表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第一章 勇者レーラスの魔王討伐記

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/167

第32話 勇者~入院~

~前回までのレーラス~


ついに最後の町までやってきた。

中々、不穏な感じがするし、気をつけないといけない。

だけど、僕は発熱した。普通の風邪らしいけど、一応、入院する事に。


病室での話、その1。

 病院のベッドの上で、朝を迎えた。


「シスターいつもありがとう。」


 シスターは僕を心配して、よく夢に出てきてくれる。


 今回はこっぴどく叱られた。

 まぁこの体たらくでは無理もない。


 僕はゆっくりと上体を起こし、

「あ~~。」


 パタンと倒れた。


 体のダルさは相変わらずだ。


「大人しく寝ていろ。」


 ディオルのそういう所は嫌いだ。

 びっくりするからね。


「いつから?」


 部屋に入る時にはドアが開くから分かる。 


 だから、少なくとも僕が起きた時にはそこに座っていて、僕の独り言も聞いていたわけだ。


「一人には出来ないだろ。」


 (つまり、夜からずっと、部屋の中にいた、と。)


 街中ではあるからね。警戒態勢は継続中か。


 こういう時はサニアがいてくれるイメージだから意外だ。

 もちろんサニアに徹夜してほしくないし、ディオルなら心配ない。


 そこまで考えたら、人選決めのやりとりが想像出来て、笑いそうになる。

 僕の予想だとこうだ。


 もしもの襲撃に備え、僕の部屋に誰か残そうという話になる。

 そしたらサニアが名乗りでる。

 それをクレスタが止めるのだ。

 若い男女が二人きりはよろしくないと。

 言われたらサニアは引き下がるしかない。

 それでディオルに、いや、クレスタはガットルに頼むのではないか?

 頼みやすいだろう。もちろんガットルは快諾する。

 それを、サニアが止めていたとしたら…?

 理由が説明出来なくて、しどろもどろで、顔が真っ赤なサニア。


 (うん。知ってる。サニアは可愛い。こうだといいなぁ。)


「ディオルは何を読んでるの?」


 気分がよくなり、みんなと喋りたくなった僕は、近くのディオルに話しかける。


「異説魔法学という本だな。なかなか面白い。」


 (魔法…、そうだ魔法だよ。)


 僕は傷とかの外傷は治せるけど、風邪とかウイルス系は治せない。

 でもそれは僕の魔法の事であって。


「魔法先進国の治癒魔法は僕を治せるのでは?」


 ディオルは本を読みながら答えてくれる。


「治せるな。」

「なぜ、僕は入院しているんだい?」


 魔法での治療代が高いとか?え?入院するよりも?


