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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第一章 勇者レーラスの魔王討伐記

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第44話 魔王~作戦会議、後半戦~

~前回までのサニア~


ディオルに勝つ為の作戦会議が始まった。

離されない、持久戦も避ける。基本の立ち回り方とかが決まっていく。

切り札はレーラスの幻惑魔法。耐性を破るには動揺させる?ガットルが何か思いついたようだけど?

 ガットルを見る。二人も同様だ。続きを待つ。


「ごめん、まずはシミュレーションを続けさせてくれ。

 戦闘前に笑ったり馬鹿にしても、いつもの軽口や、リラックスする為の手段と思われて流されるはずだから、ちゃんと勇者対魔王戦を始めないといけない。

 俺達がちゃんとあいつの期待に応えられる実力があると示す為にも、膠着状態までは行かないと駄目なんだ。

 その上で、俺が笑う。上手く行って油断したように。

 それで、カッとなったディオルに膠着状態を崩してもらう。

 怒ったあいつは、この後何をする?」


「当然ガットル君を狙うわね。いや、ポジション的に私かも。

 ガットル君は私を庇うから、上手く行けば二人共殺れる。」


「私が邪魔だから、ここで自爆っぽい獄炎ヘルフレイムじゃない?

 私を遠ざけ、その隙に大技を出す。」


「コズミック…、いや、ごめん。

 獄炎ヘルフレイムか、獄炎槍ヘルフレイムランスか…。

 案外、炎槍ファイアーランスを物凄い数連射してくるかも。」


「激昂したディオルの猛攻なんて嫌すぎだわ。

 サニアちゃん助けて~。」

「もちろんよ。全力で助けに行くわ。」


「いやぁサニアそれは駄目だよ。ディオルも僕も、いや、みんな分かる。

 ディオルの攻撃を止める為に、全力で走って来るって。

 見え見えの行動すぎて、ディオルじゃなくても罠を張るね。」


「でも助けに行かないと、二人が危険よ。」

「サニアが串刺しにされちゃうよ!僕は嫌だね。」


「サニアが死んだら、ディオルは動揺する。

 殺したことを後悔はしない、それでも、きっと無自覚に。」


「!?」


 意外だった。ガットルが犠牲前提の作戦を考えるとは思わなかった。

 二人も同じだろう。私達は動揺しつつ続きを待つ。


「全速力で突っ込んでくるサニアを確実に止めるには、獄炎槍ヘルフレイムランスしかない。

 炎槍ファイアーランス獄炎ヘルフレイムは、ダメージは与えられても、勢いを殺しきれない可能性がある。

 レーラスも言ったように、槍で串刺しにするのが、確実なんだ。」


 (直線的な動きには対応しやすいだろうしね…。)


「サニアは即死するかも知れないし、まだ息があるかもしれない。

 でも確認する時間は惜しいから、槍を発火させる。

 もう死んでいても、まだ生きていても、それで確実に仕留められるから。」


「…ふむふむ。ディオルは僕らを殺す気で、致死の攻撃を放つのに躊躇いはないけど、大好きなサニアが絶命した瞬間は、…動揺かは分からないけど、思うところはありそうだから、確かに心は乱れるかもね。」


 レーラスは肯定しているけど、声が怖い。絶対反対な雰囲気を出している。

 この場合私が死んでいるから。ちょっと嬉しい。


「そう思わせる訳ね、ディオルに。」


 クリスタがにやりと笑い、ガットルが頷く。


「サニアの死を偽装する。

 サニアに獄炎槍ヘルフレイムランスの直撃に耐えられる防具を着けてもらい、そのまま当たってもらう。

 ディオルは確実に当てる為に、ちゃんと目で見て狙ってくると思うから、当たった瞬間だけ目撃させて、直ぐに俺の方を向かせる。

 サニアの防具が薄いのは知っているから、当たったらまず貫いたと思うだろう。

 後は発火するだけ、それで確実に殺したと思うはずだ。

 その瞬間に、レーラスが幻惑魔法を使う。」


 どうやら私は死ななくてもよさそうだが、そんなに上手くいくだろうか?


