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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第二章 魔王クリガナンの祝賀

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第56話 勇者パーティー~奔流~

~前回までのロストン~


骸骨竜との戦いが始まった。勇者は秒で負けた。

戦いの中で、光天法が使えるようになった俺は、それをトワに託す。

あいつの準備が整うまで、骸骨竜を押さえ込まないといけない。

「くそっ!」


 転がるように横に飛ぶ。叩きつけられた骨拳を躱す。


 避けるのに精一杯だ。とても反撃など出来ない。


 応戦していたトワも、やはり化け物なのだ。


 俺は泣いている。怖すぎて。もう後悔しかない。

 なぜ任せろと言ってしまったのか。


 (今更だ。死にたくないなら、逃げ続けろロストン!)


 絶叫しながら身を伏せる。直ぐ上を尻尾が通り抜ける。


 遅れて土の塊が飛んでくる。水壁ウォーターウォールで防ぐ。


 立ち上がり、ダッシュだ。

 爆発音が聞こえた。上で。しかも連続だ。


 (よし!やれ!やっちまえ!)


 王国兵の魔法攻撃。どれほどかは知らないが、少しは余裕が出来るはず。


 期待の眼差しで骸骨竜スカルドラゴンを見る。


 ちょうど、口を開けていた。魔力が、集まっているのが見える。


「避けろー!!」


 叫んだが、多分聞こえないだろう。まだ距離があるから。


 骸骨竜スカルドラゴンは口から、魔力を凝縮させた何かを放出し、それは、王国の城壁に直撃した。


 黒い煙でよく見えないが、直撃した箇所は消し飛んだ事だろう。


 しかし流石は王国兵達。魔法攻撃は止まらない。


 骸骨竜スカルドラゴンは、再び口を開けた。


「こっちにも、いるぞ!」


 眼帯を外し、黒炎ブラックファイアーで攻撃する。

 城壁の王国兵がやられる前、つまりここがラストチャンス。


「!」


 尻尾が迫ってくる。

 (やばい、避けられ…。)


 突風、そして再びのお姫様抱っこ。


「お待たせ!」

「待ってた!」


 近くに水の塊が現れて、爆発するように広がり人型に。


「ムンタ!」


 水巨人ウォータージャイアント骸骨竜スカルドラゴンの顎を下から突き上げて打つ。


 綺麗にアッパーカットが決まり、骸骨竜スカルドラゴンが上を向く。

 ちょうど放たれた魔力凝縮弾が、上空に消えて行く。


「ムンタ!?」


 水の巨人は、今度も一撃で沈んだ。


 しかし、大手柄だ。


 俺とトワは、城壁の上に降り立つ。


 ジェスチャーで離れるように指示される。

 俺は王国兵達と共に下がった。


 トワの周りに魔力が、円を描くように集まるのが分かる。


 気温が下がっていく。

 汗だくの身体が涼しさを感じて、気持ちいい。


 気温は下がり続ける。

 吐く息が白くなる。普通に寒い。


 トワが両手を前に突き出した。


 放たれたのは、嵐のような強風。氷が荒れ狂う。猛吹雪のように。

 水と風と光の混合天法、輝吹雪シャインブリザード


 暴力的な輝きの奔流が、骸骨竜スカルドラゴンを飲み込んだ。


 光は広がり、やがてゆっくりと、消えていく。


 静寂に包まれていく。


 誰も一言も喋らない。


 凄まじい魔法だった。


 耐えられる訳がない。


 だが、もしも、これで倒せなかったら…?


