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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第五章 11人の堕天使と2大陸縦断英雄列車

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第157話 1/6:ヨダーシル周辺~パルケ物語~

投稿を再開します。


時間があって気が向いたら、覗いていってやってください。

*パルケ視点*


 私の兄は、物語の主人公みたいな人だ。


 ジドル王国、いや、ライダ大陸一の商会である、センレイ会。


 その会長に、15歳という若さで就任しただけでも凄いのに。

 国王の暗殺を防いだり、断海を越える事の出来る船の製造に成功したり。


 しかもまだ、17歳。

 きっとこれからも、伝説を作り続けていくはずだ。


 それで、ゆくゆくは。

 その人生が、本になったりするかもしれない。


 兄を主役にした本なら、きっと妹の私も登場する。

 元気があって、行動力があって、たまに周りを困らせたり?


 兄の足を引っ張る我儘な妹、みたいには書かないでほしい。

 これでも苦労しているのだ。


 そりゃあ、兄と比べると霞んでしまうかもしれないけど。

 十分、波乱万丈な人生だと思う。


 それこそ、本にも出来るぐらいに。




 仮に。

 私の人生が、本になったとしたら。


 タイトルは、【パルケ物語】。

 そのプロローグは、私が生まれた直後。


 父が罠にはめられて、センレイ会を追放されて。

 更には命も狙われて。


 父と母と兄と私。

 家族がジドル王国から亡命する所から始まるはずだ。


 なんとかゾト王国まで逃げのびられたけど。


 逃走中に負った傷が元で、父は亡くなり。

 母も、重い病にかかってしまう。


 母は最期の力を振り絞り、幼い我が子を通りがかった老夫婦に託す。


 とても幸運な事に。

 その老夫婦は、優しい人達だったのだ。


 正に、天の巡り合わせだと思う。

 まるで、運命とか、そういうのが。


 兄に、生きろと。

 そう言っているみたいに。




 パルケ物語、第一章。

 それは。


 ゾトで平和に暮らしていた私達、兄妹が。

 ジドルへ戻り、センレイ会を取り戻すまでの物語。


 父の部下だったダウェルさんが、兄を訪ねて来て。

 父は、センレイ会の偉い人だったと聞かされて。

 今センレイ会は、悪い大人が私腹を肥やす為だけの組織になってしまって。


 だから。

 一緒に戦ってほしいと言ってきた。

 かつてのような、センレイ会を取り戻す為に。


 当時、11歳だった私は。

 とても重大な決断を迫られる。


 兄についていくか、育ててくれた両親の元に残るか。


 それはもう、悩んだ。


 私は、生まれ育った町が。

 両親が、友達が、大好きだった。


 離れたくなかった。


 それでも。


 私にとって一番大切なのは、兄なのだ。


 それを再認識する。

 そこが、第一章のクライマックス。


 だって、実際にジドルへ行った後は。

 私が家の掃除をしている内に、全部終わってしまったから。


 もちろん、ジドルで兄は大活躍したはずで。

 その実績から会長になった訳で。


 だから兄が主役の本ならば、こんな構成にはならない。


 でも、これは私の本の話だから。

 こういう感じになるはずだ。




 パルケ物語、第二章。

 それは。


 兄がセンレイ会を立て直している一方で。

 私が細かな問題を解決する為、頑張る物語。


 実は。

 私はセンレイ会の人間ではない。


 会長の妹。それだけ。


 いや、だからこそだ。

 出来る事も、巻き込まれる事もある。


 悩める会員を励ましたり、一緒に猫を探したり、家の掃除をしたり、デートの予行練習の相手をしたり、誘拐されそうになったり。


 水面下で動いていた、ジドル王の暗殺計画。

 それを兄が止めている裏で。


 私は、センレイ会の皆と仲良くなっていく。


 12歳の晩夏。

 皆で企画したサプライズパーティー。


 兄のあんな顔を見たのは、初めてで。


 ジドルに来てよかったと、そう思えた。




 パルケ物語、第三章。

 それは。


 兄の病気を治す為に、私が旅をする物語。


 12歳の冬。

 兄が倒れた。


 呪い。

 それを、かけられた。

 逆恨みで。


 呪いの効果で兄は、身体の一部が黒くなってしまった。

 黒くなった部分は、動かせなくなってしまう。

 しかもそれは徐々にだけど広がっていく、らしくて。


 20歳まで生きられないだろうと言われた。

 つまり、余命4年をきっている。


 犯人の捕縛には成功して。

 でも解呪するには、特別な薬が必要で。


 それが、伝説の薬エリクシル。

 会員みんなで必死に探すけど、中々見つからない。


 そんな時、私は聞いた。


 ジドルから、ずっと南。

 海を越えた先、ワイバン大陸の更に南。


 ドンハという国に、エリクシルを作れる人物がいると。


 皆には、止められた。


 ドンハは遠い。魔物も、盗賊だって出る。

 信憑性の低い怪しい話を鵜呑みにして、危険を冒す必要はないと。


 それでも私は。


 僅かでも可能性があるのなら、試してみるべきだと思った。

 4年なんて、あっという間なんだから。


 会員の皆には、それぞれ大事な仕事がある。

 センレイ会を以前と同じくらい大きくして、薬の情報を集めようと頑張っているのだ。


 だから。

 順調でも片道、数か月の旅に付き合わせる事は出来ない。


 私は一人、船に乗った。書置きを残して。


 行き方は調べてある。


 ジドルから船でネクーツへ。

 その後は陸路で、アスゴフソア、ムアー、そしてドンハだ。


 キャラバンに混ぜてもらうのが理想だけど、無理そうなら町間を移動する馬車に乗せてもらう。


 場合によっては、退治屋の護衛を頼まないとで。

 そうなれば、旅費が足りなくなる。

 町で、短期の仕事もしないとだ。


 (大丈夫、まだ時間はある。

 安全に辿り着くことが、最優先。)