「何点か、いいかな?」


 レーラスが今までで一番真剣な顔をしている。

 ここで間違えると、私は死ぬし、その後きっとみんな死ぬ。


「まずディオルは、自爆っぽい獄炎ヘルフレイムからの炎槍ファイアーランスの集中砲火。

 この戦術を膠着状態になる前に、それこそ開幕使ってこないかい?」


「ディオルは俺達の実力を認め警戒している。

 しかも、レーラスの姿が見えないんだ。無剣を使うレーラスの奇襲は怖いはず。

 だから、無理に攻めてこない。膠着状態になれば、魔力量で絶対に勝てるから。」


 だから挑発する訳だしね。


獄炎槍ヘルフレイムランスの直撃、しかもサニアは全力疾走状態。

 これを防げる防具は本当にある?」


「お客さん、うちの実力をまだ疑っています?

 ありますよ~おあつらえ向きなのが!一発なら確実に、耐えられる。

 サイズも丁度サニアちゃんのお腹ぐらいで、着脱も簡単♪

 でもそっか…サニアちゃんは、全力疾走して腹パンされにいくって事ね。

 ハード過ぎるプレイだわ…。」


「…私が最初から着けていると、バレて警戒されると思うから、着けるのはぎりぎり、獄炎ヘルフレイムで吹き飛ばされた時。

 隠れているレーラスが渡してくれれば…。」


「目印があるといいね、大きな木とか。

 通信機でどこら辺にいるかは伝えられると思う。

 僕は、蜃気楼ミラージュを使う。幻惑魔法の一種で、姿は完全に見えないと思う。

 音制御ノイズコントロールで物音もしない。でも、ちゃんといるから安心して。」


「しかも熱も遮断する訳でしょ?完璧な隠密じゃな~い。

 …思ったんだけど、これ、そのまま奇襲できるんじゃない?」


 私も、それ思った。


「離れていれば平気だけど、近づくとバレちゃうよ。

 重厚な魔力を被っているような感じだから、ディオルみたいに、魔力制御が上手い人にはね。

 無剣の射程までは、いけない。」


 なるほど、無敵ではないか。


「次は、そう、獄炎槍ヘルフレイムランスの特徴だけど、突き出して、その後発火で間違いない?燃えている状態で出てくる事は?」


「魔法の師事中も含めて、突き出した後に発火で間違いないわ。

 技術的に可能かもしれないけど、このタイミングでいつもと違う事はしないでしょう。」


「次にいくよ。槍に突き出されたら、ダメージが何とかなっても、サニアはそのまま飛んでいってしまわないかい?

 ガットルがディオルの目を引き付けていても、熱検索ヒートサーチがあるから、熱源が猛スピードで離れたら、バレるよ?」


「そこも私の仕事かな~。

 サニアちゃんに槍を掴んで飛ばされないようにして、っていうのは鬼畜でしょう。

 防具にオプションを着けるわ。運動エネルギーを殺しきってみせる。

 サニアちゃんは安心して地面に転がっててね。

 熱検索ヒートサーチで分かるのは位置ぐらいだから、見られない限り大丈夫。

 あ、でもその内発火するのか…、頑張って転がって逃げて。」


 …今更何も言わない。命懸けなのは最初からだ。


獄炎槍ヘルフレイムランスでお腹以外を狙われた場合…は、無いね。

 狙うなら一番当てやすく、突進を止めるにも有効な胴体だよ。

 お腹と胸辺りに防具を着ければいい。

 サニアは走る時前傾姿勢だから、ぱっと見だとバレないとも思う。」


 ここまでの事で後は何かないか?心配事は?詰めておくべき内容は?準備は?