 木々が、倒れる音がした。

 轟音。静寂は一瞬で消えた。


 骨なのに、そいつは吠えた。

 多分、魔力が駆け巡り、骨やら木々やらを削りだした音。


 骸骨竜スカルドラゴンが、突っ込んでくる。この城壁を目指して。


「…!」


 壮絶な姿だ。両前足の骨は消し飛んで、二足歩行で走っている。


 胸半分も、顔半分の骨も消えている。


 それでも、いや、より一層、伽藍洞の奥の闇は濃い気がする。


 一体、どんな怨念が、奴をここまで駆り立てるのか。


「大丈夫!あと一発撃てるんだ。今度は全部、吹き飛ばし、て…。」


 トワが崩れた。慌てて支える。

 息が荒い。熱もあるかもしれない。


 無理もない事だ。負担がデカ過ぎる。


 ずっと骸骨竜スカルドラゴンを押さえていたし、その前の精神的ダメージもある。


 魔力が残っていても、体力、精神ともに限界だろう。


 王国兵が、魔法攻撃を開始する。


 迷ってしまった。


 俺も攻撃に参加するか、トワを抱えて逃げるかで。

 迷って、動けなかった。


 その隙に、骸骨竜スカルドラゴンは、こんなに近くに!


「ロストンお待たせ。もう大丈夫。」


 すぐ後ろから、声がした。


 聞きたくない声。怖くて、元凶で、死神の声。


 でも今は、大丈夫と言われ、心の底から、安心した。


 リガーナが、前に出る。


 俺達と、骸骨竜スカルドラゴンの間に立つ。


 こんなに、小さく頼もしい背中は、あるだろうか。


 骸骨竜スカルドラゴンの動きが止まった。動揺しているようにも見える。


 知能もなく、本能だけの存在が?

 そうだ、本能があるから、怖いんだな。


 その気持ち、凄くよく分かる。


 (散々苦しめられた敵だったが、同情するよ。)


 骸骨竜スカルドラゴンが一歩下がる。腰を屈め、骨の尻尾を振り下ろす。


 俺達を苦しめた、柔軟さと破壊力を持つそれは、真ん中辺りで切断され、地面に深々と突き刺さった。


 リガーナは動いていない。指一本動かしていない。

 しかし目を凝らすと、彼女の周りに何か見える。


 (水?魔力が、纏わりついている?)


 あの骸骨竜スカルドラゴンのように。


「ロストン、気づいたね。」


 リガーナが振り返る。骸骨竜スカルドラゴンから完全に視線を外す。余裕ありすぎだろ。


「ドラゴンフォーム。魔王に継承されている魔法。

 つまり、魔王なら使える魔法だね。

 これは、水だから、水竜アクアドラゴン。」


 魔王って言っちゃったよこの子。


 王国兵は距離があるし、トワは気絶してそうだから、いいのか?


 リガーナの背面から五方向に水柱が伸びていて、三本の先端は竜の頭の形、二本は、翼の形となっている。


 確かに、ドラゴンっぽい見た目だ。


 この竜の頭が何かをして、骨の尻尾は切断されたんだな。


 前世でも似たようなものを、見た気がする。


 尻尾を失い、動揺を見せていた骸骨竜スカルドラゴンは、半分になった口を開けた。

 魔力凝縮弾を放つつもりだ。


「終わらせようか、この戦いを。」


 リガーナが骸骨竜スカルドラゴンを見た。


「ああ、頼む。」


 悪夢のようだった夜を、終わらせてくれ。


「トリニティアクアバスター。」


 三本の竜頭から放たれた水の奔流。


 本当に水なのか怪しいそれは、放たれた魔力凝縮弾も、骸骨竜スカルドラゴン本体も、纏わりついている魔力すらも、全てをかき消してゆく。


「ぶい!」


 振り向いたリガーナは、勝利のVサイン。


 宙に漂う水の残滓は、星の光を反射させ、最恐の魔王の姿を、称えるように輝いた。


 質の悪い冗談みたいに、悪魔的で魅力的。それを一枚の絵画にしたような。


 (美しく、醜悪で、頼もしく、恐ろしい、殺さなければ殺される相手。)


 眺め続けたら正気を保てない。

 そう思った俺は、苦笑いを浮かべ、そうそうに意識を手放す事にした。


 王国兵の歓声を、どこか遠くに感じながら。




 一週間経った。


 孤児院のシスターも子供達も無事だ。


 建物は買い戻され、元の生活に戻ったそうで。


 ムンタ含む王国兵も、幸いな事に死者はいない。

 しかし怪我人は多く、一番の重症患者はムンタだ。


 勇者パーティーはムンタが回復次第、旅に出る予定になっている。


 回復魔法の効きもよく後遺症もない、リハビリも問題なし。

 明日には、出発だ。


「出来た。」

「うん。出来てる。」


 ムンタの修行場に俺とトワはいる。小屋があるから便利なんだ。


 ここ最近、トワに魔法を教わっている。


 トワはバイトを辞めた。いや、辞めさせられた?

