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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第一章 勇者レーラスの魔王討伐記

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第38話 告白~前編~

決戦前といえば、暴露大会(笑)。

*ガットル視点*


 泣き声が聞こえる。


 あぁ、やめてほしい…。


 許してほしい…責めないでくれ…。


 身体だって動かないんだ…。


 しかし、女の子の泣き声は止まらない。


 何処にも希望は無く、絶望しきった声。


 ひたすらに、悲しい声。


 聞いているこっちだって、悲しいじゃないか。


 なんとかして、この泣き声を止めたくて。


 その手を握った。




「おはようガットル。」


 ぼんやり焚き火を見ていた俺は、勇者に声をかけられる。


「おはよう。何か進展はあったか?」


 辺りは薄っすらと明るくなってきている。

 つまり見張りの交代の時間だ。


「ないね。本当に誰もいないのかもしれない。」


 準備を整え、指定の場所へ。ここからなら、よく見える。


 俺達の旅の終点、険しい崖の頂上に位置する魔王の居城が。



 

「丸二日様子をみたが、人はもちろん魔物の出入りも無い。

 探知魔法も使ったが、熱源、音、動きも無い。魔王の存在は確認できていない。」


 その日の夜、俺達は焚き火を囲んで、今後の方針を話し合っていた。

 ディオルが今までの成果を簡単にまとめる。


「城内は魔物でいっぱい!なんて事になってない訳だから、よかったんじゃない?」


 クレスタの意見はもっともだが。


「城内どころか、レーグ半島全域、魔王の魔力に寄ってきた魔物だらけって話だったじゃない。これは異常よ。」


 俺達がここから動けないのはそれだ。


 サニアの言う通り、不気味過ぎる。しかし、

「もう中に入るしかないよ。これ以上ここにいても分からない。」

「勇者に賛成だ。俺達は魔王を倒しに来たんだから。」


 虎穴に入らずんば虎子を得ず。という事で、明け方に討ち入りが決まった。


 今日はゆっくり休み、明日に備える。

 夕食は豪勢に!朝食分だけ残して、後は全部使う!


