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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第一章 勇者レーラスの魔王討伐記

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第41話 魔王~決戦~

旅の終点。

決着の時。

*ディオル視点*


『さぁ着いたぞ。ここが今日からお前の家だ。』


『なんだ?魔法の本、無くした事まだ気にしてんのか』


『また買ってやるよ。あ、金無いんだった。』


『また退治屋の仕事引き受けてくるから、ちょっと我慢な。

 いい感じに魔物を強化するのも時間が必要でなぁ。

 マッチポンプも大変なんだ。』


『おいおいおい、どうした、叩くな、痛い痛い。』


『へぇ。お前、魔王を倒す約束なんてしたのか?』


『それじゃぁ、強くならないとな。』


『俺が直々に教えてやるよ。

 そこいらの魔法の本なんかより、よっぽどお前を強くしてやる。』


 どこか抜けていて、常識がなくて、豪快で、強い奴だった。




『おいディオル見てみろ。』


『らじこんって名前らしい。ほら、こうすると動くんだ。』


『そうだ、お前のいう通り魔法を使えば簡単だ。

 しかし!なんとこれ、魔力を使ってないらしいぞ。』


『なんで動いてるかなんて知らんよ。なんか、せつめいしょ?

 に、書いてあるらしいが、字が小さくてな。』


『え、魔力使ってんの?』


『だ、だろ。そうなんだよ。魔力を保存して、持ち運べるんだ。凄いだろ!』


『え、前からある?凄いのは、コンパクト化と保持量の増加?』


『技術は日々進化してるんだなぁ。』


 ガキみたいに笑うやつだった。


 この頃にはこいつが魔王だと知っていた。目的も聞いた。


 ふらっと数か月いなくなっては王国の様子を見に行き、帰ったら王国の自慢話だ。


 天上の国に対抗できる強い国にさせる。

 その状況把握の為とか言っているが、観光で、はしゃいでいるようにしか見えない。


 もういっそ、王国と仲直りすればいい。俺がそう言うと、魔王としての矜持が…、と毎回小声で、何か言い訳をする。




 あの時、俺はバクー王国にいた。


 周年記念のお祭りで、一か月くらい行われる大規模なものだ。


 首都は事故の後処理が未だに大変な状況で、開催が危ぶまれていたが、こんな時だからこそ、と開催された。


 興味はあった。でも、あいつから行ってこいと言われたから、察した。


 勇者が近くまで来ている。

 魔王と勇者の戦いが始まろうとしている。


 正直、今の俺の強さは魔王に匹敵する。


 だから邪魔になんてならないし、寧ろ俺が戦うべきではないか。


 魔王の側近、前座みたいな感じで。


 でも目的は勇者を殺すのではなくて、全力で戦い、勇者の力を測る為だ。


 勇者が死ぬのはその結果。

 40年近く、魔王は無敗。


 そもそも魔王城に辿り着けた勇者は今まで五組。


 しかも今回は仲間のいない、勇者一人。


 俺は魔王の敗北を微塵も考えていなかった。


 最後まで祭りを堪能し、悠々と帰る。


 そして、勇者の死体と瀕死の魔王を見つけた。


『ディオル、まったくお前は、最高のタイミングだぜ。』


『あっぱれなやつだった。

 アトレーナが故郷らしいから、後で連れ帰ってやってくれ。』


『最初に戦った勇者はな、初老の厳ついやつだった。

 気迫が凄かったが、魔法に全然対応できなくて、仲間諸共、直ぐ灰になった。』


『次は、魔法に強い奴だ。かなりのレベルだったが、こっちは魔の王だからな。

 魔法で負けるわけにはいかないよな。仲間諸共あっさり灰になった。

 でもな、一人逃げ帰ったやつがいて、そいつは王国で学校を作った。』


『次は一人だったが、すばしっこいのが来たなぁ。魔法を避けるんだ。

 避けて避けて、斬りかかってきた。そう、一発入れてきたんだ。

 その後灰になったが。』


『次は遠距離で攻めてきた。なかなか見つからなくてな、焦ったんだよ。

 勇者との戦いで初めてな。仲間もよく勇者を守っていた。

 しかも、切り札は接近戦で、傷を負ったんだ。

 灰にした後、俺は手ごたえを感じていた。』


