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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第五章 11人の堕天使と2大陸縦断英雄列車

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第171話 一方、その頃~覚悟~

~前回までのリハネ~


キラークラウドを討伐する為に、私とカナミアは奴に近づく。

本体みたいのを見つけて、渾身の混合魔法ライトニングフェニックスを叩き込んだ訳だけど。

討伐は出来なかった。そして奴は、正体を現す。


◇登場人物◇ ※●が視点者

●リハネ    :ゾトの勇者

〇カナミア   :アイーホルの勇者


□キラークラウド:400年間、不敗の魔物

 私は、目を開けた。

 魔走車の中だ。


「おはようございます。」


 カナミアが。

 ランプの明かりで本を読んでいる。


「今、何時だ?」

「午後の6時です。2時間以内に出発できれば、問題なくレーグ半島へ到着できるでしょう。」


「…。」


 意識は、ハッキリしている。


 私達はキラークラウドを討伐する為、奴に近づき。

 その正体が、ドラゴンだと知った。


 私は奴に斬りかかり、返り討ちにあって…。

 以降の記憶はない。


「助けてくれたのか、ありがとう。」

「いえ、お互い様ですよ。私の方こそ、ありがとうございました。」


 カナミアの様子から分かる。

 私達は逃げてきたんだ。


 ドラゴンは、未だ健在。


「ドラゴンだったよな?」

「ええ、あれはストームドラゴン。

 ドラゴン自体が珍しいですが、その中でも希少ですね。」


「…それは、凄い。」


 身体は、動かせる。

 少し痛い程度で、戦えないなんて事はない。


「なあ、ドラゴンって、魔物じゃないよな?」


「そうですね。生物学的には動物です。

 ただ、人も生物学的には動物ですが、人と動物とで分けたりもするので。

 ドラゴン、という認識でいいと思いますよ。

 …ですが。」


 まるで、見透かされたように。

 強い口調で。


「人を害する物である事には変わりありません。

 ならば、放置は出来ません。

 人でも、動物でも、魔物でも、ドラゴンでも。」


 「ドラゴンは魔物じゃないから討伐しなくていい。」なんて。

 そんな事ある訳はない。


 分かっていたさ。


「魔物ってさ。」

「なんですか?」


「人型の魔物とか、獣型の魔物とか。

 そういう呼ばれ方するだろ?

 ネームドって珍しいよな。

 カナミアは、血鬼ブラッドオーガっていう鬼を倒したんだろ?

 悪魔蛸デビルオクトパスっていう蛸も、蘇生岩リバイブロックっていう岩も、沼喰スワンプイーターっていう沼も。

 で、今回はキラークラウド。いや、ストームドラゴンときた。」


「疫病神、とでも言いたいのですか?」


「違うよ。

 ただ、持ってるなって思ったんだよ。

 流石、歴史に名を刻む勇者様は違なって。」


 私は。

 何でこんな話をしているのだろう?


 まさか。

 そんな凄いお前と、私は違うから。

 「だから私は、抜けさせてもらう。」なんて。

 そんな事を言うつもりじゃ、ないだろうな?


 当たり前だ。

 言う訳がない。私は逃げない。戦う覚悟はちゃんとある。


 それでも。


 手が、震えているのが、分かる。


 それほどまでに。

 ストームドラゴンは…。


 (くそ、カッコ悪いな…。)


