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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第五章 11人の堕天使と2大陸縦断英雄列車

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第168話 一方、その頃~魔王城を目指して~


少しだけ時間が戻って、ゲームB参加者達の話。


◇登場人物◇ ※●が視点者

●ワッポノ   :マーアの勇者

〇リハネ    :ゾトの勇者

〇カナミア   :アイーホルの勇者


□セイ     :ヨダーシルが開発した人工知能(AI)。諸事情でワッポノにも組み込まれている

*ワッポノ視点*


 午後3時。

 予定通り、ヨダーシルに到着。


 協力してくれる事になったカナミア達と合流。

 ゲームAの参加者と別れて、噂の魔改造魔走車の所まで行く。


 時刻は、午後4時。

 あと、およそ71時間後。


 解放の魔王が、無差別攻撃を開始する。


 俺達ゲームBの参加者は、それを阻止しにいく。


「4台あるんだな。」


 魔走車を見ながら、リハネが呟く。


 俺も意外だった。

 魔改造魔走車なんて、いかにも法に触れてそうな名前だから。

 てっきり、超巨大な1台だけを隠し持っているんだと想像していた。


 マーアには魔走車なんてないけど、俺は魔走車を知っている。

 前に、ヨダーシルに来た時に乗せてもらったから。


 大きさも見た目も、こんな感じだったと思う。


 (逆にいうと、見た目が同じだから複数台所持できたのか。)


 一人で納得していると、リハネが言った。


「なあ、勝負しようぜ。」


 淡々とした声で。


「ゾト組、マーア組、アイーホル組で、どの組が一番早く到着できるか。」


 カナミアが答える。

 氷のように冷たい声で。


「人命がかかっているという事を理解していますか?

 ふざけている場合ではないですよ。」


「ふざけてなんか、いねーよ。」


 一触即発みたいな空気。


 二人のやりとりを初めて見る側は、固唾をのんで見守り。

 見慣れた側は、またかと思った。


「いいか?

 ゲームBは、堕天使を纏めるボスが相手だ。

 それはもう、強敵なんだろう。

 だが、真の強敵は時間制限。

 辿り着けるかが、問題なんだ。」


 約3年前。

 ウーイングの勇者達は、レーグの魔王を討伐するのに半年かかった。


 フフゴケ商会の宣伝も兼ねていたから、というのはある。

 ウーイングからレーグへ行くより、ヨダーシルからレーグへ行く方が、距離的に少し近いというのもある。


 しかしそれでも。

 3日で辿り着けというのは、ふざけた話だ。


「この魔改造魔走車は、理論上51時間で到達できる。

 20時間も余裕があるから夜は寝れるし、決戦前に十分な休息だってとれる。

 流石はヨダーシルの技術力、脱帽だ。

 しかし、そう上手くいくと思うか?」


「どういう事です?」


「私達が進むのは、平坦な道じゃないって事だ。

 まずはトスーチェのストレブ山を越えないといけない。

 フラスカまで迂回してもいいが、どちらにしてもアッブドーメン大森林は突っ切る必要があるだろう。

 そこを無事、越えられたとして。

 次のバクーは比較的平地が多いらしいが、最終地点はレーグ半島。

 魔王城周辺がやばすぎて、そこばかり話題になるそうだがそうじゃない。

 実際にいったガットルとかの話だと、アッブドーメン大森林なんて比較にならないそうだ。

 人の手が入っているかどうかの違いだな。

 そこを最奥の魔王城まで、進まないといけないんだ。

 自然を舐めてはいけない、なんて。

 言うまでもないだろう?

 カナミア達は、ラゼン山脈。

 そして私達は、クーランの近くにいたんだから。」


「なら尚の事、一緒にいた方がいいのではないですか?

 一台に9人は窮屈でしょうから、複数台で行くのは賛成です。

 しかし、固まって動くべきです。

 その方が、不測の事態に協力し合えますから。」


「問題が、それだけならな。」

「何を、警戒しているんですか?」


「所在が不明な堕天使がいる。3人ほどな。」

「妨害が、あるとでも?」


「ある保障はないが、ない保証もない。

 なら、あった時の事を考えるべきだ。

 一番やられて致命的なのは、なんだ?

 私が考えるに、それは。

 奇襲による一網打尽だ。」


「だからバラバラに進むというのですか?

