表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第二章 魔王クリガナンの祝賀

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/166

第55話 勇者パーティー~骸骨竜~

~前回までのロストン~


警報が鳴り響いたので、トワと共に南西門へ。

どうやら骸骨竜という化け物が、こっちに向かって来てるらしい。

しかも、孤児達とシスターが近くにいるって?俺とムンタとサニアは救出に向かった。

 土地勘のあるムンタを先頭に俺達は進む。


 今度も俺は、女の子にしがみついているだけ。

 効率を考えれば、仕方のない事だ。

 

 暗く、足場の悪い山中の道だが、なかなかのスピード。

 馬が凄いのか、二人の乗馬スキルが高いのか。


 俺も御者経験はあるが、こんなスピードは出したことがない。


 まあ、荷運びの馬車と比べるのも違うか。


 そんな事を考えている間に、それっぽい家のシルエットが見える。

 同時に空が光った。


 稲光ではない。あれは、魔法の光だ。


「味方です!安心してください!救助に来ました!」


 ムンタが馬から降りる。続いて、サニアと俺も降りた。


 シスターらしき人が見えたから、ムンタとサニアは近づいていく。


 俺は、空を見た。

 馬から降りた今でも、地面に揺れを感じる。爆発音も聞こえる。


 (トワが、戦っている。きっと、一人で。)


 勝負になっているのか?

 化け物みたいな奴だから、化け物とも戦えているのか?


 (俺は、勝負になるだろうか?)


 実感が湧いてくる。怖くなってくる。逃げたくなってくる。


 (腹をくくれ、逃げられないんだ。)


 震える手を押さえつける。歯が鳴らないように食いしばる。


 そしてムンタがやってきた。


「シスターや子供達はサニア君に任せた。後、馬も。

 ここからは魔法で行く。ロストン君、掴まってくれ。」


「任せてくれ、俺は人に掴まるのが得意なんだ。」

「よし、行くぞ!」


 ムンタが水に包まれる。掴んでいる俺ごと。


 やがてその水は、大きく膨らみ、人の形になっていく。


 水魔法、水巨人ウォータージャイアント


 息は出来るが、限りがある。

 消費魔力も大きいはずだから、どちらにしろ長くは続かない。


 視線が高くなった事で、それの姿が目に入る。


 骸骨竜スカルドラゴン


 まだ距離があるが、なんという威圧感。


 (周りの木の大きさからして、城壁くらいというのは間違いない。)


「いくぞおおぉぉ!!」

 (このまま突っ込むんだな!ムンタ!)


 大きさなら、この水の巨人も負けていない。


 (流石は勇者。いい勝負になるんじゃないか!?)


 木々をなぎ倒し、骸骨竜スカルドラゴンに突進する。


 右手を大きく振りかぶり、骸骨竜スカルドラゴンの頭を殴りつける。

 その瞬間に、水が爆散した。


「な…!?」


 水の巨人が消えて行く。


 俺は上空に投げ出された。


 骸骨竜スカルドラゴンの右腕が突き出されている。

 あの手の位置は、水の巨人の胴体。俺とムンタがいた所じゃないか?


 (一撃で?)

 倒されたのか?


 俺は我に返り、切り替える。このまま地面に激突したら死ぬ。


 手を前にして、魔法を唱える。

 水壁ウォーターウォール。水の壁だ。


 上空に出現したそこに狙い通り入る。無事勢いを殺せた。


 本来の俺の魔力では、壁を突き破っていただろう。この身体でよかった。


 ずぶ濡れ状態で地面に着地。

 水巨人ウォータージャイアントの時点で濡れていたから、別にいい。


 (ムンタは?)


 分からない。死んだかもしれない。


 探しに行くため一歩を踏み出す。

 上空で、爆発音がした為、見上げる。


 (落ちてくる!?)


 この状況で落ちてくる人物は一人しかいない。

 駆けだした。そして手を伸ばす。


 (間に合え!)


 水壁ウォーターウォールを展開。確保に、成功した。


「おい、しっかりしろ!」


 トワは気を失っているようだ。

 抱きかかえ、回復魔法ヒールをしながら、声をかける。


「っ…!」


 トワが目を開けた。と思ったら、突き飛ばされた。

 間髪を入れずに、骸骨竜スカルドラゴンの爪が、突き刺さる。


 トワは風歩ウインドウォーカーで上空に移動しながら攻撃。

 骸骨竜スカルドラゴンの注意を引く。


 俺は眼帯を外す。


 無防備な背中に向けて、渾身の黒炎ブラックファイアーを放つ。


 (周りは木だらけ?まったく、よく燃えそうで、いいじゃないか!

