「あるんだね、心当たり。」


 トワは、初めて会った時と同じ、敵に向ける目で俺を見ている。


「二人共、待って。まずは、町へ戻ろう?

 ムンタを、運ばないと…。」


 サニアが、俺とトワの間に入る。


 彼女は、泣きそうだ。ムンタの死を、悲しんでいる。

 その時だ。


「!?」


 トワが拘束された。


 幾重にも重なる石の鎖。


 それはトワの自由を奪うだけではない。

 右手の義手を粉砕し、左腕に魔力抑制装置をつけた。


 俺が、リガーナに着けようとして、失敗し、落としたやつだ。


「トワ!」


 サニアが悲鳴を上げながら、トワの拘束を外そうとする。

 火剣ファイアーソードで切ろうするが、鎖は固く、それを弾く。


 トワの魔法が消えた為、俺は立ちあがる。


「ロストン、リガーナはどこ!」


 トワが吠える。


「君はリガーナに脅されて、協力させられている! 

 分かるさ!あいつは怖い。僕には、君を責められない!

 仕掛けてきたという事は、ここで僕らを殺す気なんだろ!

 でも、君だって、こんな事はしたくないはずだ!

 僕らの事が憎い訳ではないはずだ!

 旅が楽しかったはずだ!

 だから!一緒に戦おう!」


「…最初に言ってくれたら、嬉しくて泣いたかもしれないが、この状況で言われても、命乞いの出任せに聞こえるな。」


 苦々しい顔をするトワ。


 分かっている。本心だよな。

 段取りが崩れたんだろ。予期せぬ奇襲を受け、焦ったんだ。


 (一緒に戦うのは無理だ。)


 俺ではその拘束は解けない。サニアでも無理。

 ムンタが生きていれば、トワを抱えて逃げられたが、それも無理。


 この状態のトワを守りつつ、サニアと俺で、隠れたリガーナを倒す。


 不可能だ。


 戦う選択肢はない。

 二人を殺したように見せかけ、リガーナを騙す芸当もない。


 もうここは。

 お願いするしかないのだ、リガーナに。


 (交渉できるカードもない。なんとか、俺の命で、二人を見逃してもらえるように…。)


「ロストン!」


 サニアに突き飛ばされた。


 彼女は火剣ファイアーソードを振りぬいて、飛び掛かってきた魔物を両断した。


 (魔物…?)


 魔王の引き連れていた奴の生き残りだろうか?


 危ない所を助けてもらい、お礼を言おうとしたが、もう彼女は駆け出していた。


 魔物が、トワに迫っていた。

 それも、二体。


 一体を瞬時に切り伏せた彼女だったが、態勢が悪い。

 もう一体に噛みつかれた。


 魔法を放とうとしたが、射線上にトワがいる。


 俺は急いで駆け出す。サニアを助ける為だ。

 でも、俺が到着するより前に、サニアは魔物を倒した。


 そのまま駆け寄る。噛まれたんだ。回復魔法ヒールをしないと。


「え?」


 無様に転がった。


 殴られた。


 顔面を。


 眼帯が落ちる。ボロボロだ。もう回復魔法ヒールは使えない。


 殴った相手を、サニアを見る。


 蹲りながら苦しんでいる。

 その手は、魔物のようだった。


 カース。それと相性のよい魔物だったのだろう。


 魔物化が、目に見える速度で進行していく。


「どうしたの?何があったんだい!?サニア!」


 拘束、固定されたトワは振り向けない。

 何か起きているのは分かっても、詳細は分からないのだ。


 サニアが、顔を上げた。


 左頬も、黒くブクブクした何かになっている。


 右目から涙を流しているが、彼女は俺を見てほほ笑んだ。


 回復魔法ヒールは使えない。

 そもそも回復魔法ヒールでは効果がない。

 回復魔法キュアですら意味がない。


 封印シール。そんな魔法、リガーナだって使えない。


 (短くない付き合いさ。だから、ちゃんと伝わった。)


 ゆっくりとサニアに近づいていく。


 魔物にはなりたくない。

 それが、きっと彼女が伝えたい事。


「ねえ、サニア!ロストン!何か、言ってよ!」


 トワが叫んでいるが、何か言える事があるだろうか?