 途中。

 盗賊団に捕まって、身ぐるみ剥がされて、もう少しで売られてしまうなんて事もあったけど。


 秋頃に、私はドンハに到着した。




 パルケ物語、第四章。

 それは。


 頑固おやじを説得して、エリクシルを作ってもらう物語。


 目的の人物は、ドンハでは有名人だった。

 だから彼の家には、すぐに辿り着けたのだけど。


 交渉が上手くいかず、中々エリクシルを作ってもらえない。


 後々になって知ったのだけど。

 おじさんは、エリクシルを完成させた事がなかった。


 病気の我が子を助けたくて、研究に明け暮れて。

 あと一歩で完成という所で、子供が亡くなってしまって。

 だから、やる気がなくなってしまって。


 研究仲間の元を去った。


 同情する気持ちもなくはないけど。


 私は、エリクシルが必要で。

 だから、おじさんの説得を続けた。

 事情を知らない時も、知った後も。


 色々やった。

 それこそ、研究仲間も連れて来た。


 結局、どれが決めてになったのかは分からないけど。


 おじさんは、研究を再開してくれて。


 ついに、エリクシルは完成した。


 私は何度もお礼を言って、頭を下げ、それを受け取る。


 おじさんも、なぜか私にお礼を言った。

 最初にあった頃より、いい表情になったと思う。


 研究仲間と一緒に手を振るおじさんに、手を振り返し。

 私は、ジドルへの帰路へつく。




 14歳、夏。


 現在地はムアー最北の町、ラメーヒュス。

 ここから1日歩いて、ヨダーシルまで行く。


 進む予定の道は、旅人や商人もよく使うから比較的安全ではある。

 とはいえ魔物は、出る時は出るから。


 私は魔法も、戦う事もあまり得意ではない。

 だから馬車に乗ったり、護衛をつけたかったけど、今回は無し。


 単純に、お金が尽きたから。

 そしてそれでも急ぐのは、状況が変わったからだ。




 エリクシル完成の、前日。


 私は手紙を受け取った。

 差出人はダウェルさん。あの日から、兄の腹心として隣にいてくれている。


 伝書鳥で何度かやりとりはしているから、手紙を貰った事には驚かない。


 ただ、その内容は。

 私を大いに動揺させた。


 兄の容態が急変して。

 もって、半年。


 だから、薬はもういいから帰ってこいと。

 せめて最後は、傍にいてほしいと。


 …本当に。

 薬が完成してよかった。


 やはり運命は、兄に生きろといっている。




 手紙と一緒に、列車のチケットが同封されていた。


 ヨダーシルが列車を完成させたのは知っている。

 なんなら、ジドルにもマーア行きの線路があるし。


 それこそドンハまでどうやって行こうか考えている時、ジドルからヨダーシルまで数日で着くみたいな嘘みたいな話も聞いた。


 まだテストを開始したばかりで、一般客の乗車は不可能だったけど。

 センレイ会の力を使えば、乗せてもらえたかもしれない。


 ただ当時は、いい噂を聞かなくて。


 列車は線路の上を走るらしいのだけど、その線路の部品を盗賊が狙っていて。

 仮に部品が盗まれてしまうと、列車は脱線。

 大事故を起こし、乗組員は全員死亡するとか。


 だから、乗りたくなかった。


 正直、列車に乗るのは怖い。

 しかし、乗らないという選択肢はない。


 行きは、ジドルからドンハまで九か月くらいかかったのだ。

 …私の所為な所も、少しはあるけれど。

 とにかく、そんなに時間をかけられない。


 それにヨダーシルには、例の盗賊団の時にお世話になった。

 チケットをくれたダウェルさんの事も、信用している。


 だから。




 私は立ち上がる。


