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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第五章 11人の堕天使と2大陸縦断英雄列車

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第166話 3/6:ネクーツ周辺~内部事情~


解放の輝旗には、『ヒキリカメラヒ』という人物がいる。


◇登場人物◇ ※●が視点者

●ヒキリカメラヒ:解放の輝旗メンバー

〇セウオン   :解放の輝旗リーダー

〇ミフダ    :解放の輝旗メンバー


〇ゼユウ    :フレン王国の人

*ヒキリカメラヒ視点*


『勝てば官軍、負ければ賊軍。』


 要は勝てればいい。

 そう言われて、嬉しかった。


 単純で、分かりやすかったから。


 なのに。

 勝ったのに。


 俺は鎖につながれていた。


「なら単純だよ。

 お兄さんは負けたんだ。」


 間もなく日が沈む、そんな頃。

 その少年はやってきた。


 赤く染まる世界の中で。

 牢の外側と内側、少年と俺は話をする。


「違う、俺達は勝った。

 総大将の首を取ったのは俺だ。

 逃げ散る雑兵も殲滅した。

 あれで、負けの訳がないだろう?」


 前哨戦では勝ったけど本戦で負けた、とかではない。

 あそこは最終決戦の場で。

 総大将が実は影武者でした、なんて話でもない。


 では、なぜ?

 こんな事に?


「えっとね、お兄さんの属していた陣営は勝ったよ。

 でも、お兄さん本人が勝ったんじゃない。」


「…。」


「お爺ちゃんが言っていたよ。

 今回の戦い。

 どっちが正しいって話になったら、それは相手側。

 お兄さん達は、悪者だったんだ。」


「違う。

 こちらにも、義はあった。

 そして勝ったんだから、こっちが正義だ。」


「…なんだか難しいね。

 ちょっと整理してみようよ。」


 少年の背後が燃え上がる。

 現れたのは、炎のイス。


 少年はそこに腰掛けて、話を続ける。


 …熱くは、ないんだろうな。


「お兄さん陣営にも…。

 そうだね、1割くらいの正しさはあったかもしれない。

 でも、程度の問題なんだよ。

 1対9なら、正しいのは相手側。

 お爺ちゃんが言っていたのは、こういう事だと思う。」


「…。」


「だからこそ、正義の名の下に人が集まったんだ。

 多かったでしょう?敵は。

 でも、その人数差を覆して、お兄さん陣営は勝ったんだ。

 強かったんだよ、お兄さん達は。

 そんなのに逆らいたくない、潰されたくないしね。

 だから。

 一つの戦いが、ここで終わったんだよ。

 で、問題。

 戦いが終わると、どうなると思う?」


「…それは、祝勝会とか、戦後処理とか…。」


 目の前の少年が、気味の悪い笑みを浮かべる。

 だからこんな様なんだと、嘲笑が聞こえた気がした。


「答えはね。

 次の戦いが始まるんだ。

 特に今回はやる事が多いね。

 なんたって黒を白にしないとだから。

 大義名分というのは厄介なんだ。

 放っておくと、正義を振りかざす別の奴が現れて、そいつとの戦いが始まっちゃう。疲弊した所に連戦なんて嫌でしょう?

 そういうのを防ぐ、武器を持たない戦いがあるって訳。

 まあ白を黒にする方が楽だから、今回はそっちを頑張っているみたいだね。

 お兄さんの言う、『勝った方が正義』方式。

 よく聞くけどさ。

 実現させるのは、口でいうほど簡単じゃないよ。

 時代とか場所とか、背景にもよるんだろうけどね。」


 ここまでくれば。

 少なくとも、こいつの言いたい事は分かる。


 心当たりが、ない訳でもないから。


「…つまり俺は。

 俺が気付かない所で始まった、正義を主張する為の戦いに巻き込まれて。

 俺の属する陣営が正義になる為に、何かの罪を押し付けられたって事か?」


 その戦いに、俺は負けたのか?


