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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第一章 勇者レーラスの魔王討伐記

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第42話 魔王~夜中、目が覚めて~

~前回までのサニア~


魔王の城で、ディオルが自分が魔王だなんて言い出した。

私は怒っているよ?もっといいやり方が、あったんじゃないかって。

ディオルの挑発に乗って、レーラスはすっかり憔悴。今は、ゆっくり休んでね。


時間が少し、戻ります。

*サニア視点*魔王と戦う数時間前*


 私はガットルの声で目が覚めた。


 枕元に置いておいた通信機の電源がONになっていて、そこから聞こえてくる。


 口調は穏やかだったから、緊急ではないだろうと判断。


 OFFにしてそのまま休もうとした所で、ガットルと、レーラスの姿が無い事に気づいた。


 (また、扉に挑みに行ったの!?)


 レーラスの消耗は激しい。

 このままではディオルと、いや、魔王と戦うどころではない。


 おそらくガットルは、自分一人では止められないと判断した時に、私達を起こそうと、スイッチをONにしたのだろう。


 クレスタを起こして、二人で扉に向かった。


 (アレストワ?)


 二人の姿が見えてきた時、ガットルの衝撃の告白が始まった。


 シリアスな雰囲気を感じ取り、とりあえず隠れて様子をみる事に。

 話が進むにつれ、私は後ろにいるクレスタの心境が心配になってくる。


 事前情報として私は、

 1、本物のレーラスが死んでいる事。

 2、今のレーラスがレーラスに成り代わっている事。

 3、今のレーラスは女の子という事。

 の三点を知っている。


 その私でも困惑する内容なのだから、事前情報が全く無いクレスタは、話についていけないだろう。


 ガットルは気づいていない、かもしれないが、今レーラスは、ショックのあまり幻惑魔法が解けている。


 憔悴して儚げな、15歳の美少女なのだ。


 まさかこんな形でクレスタにバレる事になるなんて、いや、誰だお前状態かもしれない。


 私一人で来るべきだったと、後悔していると、肩を叩かれる。


 振り向くとクレスタが、笑顔でサムズアップしていた。

「なるほどね。うん。だいたいわかった。」実際声に出していないが、彼女はそんな顔だ。


 クレスタが、どれほど理解できたかは分からない。


 でも、そわそわしていた私を気遣ってくれたのと、空気を読んで、問いただす事をしないでくれている。それは分かる。


 大人な対応とでもいうのだろうか。

 こういう所は、やっぱりクレスタだと安心する。


 クレスタはそのままジェスチャーで、出ていこうと言ってきた。


 今、ガットルが扉を開けた所だ。

 話も終わったようだし、確かにタイミングな気がする。


 (行くか!)


 まずはレーラスのケアをしないと。

 そう思いながら腰を浮かせた時だった。


「待って!待ってください!!」


 レーラスの声が響いた。


「あなたがレーラスだって信じます。勇者もお返しします。でも!」


 レーラスは、よろめきながら立ち上がる。


「僕も連れてって下さい!」


 ふらつきながらも、ガットルの前へ。


「レーラスでなくなっても、勇者でなくなっても!

 僕に、残る物があります!」


 ガットルはただ、レーラスを見つめていた。


「贖罪の他にも、託されたものが、あるんです…。」


 前まで来たレーラスは膝をつく。


「僕を、あなたの仲間に加えてください。」


 頭を、下げる。


 ガットルがこっちを見た。目があう。


 (なんであなたが泣きそうなのよ?)


「…。」

 (いや、分からないよ?)


 助けを求められても困る。


 またクレスタに肩を叩かれた。

 振り向くと、先程と同じ笑顔のサムズアップ。


 (ほんとに、分かんないんだって!一体ガットルは何に困っているの?)


 私が彼の立場なら、やる事は一つしか思い浮かばないし、迷う事なんてないから。


 ガットルに向けて、私もサムズアップした。


 (ガットルの好きにやって!その結果には、絶対付き合うから!)

