第167話 3/6:ネクーツ周辺~古の英雄~
~前回までのヒキリカメラヒ~
解放の輝旗は、多くの世界で勝利してきた。
その輝旗が押されている?いいだろう、俺が戦況を変えてやる。
列車到着を待っていると、謎の男がやってきた。
事情はある程度しっているようだし、ウォーミングアップに付き合ってくれ。
◇登場人物◇ ※●が視点者
●ヒキリカメラヒ:解放の輝旗メンバー
〇ゼユウ :フレン王国の人
〇セウオン :解放の輝旗リーダー
●パルケ :センレイ会、会長の妹
〇ロストン :勇者隊メンバー
後ろに飛ぶ。
距離を取りながら、風刃を乱れ撃つ。
まずは軽いジャブ。
これで相手の力量を計る。
「竜巻!」
奴の魔法が、風の刃を蹴散らしていく。
中々の威力だが、足りない。
巻き込めなかった刃が、そのまま標的を襲う。
「…ほう。」
奴は杖を放り出す。
その身体が、宙に浮かぶ。
(この世界の住民で、翼を使う奴がいるとはな。)
不可視の翼を動かして、文字通り空を飛び攻撃を避けていく。
(どうした?もっと速く飛ばないと、翼ごとズタズタだぞ?)
風刃の数を増やす。
このまま刻んでやるつもりで、じゃんじゃん飛ばした。
が。
「何?」
突然、刃の軌道が不自然に変わる。
しかも一つや二つではなく、一斉にだ。
まるで、何かに引っ張られるように。
(風網か!)
当然、この程度で飛び回る刃を何とかする事は出来ない。
数秒もあれば、網をズタズタに切り裂いて出てくる。
しかし、一時的にとはいえ。
風刃は、ずらされた。
僅かな時間、俺と奴との間に障害物が無くなる。
(これが、狙いか!)
瞬間、奴は加速。
風剣で斬りかかってきた。
「速いな、が!」
発動する魔法は、風槍。
多くの戦場を、槍を担ぎ駆けた。
その勝利を、槍で掴んできた。
やはり槍が、もっとも馴染む。
発動するのに、1秒もいらない。
「甘い!」
槍の一振りで、剣を砕く。
「キサマの敵は、解放の輝旗だぞ!」
必殺の突きを放つ。
胴に直撃。
したように見えたが、防がれたらしい。
感触的に、風鎧だろう。
(しかし!)
身体を貫く事は出来なかったが、ダメージはゼロではない。
そして受け身が困難なほど、景気よく弾き飛ばした。
(そんな状態で、捌ききれるか?)
体勢の崩れた相手を追撃するのは基本。
網を破り舞っていた風刃、全部を殺到させる。
「二重竜巻!」
奴の両手から放たれた渦巻く突風。
その威力は、初手に奴が放った竜巻の約2倍。
全ての風の刃を巻き込みながら、俺に向かって飛んでくる。
それを。
「ふん!!」
風槍を、地面に突き刺す。
そこから吹きだした魔力が壁となり、ぶつかった竜巻を消していく。
「そんなものか?隊長さん。
それじゃあ、王女様は守れないんじゃないかい?」
男に返事をする余裕などない。
翼が解け、地べたを転がり、衣服はボロボロ。
息が上がっていて、上体は起こせているが立ち上がれてすらいない。
それでも。
その瞳から、戦う意思は消えていなかった。
(いいな、これは。)
男は再び、翼を発動。
ゆっくりと浮かびあがる、その両手には二本の風の剣。
風剣、二刀流。
(もっと、来い。もっと、楽しませてくれ!)
槍を構えなおし、地面を強く踏みしめる。
万全の迎撃態勢。
そこに。
男は突っ込んで来た。
繰り出す攻撃は、素早く、鋭い。
しかもそれは、ギアを上げていくように。
更に、スピードを上げていく。
(いいぞ、いいぞ!)
それを槍で、捌き続ける。
この男は、強い。
おそらく、この世界では上位レベル。
なんなら天上の国でも、十分通用する。
そんな男と戦えて、楽しい。
そんな男を叩き潰せるなんて、嬉しい。
歓喜と共に振り上げた一撃が、奴の右手の剣を弾き飛ばす。
「終わりだ!」
奴の左手の剣が迫る。
しかし、もはや関係ない。
この必殺の振り下ろしで、剣ごと身体を砕いてやる。
その、つもりだった。
「な!?」
奴の剣とぶつかった俺の槍が、折れた。
奴の剣は折れていない。
そのまま、俺の首に向かって…。
「くそ!」
一歩。
後ろに下がる。
それで奴の攻撃は躱せた。
しかし。
たかが一歩、されど一歩。
下がらされたという事が、俺のプライドを傷つける。
(こいつ!!)
