第15話 後悔~旅は、続く~
~前回までのサニア~
町に溢れた魔物を片付けるため、駆けまわる。
ピンチの時、ガットルとレーラスに助けられる。町から魔物はいなくなった。
レーラスは魔力切れで倒れた。ありがとう、お疲れ様。
結論、クレスタには打ち明けない。
少なくとも、今は。
クレスタが悪いから仕方ないね。怖いのが悪いよ。
レーラスはもう男の子だ。
だいぶ休んだから平気という事で、これから避難所を見に行くらしい。
(私はどうしよう。レーラスと一緒に行く?)
取りあえず食器を片付けようと一階にいくと、ディオルがいた。
ディオルはイスに腰掛けており、シチューを飲んでいた。
勝手に飲んでいる事も、警報装置が鳴らなかった事も、もう面倒だから、ディオルだからで片づける。
スルーして、食器を洗っているとディオルから話しかけられる。
「とんでもない連中だったな。」
手が、止まる。
「密売で金を稼ぎ、バレたら逆ギレ。
カルフラタは町として終わりかもな。かわいそうに。」
何も言えない。正確な被害状況はまだ分からない。
ライフラインが壊されていて、修復不能だってありえる。
ニージュ商会が町一つ滅ぼした可能性はあるのだ。
とんでもない連中なのだ。
「…。」
私はディオルの目の前に、座った。
「どうした?」
でも、それでも、解ってはいるけど。
「…。」
大切な仲間に、大切な友達を悪く言ってほしくはなかった。
「トバは、悪い事をして、たくさん人を不幸にしたと思う。
でも、トバは、認めてもらいたくて、成りたい自分があって、夢があって、頑張って、出来なくて、苦しくて、仲間を守りたくて、私を守ってくれて。
…優しい、奴なんだよ…。」
被害者の町の人には絶対言えない。ディオルだから言えている。愚痴だ。
それを聞いてくれたディオルは、少し間を開けてから。
「多くの人は、ただの他人に、そこまで興味は無い。」
ゆっくりと話だす。
「求めるのは解りやすさだ。解りやすい罪に解りやすい罰だ。」
親が子供に教えるように。
「実はとか、本当はとか、どうでもよい。」
私は黙って聞いている。
「だから、ただの他人ではないと思うやつが、寄り添ってやれ。」
私は、立ち上がった。
「サニア。」
今、まさに外へ出ようと扉の前にいる時に、後ろから声。
「何?」
振り向かず、反応する。
「シチュー美味しかった。」
思わず、吹いた。
「どういたしまして!」
あっかんべーして外に出て、星空の下を駆ける。
あの日、勇者の仲間に入れてほしいとディオルの所へ行った時も、こんな星空だった気がする。
避難所をいくつか周り、トバを見つける。
彼はよく眠っていた。
彼の頭をそっと撫で、彼が起きるまで、傍にいた。
それから数日が経った。
カルフラタの町は復興に向けて動いている。
私達も出来る事を手伝った。
トラブルで、予定より早くカルフラタに到着した勇者一行は、その分、この町に長くいる。
フフゴケ商会は大活躍だ。
アッブドーメンの軍隊も派遣された。
カルフラタ町長、他一部貴族の人は連行されて行った。
トバも、今日この後連行される。
「…。」
私とトバは横並びに立って、ニージュ商会最後の荷車を見送った。
「ロストンは…。」
トバが口を開く。
二人とも視線は荷車だ。小さくなるのを眺めている。
「ロストンは、君からしたら怖いやつだっただろう。
声がでかいし、口調も悪い。君を殺せと何度も言った。
まずそれを謝罪する。すまなかった。」
「それは大丈夫。気にしてないよ。」
本題は別だろう。先を促す。
「最期は感謝している。俺が追い詰め、止められなかったあいつを、止めてくれてありがとう。」
「それは、どうだろうね。」
迷いは無かったけど、よい事だったのかは、今でも分からない。
「今からいうのは愚痴だから、聞き流してもらいたい。」
「うん。」
「粗暴なやつだったが、友情に厚いやつだった。
仕事をよく手伝ったり、終わるのを待っていたりな。
仲間の成功は自分事のように喜んで、よく散財して仲間を労った。
仲間の為なら、自分を犠牲に出来るやつだから、最期も…。」
「そうなんだ。」
愚痴だから、聞き流す約束だから。否定も肯定も慰めもしない。
小さくなっていった荷車が、ついに見えなくなった。
「サニア。」
彼が私を見た。
「何かな。」
私も彼を見た。
「俺達が、いや、俺が、違法な取引を始めた頃、」
彼の声が震えている。なんとなく、察した。
「おまえの、母親が、視察か観光かは、わかんない、けど、街に来ていて、バレた、んだ。
誤魔化したけど、多分、信じてなくて。」
私の推測は、当たっていた。
「お前の家族を壊したのは、俺なんだ…。」
彼は脱力して空を見る。
その彼の胸を軽く小突いてやる。
「ようやく終わった、とでも言いたげな顔をしてるけど、何も終わってないからね。」
再び私をみたトバは、泣きそうで、困ったような、表情だ。
「生きて、罪を償って。」
事件の全体像は今も分からないし、法律だって詳しくない。
償い方なんて、想像できない、償う方法は無いかもしれない。
裁判で死刑になるかもしれない。
(悪い事した友達に生きていてほしいと思うのは、悪い事なのかなぁ…?)
