表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第一章 勇者レーラスの魔王討伐記

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/167

第19話 金欠~言い分~

~前回までのガットル~


クレスタ達から、ゴケさんの夢の話を聞いた。

その帰り道、サニアから連絡がくる。

お尋ね者を捕まえたらしい。俺達は、サニアの所へ向かう。

「いや~頼んどいてなんだけど、見つかるとは思わなかったわ。」


「私もまさかと思ったけど、あってるよね?」


「あってると、思う。髭は伸びてるけど、特徴は一致してる。」


 少し街の外れにある空き家。


 俺とサニアとクレスタ。

 それから、イスに拘束されている男。


 拘束に使われている縄は、魔力を制御困難にする効果のある物だ。

 つまり、今、男は魔法が使えない。


「た、頼む!助けてくれ!縄を解いてくれ!」


 ガタガタとイスが揺れる。

 絵面だけなら誘拐犯。いい気分ではない。


「大丈夫、このまま役人に引き渡すだけだから。

 大人しくしていれば、怪我なんてしないわ。」


「待ってくれ!事情があるんだ!は、話を聞いてくれ!」


「話は役人にするといいわ。私達に話しても意味がない。」


「見逃してくれ!頼む!」


「私は罪人なら友達でも引き渡すわ。

 何をやったかは知らないけど、ちゃんと罪を償ってから出てきなさい。」


 そう言えば、初めて会った頃。

 サニアは機械的な受け答えをしていたような気がする。


 興味ないとか、見下している訳ではない。

 警戒心があるんだ。

 この人は、我々に危害を加える人物なのか、どうなのか。


 そんなサニアと、今ではくだらない雑談だって出来る。少し、嬉しい。


「まあまあ。折角だし、話くらい聞いてあげましょうよ。」


 クレスタが、サニアと男の間に入った。

 サニアは何か言おうとした素振りを見せたが、そのまま引き下がる。

 クレスタ>サニアは、仲間内で有名だ。


「あなた名前は、ダーシンよね?

 私達は懸賞金目当てで、あなたを捕まえたの。

 あなたが何をしたのかまでは知らないわ。

 さ、何を聞いてほしいの?」


 クレスタは目線を合わせるように屈む。


 少し近すぎじゃないだろうか。

 仮に、男が暴れると怪我をするかも。

 有事の際、すぐ動けるように身構えつつ、男の後方へ怪しまれないように動く。


「ぬ、盗んだんだ。薬を。」


 男はクレスタを見ていて、俺の動きには気づいていない。

 刺激させるような事にならなくてよかったと思いつつ、素人だなとも思う。


「娘が病気だったんだ、買う金は無かった、仕方が無かった。

 娘はよくなった。

 けど、隣の家の子も、その隣の爺さんも病気だった。流行り病だった。

 気付けば、村中が病人だらけ。

 近隣の町に助けを求めた。けど、薬が足りなかった。

 だから、今度は別の町の薬を盗みに行って、見つかって、逃げた。

 お、俺は、薬を持って、村に戻らなければならない!」


 男の話を聞く限りでは、アウトだ。

 俺の価値観だと、これで同情は無理。

 助けたいのは、分かる。しかし方法が悪すぎる。


 表情を見る限り、サニアも似たような意見だろう。


 クレスタは、ここからどうするつもりだとうと思っていると、彼女は手帳を取り出した。


「村の名前は?」

「テングロン。」


 ページをめくる手が止まる。

 書かれた文字を読んでいる。


 やがてクレスタは口を開く。


「安心して。薬は確保できて、村に運ばれたわ。」


「そ、そんなの、信じられない!」


「なら、こうしましょう。明日、あなたを村につれていく。

 村人全員に薬が投与されているのを確認したら、大人しく捕まってよ。」


「…。」


「ガットル君、ちょっと見張ってて。サニアちゃんは、私に付き合って~。」


 有無を言わせずクレスタは出て行った。

 サニアは後を追い、俺は言われた通り、うなだれた男を見張る。

 

 そして考える。クレスタの真意を。

 優しさ?同情?似たような経験がある?俺の知らない情報がある?