『次は体力と根性の奴だ。魔法を弾きながら近づいてきたな。

 仲間の個々の能力も高く、あれは紛れもなく、魔王と勇者パーティーの戦いだった。

 死体も灰にならなかった。着ていた防具が俺の魔法に耐えやがった。

 それで、燃え残ったんだ。』


『なぁディオル。俺はな。

 油断も、慢心も、侮りも、不調も、手加減も、何もない。

 全力だった。』


『全力の魔王を打倒するくらい、勇者は強くなったんだよ。』


『このまま行けば、きっと届く。

 あの天上の国に…。

 俺達の進んできた道は…間違っていなかった…。』


 満足そうに笑って、魔王は死んだ。


 何を言っているのか、この男は。


 間違っていない、そう思うのはいい。

 学校を建てて、技術の継承をして、強くなった、勿論だ。


 でも、あんたの本心は別だろう。


 戦いたくなかった、もう疲れていた。そうなのだろう?


 だって魔法よりもラジコンが好きで、兵器よりも、扇風機やストーブを絶賛していた。

 遊んでばかりで、衰えはしただろ。全盛期より弱いだろ。


 なにより一度も、俺に魔王を継げなんて言わなかった。


 魔王を終わらせられてよかった、それが本心だろ?


 最初の王国の襲撃で、たくさん人が死んだ。

 挑んできた勇者達を全て返り討ちにした。


 全部、王国を強くする為の、自分の都合だ。

 だから、最後まで魔王で、魔王として倒された。そうだろ。




「でもさ、親父…それは言わないとわからないよ。」


 額面通りなら『このまま行けば』だから、跡を継いでほしいという事だろ?


 恥ずかしかったのか、あの世で先祖に文句を言われるのが怖かったのかは知らないが、最期に格好つけた方にも責任はあるよな。


 俺にも少し心当たりがある。なるほど、親譲りだったか。


 13代目勇者はちゃんと故郷に帰した。

 魔王はどうなったか聞かれたから、健在だと答えた。今は俺が魔王だから嘘じゃない。


 前魔王はこの場所に埋めた。海が綺麗に見えるから。


 ちょうど今、朝焼けでいい感じだ。


 あの扉は、結構前に開いている。ちゃんと勝つ算段を考えているようだ。


 ガットルやクレスタなら気づいているかもしれないが、正直、俺の情緒は滅茶苦茶だ。

 受け取った想いも多すぎて、なにが正解かなんて、解らなくなっている。


 だからもう、後は分かりやすく。


 魔王は終わるのか、続くのか。


 雌雄を決しよう。


 俺は立ち上がり、向かってくる勇者一行に振り返る。


「レーラスが先頭ではないのは珍しいな。」


「色々あってな。今、俺が勇者なんだ。」


 ガットルが先頭で、サニアとクレスタの三人だ。


「夢が叶ったのか。おめでとう。」

「素直に受け取るよ、ありがとう。って話したっけ?」


「お前の情報は、なぜか多いからな。」


 ガットルがクレスタを見て、クレスタがそっぽを向いた。


「レーラスが入れば、あいつの名乗りで始まるが、いないなら仕方ないな。」


 サニアとガットルは駆け出す姿勢で、クレスタは少し下がり射撃体勢になる。


 俺は魔法を使った。


 黒い炎が俺の周りに留まる。表面数センチ離れて動きに追従する炎の壁だ。

 さらに背面から四方向に炎が伸びて、それの先端は竜の頭の形となる。


 混ざった伝承に出てくる魔王。三つの長い首をもつとは、これの事だ。

 まぁ、魔力量で増減するから、俺は四つだが。


 ドラゴンフォーム、獄竜ヘルドラゴン。天と火の混合天法。勿論、上級相当だ。

 

 効果は自己強化だ。

 物理及び魔法防御力上昇。接触したものを焼くカウンター効果。

 黒炎の竜頭で殴れるから近接戦の強化。後は単純に竜頭の数だけ魔法を撃てる。


「いつでも、こい。」


 サニアが突っ込んできた。

 軽く炎槍ファイアーランスを二発撃つ。


 サニアはスピードを緩めない、最小限の動きで躱し、距離を詰める。


 (いい集中力だ。)


 竜頭二本で迎撃にいく。が、一本は動く前に弾け飛んだ。

 クレスタの魔力分散弾だ。初見なのに対応が良い。


 サニアが横を通り過ぎ、爆発と共に竜頭が一本落ちて消える。


 接近はするが、接触しないサニアの戦法は、炎のカウンターを受けないから、俺と戦う上で相性がいい。


 (なら、これだ。)