 そうサニアは意気込んでいたが、帰りもあるからって説得して止めさせた。

 それでも野営食としては、過去最高に豪華だ。


「最後の晩餐♪最後の晩餐♪」


 勇者は楽しそうだった。緊張しすぎよりはいいだろう。

 最後の夜は、そうして終わった。




 そして明け方。


 俺が起きると、トラブルも起きていた。

 ディオルの姿が見えないらしい。


「つまり私と交代した時が、最後の目撃って事ね。

 変わった所はなかった、いつも通り。たぶん。」


「あの男も今まで、見張りをすっぽかした事はない。何かあったのよ。」


「でも、何があったかは分からない。今の行方もね。」


 朝食を食べ終わっても、ディオルは戻って来なかった。

 それでもしばらく待ってみたが、戻って来ない。


「行こう。」

 勇者が言った。


 襲われて倒されたのだとしたら、俺達が無事なのはおかしい。


 最悪は峡谷に落ちたとか、不測の事故の可能性だが、探している時間はない。 


 それにディオルならそんな事はないだろうと仲間全員が思っていた。


 ではなぜ、ディオルはいないのか。

 この事実は、不測の事態が続く現状を、より不安にさせた。




 商会の人に来てもらう訳にいかないから、荷車は俺達で動かしている。

 今まで二人警戒の三人で運んでいたが、今は二人で運んでいる。


 この足場の悪い、傾斜をだ。重いし、辛い。


 食料の他に、使えそうな商会の商品がたくさん載せてある。

 いつかのパラシュートもある。


 もともと途中で放棄する事も覚悟の上だったはず。


「クレスタ…少し…減らさない…か!?」

「こんな状況だから…何が必要か…わからない…でしょ!」


 そう言われたら、反論できない。


 そんなこんなで俺達は、魔物に一体も出会わず、魔王の城の前まで来た。


 遠くからだと特になんとも思わなかったが、近くでみると、なんというか少し拍子抜けした。


 確かに立派な建物だが、城というよりはデカい宿屋くらいの大きさだ。


 王国の王宮より大分小さい気がする。

 威圧感ならキッドニの城壁の方があったのではないか。


 荷車を固定して、中へ。


 扉を押し開ける時、嫌な音がした。

 壊れているのか、どこか錆ついているのかはわからない。


 中は暗い、クレスタが明かりをつけた。

 奥の方にデカいイスがあり、誰かが座っているようだった。


 勇者を先頭にゆっくり進む。


 だんだんと座っている人物が見えてくる。


 いつの間にか近くにいて、よく驚かされた。

 しかしこんな悪趣味な悪戯は、しない奴だ。


 辺りがいきなり明るくなった。火属性の魔法だろう。


 俺達の姿もイスの人物の姿もよく見えるようになった。


「ようこそ。我が城へ。」


 そいつは立ち上がって、言った。


「我こそは4代目レーグの魔王、ディオル。」


 剣を、俺達に向けた。


「さぁ始めよう。勇者と魔王の宿命の戦いを。」


 ガン!っと音がした。


 勇者が鞘に納めたままの剣を、突き刺すように床を叩いた。


「断る!」

 凛とした声が響いた。


「ん?」

 ディオルがきょとんとした。


「僕達は魔王を倒しに来た!でも君が魔王か疑わしい!説明求む!ディオルと話がしたい!」


 混乱するより怒りが勝ったのだろう、若干鼻息が荒い気がする。


 勇者の頼もしい姿に心の中で拍手した。


 数秒の間の後、

「はぁ。」


 ディオルが剣を放り捨てた。


「こちらへどうぞ。勇者御一行様。」


 ディオルの後を俺達はのこのこついていく。


 いや、勇者もサニアもクレスタも顔が怖い。当然といえば、当然か。


 通された所は、会議室のような部屋だった。

 長机もイスもあり、簡単にだが掃除した形跡もある。


 ディオルがやったのだろうか。


「茶も茶菓子もないんだ。悪いな。」

「お構いなく。」


 俺達は勝手に座った。


「いい格好だね。似合っているよ。」


 いつもとは違うローブ姿。黒を基調に金の差し色が入っている。

 魔王っぽさを意識したのだろうか。


「よかった。気に入っているんだ。」

「嫌味だよ。」


 長い付き合いだが、こんな棘のある勇者は初めてみたかもしれない。

 ディオルも若干気落ちしたような様子だ。


 こんな状況でなければ同情する。


「で、何が聞きたい?俺としては、さっき言った事が全てだ。」


 拗ねるなー。お前が招いた事態だー。


 勇者もサニアもクレスタも不満そうにしているだけで、口を開かない。

 まさかこの五人で、俺が回す事になる日が、来るとは。


「いつから、魔王に?」


「王国に行く前だな、二年と半年くらい前か。

 ハダラバとか言ったか?13代目の勇者に、前の魔王が討たれた。

 相打ちだったな。」

「!?」


 これには全員息をのんだ。

 勇者を見る。ただただ驚いているようだ。


「なぜ、魔王に?」

 俺は質問を続けた。


「ガットルにはそれとなく伝えたか?

 俺は天法が原因で、とある町で迫害されていた。

 町の名前は忘れたが、アッブドーメンより西だったな。

 そこを魔王に助けられた。以降は魔王が親代わり。

 俺は親が死んだから、跡を継いで魔王になった。」


「魔王に魔法を教わったんだ?」

 勇者が呟くように聞く。


 嫌味ではなく、純粋な質問だろう。声から怒りが消えている。


「その通りだ。しばらく放浪していてな。王国にも行った。

 そこで、レーラスと会った。

 その時は俺を連れまわしている奴が魔王だと知らなくてな。

 レーラスの熱意に押し切られ、魔王討伐の約束をした。」


 ディオルが小さく笑った。

 当時を思い出して懐かしんだのか、それとも当時の無知な自分を嘲笑したのか。


「路銀が尽きたから、この場所にやってきた。俺は初めてだったが、魔王的には帰郷だな。

 それからは約束を果たす為、必死に修行した。まったくあの魔王は、どんな心境で俺を鍛えたのか。」


 ディオルが楽しそうだから、次の質問は自然に出た。


「そもそも魔王って、なんなんだよ?」


 話を聞く限り、どう考えても、人間じゃないか。


「魔王とは、か。

 共通しているのは、膨大な魔力を保持しているって所だな。

 王国の謳い文句にあるだろう?