 分かっているのは、明日は男を連れて、彼の村に向かうという事。

 (そこまでする必要が、あるだろうか?)




「ここまでする必要が、あるだろうか?」


 隣にいるサニアに聞いてみる。




 あの後。

 戻ってきたクレスタは、ダーシンの縄を外した。


 変わりに彼の右腕に腕輪を嵌める。

 前に言っていた、魔力抑制装置。

 効果は縄と一緒で、違いは自由に動ける。


「今日はもう遅いから、ゆっくり休んで。

 明日、迎えにくるから、待っていて。」


 飲み物と弁当と毛布を置いて、俺達は空き家を出る。

 そして、少し離れた別の空き家へ。


 男を監視する為らしい。


 「戻っていいって。」「戻る訳ないじゃん。」のやり取りが終わると、クレスタが考えを話してくれる。

 窓から、男のいる家を覗きながらだ。


「金額がおかしいのよ。」


「金?」

「懸賞金の事?」


「二人が詳しくないのは当然よ。王国に賞金首なんて皆無だし。

 あれだけの金額という事は、よほどの恨みを買ったか、それほどの脅威か、知ってはいけない事を知ってしまったか。

 薬の盗みの話は嘘か、盗む過程で何かをやってしまった、とかね。」


「つまりクレスタは、何か、大きな陰謀があると思っているの?」


 もしそうなら、男は逃げ出すか、男に接触する何者かがいるかもしれない。

 だから、監視をしているのか?


「明後日。」


 クレスタがこっちを向く。

 星明りはここまで届かない。ランプの明かりも。

 だから彼女の表情は、よく見えない。


「私は観光を楽しみたい。

 行きたい場所も、連れて行きたい場所もある。

 ここは、私の故郷みたいな所だから。

 いい思い出にしたいの。」


 近づいてきた彼女は、柔らかく笑っている。


「だから、間違えたくはない。

 もしも彼が、大きな陰謀に巻き込まれた被害者で、私達が捕まえた事で悪者が得をする。なんて話だったら、嫌じゃない?」


「それならあの男は、素直にそう言うはず。考えすぎよ。」


「今まで信じてもらえなかったとか、自分自信、巻き込まれた事に気づいてないなんて事もあるわ。

 いいのよ、サニアちゃん。

 陰謀なんて全然ない。単に男が短慮なだけ。

 盗みに入った薬局が凄い所だったから、懸賞金も凄くなった。

 そう言う結果で構わないの。

 時間も、手段もあるんだから。自分が納得できるまで調べるだけ。

 いや~これも、サニアちゃんが一日で確保してくれたお陰よ。ありがとね。」


 俺達は男を監視しながら、交代で休む事に。

 サニア、俺、クレスタの順だ。


 クレスタはすぐに寝た。疲れているのだから、当然である。


「ここまでする必要が、あるだろうか?」


 不満はない。クレスタの話に納得はしている。

 気になる事があり、回答が得れれるならば、知りたいのは当然だろう。


 でも、何か、まだ裏がある気がして。

 隣にいるサニアに聞いてみる。


「…やらかしたわ。」


「え?」


 思っていた反応と違う。

 サニアは膝を抱えてうずくまる。


「心当たり、あるのか?」


 責めていない。なるべく、優しい声色で聞く。

 頭が、少し動く。頷いたんだろう。


「見つかるなんて、思ってなかったのよ。私も、クレスタも。」


「ダーシンの事?」


「そう。

 クレスタは商会の仕事を片付けつつ、資金を増やしたかった。

 うちのパーティーは、何だかんだで協力するでしょう。

 だから何パターンか考えていて、私達の反応で役割を決めていった。」


 あの、宿屋での話か。

 

「本命は魔物の討伐。

 きっとクレスタ以外の4人で行く可能性もあったと思う。

 でもディオルは1人がいい、みたいな感じだった。

 効率の為とはいえ、ディオル一人に危険な仕事をしてもらって、他は遊んでるなんて嫌じゃない。

 それで、一人一仕事の流れになった。難易度に、差はあったけどね。」


 そういう駆け引きみたいな感じだっただろうか?

