表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第五章 11人の堕天使と2大陸縦断英雄列車

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

162/169

第161話 2/6:トスーチェ周辺~トラブル~

~前回までのガットル~


エンビッケから11人の堕天使について聞いた。

俺達はエンビッケと協力して、堕天使の3つのゲームに参加する。

無差別攻撃なんて、許せないからな。


◇登場人物◇ ※●が視点者

●ガットル   :勇者隊メンバー

〇サニア    :勇者隊メンバー

〇ロストン   :勇者隊メンバー


〇ユンゼス   :列車の運転手

〇パルケ    :センレイ会、会長の妹

 俺達ゲームAの参加者は、無事にパルケと合流。


 魔列車バーチカル・ギャロップは、予定通りヨダーシルを出発。

 トスーチェの駅を目指していた。


「…。」


 自室で、目を閉じて集中する。

 魔法を使う。


 熱検索ヒートサーチ

 列車内にいるのは、自分を含めて五人。


 俺、サニア、ロストン、ユンゼス、パルケ。


 そのまま、範囲を広げる。

 列車の外、十分な距離まで。


 広げ終わったら、次は魔力調整。

 魔法の効果が維持できる、ギリギリまで消費を減らす。


 敵の接近に気づけたとして。

 戦闘が始まった時、魔力切れでは意味がない。


「ふぅ…。」


 いい感じに出来た。


 覚えたての頃は、狭い範囲だったけど。

 二年間、修練してきて。

 今では俺の武器の一つ。


 (トスーチェまでは、およそ10時間…。)


 俺は、読みかけの本を開くのだった。




「ガットル、いい?」


 しばらく経った後、部屋がノックされた。

 来ているのは分かっていたから驚きはない。


「いいよー。」


 本を閉じ、サニアを部屋に迎え入れる。


「おー、これは凄いね。」


 彼女は机に並べられた、大量の魔力回復薬の瓶を見て呟く。


「新商品だって。

 試しに一本飲んでみたけど、効果も味もやばかった。

 だから出来れば飲みたくないんだけど、一応、保険に出してある。

 熱検索ヒートサーチは、例え寝ててもトスーチェまで途切れないはずだけど。

 何かあった時の為にね。」


 促して、向かいの席に座ってもらう。

 用事があったから来たはずだけど、彼女は口を開けない。


 窓の外を、ぼうっと眺めている。


「パルケさんは?」


 別に沈黙は嫌いじゃない。

 話し出すまで待ってもいいのだけど。


 サニアは、考えすぎる時がある。

 人には、『気なんて遣わないで何でも話して』とか言うのにだ。


 親しき中にも礼儀あり。

 彼女の美徳ではあるけれど。


 やり過ぎも疲れるだろう。

 なら、俺といる時ぐらい頭を使わずに喋ってもいい。


 そう思って、適当な話題を振ってみる。


「部屋に戻ったわ。

 …強い子だし、凄い子ね。

 一人で二大陸を縦断して、伝説の薬まで手に入れて。

 それにお兄さん想いで、敵の事を気にかけるような素振りまであった。

 いい子だと思う。

 なのに、こんなのに巻き込んじゃった。」


 俺は、輝旗が全部悪いと思っている。

 俺達も巻き込まれた側だ。


 (でも、そうか。

 勇者隊がなければ、ここまで大事になる事もなく。

 結果、パルケさんが巻き込まれなかった可能性もあるわけか。)


 なるほどな。


「…俺達で。

 絶対守ろうな、パルケさん。」


「もちろんよ。」


 力強い返事を貰ったけど、サニアの表情は暗いまま。


 (まだ、何かあるな。なら、次は…。)