 【魔法は魔王を生み、魔王は魔物を造りだした】というのが。

 魔法を極めようと魔力を高めた者を魔王、その魔力に適応した魔物は、より強力で狂暴になる。そういう意味だ。

 倒されたり、辞めたり、新しく生まれたり。現在の魔王の数は四体。成り立ちと目的は魔王ごとに違う。

 俺達、レーグの魔王の目的は、『天上の国』に対抗できる力をつける事だ。」


 天上の国…聞いたことはない。

 でも確かディオルは、天法の事を、天上の魔法と言っていた。


 俺やディオルの天法と、関係があるのか?


「天上の国とは、異世界の事だ。」

「!」


 クレスタが反応した?俺はピンとこなかったが何か知っているのか。


「距離を移動しただけでは辿り着けず、別次元に存在し、こことはルールの異なる世界。らしい。

 魔王の中には詳しいやつがいると聞いたが、俺は詳しくは知らない。」


 そういう世界?があるのか。うまく想像出来ないが。


「大昔に、天上の国はこの世界に接触してきたらしい。

 次元の壁を越えてな。

 魔導超兵器や天法は、この天上の国からもたらされたものだ。

 俺達の先人達はさぞ混乱し、大いに恐れただろう。

 明らかにオーバースペック。格が違う技術と魔法。

 仮に、侵攻でもされたら、勝ち目はゼロだ。

 幸いな事に天上の国はそれ以来、特に接触はしてきていない。

 先人達は魔導超兵器を地中に埋め、天法をひた隠しにした。

 触れたくないタブーとなった訳だ。

 まぁ天上の国という名称は忘れられても、魔導超兵器は掘り起こされ、天法を習得した者の子孫が、天法を使うなんて事にはなっているがな。」


 例えるなら、小さな島国に住んでいたら、海の向こうから知らないデカい船がやってきたようなものか。


 果たしてデカい船はなぜやってきたのか。

 その後きていないという事は、来た事は事故な気もするが、流石にわからないか。


「ディオルは、なんで詳しいの?」

 勇者が聞いた。


「さっき、天上の国に対抗できる力をつける事が目的だと言っただろう。

 存在自体がタブーとなったその国を、敵視している者達が集まった場所。

 それがレーグ半島であり、天落峡谷だ。だから、ここではちゃんと伝わっている。

 なぁガットル。王国の、風鳴洞窟のドラゴン覚えているか?