 こいつを倒せたら、水魔法で消すよ!)


 倒せたら。

 黒い炎に巻かれ、骸骨竜はたじろぐ。


 (効いている!)


 口角があがる。俺は戦えている。


 上空から突風が吹く。風に煽られ炎はより勢いを増す。

 黒い火柱は骸骨竜を飲み込んだ。


 規模は段違いだが、初戦の犬型魔物と同じ光景。


 (え…?)


 勝ったと思ってしまった。でも俺は飛んでいた。

 短くない浮遊感の後、地面を転がる。


 腹が、いや全身に激痛。


「がはっ…。」


 血を吐いた。


 (何、が…?)


 ようやく止まった俺は、震える手で眼帯をして、回復魔法ヒールを使う。


 そして辺りを見渡す為に起き上がろうと、

「ぐ…!」


 起き上がれない。痛くて。


 情報を求め、視線だけ彷徨わせる。

 骸骨竜スカルドラゴンは、健在。


 周辺の火は、消えている。木々ごと、地面が抉られている。


 (尻尾、か。)


 尻尾の骨。 


 鬱陶しそうに振り回されるそれは、鞭のような柔軟さで、地形を変えるほどの破壊力がある。


 あんなのに巻き込まれたら、バラバラになり即死は確実。

 つまり、あれじゃない。


 俺を吹っ飛ばしたのは、トワの魔法だ。


「ったく、折角の貸しだったのに。即、返すなよな…。」


 使い続けた回復魔法ヒールの効果で、立ち上がれるくらいまで回復した俺は、両手を骸骨竜スカルドラゴンに向けた。


 そして思う。


 (俺は、何をしているんだ?)


 俺の目的は生き残る事だ。死ぬのが怖いから。


 (ここは、死地だ。)


 骸骨竜スカルドラゴンはトワを攻撃している。俺を見ていない。


 (今なら逃げられる。)


 もし骸骨竜スカルドラゴンを攻撃したら、きっと矛先はこちらにも向く。

 今度こそ死ぬかもしれない。


 (この場所に、居続ける、理由…。)


 トワには助けてもらった。しかし俺だって助けた。


 トワがここで骸骨竜スカルドラゴンと戦うのは、あいつの事情だ。


 孤児院のシスターや子供達には、俺だって同情できる。

 助けたい気持ちだってある。


 強くなったんだ。そこらの魔物なら、いくらでも倒してやる。


 でも、骸骨竜スカルドラゴンは、格が違う。


 自分の命を捨ててまで助けたいとは思わない。


 (俺は、そういう奴だ。)


 寧ろ今まで、よく逃げ出さなかった。


 少なそうだが、ダメージだって与えた。


 いい時間稼ぎになったんじゃないか?


 サニアはきっと子供達を避難させられたさ。


 (もう、十分だろ?)


 骸骨竜スカルドラゴンの話を聞いて逃げたかった。でも耐えた。

 骸骨竜スカルドラゴンを前にして、逃げたかった。でも耐えた。


 (骸骨竜スカルドラゴンに殺されそうになっている今、逃げたって…。)


 何度覚悟を固めた所で、その都度、壊されてしまうほど敵は強大。


 が。

 それでも。


 掌に魔力を集める。


 使う魔法は水射ウォーターショット

 黒炎ブラックファイアーより火力は劣るが、射程で勝る。


 反撃に気を付けながら、数を撃ち、攪乱する。


 少しでも注意を引ければ、トワの助けになるだろう。


 発射と同時に走る。直ぐに次弾の準備をする。

 走りながら撃つ事を繰り返す。


 (自棄じゃない。シンプルな話さ。)


 骸骨竜スカルドラゴンは、禍々しい姿だ。


 何で汚れたのか分からない骨は、もはや白ではなく極彩色。

 関節を無視した動きは、完全に生物のそれではない。

 翼は完全に溶けてなくなり、言われなければドラゴンとは分からない、もはや何者か分からない。


 伽藍洞の瞳に漆黒の闇を宿し、理由なく暴れ回る。


 正真正銘の、魔物。


 それでも。

 姿を目の当たりにした今でも。


 (こいつより、リガーナのほうが、恐ろしい。)