「旅は急いでいるかと聞かれたから、しばらく滞在予定だと答えた。

 そうしたら魔法で治すより、ゆっくり休んで、しっかりと抗体をつくる事を勧められた。」


 ディオルが顔を上げて僕をみる。ちょっとニヤついている。


「いい機会だから、休暇だと思って休んでいけ。」


 みんなからは、僕が頑張りすぎて体調を崩したように見えたのか。


「休暇なら、遊びに行きたいなぁ。」

「諦めろ。」


 ディオルはまた視線を本に戻す。

 おそらくディオルは、警護の他に監視も兼ねている。


「…僕とずっと一緒だと、ディオルにも風邪がうつるよ。」

「大丈夫だろう。」


「勇者を戦闘不能にした風邪だよ?強力だよ?」

「うつったら治してもらうさ。治癒魔法でな。」


「もう完全に目的変わってるじゃん。」


 僕の治療でなく、僕を休ませるという事に。

 そういうのは、魔王を倒せた後でいいのに。


「…ディオルはさ、魔王を倒したら、どうするの?」

「魔王を倒したら、考えるさ。」


 ディオルは、謎が多い。

 20歳だというのも怪しい。


 僕に協力してくれる理由も、

『昔レーラスと約束をした。強くなって魔王を倒すと。』


 王国に戻ってきた理由も、

『強くなったから戻ってきた。約束を果たすために。』


 強さの秘密も、

『親代わりの人が、魔法のスペシャリストでな。しごかれた。』


 聞けば、全部答えてくれるけど。そこに嘘はないと思うけど。

 きっと全部を話していない。


 知りたいような、知りたくないような。


 僕は、楽しい話がしたい。


「ディオルって使える魔法は五種類?」


 ディオルがこっちを見た。


「どうしてそう思う?」


 珍しい表情だ。ポカンとしている。


「基礎魔法を除くと、単純に五種類しか見た事がない。」

「なるほど。」


 数秒考えて、ディオルは続ける。


「それで言うと、実用的なのは六種類だな。

 より優れていて汎用もきく魔法が使えるなら、初級魔法は使う必要が無いだろう。」


 やっぱり。魔法の話をしている時のディオルは生き生きしている。

 彼は魔法が、好きなのだ。


炎槍ファイアーランス、好きだよね。よく使っている所を見る。」


「消費魔力が少なく、速度も硬度もある。発射まで時間がかからず、連射も可能。

 となれば、自然と多く使う事になるだろう。」


 火と土の中級混合魔法だ。

 だから、使える人がそもそも少ないし、消費魔力やら発射時間とかは、ディオルだからの感想だろう。


「次に多く見るのは、獄炎ヘルフレイム、かな?連続使用で、空中移動も可能なんだよね。

 衝撃も、威力も一級品だし、強敵用でしょう?」


「その通り。実質、俺の最大火力は獄炎ヘルフレイムになるな。

 ただ稀に魔力耐性が異常に高い、魔法が効きにくい敵はいる。

 そういう奴には、獄炎槍ヘルフレイムランスを使う。

 本来は足元という死角から攻撃する奇襲用だ。

 しかし、しっかりと魔力を練りこめばドラゴンぐらい大きく出来るし、その時の硬さは、高所からのドラゴンの落下にも耐えうる。つまり、俺の最大物理攻撃だ。」


 めちゃくちゃ硬い石を用意するのは魔法の力だけど、攻撃は用意した硬い石でするから、物理攻撃って事かな。


 後、ここで言う物理攻撃は、殴ったり蹴ったりする、所謂魔力を使わない攻撃って事だよね。


 まあ、諸説ありますってやつかな。


「王国のドラゴン懐かしいね。」


 日常会話を一行で終わらせるディオルが、たくさん喋ってくれて嬉しい。


「ドラゴンと言えば、上空に飛んだ時、下からたくさん撃っていたやつは?」


騙線トリックラインだな。戦闘向きではないが、合図とかに使える魔法だ。

 火属性の魔法で、通常威力は基礎魔法よりも低い。

 だが射程が長く、数秒火の線を残しながら飛ぶ特徴がある。

 数が多ければ迫力があるだろう。実際、ドラゴンの牽制も出来ていたな。」


「うん。十分怖かったよ。」


 後、僕が知っているのは一つだけだ。


「熱源でだいたいの人の位置が分かる熱検索ヒートサーチ。これは実用的でしょう。」


「そうだな。お前の音制御ノイズコントロールとも相性がいい。

 音を聞く事も届ける事も遮る事も出来て、位置や動きもある程度分かる魔法だったな。」


 相性がいいだなんて、照れるじゃないか。


「ディオルの言う実用的な魔法の最後の一つは何かな?僕、見た事ないよね。」

獄炎盾ヘルフレイムシールドだ。接近された場合の盾だからな。確かに今回の旅では使っていない。」


獄炎ヘルフレイムは派生が多いね。」


 いつものクールなディオルはカッコイイけど、こういう食い気味のディオルは、少年のようでかわいい。


 いい感じだし、前から思っていた事を話してみよう。


「ねぇディオル。相談というか、提案というか、話があるんだけど、前振りからいいかな?」

「ああ、かまわない。」


 ディオルは視線を本へ戻さず、僕を見ている。


「僕達は弱くない。各々強みがちゃんとある。」


 ディオルは頷き、僕は続ける。


「僕は近接の剣技に自信がある。人型だろうと獣型だろうと、絶対の間合いがある。」


無剣むけん、だったな。」


「うん。覚えていてくれたとは、嬉しいよ。」


 というか、一回言っただけで、よく覚えているなぁ。流石ディオル。


「サニアはスピードとそれを維持出来る体力。からの爆発的火力。」


「本人が、『やけくそファイアー』と言っていたのは衝撃だったな。」


ゼロ爆発エクスプロージョンっていうカッコイイ名前になったじゃないか。」


 サニアに名前はあるのかと聞いてからの、全員参加緊急会議は面白かった。


「ガットルは近距離、中距離で戦えて、アサルトフロ―なんて隠し玉もある。

 条件が揃えば、僕達の中で最速だ。」


「最初は突っ走るタイプだと思ったが、戦闘中はよく周りをみている。

 お前やサニアよりも冷静だな。」


 そう、あの、骸骨にやられそうだったガットルが、こんなにも立派になって…。


「クレスタは非戦闘時の活躍が目立つけど、戦闘だと狙撃が抜群にうまいよね。」


「魔法は鍛えるものだと考えている俺達には、あの戦法は思いつかないな。」


「使っている魔法は、土属性の基礎魔法の、ストーンだよね?」


「そうだ。石弾を生成して発射しているだけだ。

 ただ彼女は、生成した弾に商会の薬品を括りつけたり、直接かけたりしている。

 実際火力が上がっているのだから、大したものだ。」


「見た事はないけど、麻痺させられたり、毒を浴びせられたりも出来るんだっけ。

 魔力分散弾なんて魔力を散らす物もあるし。恐るべしフフゴケ商会。」


「船を沈めた事もあるそうじゃないか。名前は確か火桜、だったか。」


「見せてもらった事、あるよ。火花が舞うように散るのは綺麗でカッコよかった。」


 他にも、グランド探知ディテクションがあったっけ。地面の変化や土魔法の発動が分かるやつ。

 地形把握なんかも出来るよう、アレンジされているんだよね。


 正直、戦闘能力は高いと思う。並みの商人とは思えない。

 でも彼女的には、自分が戦うとアイテムを消耗するから、僕達に全部任せたいらしい。


 だからクレスタが参戦する時は、切り札登場みたいでテンションが上がる。


 (…さて、ここからが本番。)


