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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第一章 勇者レーラスの魔王討伐記

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第20話 金欠~追跡~

~前回までのガットル~


サニアがお尋ね者を捕まえた。

クレスタ的に、引っかかる事があるらしく、しばらく監視する事に。

勇者がきた。そして、謎の人物もやってきた。

 (動きがあった!?)


 勇者に感謝だ。完全に油断していた。


 物音を立てないように注意して、飛び出す。

 家の陰に隠れて、伺う。


 男が一人、ダーシンのいる家に入っていく。迷いのない足取りだ。

 身軽な格好、武装は確認できない。


 空き家の前の持ち主は一年前に亡くなっている。関係者とも考えづらい。


 念のため、ディオルに教わった熱検索ヒートサーチを使う。

 彼の範囲には程遠いが、なかなかの精度だと言ってもらえている。


 周囲には四人。俺、反対側に勇者、家の中に二人。

 

 可能性はいくつかあるが、最悪はダーシンが殺される事。


 いつでも突っ込める準備をし、耳を澄ます。


 通信状態は良好。空き家に仕掛けた機械での盗聴は上手くいっている。

 家の中で魔法が使われれば魔力検知機が鳴るし、毒殺防止に窓も開けてある。


「OK~、バッチリ見えるよ。」


 クレスタの声だ。寝起き感はない。

 そういう素振りがあれば、彼女が狙撃する。


「今、接触したわ。

 ダーシンにも男にも動揺はない。

 会話は、ない。おそらく、魔力制御装置を解除しようとしている。」


 殺すとか攫うとかなら、着けたままのほうがいいはず。


 (となると、仲間か?)


「仲間ね。そろって外へ出たわ。ガットル君はレーラスと合流。二人で尾行して。」

 

 サニアと行く予定だったが、勇者がいるならその方がいい。

 彼女の魔法は尾行に持ってこいだ。

 

 ゆっくりとその場を離れ、反対側へ。


「楽しそうだな。」


 屈んでサムズアップする勇者に近づいた。

 もちろん小声だ。


「彼らは何を隠しているのか。その謎を明らかにするんだよ。

 ワクワクするじゃないか。」


「大した謎じゃあ、ないかもしれないぞ?」


「そこに至るまでの過程。つまり、一番楽しいのは今だよ。

 あ、喋り出した。」


 勇者の魔法の効果で、俺にも向こうの会話が聞こえる。


「薬が村に運ばれたと聞いたが、本当か?」


「ああ。実によい手際だった。」


「儲けは?」


「ねえな。失敗だよ、大赤字だ。」


「まじかよ…。カルフラタの件で混乱してるんじゃなかったのか。」


「手配書も出回っているし、潮時だな。」


「おいおい、やられっぱなしで終わるのか?」


「トータルでみれば、大勝利さ。潜伏して、ほとぼりを冷ます。」


「くそ、あの勇者共め…。」


「全くだな。魔物に無様に喰い殺されればいいのに。」


 ハッハッハと愉快に笑いながら、男たちは歩く。


「ねえガットル。」


「どうした?勇者様。」


「僕には悪者の会話に聞こえたよ?」


「そうだな。余罪もありそうだった。」


「斬り伏せていいかな?」


「ダメ。他にも仲間がいるかもしれないし、このままアジトまで案内してもらう。」


「アジトまで行けば、斬っていい?」


 (あれ、生死問わずだったっけ?)

「まずは、クレスタに聞いてから、かな?」


「もしもし、クレスタ?」


 勇者の口は動いているが、声が聞こえなくなる。

 音制御ノイズコントロールによる会話だ。


 何て言っているかは分からないが、内容は分かる。

 勇者のコロコロ変わる表情が、言葉以上に教えてくれた。


 怒られて、注意されたようだ。


「ダメだって。」


 やっぱり。


「殺さないように、気を付けて斬るよって言ったのに。」


 (殺意が滲み出ちゃったか。)


 背中をポンポン叩く。


「殺されればいいは酷いよな。怒ってくれてありがとう。」


「…。」


 その後も俺達は尾行を続け、森の中でアジトらしき場所を発見した。




 サニアとクレスタと合流。茂みに潜み様子を見る。


「夜逃げの為の荷造り中かな?」

 勇者が言う。


 男達の会話から察するに、その可能性はあると思う。


「私達が合流する前からいるんでしょう?

 でも仲間がくる様子はない。二人組と断定していいんじゃない?」


 サニアが腕を回す。突撃準備はばっちりのようだ。


「レーラス、中にいるのは確実なのよね?」


 クレスタは戦闘スタイルだ。ドラゴンの時に持っていたショルダーバッグもある。


「話声と、物音は聞こえるね。」


 俺の熱検索ヒートサーチの範囲外、だから勇者頼りだ。


「なら、もう少し待ちたいかな。仲間はいると思うのよ。

 折角だから、一網打尽にしたいじゃない?

