第33話 勇者~お見舞い~
~前回までのレーラス~
発熱して、入院した。
暇だったから、ディオルとお喋り。新必殺魔法を開発した。
はしゃいでいる所をサニアに見られた。き、気まずい…。
病室での話、その2。
ベッドの横にある机の上に、暖かそうなシチューが置かれた。
その横に腰掛けたサニアは、今、リンゴを剥いてくれている。
「…。」
「…。」
サニアとの沈黙は心地よくて好きだけど、今日は何か緊張感がある。
言葉のチョイスを間違えるわけにはいかないと、僕の直感が囁いている。
サニアが不機嫌な理由は明白だ。
高熱で騒いでいた僕と、そんな僕を止めなかったディオルに怒りを感じている。
一瞬、全ての罪をディオルになすりつける案が浮かんだが、却下だ。
共にコズミックヘルブラスターを完成させた友を裏切れない。
後単純にディオルという単語を出す事が、火に油を注ぐ事になるだろう。
こう考えると、大人しく寝ている事が最善手に思う。
でもまずは、折角作ってくれたシチューを食べる為起き上がろう。
あまり空腹感は感じていないが、サニアのシチューは美味しいからね。
一口食べたら、止まらないよ。
サニアにはいつも本当に感謝している。
サニアの機嫌とり、とか関係なくお礼がしたい。
やっぱりプレゼントかな、ちょっとしたアクセサリーとか。
サニアはシンプルな小物が好きなのは知っている。
だから、サプライズに用意しておこうか。
いや、最近二人で遊びに行っていないし、一緒に行くのがいい気がする。
でもこの街の、そういうお店にいけるかなぁ…。
いけるといいなぁ…。
「おやすみ。レーラス。」
あぁ、サニアの手はひんやりしてて気持ちいいなぁ。
でも眠るのは、シチューを食べてからにしたいんだ。
だから、起きるよ。
もぞもぞとベッドの上で動いて、仰向けから、うつ伏せへ。
そして両手を使い、体を起こす。
「おはようレーラス。」
「…あれ、クレスタ、いつからそこに?」
「ちょっと前かなぁ。サニアちゃんと変わったよ。」
随分早く交代したね。サニアは用事があったのかな。
あ、別にクレスタが嫌なわけじゃないよ。
こんな感じで口を開こうとしたけど、出来なかった。
窓から夕陽が見えたから。
サニアはお昼のちょっと前に来たと記憶している。
「僕は…寝ていたのかい?」
「まったく。ディオルの時に起きてて、サニアちゃんの時に寝るなんて、次からは逆にするように。」
「サニアとも話したいけど、ディオルとも話したいよ、僕は。」
「なら風邪を早く治す事、いいわね。」
言いながらシチューを渡してくれる。
暖かい。温め直してくれたようだ。
風邪は治癒魔法で治るのでは~、と言おうとしたけど止めた。
そういう事ではなく、厚意なのだから。
「ぶっちゃけレーラスさ~、サニアちゃんの事どう思っているの?」
僕はね。こう見えて鈍感系じゃないんだ。
クレスタの質問の意図は理解している。完璧に。フリではなく。
シチューから口を離し言う。
「高めあうライバルで、魔王を倒す仲間で、大切な友達だよ。
恋愛感情の有無はわからない。そういうのは魔王を倒してからだよ。」
最初のほうは本心で、最後のほうは嘘だ。
「ふ~ん。生意気で可愛くない答えだわ。」
クレスタはおそらく紅茶を口にした。僕もシチューを口にする。
「そんな事じゃ、サニアちゃんはガットル君に取られるわね。」
「やっぱりそう思う!?仲いいよね二人とも!」
食い気味に言ったら、クレスタは目を丸くする。
「…嫌じゃ、ないんだ?」
「サニアも大好きだし、ガットルも大好きだからね。仲のいい姿をみるとほっこりするよ。」
「…私はやっぱり、あんたのそういう所は好きじゃない。」
「僕はクレスタの、言ってくれる所好きだよ。」
クレスタは両手を上げて降参のジェスチャーだ。
このまま続けたら、ますます嫌われてしまいそうだから、話題を変えよう。
全部嫌われたら、悲しいからね。
「仲良し論争は楽しいけど、折角クレスタと一緒だから、別の話がしたい。」
「ん~?どんな?」
空になったシチューの容器を机に置き、姿勢を正す。
「どんな感じだい?今、この街は。」
「レーラスは、どんな感じだと思う?」
と、いう事はあんまり分かっていないんだね。
分かっていたら、意地悪しないで教えてくれるもんね。
でも試すようで探るような目のクレスタはカッコイイなぁ。
僕は考えているふうに上を向き、話す。
「確定情報としてあるのが、
1、魔法大国である。
