表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第五章 11人の堕天使と2大陸縦断英雄列車

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

166/170

第165話 3/6:ネクーツ周辺~初めまして~

~前回までのパルケ~


ヨダーシルに到着した私は、勇者隊の人達と一緒に列車に乗った。

そしてサニアから事情を聞く。私は、あるゲームに巻き込まれたらしい。

色々と思う事はある。モヤモヤしながら、私は寝た。


◇登場人物◇ ※●が視点者

●パルケ    :センレイ会、会長の妹

〇ガットル   :勇者隊メンバー

〇サニア    :勇者隊メンバー

〇ロストン   :勇者隊メンバー

〇ユンゼス   :列車の運転手

*パルケ視点*


 むくりと起き上がり、時計を確認。


 列車の旅、二日目、午前9時。

 いつもより、だいぶ遅い時間に目が覚めた。


 (…。)


 寝つきは悪かった気がするけど、どうやら爆睡できたようで。

 頭はかなりスッキリしている。


 現状把握もバッチリだ。


 今、私は。


 解放の輝旗なんていう、謎の集団のゲームに巻き込まれていて。

 護衛してくれる勇者隊の人達と一緒に、ヨダーシルから列車に乗ってジドルを目指している。




 身だしなみを整えて、食堂車へ向かう。

 その扉の前で、深呼吸する。


 きっと勇者隊メンバーがいるはずだ。


 私はセンレイ会、会長の妹。

 なのに、朝寝坊という醜態を晒してしまった。


 (名誉を挽回する為に、元気な挨拶をする!)


 その後は、まあ、流れで。


 (サニアとは仲良くなれたから、いてくれると、ありがたいけど…。)


 などと考えつつ、扉を開ける。


「おっ!?」


 『おはようございます!本日もよろしくお願いします!』そう言いたかったけど、言えなかった。


 食堂車が煙い。

 勢いよく吸い込んでしまい、むせてしまう。


「おはようさん。」


 声の主はロストンさん。

 何かを焼いているようで、香ばしい匂いがする。


「…おはよう、ございます。」

 (窓は、開いている。換気はしているはずなのに、なんて煙!)


 何かを間違えているんじゃないだろうか?

 そんな感想を抱きつつ、窓際の席に座った。


 そして気づく。

 レイアウトが変わっている。


 それだけじゃなくて。

 イスや机。なんなら床や天井の模様、窓枠なんかも昨日と違う。


 (…食堂車自体が、変わっている?

 いやいや、こんなスピードで走る車両を入れ換えるなんて事、いくらヨダーシルでも出来るわけが…。)


 そこまで考えて。

 現時刻、午前10時の意味を思い出す。


 (…トスーチェ駅を、通過している。)


 おそらく駅にて、車両の入れ替えがあったのだろう。

 でも、一体なぜ?


 ドンっと。

 目の前に、お皿が置かれる。


 肉汁たっぷりのステーキだ。


「どうぞ召し上がれ。」


 笑顔のロストンさんが、そこにいた。




「…。」

「遠慮しないで食っていいぞ。冷めると硬くなっちまうからな。」


 別に遠慮している訳ではない。

 朝から食べたいと思うメニューではないが、食べられない訳ではない。

 寧ろ、美味しそうだ。


 それでも私が、食べられていない理由は。

 ロストンさんに教えてもらった私が寝ている間の出来事に、衝撃を受けていたから。


 1、二人組の堕天使に襲撃される。

 2、食堂車をボロボロにされて、サニアが攫われる。

 3、堕天使の一人を倒す。

 4、トスーチェ駅に到着。

 5、車両変更中に、堕天使を一人倒す。

 6、ネクーツに向けて出発。現在、走行中。


「ちなみにトスーチェ駅にいた堕天使、セングスって名乗ってた奴なんだけど。

 そいつを倒したのもガットルだ。

 いや~凄い数の火球ファイアーボールだった。

 俺の水壁ウォーターウォールを信用してくれていたのは嬉しいけど、一歩間違えれば駅ごと丸焼きになる所でさ。

 サニアの件、めちゃくちゃ引きずってるな、あれは。」


 午前7時の話だそうだ。

 流石にガットルも疲れたようで、今は休んでいる。


「…それは、心配でしょうよ…。」


 捕縛網にかかった堕天使を検索できる物があるみたいで。

 それによると、サニアを攫ったミフダという堕天使の捕縛には成功したらしい。


 しかし、彼女の無事を証明するものではない。

 相打ちという可能性だってある。


 サニアは、いい人だ。

 絶対に無事でいてほしいし、辛い目にもあっていてほしくない。


 私ですら、こんなにも落ち着かないのだ。

 昔からの仲間であるガットルなら、尚更…。


「大丈夫だと思うけどな~、だってサニアだろ。」


 ポテトみたいなのを摘みながら、ロストンさんは言う。


 軽薄なのか信頼からなのかは分からないけど、イラッとする態度だ。


 でも。

 私には何も言う資格がない。


 (そんなに色々おきていたのに、爆睡していたなんて…。)


 ベッドがフカフカで、防音もしっかりしていて、とか。

 そういう言い訳ならあるけれど。


 (勇者隊の皆は、私を守る為に戦ってくれているのに…。)


 それだけじゃないという話も聞いたけど。

 それでも、だ。


 (それに、もしもだけど…。)


 私が起きていて、皆と一緒に行動していたら。

 ひょっとしたらサニアは、連れ去られたりしなかったかもしれない。


 (…。)