 でも、別の場所で合流かもしれないから、出てきたら捕まえましょう。」


「クレスタは、犯人の目星がついているのか?」


「確定じゃあないけどね。

 ダーシンを助けた男は大物かも。詳しくは捕まえた後ね。」


 俺達は注意深く周囲の警戒を続けた。




 しかし誰もやってこない。

 どころか、中の二人も出てこない。


「流石に、遅すぎじゃないか?」


 思わず言ってしまう。嫌な予感がする。


「待ち合わせ時間がまだ先だとして。

 だとしたら、ダーシンの救出が早すぎない?

 いない事がバレたら追ってが来るくらいは予測するでしょう?

 迅速に撤収したいはず。」


 サニアもおかしいと思ったようだ。


「でも声はするし、まだ中にいるよ?

 僕達の事を舐めてるだけじゃないかい?

 だって随分無警戒に、ダーシンのいる家に入ったし、二人で会話しながら歩いていたし。」


「いや、これはまずいわ。突入しましょう。」


 クレスタのGOサインが出たから、勇者と二人で家に押し入る。


「いない!?なんで?」


 勇者が驚きの声をあげる。確かに、見える範囲で人影はいない。


「やられたわね、これよ。」


 クレスタが、人を引きずってきた。

 いや、人サイズの人形だ。


 手作り感満載の雑な奴。顔は、へのへのもへじだ。


「ちょうど口の部分がスピーカーになってる。振動で動かして、物音も出せる。

 まんまと引っかかったわ。舐めてたのは私達ね。」


 サニアが勇者の手を掴んだ。

 あなただけの所為じゃない。そう伝えるように。


「発熱もしてる。ディオルがいても気づけなかったわ。

 切り替えましょう。

 出てない事は確かだから、きっと地下がある。

 レーラス、風音とかで分からない?」


「ちょっとまってね。…見つけた、こっち!」


 キッチンまで移動して、勇者は躊躇いなく床に剣を突き刺した。

 崩れた床の下には、紛れもなく地下道。


 覗き込むと、かなりの広さだ。


 ちょっとした空洞、人一人は余裕で動ける。

 なんなら、アサルトフローで飛べるくらい。


「追いかけよう!」

「待って。」


 勇者を制したクレスタは、その場に地図を広げる。


「どこに続いているのか分かるのか?」


 もしそうなら、アサルトフローで先回り出来るかもしれない。


「…う~ん、分かりたかったんだけど、ちょっと候補が多すぎて絞れないかも…。」


「なら早く追いかけないと!」


 勇者に焦りが見える。やっぱり、気づけなかった事を気にしているようだ。


「私とガットル君で行く。レーラスとサニアちゃんは待機。」


「僕が冷静に見えないからかい?」


「違うわ。ちゃんと理由がある。」


 クレスタはレーラスに目線を合わせて言う。


「私の専門は土魔法。

 この地下道を軽く調べてみたけど、脱出路としてしっかり作られている。

 似たようなのを知っているわ。

 かなりの長さがあって、しかも崩落させる事が出来るブロックがあるの。

 追手は生き埋めにされるわ。」


「危険なのは一緒じゃないか?

 かなり長いという事は、分かれ道とかもあるんじゃないかい?

 今度はデコイに引っかかったりしない。」


「移動やデコイの痕跡、罠の発見は私がやるわ。周りは全部、土だし。

 移動スピード的に、基本はガットル君に運んでもらう。

 流石のガットル君でも、二人は運べない。」


 言いながら、クレスタはバックからビンを取り出して渡してくる。


「まず一本。一時的な魔力増強薬よ。」


 うん、美味しくない。でも一気飲みする。


「道中でも飲んで。」


 三本追加で渡される。ベルトのポケットに入れた。


「魔力が貯蓄してある腕輪よ。使い捨てだから、色がグレーになったら外していい。」


 腕輪を二つ渡される。左腕に両方着けた。


「これは、頭ね。」


 (なるほど、ライトつきか。)

 鉢巻きの上に、久しぶりの額当て。


「ほい。」


 太めのベルトを渡される。


「背中。」

「了解。」


 クレスタと背中合わせになり、ベルトで固定した。

 アサルトフローで飛んでも、外れないように。


「ボタン一つで外れるの。私の方でやるわ。」

「わかった。」


 勇者の様子を見る。

 悔しさはある。しかし、納得しようとしてくれている。


「それじゃあ行くわ。

 サニアちゃん、プランBよろしく。」


「ええ。私とレーラスに任せて。」


 地面がせり上がってきた。クレスタの魔法だろう。その上に乗った。


「ガットル君、今更だけど、何か言いたい事はある?」


「着地したら、もう飛んでいいのか?」


 疑問はない。信頼しているし、今は時間との戦いだ。


「ええ、頼むわ。暫くは直進。私が声をかけるまで、飛んで。」


「二人共!」


 勇者だ。


「任せたよ。」


「「OK!」」


 クレスタと一緒にサムズアップ。

 魔法が解ける。地面に足が着く。


「行くぞ!」


 構えたアサルトフローが火を噴いた。


被害者かもと思ったら、悪い奴で。

なら捕まえようとなったけど、仲間やアジトを掴む為に泳がして。

そしたら逃げられたので、これから追います。

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