 勇者支援金とかいう補助金がバイト先の魔装具屋に入り、なんともあっさり決まったらしい。


 そんなあいつに、俺から頼んだ。魔法を教えてほしいと。

 意外とすんなり引き受けてくれた。


 孤児院の子供達と遊んでくれたお礼だとか。


 その甲斐あって、俺は今、土属性の基礎魔法、ストーンが使えた。


 両手の間の空間に浮かぶ石、というか土の塊。

 これだけだと、だから何だという感じ。


 しかし土魔法を使えるようになったという、大事な一歩目だ。


 これで俺は、条件付きながら、火、土、水、闇、光の五属性扱える。


 土属性を風属性に変える魔装具でもあれば、全属性コンプリートじゃないか。

 そんなやつ前世でも見た事ない。


 (便利だろうな。出来る事も増えそうだ。しかし、それだけでは意味がない。)


 重要なのは練度、そして使いこなせるかだ。


 トワの三種混合天法の輝吹雪シャインブリザードは、やばい威力だった。

 しかしリガーナの水魔法、トリニティアクアバスターはそれを凌駕した。


「…。」


 目標にしていた土魔法が使えたのに、変な沈黙が流れてしまう。

 なし崩し的に休憩に。


 (この後は土魔法の反復練習。コツを掴んで、マスターしたい。)


 火と土、水と土の混合魔法は遠いなと、ドリンクを一気に飲み干す。


 (生き返る~。)


「魔王って言ったね、あいつ。」


 ぎこちない動作でトワを見た。

 あの時、意識があったのか。


 (落ち着け。あいつが自分で言ったんだ。バレた事に問題はない。

 逆に動揺するほうが、怪しく見える。)


「言って、いたな。」

「知ってたんだ?」


「…一応な。」

「何で黙ってたの?」


「…勇者パーティーは魔王を倒しに行くんだろ?別の魔王だからって、言いづらいよ。」

「それもそうだね。」


 会話が終わる。


 トワは終始、抑揚のない声で、感情が読み取れない。

 受け答えは間違えていないはずだが、トワの意図は読めない。


 (…。)


 前世でトワは音制御ノイズコントロールという魔法が使えた。


 音を聞いたり、届けたり、遮ったりする事が出来て、音の流れから、敵の接近が分かる魔法。


 今世でも使えて、今現在も使用中。警戒心の強い奴だから。

 だから、攻めてみる、事にする。


「なあ、トワ。」

「何かな?」


「お前の首輪、リガーナが死んだら外れるかな?」

「…。」


「俺とお前が組めば、リガーナを倒せると思うか?」


 トワが、俺を見た。真意を探るような目だ。

 俺もトワを見続けた。真剣である事は、嘘じゃない。


「無理だね。今のままだと、勝負にすらならない。」

「ムンタとサニアも仲間にしたら?」


「四人でも勝てる気がしないね。あいつはそれぐらいの化け物だよ。」


 思わずにやついてしまう。同意見だよ。


「魔装具を沢山用意しよう。魔王のいるレーグ半島に行くには、バクー王国を通るだろ?

 バクー王国には、リンという町がある。強力な魔装具が売っているって話さ。

 王国の魔装具は保管とか変換とか、便利系だけど、あっちは単純な火力増強系。きっと役に立つはずだ。」


「…見てみないと何とも言えないね。第一、買えるお金はあるのかい?」

「ちゃんと、あてはある。それに。」


 溜める。次の言葉が、届くように。


「強くなる。今よりも。…だからこれからも、頼みますよ師匠。」

「…ついてこれないなら、置いていくよ。」


 トワは、小さく笑った。


「師匠と認める割には、態度が悪いね。敬語を使いなよ。」

「え…でも、トワだし。」


「今一度、分からせる必要がありそうだね。」


 鬼ごっこが始まった。もちろん訓練として。


 俺は必死だし、トワも真剣だ。

 正直楽しい。


 口から出た言葉も、今感じている感情も。

 (本当に、嘘じゃ、ないんだよ。)