「皆は、大丈夫かしら?」


 先に向こうから話題を振られる。


「そうだなぁ…。」


 皆とは勿論、勇者隊メンバーの事だ。


 ゲームBには、リハネとミュナとトドゥン。

 それから、ワッポノとツツジとカソローが参加。


 同じ列車でヨダーシルまでやってきて。

 ヨダーシルからレーグ半島に向けて出発した。


 距離的には、フラスカやトスーチェで降りた方が近い。


 でもヨダーシルには、とんでもないスピードが出る魔改造魔走車があって。

 それならば、制限時間内に辿り着けるだろうという話だったから。


 ラッキーな事に。


 ヨダーシルにいた、カナミアとアクスとギリュウの協力も得られた。

 無差別攻撃をするとかいっている連中を、彼女達は放置しない。


 更に、金策の為にトスーチェに行っていたトワとクレスタも、ヨダーシルに向かっている。到着次第、レーグ半島を目指す予定だ。


「ゲームBは、大丈夫だと思う。

 相手は輝旗のリーダー、めちゃくちゃ強いんだろうけど。

 それでも、こっちは四国の勇者パーティーが合流したドリームチームだ。

 勇者達のマシンDFドラゴンフォームは強力だし、トワの強さは俺達がよく知っている。

 きっと勝てるよ。」


 マシンDFドラゴンフォーム

 機械の力を借りて、魔力を上昇させる兵器。


 ちょっとリハネに借りてみたけど、俺はダメだった。

 あの気持ち悪さには慣れそうもない。


「ゲームCは、もっと大丈夫だと思ってる。

 参加者は、ディオルにリガーナ、それからエンビッケだ。

 しかも場所がクーランだから、ガンダローゲに協力して貰えるかもって話もある。

 となれば四大魔王の共闘なんていう、この世の終わりみたいな話が実現する。

 それが味方側なんだ。

 個人的には、負ける姿が想像できない。

 バルドラッシュとザリキルダが、どんなに強くても。」


 不穏なのは。

 それでもバルドラッシュは戦いを仕掛けてきたという事。


 勝機が、作戦があるんだ。


 例えば。

 ガンダローゲは既に、敵側になっているとか?


 ゲームAとゲームBの終了後に戦闘開始というのも、理由があるはず。


 それでも。

 あのディオルが負けるとは思えない。


 (寧ろ…。)


 そこまで考えて。

 ようやくサニアの不安に思い至る。


 単純に、心配だったんだ。

 俺達は、パルケを守りきる事が出来るのかって。


 そしてそれを俺に言うと。

 『そうか~、サニアは守れないと思っているのか~。俺の事、弱いと思っているのか~。』

 みたいな感想を持たれて。

 やる気を削ぐかもって、危惧したのか。


 常時だったら。

 実力不足と感じたのなら、サニアは寧ろ積極的に伝えてくれる。

 信じてくれているのだ。俺は、それを糧に出来ると。強くなれると。


 でも今は。

 既に列車は動き出した、もう本番なんだ。

 今から急激なパワーアップなんて出来ない。


 急に始まって、直ぐに動かないとで、考える時間も少なくて。

 どこもバタバタしてて、流されるようにここまで来て。


 人が少なくなって、落ち着いて考えられるようになって。

 だから、不安になってしまった訳だ。


 今更、言っても仕方が無いと分かっていても。

 それでも、言いたいと思うほどに。


「…覚えているかな?

