第37話 勇者~幕引き~
~前回までのレーラス~
13代目勇者との思い出をガットルに話した。そして三年前の事故現場に到着した。
そこで、謎の集団を発見する。
真相を思いついたから、その考えを披露する。好きな本に出てくる、探偵のようにね。
勇者編、山場。そのまま最後まで。
「この町の謎は二つ。
なぜ勇者達を招いたのか。そして、何を隠しているのか。」
うん、雰囲気はあるぞ。続けよう。
「おそらく発端は三年前。
キッドニはこの場所で魔導兵器の研究をしていた。
魔法の発展の為にね。
けれど、その魔導兵器は暴走した。町にまで被害が出るような、やばいやつ。
それを止めたのが、勇者だ。」
ガットルが息をのむ。いい反応をありがとう。
「ここは魔王城に行く途中にあるからね。街に滞在していてもおかしくない。
勇者は魔導兵器を、機能停止させた。
破壊はしてはいないね。
何体も発掘できるような物でもないし、キッドニは発展を続けているし、勇者への当たりが強くない。
流石に事故直後は大変だし、余裕もないから、勇者は逃げるように町を出たか、もしかしたら追い出されたかもしれない。
でも復興が進み、元の生活に戻り始めた頃、勇者への感謝と、ぞんざいに扱った謝罪の気持ちが出てきたと思う。
次の勇者が旅に出るという情報を得て、寄って欲しいと打診するくらいには。」
一瞬ガットルに、明かりで照らしてもらおうかと思ったけど止めた。
あんまり格好つけると、間違った時、恥ずかしいからね。
「そしていよいよ勇者が来る事になり、先に来ていたフフゴケ商会の商会員も抱き込み、盛大な歓迎会を企画、準備をしていた。
しかし直前、おそらくほんの数日前、トラブルが起きた。
魔導兵器の調子がよくない。また、暴走の危険がある。
魔導兵器の研究は別の場所で続けられているはずだからね。
町の発展の為にも、暴走の原因究明の為にも。」
キッドニの南方の廃村で、僕達がゆっくりした理由。の予想だ。
「そこで、町の意見は二つに分かれた。
ちょうど勇者が来るわけだから、また、何とかしてもらおう派と、感謝と謝罪に招くのに、利用するような真似が出来るか派、だね。
研究を続けているから三年前とは違う、俺達で何とか出来る信じろ派、もいたかもしれない。
結局意見はまとまらず、変に邪推したり、勝手な憶測まで流れだしたかもしれないね。
そんな中で、勇者を招く事になってしまった。
町の人はさぞ困惑しただろう。どんな反応が正解か解らず、固唾をのんで見守ることしか出来なかった。」
町に入った時、集まってくれた道の脇の人達がピリピリしていた理由。の予想だね。
「そして今日、歓迎会当日になっても、事態は解決していない。
寧ろ悪くなっている。暴走阻止の手がかりを求めて、捨てた研究所跡を探しにくるほどにはね。
どうかな?そこの隠れている人たち。」
物陰から三人の男性が現れる。
ガットルが僕の隣に立つ。
僕は既に満足したから、違いますと言ってくれてもよかった。
ガットルに、舌を少し出して、間違っちゃった~って言う準備はあった。
しかし今回僕は正解できたらしい。
男の人に助けてくださいと泣きつかれる。
当然僕は快諾する。
場所と方角と距離を聞いた。近づけばすぐ分かるとの事なので大丈夫だろう。
ただ、結構遠いから、ガットルに頑張ってもらう必要がある。
「任せろ!」
ガットル、カッコイイよ。
気を付けて帰ってね、と三人に手を振った所で、アサルトフロ―が火を噴いた。
アサルトフローは本来空を飛ぶ為のものではない。
無理やり空を飛ぼうとしたら、発射、跳躍、着地を何度も繰り返す事になる。はずなんだけど。
ガットルはこの旅で魔力制御レベルが、各段に上がっている。
多少、揺れる事はあっても、紛れもなく空を飛んでいた。
僕は凄く楽しかった。
目的地に到着した時、ガットルは倒れた。
震えながらサムズアップしていたので、元気よく、ありがとうと言って走り出す。
研究所の中はパニックでクライマックス、なんて事はなく、平静そのものだ。
外でだべっている研究員に事情を話して中に入れてもらう。
ガットルが頑張ってくれたおかげで十二分に間に合ったようだ。
研究所の偉い人と今後について話す。
専門的な事は分からないし、歓迎会までに戻りたいから、今、力業でどうにかならないか相談した。
偉い人達で集まって、少し内緒話をした結果、今僕は、人型の魔導兵器と対峙している。
暴走させないように頑張っていたけど、逆に今、暴走させるんで止めてください。
簡単に言うとこんな感じだ。
「勇者様~。準備はよろしいですか~?」
「いいよー。」
なんとも緊迫感のない感じだが構わない。
僕的にクライマックスはさっきの推理モドキパートだから、あとは消化試合だ。
とは言え、相手は暴走状態の古の魔導超兵器。
油断していい相手ではない。
僕は剣を構える。起動を確認したら、名乗りを上げて攻撃開始だ。
僕は相手が、人でも魔物でもドラゴンでも兵器でも名乗るようにしている。
『必殺技名を叫ばないのか、だって?』
ハダラバの顔が浮かんだ。
『ハダラバそういうの好きそうじゃない?