 暫くして、レーラスは私を見て、クレスタを見て、ガットルを見た。


「みんな大変だけど、中でもガットル、君だ。」


 私は体力を使うけど、いつもとやる事がそう変わらない。

 クレスタも慣れない距離で、怖いかもしれないけど、慣れない事をする訳でもない。


「幻惑魔法を使う前までの動きは、君が鍵だと言っていい。

 ディオルの視線誘導に失敗すれば、サニアの死亡偽装は成り立たず、僕達は勝機を見出せないまま全滅する。

 君に、任せてもいいかな?」


 ガットルもそれは承知だろう。だから、即答は出来ないのだ。


 ガットルの決意が固まるまで、待ってあげるのも必要だろう。

 でも私は、言いたかった。だから、言う。


「ガットル。」


 信頼して任せるというのは、その結果の責任を共に担うという事。


「あなたに私の、私達の命を託すよ。」


 私はガットルと、みんなと死ぬ覚悟も、生きて帰る覚悟も出来ている。


「任せてくれ。やってみせるさ。」


「うん。任せた。」

「ガットル君カッコいいよ!」


 流れ的にはこのまま決戦に行きそうだが、まだ話す事がある。

 続きだ。


「幻惑魔法を使った後だけど。」


 成功前提での話し合いだ。失敗した後のリカバリーは、ない。


「ちなみにいつも使っているのが真実の嘘(トゥルーフェイク)

 今回有効と思われるのが幻影世界ファントムワールド

 だけど、分かりやすく幻惑魔法で統一するよ。

 使用目的は、奇襲により一撃を入れる事だよね。

 こちらの消耗が抑えられていれば、それで勝てる。

 そもそもガットルはどんな効果を期待していたの?」


「幻をみせて、その隙にバッサリする気だけど?」


「それはいいね。でも残念ながらそこまで便利ではないよ。

 『特定の一人にしか見えない幻』を作る事は出来ないかな。

 例えば、ディオルに斬りかかってくるガットルの幻を、ディオルにだけ見せるなんて事は、無理だよ。

 出来る事は二つ。

 まずは、モノを対象にして、視認情報を誤認させる事。

 机の上に置いてあるリンゴをオレンジに見えるようにしたり、投げた石を爆弾に見えるようにしたり。

 ただこの場合、オレンジを齧ればリンゴの味だし、爆弾は爆発しない。」


 ずっと使っていたレーラスの魔法ね。


「そしてもう一つは、空間を対象にして、ルールを誤認させる事。

 対象範囲がちょっとした異空間になる。

 完成形は、相手の攻撃は絶対こちらに当たらず、こちらの攻撃は必中するっていうえげつない魔法だけど、制御が物凄く大変で、僕はそこまで出来ない。

 とにかくルールを滅茶苦茶にして、敵も味方も攻撃を外しまくる状況なら作れるけどね。

 あと、ちょっとした映像なら相手に見せる事が出来る。

 ガットルに使ったのもこれだよ。

 途中で制御出来なくて、どんな映像を見ていたのか分からなくてさ。

 そろそろ教えてくれるかい?」


「…モウオボエテナイヨ。」


「えっと、空間対象の方を使ってもらって…でも出来る事は時間稼ぎ?後は、回復とか?」


 有効打とはいえないのでは?私は不安になったが、ガットルは自信がありそうだ。


「空間対象はどれくらい持続できる?」

「一分は確実。でも二分は持たない。」


 ガットルは頷いた。


「ディオルは、なぜ自分が幻惑魔法にかかったのか分からない。

 憶測はたてられても、確信は絶対に出来ない。

 分からないから。

 俺達が驚くような事でも、ディオルが落ち着いているのは、それが彼にとっては知っている事だから。

 知っている事が多いから、冷静な事が多いんだ。 

 つまり、幻惑魔法にかかった事による動揺は消えない。

 だから、次も幻惑魔法にかかる。」


 そしてガットルは自分の考えを話す。


 幻惑魔法が切れる瞬間、獄炎ヘルフレイムで先制。

 その後、私とガットルが同時攻撃し、レーラスの姿をしたクレスタが突っ込む。


 そして、本物のレーラスが決める。


 それを聞いた私達は、ガットルの作戦にのる。

 勝てると信じる。


 クレスタを中心に道具の確認をして、約束通り仮眠をとり、朝焼けの中、魔王に挑む。




 そして、私達は勝利した。

ディオルが用意した扉について。

『自覚していないようだが、まだ出来る事はあるぞ。しっかり考えろ。』というメッセージ。

概ね、ガットル達の想像通りです。

ディオルは、シャイニングソードを振り回すレーラスが突っ込んでくると思っていたので、それを防ぎきるか、押し切るかの短期決戦を想定していました。

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