「以上の事を踏まえて、僕は思う。」

「…。」


「僕の戦い方って、地味だよね。」

「……続けてくれ。」


「僕もみんなみたいに、炎を上げたり、爆発を起こしたい。」


「地面がへこむほど強く踏み込んでからの突進。

 豪快な風切り音とともに敵を両断。

 血しぶき、いや魔力の残滓をまき散らして崩れ去る魔物。

 十分派手で迫力がある。」


「炎を上げたり、爆発を起こしたい。」


 ディオルがそれはそれは深い、ため息をついた。


「最初に言っていた自信の剣技はどうした。勇者の剣に誇りを持て。地味じゃない。」


「それとはまた、別の話だよ。」

「戦闘スタイルの違いだ。諦めろ。」


 ディオルが本に目を戻してしまう。きっと呆れられてしまっただろう。


 でもさ、欲しいんだよ。『勇者レーラス』に、分かりやすい強さが。

 記録に残りやすい、短くて派手でカッコイイ強さが。

 代名詞となる必殺技が。


 例えば、光輝く剣(シャイニングソード)とか。


「…。」


 この話を続けても、きっと楽しくならないね。

 やっぱり、楽しい話がしたい。


「それじゃあディオルが新必殺魔法を編み出してよ!僕の地味さをカバー出来るくらい派手なやつ。」


「なぜそうなる。俺には獄炎ヘルフレイムがあるだろう。炎を上げ、爆発する。」


獄炎ヘルフレイムは、ガットルとサニアが手を繋げば使えるじゃないか!

 僕が求めているのは、上級魔法だよ!」


 四属性魔法の階級。初級、中級、上級。

 一般的に、広く伝わる魔法は、中級までだ。


 では、上級魔法とは?


 それは、最高の魔法使いだと自負する者達が、研鑽の果てに編み出す唯一無二の魔法。

 よって、その複雑さは中級魔法を凌駕し、威力は絶大なものと成る。


 たまに残念な上級魔法はある。

 複雑だけど、威力は混合魔法の初級に負けちゃうやつとか。

 でもオリジナル魔法だなんて、それだけでカッコイイじゃないか。


 ちなみに、四属性魔法ではない天法関係のもの。

 黒炎ブラックファイアーとか、獄炎ヘルフレイムとかには階級がない。でもあえて階級をつけるとしたら。

 

 獄炎ヘルフレイム獄炎槍ヘルフレイムランスは中級相当。見た事ないけど、名前的に獄炎盾ヘルフレイムシールドも同じだろう。

 熱検索ヒートサーチと、騙線トリックラインは中級だ。


 つまり、こんなに強いディオルでも、上級魔法は使えない。


 きっと彼的には必要ないのだろう。極めた中級魔法の方がよほど実用的なのだろう。

 でも、そういう事じゃあない。これは、ロマンの話だ。


「もっと複雑で、高い精度が必要で、魔法の真髄みたいな、ディオルにしか出来ない魔法。綺麗で、派手で、そんな上級も上級、最上級魔法を、僕は見たい!」


「…魔法の…真髄…。」


 それから僕達は、あーでもない、こーでもないと話あった。


 無理だ。意味が無い。悪手だ。劣化だな。もうある。派手とは?代用は可能だ。それならば…、いっその事、つまり、ならば…、いや、可能か…?


 そしてついに僕達は、辿り着けた。


 再現可能で、強力で、複雑で、難しくて、綺麗で、派手。

 発動まで時間はかかるが、そこは仲間達でカバーする。


 ディオルの新必殺魔法、その名は。


 《コズミックヘルブラスター》


 僕は、いや僕達は立ち上がり、固い握手した。

 ディオルも満足気だ。これは凄い事だぞ。


 僕は興奮を抑えきれず、両手を上に突き出しガッツポーズをする。

 ちょうどその時ドアが開いた。


「…。」


 サニアだ。


 シチューを持ってきてくれたサニアだ。


 彼女に僕はどう映っただろうか?

 高熱をだしたのに、はしゃぎまわる子供だと思われたら恥ずかしい。


 視界の端でディオルが、こそこそと退出していくのが見える。


「んーっと。」


 今ちょっと伸びをしただけですが何か?

 みたいな雰囲気をだして、僕はベッドに横になるのだった。

ディオルが実用的といった魔法は六種類。

炎槍、獄炎、獄炎槍、獄炎盾、騙線、熱検索。

他にも魔法は使えるけど、基本、これらで戦っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