むけーん!って。ハダラバでも叫ぶのは恥ずかしいの?』
『は~お前はほんっとうに分かってないな。』
『何だよ?』
『必殺技を叫ぶっていう行為はな、誇りと自信の証明なんだよ。
これこそが俺の技。
これこそが受け継がれた技。
これこそが磨き上げられた技術の粋。
敵も味方も自分自身にも、見る者全てに宣言するって事なんだ。
必殺技名を叫んで恥ずかしい時は、まだその域に達していなかったり、そもそも出すタイミングがおかしい時とかだな。』
『じゃあハダラバはまだ無剣を使いこなせていないんだね。』
『ち~が~い~ま~す~。
無剣はさ、特性上全てをみせないんだ。
だから、これが無剣だって出しても、無剣であり、無剣ではない。
無剣は俺達勇者の生き様だ。
ただ一つの目的の為に、試行錯誤の連続。
大半が無駄になる。でも、一つでも届けばいい。
俺達はそんな無駄になる想いも全部抱えて、魔王に挑むのさ。』
『…。』
『だから、俺達が叫ぶのは技名じゃない。
無剣を使って倒す時、その時、俺達が叫ぶのは、俺達が【勇者】であるという事だ。』
魔力の蒸気がいたる所から噴き出して、頭部の目の辺りが不気味に発光する。
僕は一歩を踏み出した。
「僕はレーラス!14代目の勇者にして、魔王を倒し、時代を次に進める者!」
駆ける、そして僕は飛んだ。
歓迎会には間に合った。最優秀賞はガットルにあげたい。
魔導兵器も無事だ。ちゃんと言われた所を壊したし、それで止まった。
ただ、正しい止め方だと思わない。また三年後とかに暴走すると思う。
だからその辺りはクレスタに相談して、何とか出来そうな商品はないか聞いた。
めちゃくちゃ渋い顔の後、持ち帰らせてもらいます~。と言っていた。
歓迎会は立食形式だったから、サニアと一緒に回った。
ガットルとも行きたかったが、辛そうだから寝かせてあげた。
お土産は包んであげよう。
ディオルは街の人と楽しそうに話している。こんな姿はレア中のレアだ。
きっと魔法の話で盛り上がっているのだろう。
途中一言求められたから、元気よく、「魔王を倒します!」って言った。
拍手は貰えたが、微妙な顔の人もいて、そういえば魔法大国だったと思い出し、サニアに呆れられた。
楽しくてつい、頭から抜けちゃっていたよ。
最後の方に魔法の出し物があった。
星の光をかき消すほど、夜空いっぱいに花が咲いた。
隣でサニアが「きれい…。」って呟いたから、思わず「君のほうが、きれいだよ…。」って言いそうになった。
でも茶化すのはやめた。本当に綺麗だったから。
「そうだね。」って呟いて、一緒に空を眺めていた。
翌日、僕達はキッドニを後にする。
出てすぐに、そういえばサニアにプレゼントを買っていない事に気づいた。
距離的には一人で往復ぐらい出来そうだが、街の人にも見送られた手前戻りづらい。
どうしようかと唸っていたら、
「レーラス、大丈夫?」
サニアに心配された。
サニアへのプレゼントで悩んでいたから恥ずかしい。
どうやって誤魔化そうかと思っていたら気づいた。
サニアの顔が少し固い。
見ると、ガットルとクレスタも固い。ディオルは欠伸をしている。
そこで理由に思い至った。
キッドニを越えたから、次はいよいよレーグ半島。
魔王領だ。魔王の居城は近いのだ。
「実は、ガットルを泣かせてしまってね。どう償おうか考えていたんだ。」
「はぁ!?」「えー…。」「ほほう…。」
僕達の旅もあと少しで終わる。
「しかも二回も…。」
「勇者様!?」
「この反応はガチっぽいわね~。」
僕達の結末はあと少しでわかる。
「ガットル…。」
「サニア止めろ!そんな目でみるな!」
どうなるかはまだ分からない。
どうせなら、騒がしくて楽しいのがいい。
後でちゃんとフォローするから、今だけちょっと許してね。
勇者には、たっぷりベッドで休んでもらった事ですし、次はいよいよ魔王領。
最後の戦いは、近いです。