 走り疲れた俺は、大の字に寝転んだ。

 トワが近づいてくる。


 その彼女に、問いかける。


「…なあ、あの骸骨竜スカルドラゴンと戦っている時、リガーナって近くにいたか?」


「分からないね。捌くのに必死で、音制御ノイズコントロールは使えなかった。

 言いたい事は分かる。随分タイミングよく出てきたからね。

 技術的には可能だよ。水属性には、幻惑魔法の蜃気楼ミラージュがある。

 自分の姿を見えなくする事なんて、簡単だよあいつには。」


「その蜃気楼ミラージュって魔法は、自分以外も見えなく出来るのか?」

「…出来ると思う。見えない水射ウォーターショットを撃つ奴を知っている。

 自分から離れれば離れるほど高い技量が必要になるけどね。」


「…なるほど。」


 あの最初の夜。リガーナに初めて恐怖した場面。


 何が起きたのかサッパリだったが、今なら、分かる。


 リガーナが使う魔法は、水魔法と土魔法。

 上空にいた理由。あれは土魔法だ。


 土魔法は、地面を操ったり、魔力を土のように変化させる魔法。

 地上に戻った時は変な所が無かったから、隆起させた訳ではないだろう。

 それこそ単純に、ストーンでいい。石を、足場にしたんだ。


 それで空高くまで上がる。脅威なのは、スピードと高さ。


 空を飛んだとしか思えなかった。基礎魔法でこんな事が出来るなんて思わない。


 そしてその足場を、蜃気楼ミラージュで見えなくした。

 軽く押されて落下したのは、単純に足を踏み外したから。


 落下中の俺には、水竜アクアドラゴンを使ったかもしれない。

 竜頭を伸ばして、俺の腕を掴む。

 腕が千切れる前に、回復魔法ヒールで回復する。


 あいつが怪力だった訳じゃない。

 あいつは手を添えているだけで、実際掴んでいたのは、竜頭だ。


 水竜アクアドラゴン蜃気楼ミラージュを使えば俺は気づけない。


 リガーナに感じた凄まじい圧迫感。

 態度の他にも、水竜アクアドラゴンの魔力にあてられていたからではないか。


 (…。)


 水竜アクアドラゴンは、魔王の強力な魔法だ。

 しかし、ムンタの水巨人ウォータージャイアントを洗練していけば、あれになるんじゃないか?


 リガーナは意味の分からない魔法を使っていた訳ではない。


 頑張れば、使えるようになる魔法を、磨き上げ使いこなしている。


 魔の王とは、本来そういうものなのかも知れない。


 (だからといって脅威なのは変わらないし、あの魔力量はずるい。)


 理解不能の化け物でも、修練の結果の化け物でも、化け物は化け物。

 分かった所で解決策など思いつかず、前進したようで、していない。


 (今はただ、出来る所から、やるしかない。)


 トワにダメ出しされながらの訓練を、再開しようと気合を入れる。

 その時、ふと思い出した。


「トワは、コズミックヘルブラスターって知ってる?」

「…知らないね。魔法かい?」


「ああ、なんでも魔法の真髄らしい。

 強力で、複雑で、難解で、綺麗で、ド派手なやつ。」

「…なんだか、頭の悪そうな魔法だね。実在するのかい?」


「ああ。トワなら、きっと分かる。今は分からなくても、いつかきっと。」 

「…ごめんだけど、本当に意味が分からないよ?」


 もし使えれば、火力面でとても頼もしい。

 前世で、トワとディオルで作った魔法だ。


 同じのじゃなくてもいいから、何か思いついてくれたら嬉しい。

 そう思って話だけ、振っておく。


 そして今度こそ訓練に戻る。


「リガーナが死んだら、首輪の効果はなくなると思う。」

 小さな独り言を聞き流しながら。

ドラゴン討伐ノルマ達成。これで旅に出れます。


ちなみに今回のトワは、幻惑魔法を使えません。

覚える必要が、なかったから。

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