 私は、こいつに。

 甘えている。


「少し、訂正しますね。」


 カナミアの視線は、ずっと本だ。


「ほとんどの魔物には、名前がありますよ。

 研究者や退治屋は使っていますね。

 そういう専門職でない人々に、知られていないという話です。

 多くの人にとって、重要なのは獣型で犬の魔物という情報。

 『シャープネイルドッグ』か『ハードファングドッグ』か、ではないんです。

 どちらであったとしても爪にも牙にも注意は必要ですし、対策として有効な『におい袋』は同じ物ですから。

 魔物は、魔物なんですよ。

 忌むべき存在に、興味も、関心も、個体として認識するなんて事は不要なんです。

 だから。

 名前でなんて、呼びません。」


 開きっぱなしの本が、目に入った。

 家の魔物について書かれている。


 『デスティニーハウス』『デストロイハウス』『デスハウス』…。


 さっぱり違いが分からない。

 私達の路銀を喰ったのは、果たしてどいつだったのか。


「私達が倒した魔物の名前が広まっているのは、私達がアイーホルの勇者だからです。」


「つまり、宣伝みたいなものだと?」


 アイーホルの勇者は、これだけの魔物を倒したぞ、と。


「そういう事です。

 いずれも強敵でしたし、中には本当に珍しいのもいました。

 私は自身を弱いとは思わないし、憧れた存在に近づけている実感があります。

 それでも。

 特別な存在だとは、思いません。」


 勇者だから。

 特別な存在だからドラゴンと戦う、と言う訳ではない。

 そう、彼女は言っている。


「私よりも強い人も、私よりも魔物を討伐した人も、いるはずです。

 私が、知らないだけで。

 少なくとも、そういう人達の活躍があったから。

 この本は生まれました。」


 名も知らない多くの戦士達が、そうしたように。


「ストームドラゴンも、私達の知らない事情があるのでしょう。

 だから現れたんです。

 それを知る術はありませんが、分かる事はあります。

 このまま放置してしまったら、どうなってしまうのか。

 そうでしょう?

 そして、それだけで十分なはずです。」


 守りたいものがあるから。

 だから、戦うのだと。

 そう、彼女は言っている。


 (それが。

 お前の思う、勇者なんだな。

 それが出来るやつ、全員が勇者だと…。)


 カナミアは本を閉じた。

 魔走車の外へと移動する。


 私には声をかけない。


 きっと。

 無理に付き合わなくてもいいと。


 そういう意思表示だ。

 ストームドラゴン相手では、命の保障はないから。


 (ああ、カッコいいな…。)


 その背を見て。

 純粋にそう思う。


 (…思い出せ、私は。)


 自問する。

 冷静かどうか、正しいと思えるかどうか。


 解放の魔王は、放置できない。

 ストームドラゴンも、放置できない。


 それは、この地に住む人達の為に。

 この世界に住む、人々の為に。


 戦う、覚悟はある。

 友との、誓いもある。


 勇者としてやってきた矜持もある。


 そして。

 信念が、ちゃんとある。


 この、行動に。

 後悔はない。


 (ポノにも偉そうな事を、散々言ったしな。)


 私は今、壁にぶち当たった。

 ならば、どうする?


 ぶち破って進むだけだ。


 私は魔走車を降りた。


 まだ、完全に暗くはなっていない。

 ぼんやりと星が見えるかどうかといった感じ。


「ドラゴンってさ。

 3年前のガットル達でも倒せたって話だから、言うほどじゃないなって思ってた。

 …いや、とんでもなかったな。」


 空を、いや、真っ黒い竜巻を眺めるカナミアに話しかけた。


「聞いた限りだと、彼らが戦ったのは『グリーンドラゴン』か『フレイムドラゴン』あたりだと思います。

 あれと、どちらが強いかなんて分かりません。

 ですが、少なくとも。

 あの恐怖には、勝ったという事です。

 凄いですよ、ガットル達は。」


「…負けられないよな、ウーイングの勇者パーティーには。」

「ええ。彼らとは、ライバルでいたい。」


 カナミアと二人。

 顔を合わせて、小さく笑う。


「作戦があります。」


 カナミアが言う。


「ストームドラゴンの主食は魔力。

 ですので、高濃度の魔鉱石を餌に奴を陸地に誘き寄せます。

 海上は奴の独壇場。

 勝ち目はほぼありません。

 少しでも向こうが不利に、こちらが有利になるように。

 陸地なら、私達は6人で戦えます。」


 陸地に誘うという事のリスクは、言うまでもない。

 私達を蹴散らした後、そのまま陸地を進む可能性がある。


 逃走されても私達の負けだ。


「今、ギリュウ達が罠の用意をしています。

 古典的ですが、落とし穴です。

 落とす事が出来れば、抜け出すには苦労するでしょうね。」


 なるほど。


 海から遠ざけて、水を奪い。

 空から落として、風を奪うのか。


 落とすのが大変だろうけど。

 上手く行けば、集中砲火を浴びせられる訳か。


「そこで、これの出番です。」


 カナミアが私に見せてきた物。


 それを確認して。

 私は、作戦内容を理解する。


「ガットル達は、フフゴケ商会の商品を使って作戦を立てたらしいです。

 私達は、ヨダーシル製の商品を使った作戦でいきましょう。」


 私は頷いて。


「ああ。

 倒すぞ、ストームドラゴン。」


 拳と拳を軽くぶつけた。

第一章、洞窟のドラゴン。第二章、スカルドラゴン。第三章、天竜。第四章、クレイジーマシンドラゴン。そして第五章、ストームドラゴン。

怪しいのもいますが、ドラゴンノルマ達成!

次回、ストームドラゴン戦!

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