「一生懸命生きたなら、私の家族への罪は許すよ。」
トバは、たっぷり間を開けて、私の言葉を咀嚼して。
「まったく、サニアは厳しいなぁ。」
最後に、笑った。
隣に、色白で屈強で目がつぶらなナイスガイが来た。
アッブドーメンの軍隊の人。トバを連れていく人。
最後に会話をさせてくれた人。
「君たちの旅の成功を祈っている。」
「トバも、元気で。」
トバは歩き出す。私も歩き出す。正反対の方向へ。
願わくば、この道が、再び繋がりますように。
そして、私達の旅は続く。
次の町では馬車が借りられるそうだが、それまでは徒歩だ。
「なんかさぁ。侵略したみたいで、気分はよくないのよね。」
天気がよい為か、なんとなくピクニック気分。要するに、緩んでいる。
「うちは商戦で、勝ちたかった~。」
カルフラタは現在フフゴケ商会一強状態だ。
嬉しいのだろうクレスタの顔はゆるゆるだ。
素直に喜べばよいのに、面倒な絡み方をしてくる。
「酒でも飲んでるのか?」
「ガットル君には関係ありませ~ん。」
(…この女は…。)
さっきから私にダルい絡みをして、それを不憫に思ったガットルが何か言い、それをあしらうという事をしている。
例の件を、まだ根に持っているようだ。
ガットルはやれやれといった感じで、レーラスはニコニコしていて、ディオルは欠伸をしている。
「ねぇサニアちゃん。」
クレスタの声音が変わる。飽きたのかな。
「今なら、スターマークに行けるよ?」
「…。」
一段落した時に、みんなには話した。私とニージュ商会の関係を。
「一人で行ってもいいし、みんなで行ってもいい。今ならどうとでもなる。」
「…行かない。」
どうとでもするには、クレスタやフフゴケ商会の人が、物凄く頑張る必要があるだろう。
それに、たぶん父さんは、今の姿を見られたくないはずだ。
私にはずっと、格好いい父親を見せていたから。
もし、私がこの旅で死んだり、父さんが死刑になったりで、父さんと二度と会えなくなるとしても、だ。
私達は、あの日、あの頬っぺたにキスをした時が、永劫の別れだと思っているのだから。
気が付くと、クレスタとガットルがひそひそ話をしている。
さっきまでギスギスだったはずだが、仲がいいなまったく。
「…揺らいでる?…揺さぶる?」
なんか薄っすら聞こえるな。
って、レーラスとディオルも輪に入るな。
やがて、クレスタが満面の笑みでやってきた。
「サニアちゃん、占いで、里帰りすると運勢アップだって!」
「帰らないよ。」
いつ占ったの?嘘が下手過ぎる。
クレスタが腕を回してきて耳元で囁いた。
「帰らないの~?」
「帰りませ~ん。」
決心は堅いのだ。
「顔みせくらい…?」
ガットルが心配そうに聞いてくる。
「帰りません。」
ええ~い、そんな顔で、情に訴えてくるな。
「親不孝者め。」
ディオルは反笑いだ。
「か、え、ら、ん。」
お前には言われたくない。…事情は知らないけど。
「一緒に行こうね。」
レーラスが軽く肩を叩く。
指さした方向は、スターマークではない。次の町だ。
「…ええ、もちろん。」
改めて、声に出す。
「私の目的は、魔王を倒す事だから。」
『絶対魔王を倒そうね』
私の闘志は、燃えている。
サニアとトバの、後悔の話はこれで終了。
このキャラは、こういう考えなんだね~と見てもらえたら嬉しいです。