 残りの竜頭でサニアとクレスタに炎槍ファイアーランスを放つ。


 そして竜頭を修復する。魔力が残っている限り、一秒あれば可能な事だ。


 サニアは難なく躱し、そのまま反転、再び突っ込んでくる。


 クレスタに向かったものはガットルが叩き落した。同時、竜頭が狙撃される。


 (なるほど、これは…。)


 サニアの攻撃を防ぐ為、獄炎盾ヘルフレイムシールドを展開。

 ガットルとクレスタに牽制で炎槍ファイアーランス


 サニアの足が止まったら近距離で殴りつけてやる為、一本の竜頭を振りかぶる。

 サニアは攻撃を止め走り抜ける。無理に攻撃せず、足を動かし続ける。


 (まさか持久戦か?)


 人数差を生かして、絶え間なく攻撃をし、こちらの魔力を削る作戦。


 (防ぎきれると思っているのか?)


 ノールックかつノーモーションで、クレスタに、炎槍ファイアーランスと、獄炎槍ヘルフレイムランスを放つ。


 炎槍ファイアーランスはガットルが移動しながら叩き落し、獄炎槍ヘルフレイムランスはクレスタが移動して避けた。


 (なんでクレスタがこんな近くにいるのかと思ったが。)


 グランド探知ディテクション。土魔法による土魔法の発動を発見する魔法だ。

 地面から飛び出す槍は厄介だ。だから対策してきたという訳か。


 獄炎槍ヘルフレイムランスの発動をクレスタが発見し、通信機で二人に伝える。だから確実に通信圏内にするため、近くにいる。


 (しかし、いい動きをする。)


 クレスタは獄炎槍ヘルフレイムランス以外、避けずに狙撃を続けている。

 ガットルが全て防いでいるのだ。


 クレスタは防御も回避も得意ではない。

 それがこんな距離で戦い続けられるのはガットルへの信頼からか。


 ガットルは防御に専念という訳でもなく、攻撃もしてくる。

 サニアが態勢を崩しそうな時、アサルトフローで突っ込んでくる。


 視野を広くし、三人をよく見ている。


 (強くなった、本当に。)


 サニアはスピードに緩急をつけ、防ぎづらくしてきている。

 クレスタにはいい所でタイミングをずらされる。


 二人に注意しているとガットルが突っ込んでくる。


 (確かに、集中力も魔力も消耗するが。)


 防げないほどではない。


 それに最初に尽きるのはサニアの体力だ。

 このまま持久戦になれば間違いなく俺の勝ちだ。


 (ガットル達の勝機、それは。)


 レーラスだ。

 レーラスを伏兵として潜ませている。


 何度か熱検索ヒートサーチを使ったが、熱源は俺を入れずに三人分。

 だが、フフゴケ商会の商品なら、運んできた荷車の中に、あの中に温度を下げたり隠したりする道具があってもおかしくない。


 熱検索ヒートサーチを使う事は百も承知、持久戦を仕掛けたようにみせ、勝ちを確信した俺の隙をつき、奇襲する。


 (そういう作戦じゃないだろうなガットル?)


 ガットルが、笑った気がした。


 (その程度で勝てると思ってないよなガットル!)