俺に慢心があったのか。
窮鼠が猫を噛んだのか。
どちらにしろ、もう俺に油断はない。
一歩、前へ。
再発動した風槍を、横に薙ぐ。
対して、奴の行動は。
武器破壊狙い。
さっきので味を占めたのか、剣は槍に向かっていた。
(バカが!二度も上手くいくか!!
吹き飛ばした後を追撃し、頭蓋を叩き潰してやる!)
剣と、槍が激突し。
今度も、俺の槍は砕かれた。
「…!?」
唖然とする俺は。
魔力の破片が舞う、その奥。
奴の瞳を、見た。
「うおお!!」
蹴った。
奴の腹を、反射的に。
今度も風鎧に阻まれたが、距離を離す事には成功。
膝をつき、こちらを睨んでいる奴を警戒しつつ。
流れた冷や汗を拭う。
「…まさか、魔眼持ちだったとはな…。」
しかも、あの形状は。
(魔力、いや、魔法の綻びを見抜く瞳だ。)
魔力とは、大なり小なり常に変動するもの。
それを一つの形状に留め続けるというのは、難易度の高い事。
風剣や風槍は、それだけ難しい、いや、技量の差が出る魔法なのだ。
俺は、風槍の練度に関しては達人の域にあるという自負がある。
しかし、そのレベルでも。
綻びを完全にはなくせない。
脈打つように流動する魔力の性質上、仕方のない事だ。
いかに綻びを小さくするかが、腕の見せ所となる。
それが。
名だたる槍師の造る『本物の槍』には及ばない、と言われている理由であり。
無手から武器を持てる事、のみが利点と言われる所以である。
奴の眼は。
その綻びを、見破る。
(俺ほどではないにしろ、奴も相当な練度だ。
脆いウイークポイントを的確に攻撃されては、一撃で破壊されても仕方がない…。)
初手と同様に。
俺は風刃を乱射する。
あの時、奴は。
竜巻による大雑把な対処をしようとして、しかも対処しきれなかった。
なのに。
俺の16発の風刃は、同じく奴の16発の風刃に、全て落とされる。
俺のよりも一回り小さい、奴の風の刃に。
(奴の魔眼は、あの数の飛翔物、全ての綻びを見抜いた。
弱点を狙えば、そこまでの威力はいらない。
だから一つ一つの風刃の消費魔力を減らし、小型化させても問題がなく。
その分、数を揃えられたから、対処が可能になった訳か。)
奴はまだ、立ち上がらない。
バテているようにも、何かを狙っているようにも見える。
不気味だ。
(最初からあんな眼ではなかった。
つまり魔眼は、常時発動するタイプではない。
おそらく、発動までに時間がかかるタイプ。
それがようやく、機能し始めたといった所か。)
能力により魔眼の形は似る。
だいたいの予測は可能。
しかし、個性、個人差というのはあるもの。
そして、能力は一つとは限らない。
(あの魔眼は、いつまで持つ?
俺の知らない効果がまだあるのか?)
わからない。
わからないが。
俺のやる事は、一つ。
「いいだろう、ウォーミングアップは終わりだ!」
俺は自らの頭上に、光輪を出す。
天法を、使う。
「天力を持つキサマなら分かるだろう?
天力は転移や転生を使うだけじゃない。
魔法を強化する。
それこそが、真骨頂だ!」
俺は、槍を造る。
白く輝くそれは、風槍ではない。
大きさも、形状も違う。
無骨で、無慈悲な、無二の物だ。
かつて。
国宝と称えられた名槍を、正面から破壊した。
千の軍に突っ込み、その尽く屠り道を切り開いた。
「混合天法、フラッシュデストロイヤー。
これが、俺の誇りそのもの。
こいつの弱点が分かるか?
無理だろうな。そんなものは無い。」
天法が補う事で、魔法の限界を超えたのだ。
奴は。
再び、浮かび上がる。
その頭上に。
光輪が、輝く。
白い翼に、白い剣、二本。
「さあ。
決着をつけようか!!」
この戦いで、初めて俺から突っ込む。
小細工は無用。
正面から、叩き潰す。
一振りで、奴の剣を二本とも破壊。
しかし奴は、次の瞬間には剣を持っている。
俺同様、大した魔法練度、いや、混合天法練度だ。
バリン、バリンと、軽快な音を響かせながら。
俺達の打ち合いは続く。
(楽しい!!)
フラッシュデストロイヤーを、こんなにも振り回せる日がくるなんて。
少し前にも味わった、歓喜の時が再び訪れる。
しかし。
同じではない。
この槍を、誇りを抜いたのだ。
楽しむだけではいられない。
必ず、勝利しなければならない。
「うおおお!!」
体当たりで敵の体勢を崩してからの、渾身の振り下ろし。
この槍は砕けない。
今度こそ、俺の勝ちだ!!