 ディオルとの戦いが終わった日の、夜の事。」


「…ええ。

 もっと強くなるって、あなたに言ったわ。」


 天上の国なんていう、強い異世界があって。

 そこが、もしかしたら攻めてくるかもしれないなんて話を聞いて。


 だから。


「強くなったよ、俺達は。あの時よりも。」


 だって、俺は。

 大切な仲間を守りたいのだから。


「あの夜、話していたように、今回の敵は天上の国だ。

 …まあ正確には、その離反者だけど。

 あの時、俺は言った。

 誰が相手でも、必要があれば戦うと。」


 サニアを、真っすぐに見て宣言する。


「サニアもロストンも、ユンゼスさんもパルケさんも、俺が守るよ。」


 綺麗な星空の下で。

 似たような事を言った。


 その時、彼女は。

 不敵な笑みを浮かべていた。


 そう、サニアは。

 ただ守られるだけの存在じゃない。


 負けず嫌いで、カッコイイんだよ。


 だからちょっと、挑発的に言ってみる。

 その闘志に、火を着ける為に。


「…っ。」


 横を向いて、ちょっと吹きだした彼女に。


「真剣だぞ?」


 追い打ちをかける。


 それでサニアは、肩を震わせて笑い出した。


「ごめ、ごめんなさい…っ。」


 どれかに当たればいいと、どれかに当たりそうな弾を撃って。

 どれかに当たった感じ。


 ちょっと、笑いすぎな気もするけど…。


 まあ何にせよだ。

 暗い表情を晴らしたかった訳だから目標達成、大成功だろう。


 目の前の瓶を一つ開ける。

 飲みながら、サニアが落ち着くのをのんびり待つ。


 やがて。


「ガットル。」


 改めて、名前を呼ばれる。


「ありがとね、いろいろ。」


 いい顔に、なったじゃないか。


「どういたしまして。」


 愚痴を言ってもらえて、光栄だよ。


「部屋に戻るわ。また後でね。」


 そう言って、サニアは席を立つ。


 俺も立ち上がった。


「サニア。」


 別れ際に、気の利いた言葉でも言えればよかったんだけど。

 残念ながら、そうじゃない。


「敵襲だ。」




 ゲームAには、5人の堕天使が参加する。


 ゲームBには、セウオン。


 ゲームCは確定ではないけれど、バルドラッシュとザリキルダがいるはず。リガーナとエンビッケがいるから。


 そうなると、残り3人の堕天使はどこにいるのか?

 可能性が高いのは、ゲームB。リーダーの護衛としているんじゃないか。


 そういう予想だったけど。


 堕天使の一人が、パルケを狙ってきた。

 だから。


 あるかもしれないと、警戒していた。


 列車襲撃を。


「堕天使、だよな。」


 食堂車両の上。

 隣のロストンに声をかける。


 敵と思われる熱源は、列車と距離を取り並走中。


「だと思うけど、流石に姿は見えねえな。暗すぎる。

 あの暗さは、火属性か土属性だな。

 風属性か水属性なら光るから分かりやすいんだけど。」


「…何で近づいてこないんだと思う?」


「さあ。

 まあ、ただの嫌がらせだとは思えないから、タイミングでも計ってるんじゃね?」


 もしくは、囮?


 そう言おうとした時だ。


 (熱源が増えた!?)


 食堂車両内に。


「任せろ、任せた。」

「OK!」


 『ここは任せろ、食堂車両は任せた。』

 ロストンは微動だにしなかったから、そういう事だと判断して急いで中へ戻る。


 俺が熱検索ヒートサーチを使って、ロストンは音制御ノイズコントロールを使っていた。


 そして二人共、ほぼ同時に反応したという事は。

 侵入者は、急に現れたんだ。


 心当たりがある。


 (世界を、移動してきたんだ。)