 そんな気持ちをのせた。


 それを見て、ガットルは深く頷いて、しゃがみ込んでレーラスの肩を掴む。


「一緒に、行こう。」


 力強く言った。


 レーラスの涙の本当の意味は、私は分かっていないかもしれない。

 

 でも、私の仲間達が、本当に頼もしいという事は知っている。


「いい感じだから、このまま作戦会議でいいかしら?勝つ為の。」


 三人の顔を見ながら、私は提案した。




 一応言っておくと。

 ガットルの話の嘘には気づいている。私は最初から信じていない。


 15歳の私は、レーラスが別人だと言われるまで気づかなかった 

 レーラス以外がレーラスを名乗るなんて思わないから、疑うという発想がなかった。

 舞い上がってもいた。


 その経験も、少なからずある。


 ガットルが実はレーラスだった、なんて事はない。


 レーラスは騙せても私は騙せない。そもそも私まで騙す気はないだろうけど。


 …やばい。自分で思っていて混乱する。レーラスがゲシュタルト崩壊する。


 アレストワ、だっけ。

 今後彼女がどう生きるかで変わると思うけど、今はトワと呼ばせてもらおう。


 私はトワとディオルから、彼女の事情を聞いている。

 トワが、レーラスと一緒にいたのは数週間だ。

 比べて、私は1年間一緒だったのだ。

 

 時間が短いから絆が薄いとは言わない。

 寧ろ、彼女は半生をレーラスに捧げたようなものだ。


 でもだからこそ。

 彼女は、自分が偽物であると強く感じている。本物には決して成れないと実感している。


 でも、認める訳にはいかない。

 レーラスでなければならないから。レーラスが、魔王を倒さないといけないから。

 それが、償いだと信じているから。


 心は乱されたでしょうね。

 本物を名乗る人物が現れたのだから。

 しかも消耗していて、頭もよく働かないような状況。

 

 ガットルはちゃんと勝算があって、嘘をついた。


 嘘をついた理由は明白。

 あのままだと、トワが壊れてしまったかもしれない。

 壊れるまで、走ってしまう子だから。


 だから、レーラスを騙った事は間違いとは思わない。

 結果、穏便に終わらす事が出来たし。


 (後で伝えようかな。ガットル、地味に罪悪感ありそうだし。)

 

 切り替えよう。

 まずは、魔王を倒す。


 ディオルを倒す。


 間違ってはないはず。

 私達はディオルも含めて、その為に旅をしてきた。


 引っかかる事があるとすれば、魔王を倒すとはどういう事なのか、という事。


 私達は旅の中で、魔物以外は倒していない。

 命を奪う行為をしていない。少なくとも私の記憶では。


 可能なら無駄な殺生をしない。これは、口に出さない共通認識だった。


 裏を返せば、必要とあれば命を絶つ。第一優先事項は、魔王の討伐。


 で、あるならば。

 ディオルを殺すのだろうか?私達が?


 これの、現実感がない。


 ディオルはそれを求めている。

 全力の戦いを。


 私達も勝たないといけない。ディオルが敵なら余裕もない。

 剣を振り下ろし、このままだと殺してしまうからと力を緩めたら、死ぬのはこっちだ。


 だから結果、殺し合いになる。


 分かっている。納得している。それでも戦うと決めた。後悔はない。


 なのに。


 やっぱり現実感がない。


 だってきっと、全部が上手くいって、ディオルを拘束とか出来たら。

 止めを刺そうなんて言い出す人はいるだろうか?


 気を遣ったクレスタが言うかどうか、くらいか。


 全力の殺し合いをするけれど、命を奪いたくはない。


 きっとこれが、口に出さない私達の共通認識だ。


 ディオルが生きていても、勇者レーラスが魔王を倒した事にすればいいのだから。

 王国のいう魔王の魔力関係があるが、それこそ話し合って解決策を考えればいい。


 (きっと私があの男をぶん殴って昏倒させるのが、一番いい。)


 決意を新たに、作戦会議を始めよう。

ガットルからレーラスへの、愛のある嘘の告白は、サニアに即バレしたという話。

一時の嘘だから、あんまり引っ張ると、恥ずかしいからね。

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