 サニアの攻撃を躱す。そして四つの竜頭から光を出した。


「!?」


 騙線トリックライン。合図用のこの魔法は、発光する。

 四つも出せば、眩しいだろうな。


 一瞬の目くらましには、丁度いい。


 炎槍ファイアーランスをサニアに。動揺したのだろう。後ろに大きく飛んで躱した。


 そうして多少なりとも時間を稼いだ俺は、竜頭四本全てクレスタに向け、炎槍ファイアーランスを全力で連射した。


 ガットルが防ぎにくるが、流石に全ては防ぎきれずに何本かクレスタに向かう。


 左腕と脇腹に炎を纏った固く尖った土の塊が突き刺さり、クレスタは崩れた。

 ガットル自身も被弾している。


 俺は手を休めない。このまま二人を殺す気で、撃ち続ける。


 背後から、殺気を感じる。


 そうだ、このままだと二人が死ぬから、止めないとだよな。


 竜頭一本だけ撃つのを止め、熱検索ヒートサーチを使う。


 レーラスも攻撃する為には出てくるはず。

 しかし熱源に反応はない。レーラスはまだ出てこない。


 なら、予定通りにするだけだ。


 ガットルの表情が変わる。だが、もう遅い。

 だいたいの位置は把握しているが、確実に当てるため、振り向く。


 タイミングは完璧だった。


 獄炎槍ヘルフレイムランスがサニアの胴体に直撃した。

 サニアは運動性能向上の為、防御は薄い。


 ドラゴンを貫く槍にあんな猛スピードで突っ込んだら、

「!」


 ガットルが一気に距離を詰めてきて、竜頭が一本もっていかれる。

 ガットルに向き直り、獄炎盾ヘルフレイムシールドを発動。


 必死の形相だ。手や足に土塊が突き刺さりつつもよくやる。

 残った竜頭三本はそれぞれ、獄炎盾ヘルフレイムシールドと、熱検索ヒートサーチと、獄炎槍ヘルフレイムランスを展開している。


 俺はサニアを貫いたであろう獄炎槍ヘルフレイムランスを発火させた。


「ああああああああ!!」


 サニアの断末魔が響いて、ガットルの力が緩む。

 呆けたそいつを蹴ると、無様に転がった。


 レーラスは出てこない。


 唖然と尻もちをついているガットルと、虫の息で倒れているクレスタ。

 そして獄炎槍ヘルフレイムランスに串刺しにされ、黒焦げになり事切れたサニア。


「俺の勝ちだな。」


 呟いて、ガットルの眉間に炎槍ファイアーランスを放った。

 ガットルは避けなかった。


 炎槍ファイアーランスは、瞬く間にガットルを貫き、いや、貫いた瞬間ガットルが消えた。




「!?」


 見ると、クレスタもサニアもいない。

 辺り一面白い靄に包まれた。


 (これは…?)


 本当に何が起こったのか分からない。


 分かるのは、魔力が上手く操れない事、それにより獄竜ヘルドラゴンが解除された事、新しく魔法が発動できない事、手足も上手く動かせず、平衡感覚がおかしい事。


 (幻惑魔法か…!)


 ここまできて、ようやく思い当たった。


 魔の王が聞いてあきれるかもしれないが、天法を使える者は、幻惑魔法に耐性がある為、かかった事など一度もなく、かかるという発想がないのだ。


 何処かにいると思っていたが、やはりか。


 (やってくれたな、レーラス!)


 信じ難い事だが、現状が証明している。

 レーラスは耐性を上回るほどの幻惑魔法使いとなっていた。


 (伊達に毎日使い続けた訳ではないという事か。)


 しかしこの魔法、俺を中心に発動しているようだが、狙いはなんだ?


 俺は確かに魔法が使えない。しかし、おそらく相手も同じだ。


 遠距離から、放たれた魔法は俺に届く前に霧散する。

 アサルトフローで突っ込んできても、俺に近づけば平衡感覚が狂い行動不能になるだけだ。


 おそらくだが、石を思い切り投げ入れても真っすぐ飛ばずに、あらぬ方向に行くだろう。


 専用の異空間と化している、そう言う魔法だ。

 こちらも相手も攻撃が出来ない…そうか。


 (狙いは、回復と一斉攻撃の準備か。)


 その為の時間稼ぎ。

 とは言え、これほどの効果の魔法の持続、魔力消費も大きいはずだ。


 持って数分。


 ならばこちらも考えるだけだ。相手の出方を。


「ディオル…。」

「レーラス。」


 幻影だろう。しかし今、目の前にいて、会話は出来る。


「四対一は卑怯かな?」


 わざわざ出てきてまで言う事はそれか。


「安心しろ。連携出来るというのも力だ。

 前勇者が一人旅だったのは、合わせるのが出来なかったからだ。

 そして俺もだ。獄竜ヘルドラゴンの炎は味方を巻き込む。」


「よかった。」


 心底安心した顔の後、表情が、雰囲気が変わる。


 そして周りの空間に、輝く亀裂が無数に生まれる。


 さあ、決着の時だ。


「僕達は、魔王を倒す!」

「受けて立つ。かかってこい!!」




 白い靄が晴れると同時に黒い炎に包まれる。

 獄炎ヘルフレイムだ。


 防御はしない。ダメージは構わない。まずは熱検索ヒートサーチ


 近くに二人。


 獄炎盾ヘルフレイムシールドを両手に一つずつ展開。


 獄炎ヘルフレイムで相殺は隙が大きくこの後の本命をくらう。

 獄竜ヘルドラゴンも駄目だ。発動に二秒。


 それだけあれば、これをくらう。


 黒い炎の中、サニアが現れ、手を突き出した。右手で防ぐ。


 (ガットルお前は、上からだよな!)