「そういう事。

 お兄さんは間もなく処刑されるよ。

 訳が分からない内にね。

 当然、何の準備もしていないお兄さんには打つ手がない。

 詰み、だね。」


「…お前は、俺を笑う為に来たのか?」


「まさか。

 提案をしにきたんだよ。

 俺は、お兄さんの力に興味がある。

 あの戦場を単騎で駆け、大軍を蹴散らし、総大将の首を取ったその力に。」


 少年は、イスから立ち上がる。

 そして俺に、手を伸ばす。


「仲間になってよ。

 そしたら、ここから出してあげる。」


 一目見た時から。

 その尋常じゃない魔力に、気づいていた。


 こいつは俺より強い。だから、こいつには逆らえない。


 そう思ったから、馬鹿正直に受け答えをした。

 拒否権があるとは思えなかったから。


 しかし。

 どうやら最後に、選択権があるらしい。


 こいつと共に行くか、それともこのまま死ぬか。


「一つ、教えてくれ。」

「何?」


「お前は、何をしようとしているんだ?

 この『つまらない』世界で。」


 少年は、笑う。

 楽しそうに。


「世界に『楽しい』も、『つまらない』も、ないよ。

 『楽しむ』か、どうかさ。

 だから遊ぼう。気の向くままに。」


 鎖を引き千切る。

 立ち上がり、鉄格子の所まで歩く。


 魔法的防御が施されているであろう、それを掴む。

 左右に引き、曲げる。通れるだけの隙間を作る。


「♪~流石。」


 自力で脱獄した俺は、少年の前に跪く。


「俺を、お前の仲間に入れてくれ。」


 遊びたかった訳じゃない。

 楽しみたかった訳じゃない。


 俺よりも強く。

 故に、俺以上に世界がつまらないであろう少年が、笑ったのだ。


 その笑顔が、いつまで続くのか。

 その事に、少しだけ興味が沸いた。


 それだけの話。


 そしてこれが。

 後に解放の輝旗のリーダーとなる、セウオンと言う名の少年との出会いだった。




「久しぶり~、ヒーヒは元気だった?」

「その呼び方を許可した覚えはない。人の名前を変な略し方するな。」


「でもさ~ヒーヒ。ヒキリカメラヒって、言いにくいよ。」

「相変わらず無礼な奴め。いちゃもんをつけるな、人の名前に。」


 言いにくいとは、自分でも思うが。


「で、何の用だ。

 俺の知る限り、ミフダという男は用もないのに男に話しかけない。」


「その通りさ。

 …今回のゲーム、どう思う?」


 ミフダにしては真面目な声。

 何かあるのかと勘ぐるが、あいにく駆け引きが出来る頭も情報も持っていない。


 だから、普通に答える。


「どうも何も、いつものセウオンの思いつきだろ?

 中々な規模の遊びだが、エンビッケとケリをつける気になったのなら納得だ。

 おかしい所はない。」


「あの二人に関しては?」


 バルドラッシュと、ザリキルダの事か。


「相手はあのエンビッケ。

 ソウルブレイカーは必要だし、戦力は多いに越したことはない。

 一時的な共闘は、当然だと考えるが?」


「…そうか~、まあ、そうか。」


 何なんだ、一体。

 不明瞭すぎてイラついてきたな…。追っ払うか?


「いや、悪い!深い意味はないんだよ。

 ただ、いきなりやってきてデカい顔してるから、最古参のヒーヒ的にどうなのかなって思って…。」


 イラついたのが伝わったのか、ミフダはペコペコ頭を下げる。


「本題前の、軽い世間話のつもりだったんだ~。

 本題は、これから~。」


「なら、さっさと話せ。」


「ゲームAに、俺も参加したい。」


 意外だった。こいつがナンパ以外に意欲を出すなんて。

 しかし。


「無理だな。」

「ええ!何でさ!」


「あの配置は適当に決めたんじゃない。

 新人のペアンワとアツペーを抜いて、後は能力の低い順に敵と当たるようになっている。

 強い奴が最初に配置されたら、そこでゲームが終わってしまうだろ?

 なるべく多くのメンバーが暴れられるようにした結果だ。

 もう周知もしてあるし、メンバーは移動を開始している。今更、変えられん。」


 まあ、もちろん。

 最初のセングスで終わる可能性もある。

 と、いうより。セングスで終わると思っている。


 だが、セングスに全滅させられるような相手なら、上位陣は満足のいく戦いなど不可能。

 どちらにせよ、という話だ。


「俺がいないんだけど?」

「お前はやる気がないだろう?だから外したんだよ。」


 本気を出せば。

 マーアの駅のシフダよりも強いだろうに。


「参加したいんだって、俺も!」

「急にどうした?どんな理由があるんだ?」


 ミフダは、今まで以上に真面目な顔で。

 俺を真っすぐに見つめて、言い放つ。


「ゲームAに参加するサニアって子、すげー可愛いんだよ!