「!?」
直感。
このまま振り下ろせば、俺は死ぬ。
一歩、どころではない。
全力だ。
全力で、後ろに飛んで。
それを躱す。
直前まで俺がいた位置。
明るく輝く光、が通り過ぎた。
刃のような、鋭さで。
「一撃で決める為に隠してたんだけど。躱すなんて流石だな。」
男が喋った。
「見たことのない魔法だった。名前はあるのか?」
ここまできて。
つまらないプライドも、的外れな怒りもない。
純粋に、疑問を口にする。
「輝刃っていうんだ。
魔王を斬った事もある、切り札だよ。」
「そうか。
当たったら、きっと死んでいたな。
全く、とんでもない隠し玉を持っている男だ。」
今まで俺は。
敵と会話なんてした事がない。
即殺。
会話なんて、している時間は無かったし。
したとしても、それは。
一言、二言。しかも、罵りや挑発だ。
だから。
会話が成立するという、この奇妙な初体験が。
更に、俺の口を開かせた。
「楽しいか?お前。」
男は答えない。
でもそれは、質問の意味を計りかねているからで。
話は、聞いてくれている。
「お前ほどの実力者だ。
この世界は、つまらないんじゃないか?」
自分でも、そんな事を言い出すなんて不思議だった。
きっと、この夕暮れが。
セウオンと出会った日と、似てたから。
「俺達と、一緒に来ないか?そして、一緒に遊ばないか?
なあ!世界を、楽しまないか?」
男は、少しだけ考えて。
「そうだな。
確かに、つまらない事はあるよ。
苦い事も、しょっぱい事も、辛い事もある。
食べたくないものを掴んでしまって、無理やり食べないといけない事だってある。
…でも、仲間と一緒なら悪くない。
寧ろ、楽しい事もある。
そういう仲間に、出会えたんだよ俺は。」
そして笑った。
寂しそうにも、諦めたようにも。
優しそうにも、満足気にも見える。
きっと、綺麗な夕陽の所為なのだろう。
「そうか、お前は。
もう、楽しんでいるんだな。」
納得し、わだかまりが消える。
もはや疑問はない。
「これで、決めよう。」
「わかった。」
槍先を、男に向ける。
両脚そして全身に、魔力と天力を。
(俺の全力。全てを打ち砕き進む魂の覚悟。
何をしようと、止められると思うなよ!)
咆哮と共に。
地面を抉りながら、俺は駆けた。
1秒もあれば駆け抜けられる距離。
一瞬でつくはずの決着。
それが、まだ続いているのは。
奴の抵抗。
俺の突進を押さえこむ、白く輝く暴風の壁。
光竜巻。
なんという威力。
(セウオン、コンレウ以外にも、俺の突進を真向から受け止められる奴がいようとは!)
しかしそれでも、勝つのは俺だ。
完全に止められた訳ではない。
一歩、また一歩と前に進む。
(このままキサマを、貫いてやる!!)
あと五歩、いや四歩。
それで。
「!?」
右肩に激痛。
攻撃?誰が、どこから?
いや、それより。
これだけの魔力と天力を纏う俺が、ダメージを受けただと?
左脚、右脇腹、左肩。
感じる、この痛みは。
(…斬、撃?)
俺は、見た。
暴風に飛ばされる、小石。
それが俺の右腕に近づいて。俺の魔力防壁に弾かれる瞬間。
明るく輝く光となって。
俺の右腕を切り裂いた。
(これは、輝刃!?)
どんな仕組みかは分からない。
しかし、これは。
奴の攻撃。
周りには、無数の小石が舞っていた。
この暴風の中でも、粉々になる事なく。
あれ、全てが。
俺を切り裂く刃だと!?
(ここは暴れ狂う風の檻!退く事も難しい!)
もとより。
逃げるなど、ありえない。
あと一歩。
それで、俺は。
「あああああ!!!!」
絶叫しながら。
俺は前へと、進んだ。
「ブレイドストーム。
魔竜をバラバラにしたり、天竜を戦闘不能にした、奥の手だよ。」
聞いてもいないのに。
俺の視界に入ってきた男は、教えてくれた。
ズタズタに斬り刻まれた俺は。
無様に地面に転がっている。
もはや暗くなる空を眺める事しか出来ず。
このまま光の粒子となって消えるのみだ。
「お前の槍、凄いな。
あれで無傷とは恐れいったよ。」
「…まあ、な。
自慢の槍だ。」
少し離れた場所に、フラッシュデストロイヤーは突き刺さっていた。
今まで、こんなふうに眺める事はなかった。
手前味噌だが、なんと美しい槍だろう。
とはいえ。
俺が消えれば消えるだろうが。
「…なあ、お前。
ゼユウとか言ったな。
勝者の特権だ。好き放題に言っていい。」
確か俺も。
王女様は守れない、とか。
侮辱するような事を言った気がする。
「もう戦いは終わったんだ。
あなたは、いい顔をしている。それでいいよ。」
言われて、気づく。
(そうか、俺は。いい顔をしているのか。)
確かに。
今はスッキリした気分だ。
全力を出し切れたからかもしれない。
(久しく忘れていた。
楽しいか、楽しくないかだけじゃない。
こんなにも、清々しい気分というのもある。)
おそらく、セウオンが。
まだ気づけていない感情。
「…すまない、あなたの名前を、もう一度教えてくれないか?