2、勇者を招待。
3、一年前に王様が変わり、今の王様は若い。
の三つかな。
で、そこから出る憶測は、
1、魔法大国だから、魔法廃止勢力の勇者は敵視している。
2、にもかかわらず招待したという事は、何かしら思惑がある。
3、一年間様子をみた国民の今の王様の評価はどうなのか。」
クレスタをチラ見する。にやにやしているのでこのまま続ける。
「仮説①、今の王様は王国と友好的な関係を築きたい。
そもそも魔王を倒しても魔力がなくなるわけじゃない。
魔法大国だからその辺りも詳しいはず。
王国が魔法を使わなくなっても、自分達は今まで通り使えばいい。
別にいがみ合う必要はない。
その為、勇者をもてなし、いらぬトラブルを避け、王国に取り次いでもらいたいと考えている。」
「それはいいわね。前向きに検討しますとだけ言っておいて、美味しいものが食べられる。」
「仮説②勇者を殺そうとしている。
これは僕達が、最初に思い浮かべたやつじゃないかな。
魔王がいる場合と、魔王がいない場合。
どちらに利があるかを考えて、出した結論が、魔王がいる場合だった。
そしたら、勇者は邪魔だよね。
国際問題をちらつかせ、勇者を呼び寄せザックリ。
この時、キッドニは王国との全面対決も視野だと思うから、最悪なのは魔王と組んでいる場合だね。
実は魔王がこの街の地下とかにいて、この地が僕達のクライマックスかもしれない。とかね。」
「…そこまでは考えてなかったな…。」
「仮説③クーデターを起こそうとしている勢力がいる。
王様の補佐役の人がいて、若い王様はその人の操り人形。
あまりに権力が強すぎて誰も逆らえず、補佐役が国を支配しているような状況になっていて。
その体制を打破しようと、勇者に助けを求めるのだった。とか?」
「理由はともかく、クーデター事態は否定できないのよね~。」
クレスタはいつの間にか茶菓子も食べていた。
僕にばっかりこんなに喋らせて、ひどいなぁ。
「僕の考えは伝えたよ。で、どんな感じだい?今、この街は。」
「明後日の夜、勇者の歓迎会を開いてくれるそうよ。」
クレスタが茶菓子をわけてくれた。見ていたのがバレたのかも。
「僕の休暇も明後日までか。」
治らなかったら、治癒魔法でしょう流石に。
「今日で風邪を治せば、明日は遊びに行けるわよ。」
「それは、気合を入れないとね。」
僕は横になり、布団を被った。
「いやぁ、参考になったわ~。明日はその可能性も考えて調べてみるね。」
クレスタが、どこまで本気か読めない。
でも、クレスタもディオル同様、隠し事はしても嘘はつかない。
少なからず参考になって役にたったなら、よかった。
「クレスタと、もっと話がしたい。」
「どうした?急に。」
クレスタとは、まだ楽しい話をしていない。
「こないだ、ガットルがね…。」
この後ガットルトークで盛り上がった。
ごめんねガットル、クレスタの好感度はあげとくから、許して。
ゆさゆさと揺らされて、僕は目を開けた。
目の前にいたのはガットルだ。
「ごめんねガットル。上がったけど下がったからプラマイゼロかも。」
「…何の話?」
窓の外はまだ暗い。
「すまない。だいぶ、うなされていたから、起こした。」
「そうなんだ、ありがとう。」
ガットルの顔は心配そうだ。
「大丈夫だよ、シスターと話してたんだ。その、夢の中で。」
「シスター?」
偶然だが、完璧なシチュエーションだと思う。
いや、ただ、話したい気分なだけ。
「星が見たいんだ。窓までいいかな?」
ガットルは頷いてくれた。
スリッパを履いて、のろのろと窓の所まで。
ガットルはイスを動かしてくれたり、ブランケットで包んだりしてくれた。
「何か飲むか?」
「ホットミルク貰っちゃおうかな。」
至れり尽くせり。
「ガットルありがとう。」
「大丈夫だ。病人は甘えていいからな。」
「話がしたいんだ。座ってよ。」
「わかった。」
窓の外の星をみる。十分綺麗だ。けど、
「ドラゴンから見た星空には及ばないね。」
「ごめん。余裕がなくて、見れてないんだ。」
「僕もごめん。そんな気がしていた。」
お互いケラケラ笑った。笑えてよかった。
「王国でさ。祝勝会の日の最後の話、覚えているかい?」
ガットルは、少し考えて、言った。
「『どうして勇者様は歴史に名を残したいのです?』」
一字一句間違えずに言うから、思わず笑ってしまう。
覚えていてくれて嬉しい。
「今話すよ、ガットルに。」
遠い昔の、私、の話を。
次回、過去編。