 俺、彼女とデートしたい!」


 頭が痛くなった。

 ゆっくり深呼吸して、目を合わせないようにして言う。


「で、何?俺に話を振ったという事は、俺と変わってほしいって事?」


「いや、ヒーヒにそんな事いわないよ~。

 でもリーダーに意見できるのは、ヒーヒくらいだろ?頼むよ~。

 俺をゲームAに参加させてくれ~。」


 面倒くさくなった俺は。


 そもそもお前の実力だと後ろの方だから、それまでサニアとやらが生き残っている保障はない。

 なら、このままゲームに参加せずに列車を襲撃し、サニアを攫ってしまえばいい。

 ルール的に禁止はされていない。


 そう丸め込んで、ミフダと別れた。




 それが、一昨日の事。


「まさか、お前が敗れるとはな。ミフダ…。」


 天力で分かる。

 ペアンワ、アツペー、ミフダ、セングスの4名の堕天使が倒された。


 (勇者隊…。少し、舐めていたか?)


 解放の輝旗は、11名。


 しかし、その内の二人はバルドラッシュとザリキルダ。

 一時的な協力者で、正規メンバーではない。


 本来の輝旗は、セウオンと彼の8名の部下で構成されている。

 つまり、半数がやられたという訳だ。


「…。」


 問題はない。

 俺を含めて、まだ4人もいる。


 ゲームAで俺達が敗北するなど、ありえない。


 しかし。

 想定外のミフダの敗北が、嫌な空気を感じさせる。


 まだ遠い。それでも。

 敗北の二文字が、ちらついている。


 (いつ以来だ?こんな気持ちになるのは。)


 解放の輝旗を名乗るようになって。

 苦戦を感じた事は、一度も無かった。


 エンビッケが相手の時もだ。

 しつこくてウンザリするな、とは思っても。勝てない相手だと思った事はない。


 常勝。

 完璧な勝利を重ねてきたのだ。


 それが、崩れた。

 被害を出した今、完全勝利は無い。


 だからこそ。

 忘れていたものが、込み上げてくる。


 (徐々にだが、浮かんでくる景色があるな。)


 それは。

 あの時の、戦場。


 圧倒的な戦力差、戦う前から敗北必至と言われた、絶望的な戦。


 そして。

 それを覆した時の、あの高揚感。


 今更になって気づく。

 あの時は、楽しかったのだと。


 そう、俺は求めていた。

 負けるかもしれない戦い。そしてそれを、俺が覆す瞬間を!


 (速く来い…。早く、俺と戦おう…!)


「あのー。」


 今、俺は。

 ネクーツの駅が見える位置、少し離れた場所で待機している。


 まだ、日が沈みそうな時間だから。

 列車が到着する時間は、日が沈んだ後だから。


 下手に近づいて、騒がれるのもウザイから。


 (そんな俺に、話しかけてくる奴だと?

 いや、そもそも。何で俺は、こいつの接近に気づかなかった?)


 音制御ノイズコントロールを、使っているのに。


「何してるんですか?こんな所で?」


 白髪で杖をついているが、おそらく若い男。

 相当な魔力と、僅かに天力を感じる。


 勇者隊ではない。が、ただの一般人であるはずがない。


 俺は風刃ウインドカッターを放つ。

 もちろん、殺すつもりで。


 そしてそれは。

 男の風刃ウインドカッターに弾かれた。


 男は俺を睨みながら、低い声で言う。


「勇者隊を、いや、パルケさんを狙う堕天使…で、合ってるよな?」


 俺は。

 堪えきれずに笑いだす。


 本当に、丁度いい所に来てくれた。

 戦いたくて、仕方がなかったんだ。


 ウォーミングアップに、付き合ってくれ。


「解放の輝旗、ヒキリカメラヒ。

 誰だか知らないが敵みたいだから、ここで殺す。」


「フレン王国、王女護衛隊隊長(休隊中)、ゼユウ。

 危ない奴だと分かったから、ここで倒す。」


 どんな事情があるかは知らないが。

 戦う理由は、これくらい単純でいい。

ゼユウ編だけど、ゼユウ視点はありません。

そして次回でゼユウ編は終わります。


ヒキリカメラヒ。

言いづらいというか、イントネーションが不明(笑)

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