 食堂車両内に入ると、臨戦態勢のサニアがいて。

 彼女の視線の先に、そいつはいた。


 20代後半から、30代前半。

 茶髪で、髭を生やした男。


 白ベースに黒の服、ヨダーシル付近で倒した男と同じ物。

 輝旗のチーム服だ。


 我が物顔で席に座り、のんきに何かを飲んでいる。


「サニア、あれ…。」

「…魔法は使ってないと思う。

 光ったり、揺れたりもなく、いきなりだった。

 視線を動かしたら、そこにいた感じ…。」


 となれば。

 やはり、天法の転移。


 すぐ近くの並行世界からやってきたと、考えていいか。


「なあ、あんた。」


 警戒したまま。

 サニアより前に出て、声をかける。


「戦闘は駅でするんだろ?何しに来たんだよ?」


「駅で戦うとは書いてあったけど、駅以外では戦わないなんて書いてなかったろ?」


 男が立ち上がる。

 多分、ディオルよりデカい。


「なるほど。目的は倒された仲間の仇討ちか?」


 後ろに回した手で、サニアにハンドサインを送る。

 意味は『ここは任せろ』。

 この場合、パルケを起こして上から先頭車両へ向かえって事だ。


 こんな所で戦えば、車両内はぐちゃぐちゃ。

 最悪は切り離す事になる。


 荷物を放棄するのは仕方ないけど、パルケを置いて行くわけにはいかない。

 ここは二両目で、パルケがいるのは三両目だから移動が必要になる訳だ。


 (上のロストンは、自力で何とかしてもらって。

 移動が完了するまでは、車両ごと守らないと。)


 後ろで、サニアが動く気配がして。

 直後、大きな音がした。


「…岩に塞がれたわ。」


 サニアの報告を聞きながら、冷や汗を感じる。


 俺は、目の前の敵から視線を逸らしていないのに。

 魔法の発動に気づけなかった。


 (…相当、強いな。)


「ああ、ペアンワの事か。

 時間があったから賭博にさそったんだが、あいつボロ負けしてさ。

 いつものノリで、つい、煽っちまった。

 そしたらあいつ腹いせに暴走しちまって、で、あの様だよ。

 俺も少しは悪かったと思うけど、あれは自業自得だな。

 だから、仇討ちとかは考えてない。」


 軽薄そうに笑いながら、男は話す。


 (隙だらけに見えるけど、違う。

 おそらく車両内全て魔力制御範囲。

 例えば窓から出ようとしたら、ストーンで妨害される。)


「…へぇ、なら、なんで侵入して来たんだよ?」


 戦う覚悟は出来ている。

 でも、ならば車両内での戦闘は避けたい。

 戦うなら、トスーチェに着いてからがいい。


 (こいつは、いきなり襲い掛かってこなかった。

 今の所、車両から出て行くのを妨害されただけだ。)


 だから、会話を続ける。

 もしかしたら交渉が出来るんじゃないかと期待して。


「俺さ~。

 暴れるのとか好きじゃないんだよね。」


 まさかの発言に驚きつつ、続きを聞く。


「だから正直さ。

 今回のゲーム?も、乗り気じゃない。

 他の連中は張り切ってるけど、俺は別に興味ないんだよ。」


 好き勝手に暴れたい連中で構成されたのが、解放の輝旗という話だった。

 でも、全員がそうでなくとも不思議はない。


 何か、事情があって。

 止む無く参加しているとか。


 (…ザリキルダも、そんな感じだしな。)


 だとしても。

 なら、なぜこの男は、ここにいるのか。


「だったんだけどさ。」


 雰囲気が、変わる。


「敵の中にさ、すげー可愛い子がいてさ。

 正直、めっちゃ好みだったんよ。

 その子はゲームAに参加するみたいでさ。

 で、うちの参加者を確認して。

 あぁ~こいつらに殺されるのか~、やだな~って思ってさ。」


 そいつは、俺から視線を外して。

 サニアを見た。


「俺はミフダ。

 ねえ、サニアさん。こんな詰まんないゲームは止めてさ。

 俺とデートしない?」

ガットルとサニアのやりとりの補足。


サニア視点。

遠回しに話を始めて本題はまだ話してないのに、なぜ本題がわかったのか?

しかも相手が不安に思っていると分かった上での返答が、挑発。

でも確かに慰めてほしかった訳ではなかったし、なんなら『この野郎』と気持ちが動いた。

ガットルは私について、詳しすぎないだろうか?

なんなら私も、ガットルは私を奮起させる為に言葉を選んだと分かる。


その事が可笑しくて、噴き出してしまい。

笑った理由すらも、ガットルに伝わってしまったのが分かって、笑ってしまった感じ。


相手の意図や裏まで読んでの異次元会話は、会話だけ読むと繋がってないのに本人達は楽しそう。

そういう雰囲気が伝わればいいなと思いつつ書きました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