 サニアの爆発と同時に、振ってきたガットルが剣を叩きつける。左手で防ぐ。


 そして、両手が塞がった状態で、黒い炎の中から飛び出したのは、

 (レーラス!!)


 アサルトフロ―がここぞとばかりに火を噴いて、左の負荷が上がる。


 (読んでいたとも!)


 ガットルの頑張りは俺の左手を封じているが、サニアのゼロ爆発エクスプロージョンは、強力だが瞬間火力。

 つまり、その瞬間の一撃さえ防げればよい。


 右手の獄炎盾ヘルフレイムシールドを解き、サニアの突き出された右手を掴む。


「うぉお!!」


 掛け声とともに、そのまま引っ張り、レーラスにぶつける。


 そのまま手放し、転倒した二人に向けて炎槍ファイアーランスを、


 炎槍ファイアーランスを放とうとした右腕が、宙を舞った。


 黒い炎を、俺の右腕ごと切り裂いて、現れたのは、

 (レーラス…だと!?)


 俺は両足で獄炎ヘルフレイムを放ち、爆風で無理やり距離を取る。


 (最初の奴は、クレスタか!?)


 幻惑魔法、これほど厄介だったとは。悔みながらも魔法を、獄竜ヘルドラゴンを使う。


 (ガットルもやるな。しかし!)


 脱出の際、左手を斬られた。これで両手を負傷した訳だが、

 (まだ手は、四本ある!)


 レーラスが追撃の為、迫ってくるが、俺の獄竜ヘルドラゴンの発動が先だ。


 獄炎ヘルフレイムをレーラスに向けて放つ。


 しかし、それは途中で爆散した。


 (相殺しただと!?)


 ガットルだ。

 ガットル渾身のブラック火球ファイアーボールは俺の獄炎ヘルフレイムをかき消した。


 魔力を使い果たしただろうガットルが倒れるのが見えるが、レーラスの距離が詰まった。


 獄炎ヘルフレイムで、また距離をとる事も考えたが、駄目だ。


 右腕は肘あたりで切断されている。

 魔力で無理やり止血しているが、血が止まった訳ではない。


 これ以上俺が離れたら、レーラスは追うのを止めればいい。

 仲間を回収して、防御に徹すればいいのだ。俺の意識が飛ぶまで。


 持久戦は今や相手が完全に有利。


 寧ろ、レーラスが突っ込んできてくれている今が、勝機。


 (まだ、お前の攻撃範囲じゃない!)


 炎槍ファイアーランスを叩き込もうと、全ての竜頭をレーラスへ。

 瞬間、体に強い衝撃を受け、態勢を崩し転倒した。


 刹那、俺は思い出した。レーラスの訓練に付き合った時だ。




 『これが、無剣。勇者の必殺剣だよ。』


 『確かに、お前の間合いになれば無敵かもな。』


 『なんか、含みがあるね。』


 『攻撃範囲がそこまで広くないからな。

 俺が敵なら、まず距離をとり、お前を近づけさせない。』


 『むむむ。確かに、ディオルの魔法を全部避けながら接近するなんて、出来る気がしない。』


 『そうだろ?』


 『でも僕には仲間がいるからね。その時はサニアに助けてもらおうかな。』




「!?」


 俺が顔を上げると、サニアが近くで倒れていた。

 ここまで走って、体当たりしたのだ。


 痛みに耐え、立ち上がる。もうサニアに構っていられない。


 なぜなら、もう既に。


 (無剣の、距離か!)


 四つの竜頭その全て、死力を尽くし迎撃を試みる。


「うおおおぉお!」


 炎槍ファイアーランスを、獄炎槍ヘルフレイムランスを、獄炎盾ヘルフレイムシールドを。


 竜頭による連続攻撃、更には俺ごと巻き込んだ獄炎ヘルフレイムまで、レーラスは捌ききった。


 技術の粋。その動きは、見事の一言。

 見とれるほどに美しい。


 これが勇者の、いや、お前達が頑張ってきた、結果か。


 レーラスの振り下ろした一撃は、獄竜ヘルドラゴンを砕き、そのまま俺に叩きつけられた。

戦いはお終い。

物語は、もう少しだけ。

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