 考えないようにしていた。


 骸骨竜スカルドラゴンと戦う時、いや、話を聞いた時、いやもっと前、警報で目が覚めてからずっと。


 (だっておかしいだろ?なんで姿を現さない。)


 用事がある。流石に骸骨竜スカルドラゴンは怖い。

 見た目は少女だし、ムンタやサニアはそれで納得したはずだ。


 しかし俺は、あの二人より、リガーナに詳しい。


 警報が鳴ったんだ。この騒ぎに気付かないはずがない。

 あいつほどの化け物なら、骸骨竜スカルドラゴンにビビる訳がない。


 嬉々としてやってきそうじゃないか。

 人々が苦しむ様を特等席で見られるんだぞ。


 なのに、姿が見えない。


 (間違いなく来ている。そして姿を隠し、見ているんだ。)


 トワで遊ぶあいつは、楽しそうだった。


 しかし、小屋を出る時の顔は真顔。

 まるで、たくさん遊んで、飽きて、興味を無くしたような顔。


 だからこそ、見極めようとしている。


 俺は、トワは、勇者パーティーは、あいつが楽しめる玩具かどうかを。


 (…。)


 トワが反発している時は楽しそうで、折れたら説明だけして去っていった。


 前世の最後、復讐を吠える俺にときめいたと言っていた。


 リガーナが好きなやつは、賢く逃げる奴じゃない。

 無謀に噛みつく狂犬だ。


 (活路があるとすれば、骸骨竜スカルドラゴンに挑む事だ!)


 骸骨竜スカルドラゴンから逃げられても、リガーナに殺される。

 いらない玩具を処分するように。


 『勝負は、勝算があるときか、負けてもいい時以外はしてはいけない。』

 そんなスタンスではいられない。


 これからは、勝算がなくても、負けてはならない戦いばかりだろう。

 それが、魔王に縋って生き延びた、俺の。


「!」


 今、水射ウォーターショットの色が、変わった。

 心当たりはある。


 前世の勇者パーティーの会話の中にあった。

 闇天法は、魔法を強化する強化魔法。混合魔法専用の魔法だ。


 そして一緒に使う魔法によって、その色が変わる特徴がある。

 火と土に使うと黒色。水と風に使うと白色。


 水射ウォーターショットは、白く輝く弾丸となり、骸骨竜スカルドラゴンに飛んでいく。


 (光天法だ。光と水の混合天法、光射シャインショット。)


 昨日の特訓では使えなかった魔法だ。

 全部が白くなる訳ではない。力加減の問題なのか?まだ、自在に出せない。


 (魔力量には、自信がある!)


 折角だから、練習に付き合ってくれ。


 それから、何発も、何十発も撃って、撃ちまくった。

 だんだんと、分かってくる。


 なんというか、ジャンケンで、チョキを出す時に小指も立てる、みたいな。

 親指で薬指を抑えると、やりやすいみたいな?


 とにかく、コツは掴めた。


「くらえ!」


 輝く水の弾丸が、白線を描き着弾する。


 精度は九割。威力も中々。


 それでも致命傷までは程遠く、侵攻は止まる気配がない。


 (考えていたさ。どうやったら火力が出せるかを。)


 ベルトのポケットから、腕輪を取り出す。


 トワから買った、マジックストックだ。


 魔法を込める。光射シャインショットを、ありったけ。


 属性により色が変わるはずだ。火なら赤。水なら青。

 今の色は、白色。


「トワーー!!」


 上空に向けて叫ぶ。手を振り、アピールする。


 もちろん走りながらの撃ちながら。

 何度も叫ぶ。応答があるまで。


 やがて、俺は突風に攫われる。


「もしかして呼んでる?なんか用?」


 お姫様抱っこ。される日がくるとは思わなかった。


「光属性だ。いけるか?」


 腕輪を見せながら。


「…時間がほしい。」

「任せろ。」


 地面に降ろされる。


 トワは腕輪をはめて飛び立った。


 時間をくれと言った。集中する必要があるのだろう。

 光の混合天法を使うなんて事は、初めてのはずだから。


 俺は深呼吸する。


 攻撃頻度はトワが上だった。甘く見積もっても七対三。


 攻撃を受けていたのもほとんど向こうだ。

 その彼女が抜けた。


 (…。)


 勝算はある。抱っこされて上空にいった時、見えた。

 もうすぐ城壁。王国兵の魔法攻撃の射程が近づいている。


「行くぞ!」


 ここが、正念場だ。

戦いの中で、成長し、新技を閃く!

確か、第一章にはなかった展開。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