 たらればの話は、するだけでは意味がない。

 次に活かさねば。


 私はナイフとフォークを掴んだ。


「いただきます。」


 ステーキを口に運ぶ。

 …うん、美味しい。


 ネクーツ駅に到着するのは、午後9時頃。

 しっかりと食べて、いつでも動けるようにしていないと。


「おお、いい食いっぷりだ。」


 ロストンさんに見守られながら、私は。

 朝ごはんにステーキを完食する。




 その後は。


 ロストンとトランプで遊んだ。

 起きて来たガットルも、途中から参加。


 結果は、最後に全賭けしたロストンの逆転勝利。

 『これだよ、これ!』と、はしゃいでいた。


 時間的にお昼ご飯を飛ばしたから、少し早めの夕食にする。


 作ったのは私だ。

 材料は限られていたけど、時間はあったから出来るだけ凝る。


 特に力を入れたのは、種類を増やす事。

 統一感はなかったけど、その方が楽しそうかなと思って。


 ユンゼスにも、私が持って行った。


 皆に好評で、私は満足。


 ちなみに火を使ったけど、あんな煙くはならなかった。

 まったく。何をどうしたら、あんな事になるのやら。




 そして。

 あっという間に時間は過ぎた。


 もうすぐ9時。ネクーツ駅に到着する。


「うん。聞いている駅員の数より、一人多い。

 おそらく堕天使だと思う。」


 ガットルの言葉を聞いて、組んだ両手に力が入る。

 まもなく戦いが始まるのだ。


 私が戦う訳じゃないけど緊張する。


「トスーチェの時は、屋根の上に仁王立ちしてたな~。

 今度の奴は、どんなんかね~。

 まあ、どんなのでも。俺がサクッと倒してやるよ。」


 ロストンとかいう戦う予定の人は、めちゃくちゃリラックスしていた。


「…ねえ、一人ずつ戦うルールがあるの?」


 ガットルとロストンの二人がいるのだ。

 なら二人で戦えば、より確実に勝てるのではないだろうか?


 サニアから、ロストンは連携が得意と聞いていたし。


「ルールはないよ。

 今回ロストンが戦って、俺が休みなのは、温存の為かな。

 この後、だいたい14時間後にはフラスカの駅だし。

 後は、警戒の為でもあるかな。

 二人で戦って、追い詰めたとする。

 したら敵が、破れかぶれになって列車を狙わないとも限らない。

 列車が壊されて走行不能とかになったら、俺達の負けだ。」


 負け。

 それは。


 兄は助からず、無差別攻撃が始まるという事。


 そんなのは、嫌だ。


「ロストン、頑張って!」

「OK~。」


 その緩い返事と共に。

 列車はホームに停車する。




「屋根の上にはいなかったな~。」

「…あそこにいる。」


 私も、見つけた。

 食堂車の窓から見える位置。


 一人。

 明らかに纏う空気が違う人がいる。


 真っ白な髪。

 夏だというのに、真っ赤なマフラーと黒色のロングコート。

 足が悪いのか、杖をついている。

 たぶん、男性。


 何かを待っているかのように、その場に佇んでいる。


「おっし。じゃあ、行ってくる。

 …あれ、バッグどこ置いたっけ?」


「ちょっと!」


 締まらない。

 流石に緩みすぎじゃないだろうか。


「…ちょっと!!」


 大声を出してしまったのは驚いたから。


 白髪の男が動きだしたのだ。

 この列車に向かって。


 更には、プシューっという音まで聞こえるではないか。


 (扉が、開いた!?)


 隣のガットルを見る。彼も驚いた表情だ。

 ロストンは、まだバッグを探している。


 そうこうしている内に、食堂車の扉が開いて。

 白髪の男が入ってくる。


「あ、どうも、こんばんは。」


 男は私達に一礼すると、杖をつきながら食堂車の奥の方へ。

 そして適当な所に座った。


 …思ったより、だいぶ若そう。


「誰だ?あれ。」


 後ろにいたロストンが言う。


 もっと小さい声で!と思ったが、気づく。

 音制御ノイズコントロールが使われている。私達の会話は、あの白髪の男には聞こえない。


「堕天使じゃないの?」


 そういう話じゃなかったっけ?


「だと思ったんだけど、違うかもしれない。

 この距離なら分かるけど、堕天使にしては天力が少ないんだ。

 …だとすると、誰だろう?」


 堕天使ではなくて、ロストンもガットルも知らない男。

 え?本当に、誰?


 (敵?味方?まさか無関係の乗客なんて事は無いわよね?)


 私達が遠巻きに警戒していると、前方の扉が開く。

 ユンゼスだ。


「遠いところすみません。

 お越しいただき、ありがとうございます。

 ようこそ、魔列車バーチカル・ギャロップへ。」


 ユンゼスは白髪の男に一礼。

 白髪の男も、ぺこぺこしている。


 と、いうことは。

 とりあえず敵ではないかな?


「ユンゼス~。そいつ誰だ~?

 連絡体制がなってないんじゃねーの~?

 こっちにトラブルがなかったら、もうぶっ放してたぞ?」


 トラブルとは、バッグが見当たらなかった事か。

 発見できたみたいで、今は彼の腰についている。


「その通りです。

 本当に、申し訳ありません。」


 ユンゼスが深々と頭を下げた。

 それに慌てたのは、白髪の男。


「い、いや、悪いのはエンビッケって奴で。

 あいつが、連絡をサボったんだ。

 そう、悪いのは全部あいつ。」


「へぇ~、天使の知り合いか。」


 空気が、ピリッとした。

 緩んでいたロストンが、真面目なトーンの声を出したから。


 エンビッケという名の天使がいる、というのは分かったけど。

 事情に詳しくない私は、静観する。


 白髪の男は。


 ロストンを見て、それから私の事を見て。

 咳ばらいを一つして、言った。


「初めまして。俺は、ゼユウ。

 エンビッケの仲間だ。

 あいつから手紙を貰って、パルケさんを護衛する為にフレン王国からやってきた。」

ゼユウ編、開始~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