 サニアが立ち上がった。


 左肩を噛まれた所為か、上半身から魔物になりつつある。

 もう目に光がなかった。


 何も考えないように。会社とか親とかトワとか全部。


 サニアは左腕を振り上げた。恐らく俺に叩きつ為に。

 その動きは緩慢だ。とても彼女の動きと思えない。


 その隙に、俺は。

 サニアの、腹辺りに手を伸ばし、黒炎ブラックファイアーを、放つ。


 マジックブーストで強化されたそれは、サニアの上半身を綺麗に吹き飛ばした。


 全身を火葬するつもりだったが、変に力んで、から回ったみたいだ。


 魔物化して、上半身を吹き飛ばされる。


 前世の俺だ。前世の立場が俺とサニアで逆になった。


 サニアの下半身が倒れる。

 スカートが捲れて、パンモロ状態だ。


 近づいてスカートを戻す。


 いつだったか酒を飲みながら、サニアのパンツが見えない、なんて話をした気がする。

 世界の加護があるとかないとか。


 死んで加護を失ってしまった。いや加護を失ったから死んでしまった。


 バカな事を考えて、気を紛らわしながら、マントを被せて死体を隠す。


 (これ以上は無理だ。勘弁してくれ。)


 頭を抱えて蹲る。


「ねえ!ロストン!さっきの音は何!?

 サニアは!?ねえ!」


 トワの絶叫は止まらない。


 (うるせえな。)


 ちょっと静かにしてほしい。

 考えが、まとまらないんだ。


 閃いた。いい考えだ。


 トワには少し頭を冷やしてきてもらおう。

 どうせこのままだと話も出来ない。


「な!?」


 トワを地面ごと浮かせる。土魔法のストーンだ。

 更に石鎖ストーンチェーンで固定する。落としたら大変だから。


「や、やめて…。」


 おいおい、折れるのが早すぎるだろ。


 (キモと頭を冷やしてこい。)


 笑顔で手を振ってやる。トワが何か言う前に、発射した。


 静かになって一呼吸。


 大丈夫。冷静だ。ストーンを操作して、動きを止める。

 そしてゆっくり、ここに戻すよう動かす。


「…。」


 いや、リガーナがいるんだから、直ぐに戻そう。


 それにしても、これはいい手じゃないか?

 もっと早くに思いついていれば、撤退も選択肢に入ったかも。


 まあ、もはや仕方のない事だが。


 (ん?何か、聞こえた?)


 トワが戻ってきた音だと思ったが、違う。


 耳を澄ますと、聞こえてくる。これは、トワの声だ。


『…けて、助けて!』


 風魔法の音制御ノイズコントロール。声を届けている。


 (魔力抑制装置を着け、義手を壊された状態で魔法?)


 義手はそれぞれの指に魔法を仕込める訳だから、一本無事だったのかもしれない。


『いやだ!死にたくない!死にたくない!』


 緊迫した声だ。まさかリガーナに追われているとか?


『ごめんよ!お願いだ!ロストン!許して!』


 ?


 おかしい。


 もう戻ってきてもいいのに、トワが戻ってこない。


 変な汗がでてくる。

 嫌な予感がする。


『ああ、ああ!嫌だ嫌だ!死にたくない!!』


 トワの声に混じって、ぴぴぴという音が聞こえる気がする。


「ト、トワ!」


 間違いない。トワを乗せたストーンは、戻ってきていない。

 どういう訳か戻せない。


 リガーナに妨害されたのかも。


 (まさか、勢い余って、魔法の射程外まで飛ばしてしまって、コントロールが出来ないなんて事は、そんなバカな事は!)


 とにかく、向こうが近づけないなら、俺が近づけばいい。


 ストーンを使う。俺の足元の地面が浮く。


 石鎖ストーンチェーンで固定して、

『あああ!!助けてーーー!!』


 それが、最期。


 遠くで、爆発音がした、気がする。

ロストンは、第二目標を達成した。


第二章の進捗としては、6~7割、終了といった感じです。

地獄みたいになっていますが、まだ活躍の予定はあります。

並行世界だからって、何やってもいいとは思ってない、はずです。

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