 納得できません。

 奇襲された時も、人数がいた方が有利のはずです。」


「洗脳中で覚えていないかもしれないが、私にはインフェルノフォールっていう魔法がある。

 まあ、あれ自体は、私のオリジナルなんだけど。

 要は、魔法を使えば。

 周囲への被害なんて考えなければ。

 地面に、でっかい穴を空けるなんて事は容易いんだよ。」


 普通なら。

 出来たとしても、やったりしない。


 法があるし、倫理観があるから。


 よっぽどな理由とか、やむを得ない事情とか、そういうのがあって。

 それでも、やるかやらないかを悩むレベル。


 でも、相手は堕天使だ。

 法なんてないし、奴等にとって俺達は対等な人間ではない。


 となれば。

 可能性は、寧ろ高いのか?


「いきなり現れる、めちゃくちゃデカい落とし穴。

 躱せると思うか?私達は魔走車の運転に慣れていないんだぞ?

 固まっていたら、間違いなく3台とも穴に落ちる。

 私達は無事かもしれない。

 でもそれで、魔走車が壊れたら?

 詰みだよ、それは。

 それが、私の考える最悪だ。」


「…確かに、一理ありますね…。」


 カナミアが頷いた。


 (確かに一理はあるかもしれないけど、リハネはカナミアと勝負がしたいだけなんだよなぁ。)


 リハネは。

 自分の意見を通す為に、もっともらしい事を言うのが得意な奴だ。

 自信満々に言うから、それもそうかぁって思ってしまう。


 そしてカナミアは真面目だから、こういうのに騙されやすい。


 とはいえ。

 この考えを、口に出したりはしない。

 出したところで、ではあるし、なにより。


 俺も、勝負はしたい。


 (模擬戦では相変わらず、リハネに勝てていない。)


 魔装具の使用が禁止だから、なんて言い訳はしない。


 マシンDFドラゴンフォームを使えないのも、愛用の剣を使えないのもお互い様だから。


 (戦いで勝てないから、戦い以外で勝ちたい、なんて、つまらない事は言わない。

 戦いでも勝てるようになるし、戦い以外でだって負けたくないんだ。)


 リハネが、カナミアしか見ていなかったとしても。

 俺は、二人の勇者をライバルだと思っているから。


「いいでしょう、勝負に乗ります。

 そして別々のルートで進み、魔王城前で集合です。」


「制限時間の1時間前。3日後の午後2時がリミットだ。

 それまでに集合場所に来なかったら置いていく。

 っていうルールでいいよな?」


 リハネとカナミアが、拳と拳を合わせる。


 そこに。

 俺も拳をつけた。


 カナミアを見る。

 頷いてくれたから、頷き返す。


 リハネを見る。

 ニヤニヤしてやがるから、睨みつけてやる。


 (絶対、勝ってやる…。)


「…話がまとまったようなので、操縦の説明をしますね。」


 運転は、基本的にカソローがするはず。

 だから説明を聞くのは彼に任せる。


 俺は、少し離れて地図を広げた。

 この戦い、どう進むかが勝利の鍵だ。


「基本はこの、スーパージェットモードで走行して下さい。

 ただ、こちらのセンサーに反応があった場合はモードを解除して減速を。

 行商人や旅人を、跳ね飛ばす事のないようにお願いします。」


 見慣れない地図を眺めていても、サッパリ分からない。

 しかし、俺には奥の手がある。


 ちょっとだけ魔力を込めて。

 マシンDFドラゴンフォームを少しだけ起動。


 少しというのは、だいたい…。

 姿が変わる直前で、一部の機能が使えるくらいだ。


 一部の機能というのは、セイの事である。


 (演算してほしい事がある。)

『…なんですか?』


 周りに気づかれないように、所謂、脳内での会話になるんだけど。

 セイは、なぜか不機嫌だ。


 (この地図を見てくれ。

 ヨダーシルからレーグ半島まで行きたいんだ。

 魔改造魔走車っていう、とんでもないスピードが出る魔走車で行くんだけど。

 もっとも効率のいいルートを検索してくれ。)


『ヨダーシル、トスーチェ、アッブドーメン、バクー、レーグの順です。』

 (いや、それは知ってる。もっと詳細な情報が欲しい。)


『この大雑把過ぎる地図から読み取れる情報は以上です。

 詳細な情報が欲しいなら、詳細なデータを下さい。』


 それは、まあ。

 …そうだよな。


「これは、ハイパーダッシュボタン。

 一時的に、超加速が出来ます。

 ただ燃料を多く消費しますから、ここぞという場面以外では使わないで下さい。

 使い過ぎると燃料が足りなくて、目的地前に止まってしまう可能性があります。

 あくまで、緊急時の脱出用だと思っておいて下さい。」


『あ、待ってください。ここは、ヨダーシルですか?』

 (そうだけど?)


