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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第一章 勇者レーラスの魔王討伐記

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第33話 勇者~お見舞い~

~前回までのレーラス~


発熱して、入院した。

暇だったから、ディオルとお喋り。新必殺魔法を開発した。

はしゃいでいる所をサニアに見られた。き、気まずい…。


病室での話、その2。

 ベッドの横にある机の上に、暖かそうなシチューが置かれた。

 その横に腰掛けたサニアは、今、リンゴを剥いてくれている。


「…。」

「…。」


 サニアとの沈黙は心地よくて好きだけど、今日は何か緊張感がある。


 言葉のチョイスを間違えるわけにはいかないと、僕の直感が囁いている。


 サニアが不機嫌な理由は明白だ。

 高熱で騒いでいた僕と、そんな僕を止めなかったディオルに怒りを感じている。


 一瞬、全ての罪をディオルになすりつける案が浮かんだが、却下だ。

 共にコズミックヘルブラスターを完成させた友を裏切れない。


 後単純にディオルという単語を出す事が、火に油を注ぐ事になるだろう。


 こう考えると、大人しく寝ている事が最善手に思う。


 でもまずは、折角作ってくれたシチューを食べる為起き上がろう。


 あまり空腹感は感じていないが、サニアのシチューは美味しいからね。

 一口食べたら、止まらないよ。


 サニアにはいつも本当に感謝している。


 サニアの機嫌とり、とか関係なくお礼がしたい。

 やっぱりプレゼントかな、ちょっとしたアクセサリーとか。


 サニアはシンプルな小物が好きなのは知っている。

 だから、サプライズに用意しておこうか。


 いや、最近二人で遊びに行っていないし、一緒に行くのがいい気がする。


 でもこの街の、そういうお店にいけるかなぁ…。


 いけるといいなぁ…。


「おやすみ。レーラス。」


 あぁ、サニアの手はひんやりしてて気持ちいいなぁ。


 でも眠るのは、シチューを食べてからにしたいんだ。


 だから、起きるよ。


 もぞもぞとベッドの上で動いて、仰向けから、うつ伏せへ。


 そして両手を使い、体を起こす。


「おはようレーラス。」

「…あれ、クレスタ、いつからそこに?」


「ちょっと前かなぁ。サニアちゃんと変わったよ。」


 随分早く交代したね。サニアは用事があったのかな。

 あ、別にクレスタが嫌なわけじゃないよ。


 こんな感じで口を開こうとしたけど、出来なかった。


 窓から夕陽が見えたから。

 サニアはお昼のちょっと前に来たと記憶している。


「僕は…寝ていたのかい?」


「まったく。ディオルの時に起きてて、サニアちゃんの時に寝るなんて、次からは逆にするように。」


「サニアとも話したいけど、ディオルとも話したいよ、僕は。」

「なら風邪を早く治す事、いいわね。」


 言いながらシチューを渡してくれる。

 暖かい。温め直してくれたようだ。


 風邪は治癒魔法で治るのでは~、と言おうとしたけど止めた。


 そういう事ではなく、厚意なのだから。


「ぶっちゃけレーラスさ~、サニアちゃんの事どう思っているの?」


 僕はね。こう見えて鈍感系じゃないんだ。

 クレスタの質問の意図は理解している。完璧に。フリではなく。


 シチューから口を離し言う。


「高めあうライバルで、魔王を倒す仲間で、大切な友達だよ。

 恋愛感情の有無はわからない。そういうのは魔王を倒してからだよ。」


 最初のほうは本心で、最後のほうは嘘だ。


「ふ~ん。生意気で可愛くない答えだわ。」


 クレスタはおそらく紅茶を口にした。僕もシチューを口にする。


「そんな事じゃ、サニアちゃんはガットル君に取られるわね。」

「やっぱりそう思う!?仲いいよね二人とも!」


 食い気味に言ったら、クレスタは目を丸くする。


「…嫌じゃ、ないんだ?」

「サニアも大好きだし、ガットルも大好きだからね。仲のいい姿をみるとほっこりするよ。」


「…私はやっぱり、あんたのそういう所は好きじゃない。」

「僕はクレスタの、言ってくれる所好きだよ。」


 クレスタは両手を上げて降参のジェスチャーだ。


 このまま続けたら、ますます嫌われてしまいそうだから、話題を変えよう。

 全部嫌われたら、悲しいからね。


「仲良し論争は楽しいけど、折角クレスタと一緒だから、別の話がしたい。」

「ん~?どんな?」


 空になったシチューの容器を机に置き、姿勢を正す。


「どんな感じだい?今、この街は。」

「レーラスは、どんな感じだと思う?」


 と、いう事はあんまり分かっていないんだね。

 分かっていたら、意地悪しないで教えてくれるもんね。


 でも試すようで探るような目のクレスタはカッコイイなぁ。