 適当に決まったイメージだったが、でも、クレスタなら考えていてもおかしくない、のか?


「私のお尋ね者の捜索って、発見の成功、失敗の前に、町にいる、いないだから。

 努力どうこうじゃないのよ。

 だから期待値が低く、失敗時のリスクも低い。

 罰ゲームで一発芸くらいやらされるかもだけど、それくらいね。

 要領よく、いない事の確認をすれば、後はサボり放題。

 なんなら、レーラスの手伝いに行ってもいい。」


 途中から彼女は、ぷるぷると震えていた。


「だからこそ、絶対見つけてやろうと思ったわ!」

 

 勢いよく顔を上げ、吠える。

 なるほど。負けず嫌い魂が燃えちゃったか。


「それで見つけるんだから凄いよ。ぜんぜんやらかしてない。」


「やらかしたのは、捕まえた後。

 役所に引きずっていけばいいのか分からなかった、てのもあるけど、自慢したかったのよ。クレスタに。

 それで、あのやり取りがあって、ようやく気付いた。

 クレスタに、いらない負荷をかけてしまった。」


 どんどん元気がなくなっていく。


「見つかるはずないから、クレスタは録に調べなかったのよ。あの人の事を。 

 でも私が見つけてしまったから。

 きちんとした調査が必要になった。

 捕まえた私が、後々になって傷つかないように。

 善意だと分かっていながら、つまらない意地を出してしまった。

 素直にレーラスを手伝っておけばよかった。

 それか、さっさと突き出してしまえばよかった。

 それが、やらかし。」


「違うよ。」


「…。」


「見つけられて困るなら、最初から用意しない。

 適当な採取依頼をもう一枚もってきたはずだよ。

 クレスタも気になる事があったから、頼んだんだ。

 サニアが期待に応えてくれたから、クレスタは張り切ってるんだ。」


 サニアに言いながら、俺自身、合点がいく。

 元々気になる件だったのだろう。でも、犯人に会えないから諦めていた。


 それを、見つけてもらえた。

 だから、気合が入ったんだな。


「知らないって言ったのは、ブラフ。相手の出方を伺ったんだ。

 きっと今後の動きのプランはある。

 それにさ。サニアが頑張って探しだした事も、最初にクレスタに連絡したのも間違いじゃない。

 彼が善人なら、助けてあげられる。

 彼が悪人なら、のさばらせたままに出来ない。

 いい働きだったよ、流石サニアだ。」


 俺の疑問も解けたし。

 サニアはそっぽを向く。でも言葉はくれた。


「ごめん、ガットル。クレスタを侮ったわ。

 話を聞いてくれて、ありがとう。」


「二人共、仲間を思いやれる人だ。

 俺もその仲間で嬉しいし、恥じない活躍をしたいと思ったよ。」


「そんなに仲間想いなのに、どうして僕をハブるんだい?」


 勇者だ。いつの間に。

 驚き過ぎて、反応できなかった。


「私とクレスタが宿屋に戻った時、いなかったからよ。

 書置きを残したじゃない。」


「いる場所を、書いておいてほしかったよ。

 やっぱり町用の通信機を用意してもらおうよ。

 大きくなってもいいから、広範囲なやつ。」


「その状況で、勇者はどうやって辿り着いたんだ?」


「風魔法の音制御ノイズコントロールで頑張ったんだよ。二人が喋っていてくれて助かった。」


 つまり、無関係な町民の会話を盗聴しまくったという事?

 勇者として、それはどうなんだ?


「ともかく、面白そうだから僕も混ぜてよ。

 張り込みってやつだよね。

 僕の好きな本にも、こういうシチュエーションがある。

 あんぱんは、ちゃんと持ってきた。それと、」


 勇者がおもむろに、窓を指さした。いや、窓の外か?


「誰か来たよ?」

考えすぎ。

しかし、人を思いやっての行為だし、本人が辛くないのであれば~

みたいなお話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