 そう言えば、「ヨダーシルからレーグ半島へ」とは言ったけど。

 現在地がヨダーシルとは伝えてなかったか。


『なら話は別です。セイのネットワークに入り、情報を取得できますから。』

 (え、確か、出来ないって話じゃなかったっけ?クレイジーマシンドラゴンの時。)


『あの戦いの後、ヨダーシルの技術者が色々やっていたでしょう?

 私はパワーアップしたんです。』

 (なら、頼むよ。)


 ちょっと、モヤモヤするけど。

 出来るならよかった。


 少しして。

 俺の頭に、情報が流れてくる。


「ちなみに燃料は、こちらの魔鉱石。

 このメーターが減ってきたら、ここの穴に入れて下さい。

 あと、燃料の隣に車輪の換えもあります。

 使わないに越したことはないですが、もしもの時は使って下さい。」


 (こ、これは!?)


 凄い。

 レーグ半島なんかに行った事は一度もないのに。


 まるで馴染んだ帰り道のように。

 くっきりとルートが頭に浮かぶ。


 (付近の町の工事状況や、土砂崩れの情報まで分かる。

 一体ヨダーシルは、どうやってデータを集めているんだ!?)


 情報は力だ。

 それを俺達は、こんなにも独占できている!


 共有すべき?


 いや、これは勝負だから。

 別々のルートで行くのは作戦だから。


 ずるい?


 そんな事はない。

 ダークネスフレアドラゴンリベリオンは俺の力。

 当然、組み込まれているセイの演算能力も俺の力。


 (勝てる、勝てるぞ!俺は!!)


「ああ、これですね。

 ウルトラジャンプボタンです。

 こちらは、使用禁止でお願いします。

 調整不足というか、未完成なんですよ。

 完成していれば、海の上を走れてアッブドーメンからレーグ半島にいけたかもしれませんが…。

 あ、ハイパーダッシュボタンと間違えないように注意して下さい。

 謝って押すと、たぶん、爆発します。」


 不穏な単語が聞こえて。

 思わず振り返ってしまう。


 え、爆発するの?


「最後に、これが各国の入国許可証です。

 それでは皆さん、検討を祈ります。」


 少しだけ、不穏を残しつつ。

 俺達は魔王城を目指して、出発した。




 約17時間後。

 翌日、午前9時。


 俺達の旅路は順調だった。

 時間的には、アッブドーメンに入れていれば安全圏。


 そこを俺達は。

 小休憩をはさみつつも、アッブドーメン大森林を半分以上進んだ。


 普通なら休憩なしで走り続けないと、ここまで進めないだろう。


 でも俺達は。

 人の通らない道を、スピードの出せる平らな道を、迷う事なく選ぶ事が出来るのだ。


 だからこそのハイペース。

 まさに情報の大勝利。


 の、はずだった。


「…どうして、こんな事に…。」


 俺達の乗る魔走車は、止まってしまった。


 燃料切れではない。

 車輪が、何かに絡まっているとかでもない。


 原因不明。


 魔改造魔走車は、違法物だけあってデータが無かった。

 だからセイにも分からない。


 今、カソローが。

 一生懸命説明書を読んでいる。


「ポノー、早く行くよー!」


 ツツジが呼んでいる。


 カソローが魔走車を直せなかった時の為の、セカンドプラン。

 それを実行する為に、俺とツツジは近くの町を目指すのだ。


「…。」


 魔改造魔走車の存在を知るユンゼスは、今頃、列車を運転しているはずで。

 連絡を取る事が難しい。


 きっと、あの魔走車は。

 もう動かないのだ。


 (この際、リハネ達に負けるのは仕方ない。

 でも、魔王との戦いに間に合わないのは、嫌だ…。)


 俺は、勇者だから。


 祈るように空を見て。

 ツツジの後を追いかけた。

ポノ編終了(笑)

まあ、最後の方に活躍が残っているはずなので、一旦は。


次回より、リハネ&カナミア編~

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