 僕は考えているふうに上を向き、話す。


「確定情報としてあるのが、

 1、魔法大国である。

 2、勇者を招待。

 3、一年前に王様が変わり、今の王様は若い。

 の三つかな。

 で、そこから出る憶測は、

 1、魔法大国だから、魔法廃止勢力の勇者は敵視している。

 2、にもかかわらず招待したという事は、何かしら思惑がある。

 3、一年間様子をみた国民の今の王様の評価はどうなのか。」


 クレスタをチラ見する。にやにやしているのでこのまま続ける。


「仮説①、今の王様は王国と友好的な関係を築きたい。

 そもそも魔王を倒しても魔力がなくなるわけじゃない。

 魔法大国だからその辺りも詳しいはず。

 王国が魔法を使わなくなっても、自分達は今まで通り使えばいい。

 別にいがみ合う必要はない。

 その為、勇者をもてなし、いらぬトラブルを避け、王国に取り次いでもらいたいと考えている。」

「それはいいわね。前向きに検討しますとだけ言っておいて、美味しいものが食べられる。」


「仮説②勇者を殺そうとしている。

 これは僕達が、最初に思い浮かべたやつじゃないかな。

 魔王がいる場合と、魔王がいない場合。

 どちらに利があるかを考えて、出した結論が、魔王がいる場合だった。

 そしたら、勇者は邪魔だよね。

 国際問題をちらつかせ、勇者を呼び寄せザックリ。

 この時、キッドニは王国との全面対決も視野だと思うから、最悪なのは魔王と組んでいる場合だね。

 実は魔王がこの街の地下とかにいて、この地が僕達のクライマックスかもしれない。とかね。」

「…そこまでは考えてなかったな…。」


「仮説③クーデターを起こそうとしている勢力がいる。

 王様の補佐役の人がいて、若い王様はその人の操り人形。

 あまりに権力が強すぎて誰も逆らえず、補佐役が国を支配しているような状況になっていて。

 その体制を打破しようと、勇者に助けを求めるのだった。とか?」

「理由はともかく、クーデター事態は否定できないのよね~。」


 クレスタはいつの間にか茶菓子も食べていた。

 僕にばっかりこんなに喋らせて、ひどいなぁ。


「僕の考えは伝えたよ。で、どんな感じだい?今、この街は。」

「明後日の夜、勇者の歓迎会を開いてくれるそうよ。」


 クレスタが茶菓子をわけてくれた。見ていたのがバレたのかも。


「僕の休暇も明後日までか。」


 治らなかったら、治癒魔法でしょう流石に。


「今日で風邪を治せば、明日は遊びに行けるわよ。」

「それは、気合を入れないとね。」


 僕は横になり、布団を被った。


「いやぁ、参考になったわ~。明日はその可能性も考えて調べてみるね。」


 クレスタが、どこまで本気か読めない。

 でも、クレスタもディオル同様、隠し事はしても嘘はつかない。


 少なからず参考になって役にたったなら、よかった。


「クレスタと、もっと話がしたい。」

「どうした?急に。」


 クレスタとは、まだ楽しい話をしていない。


「こないだ、ガットルがね…。」


 この後ガットルトークで盛り上がった。

 ごめんねガットル、クレスタの好感度はあげとくから、許して。




 ゆさゆさと揺らされて、僕は目を開けた。


 目の前にいたのはガットルだ。


「ごめんねガットル。上がったけど下がったからプラマイゼロかも。」

「…何の話?」


 窓の外はまだ暗い。


「すまない。だいぶ、うなされていたから、起こした。」


「そうなんだ、ありがとう。」


 ガットルの顔は心配そうだ。


「大丈夫だよ、シスターと話してたんだ。その、夢の中で。」


「シスター?」


 偶然だが、完璧なシチュエーションだと思う。

 いや、ただ、話したい気分なだけ。


「星が見たいんだ。窓までいいかな?」


 ガットルは頷いてくれた。


 スリッパを履いて、のろのろと窓の所まで。

 ガットルはイスを動かしてくれたり、ブランケットで包んだりしてくれた。


「何か飲むか?」

「ホットミルク貰っちゃおうかな。」


 至れり尽くせり。


「ガットルありがとう。」

「大丈夫だ。病人は甘えていいからな。」


「話がしたいんだ。座ってよ。」

「わかった。」


 窓の外の星をみる。十分綺麗だ。けど、

「ドラゴンから見た星空には及ばないね。」


「ごめん。余裕がなくて、見れてないんだ。」

「僕もごめん。そんな気がしていた。」


 お互いケラケラ笑った。笑えてよかった。


「王国でさ。祝勝会の日の最後の話、覚えているかい?」


 ガットルは、少し考えて、言った。


「『どうして勇者様は歴史に名を残したいのです?』」


 一字一句間違えずに言うから、思わず笑ってしまう。

 覚えていてくれて嬉しい。


「今話すよ、ガットルに。」


 遠い昔の、私、の話を。

次回、過去編。

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