 あの時話した内容。」


 急に振られた。もちろん覚えているが、色んな事を話たから、

「どれの事だ?」

 聞いた。


「ドラゴンとは意思疎通が出来ない。」


 あれか。

「今は何もしてこなくても、こっちはなぜ何もしてこないか分からない訳だから、相手次第で、いつ襲われてもおかしくない。」


「そうだ。

 正直タブーにした当時の人達の気持ちも分かる。

 天上即ち神の国。神の怒りに触れたなら、天変地異の大災害。

 抗う事など無意味。怒りに触れないよう、遠ざけ、ただ祈るのみ。

 だが、諦めの悪い奴らはこの場所で、対抗できる魔力の研究を続けた。

 神に挑む訳だからな。他国で禁止されている方法もばんばん試した。

 全盛期には魔導超兵器が三体あったらしい。今は一体もないけどな。

 研究の末、200年前、彼らは遂に、魔王を誕生させた。

 滅茶苦茶な研究の代償か、その頃には片手で数えられる人数しか残ってなかったらしい。」


「200年前が初代で、ディオルは4代目なんだ?」


 さすが勇者。怒っていてもちゃんと聞いていて、覚えている。


「膨大な魔力を制御出来る奴は長命みたいだな。100歳でも現役いけるらしい。」

「ディオルは、なんで僕達と旅をしたの?」


 そうだよな。壮大な歴史に圧倒されたが、俺達に関係あるのはそこだよな。


「魔王は強かったが、それでも、天上の国とやりあったら勝てない。

 しかし、天落峡谷に研究機関としての力は、もはや無い。

 初代、そして2代目の魔王は何とか一人でも強くなれないか試したが、いい成果は得られなかった。

 言い忘れたが、魔王の強さは土地込みでもある。

 周辺の魔力との相性、というか周辺魔力の質を自分の都合のよい物に変えている。

 自分のテリトリー内が最強で、そこから離れれば離れるほど弱体化するイメージだな。

 だから、他の魔王勢力と協力なんて事はない。

 まぁ目的も違うしな。

 話を戻すと、先代の経験から、一人で強くなる事に限界を感じていた3代目魔王は方針を変えた。

 俺達の目的は、最強の魔王の誕生ではなく、天上の国に対抗する力をつくる為だからな。

 魔王を打倒出来る力を持つ国。それが複数あれば、それは、十分に対抗する力となるのではないか。

 そう考えて王国に喧嘩を売った。王国には勇者の伝承があるしな。

 もともとあれは、天上の国に一矢報いた者の事だ。

 今ではその伝承に、ここの魔王の事が混じっていて、カオスだな。

 ともあれ新生初代勇者が生まれた。40年前の話だ。

 そして38年後の13代目にして魔王打倒はなったが、俺は疑問だったんだ。

 魔王を打倒した勇者は強い。

 だが、それはその勇者が強いだけで、次の勇者も強いとは限らないだろ。

 ましてや、それで国が強いといえるのか?

 だから俺は王国に行った。

 先代魔王の目論見は上手くいっていたのか確かめる為にな。」


 ディオルが俺達の顔をみて、笑った。


「結果、王国は強い事がわかった。武力は周辺国どころか大陸でも上位だろう。

 学校も機能していて後進も育っている。

 魔法の衰退は誤算だが、過程はどうであれ、力を持つ国だ。」


「勇者は、僕達はどうだい?」

「…強いな。この旅も悪くなかった。」


 ディオルは目を閉じ、考えをまとめているようにも、次の言葉を、発する覚悟を決めているようにも見える。


 俺達は待った。

 数秒だが、長く感じた。


「俺が死ねばレーグの魔王は終わりだ。後継者がいないからな。

 お前達が俺に勝利し、帰って報告すれば、王国、ひいてはフフゴケ商会は、魔王を倒した実績を押し出し、貿易やら商売を進めるだろう。

 魔王が邪魔な他の国は食いつくだろうな。結果強い国が増え、俺達の目的に近づく。

 それでもいいかと、思ってもいた。だがな?」


 空気が変わる。哀愁、かな。


「眺めていたら、懐かしくなってな。

 つい足を運んで、適当にぶらついて、気になった所を掃除して、ほったらかしてた割にはキレイで、あの時とそんなに変わってなくて、そして、玉座に座ったりしたらな。

 思い出したよ。俺は、あいつの事、魔王の事な。

 好きだったよ。憧れていた、ヒーローだった。」

「…。」


「さっき言った御託は全部どうでもよくなってな。

 数時間前、ようやく俺は気づいた。ただ悲しかっただけだ。

 相打ちでも、ヒーローが倒された事に。

 悲しさを紛らわす為に、それっぽい目的を掲げて王国へ行っただけだ。

 ヒーローの後継者と、ヒーローの敵の後継者が再戦するとしたら、どっちに勝ってもらいたい?

 お前達を倒す為、玉座に座って待っていたという訳だ。」


 俺はディオルを責められない。

 土壇場で駆け出して、勇者の仲間になりたいと言った俺には。


 勇者なら反論しそうだと思ったが、今は俯いていた。


「しかし、そうだな。」

 ディオルが立ち上がった。


「ここに戻ってきた俺は強い。歴代魔王最強だと思っている。

 苦難を共にした元仲間を一方的に虐殺するのは…。」


 爆発した。ディオルが。

 火桜だ。クレスタの。


 爆風で比較的近くにいた勇者がイスごと吹っ飛んだぞ。


 長机もバラバラで、破片が痛い。

 室内で使うやつじゃないだろ!しかもこのタイミングで使うか!?


「玉座の後ろに扉がある。その先は屋外へ続いている。自慢の絶景スポットでね。」


 ディオルは無傷だ。いや、ディオル周辺の壁とかも。


 一瞬、獄炎ヘルフレイムの炎が見えた。

 おそらく勇者が自慢気に話していた、獄炎盾ヘルフレイムシールドだろう。


「俺はそこにいる。もし、扉も開けられないようなら帰ってくれ。

 戦いにならずに虐殺になるからな。

 本当の勇者なら、扉を開ける事が出来るだろう。」


 手をひらひらさせて、ディオルは去って言った。

ラスボスとなったからには、衝撃の真実を言わねばなるまい。(趣味)

小難しい事を言わねばなるまい!(偏見)

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