戦闘前で、それどころじゃなくて…。」
「ヒキリカメラヒ。」
「…ヒ、…ヒ…?」
「ヒーヒでいい。」
まったく、どいつもこいつも。
最後に。
セウオンも、この戦いで。
何かに気づけたらいいと、思いながら。
俺は意識を手放した。
*パルケ視点*
「フレン王国は今、ちょっとごたついてるんだ。
女王様がさ。
王女が成人したタイミングで、女王の座を譲るって言いだした。
第一王女様は不幸にも亡くなってしまったんだけど、第二王女様と第三王女様がいるんだ。双子の姉妹のね。
そして女王様は二人の娘に、いくつかの試練をあたえた。
強い国を維持する為に、強い女王を求めたから。
そんな訳で王宮は、第二王女様派と第三王女様派とに分かれて、試練を乗り越えようと頑張っているって状態なんだよ。」
走り出した列車内で。
私達は、ゼユウって人の事情の説明を受けている。
「そんな忙しい中、護衛隊の隊長さんは、こんな所にいていいのかい?」
言い方は酷いけど。
私も、ロストンと同じ疑問は持っている。
大丈夫なの?
「まあ、隊長としてはダメなんだけどね。
ただ俺達にとって、第二王女様も、ビッケも。
大事な仲間なんだ。
どちらの力にもなりたい。
だから仲間と相談して、俺だけこっちに来たんだ。
隊長も一旦、渡してきたし。だから大丈夫だよ。」
ゼユウは、穏やかな顔だ。
それだけ、仲間を信頼しているのだと思う。
「…にしても、話を聞く限りあれだな。
堕天使との戦闘。
序盤は押され気味だったのに、終盤は圧倒だ。
舐めプでもしてたのか?」
ロストン、言い方…。
「別に、手を抜いていた訳じゃない。
魔眼は使うと違和感が凄くて。
だから、なるべく使いたくないんだよ。
でも、使わないときつくて。使ったら使ったで、使い慣れてなくて。
…でもそうだよな。
最初から使わなかったって事は、舐めプ、になるのかな。
ヒーヒには悪い事をしたかな…。」
落ち込んでいる?
ああ、きっとこの人は真面目なんだな。
「ブレイドストームってやつさ。
小石を輝刃に変化させたんだろ?
そんなバカみたいな性能だと、魔力も天力も足りなくないか?
どうやってんの?」
ゼユウの反応をガン無視して別の質問をしている。
ロストンは自由だ。
対してゼユウは、いい人だ。
こんな態度の相手にも、真面目に答えてくれる。
「えっと、ほらこれ、魔鉱石。
かなりの魔力が含まれているんだ。
確か聞いた話だと、列車の動力にも使われていたはず。
このままだと、普通は使えないんだけど。
俺は、コストチェンジっていう魔法が使えて。
コストチェンジなら、魔鉱石の魔力を使えるんだ。
足りない魔力は、それで。」
袋から取り出した、魔鉱石を見せてくれる。
凄さは分からなかったけど、綺麗だというのは分かる。
…アクセサリーとかにしたい。
などと考えていると。
ひょいっとロストンに奪われる。
「すげー魔力だな。
とんでもないほど深い地中から掘ったのか?
いや、かなりの魔法制御レベルの人物が加工したのか?
どちらにしろ、めちゃくちゃ高いだろ。
これ一つで家が建つんじゃないか?」
私はセンレイ会、会長の妹。
つまり大金持ちだ。
でもビビる。
だってあの袋の中には、まだあんなにも魔鉱石が入ってる。
「我が国が誇る、賢者様が夜なべして作ってくれたんだ。
99個くれたんだけど、さっきの戦いで使ったから…。
あと85個しかない。」
(これは、笑う所かな?)
微妙な雰囲気になったけど。
とりあえず、悪い人ではなさそうだし。
親睦を深める為に、私はトランプを取り出した。
綺麗な星空の下。
魔列車バーチカル・ギャロップは、フラスカに向かって走り続ける。
第三章の終盤、結局ゼユウはどんな感じなのか、ボカしたまま終わりましたが。
魔眼はそのままで、魔力(魔鉱石)があればメタモルフォーゼも使用可能。
と、戦闘能力的に弱体化はしていません。
この世界のベスト3目指して頑張れ!