 鏡の前で、軽く確認。


 ジドルの海のように青い髪を、高い位置で二つに結った。

 ふんわりしたツインテール、私のお気に入り。


 ひらひら付きの、ゆったりとした桜色ベースの上着と、同色のノースリーブのミニジャケット、ロンググローブにニーハイ。

 薄水色のショートパンツ、同色のロングブーツ。


 長時間歩くような格好じゃないかもしれない。

 けど、かわいい方が気合も入る。


 チケットに書かれている列車の発車日時は、明日。

 つまり、今日中にヨダーシルに辿り着ければ問題ない。


「行くか!」


 魔物除けグッズと、お弁当を入れたリュックサックを担いで。

 気合を入れて、扉を開けた。




 太陽が沈む頃。


 遠くの方に、ヨダーシルの外壁が見えた。


 (…。)


 順調である。

 なんなら予定より早い。


 が。


 (…まだ、あんなにある…。)


 座り込んでしまう。

 もう限界だ。


 わかってる。


 まだ、安全地帯ではない。

 休むなら、ヨダーシルに到着してからだ。


 でも動けない。

 脚が痛くて、イライラしてきた。


 だから。

 30分くらい休憩する事にする。


 ヨダーシル周辺は明るい。日が完全に沈んでも迷う事なんてない。

 それに結局、魔物だって現れなかった。


「こんばんは、お嬢さん。」


 ビックリした。

 まさか、声をかけられるなんて思ってなかったから。


「え、ええ。こんばんは。」


 そこにいたのは、見知らぬ、おじさん。


 荷物が無いから商人ではない。

 旅人だと思うけど、どこの人だろう。


 白を基調に黒の差し色が入った、それこそ貴族の人が着るような格好。

 この辺りの服装ではないと思うけど。


 などと。


 私は呑気だった。


 (…ん?)


 おじさんの右手には、剣があった。

 鞘から出した、抜き身の。


 (…あ。)


 周りには。

 少なくとも、見える範囲には誰もいなかった。


 (あ!)


 以前、私は。

 盗賊に捕まったのに。


 なのに、こんなにも無防備で…。


 (でもあの時は、こんな感じじゃなかった!)


 そんな空しい言い訳を並べても、状況が好転する訳もなく。


 無慈悲に、男の剣が振り下ろされる。


 (あ、これ、人攫いじゃなくて、追い剥ぎだ…。)


 そんな、どこか他人事みたいに。

 迫る剣先を、ただ見つめる。


 それしか、出来なかったから。


「ふぎゃっ!」


 その間抜けな声は、私だ。


 突然、目の前が爆発して。

 その衝撃で、ひっくり返った。


 でも。

 頭をぶつけるような事は、なくて。


「ごめん、ちょっとここで隠れてて。」


 浮遊感がして、その声が聞こえた。


 何事かと、身体を起こす。


「…何、あれ…。」


 そんな呟きが、口から出る。


 光だ。

 白く輝く光が、見える。


 地面から、輝く何かが突き出ているみたいで。


 (いや、人だ。)


 先程の。

 私に剣を振り下ろした、おじさん。


 彼自身が、発光している。

 身体の一部が、ではなく全身が。


 そして。

 そのおじさんの前に、誰かいる。


 逆光で、姿はよくみえないが。


 (!!)


 おじさんが、その人物に斬りかかる。

 離れていても、その豪快な風切り音が聞こえる。


 何度も、何度も。


 (何度も剣を振っているって事は、あの人は攻撃を避けている?)


 おじさんと敵対しているという事は、あの人は味方の可能性がある。

 なんなら、さっきの声の主かもしれないけれど現状確認する術はない。


「え!?」


 おじさんに、変化があった。

 翼が生えたのだ。そして頭の上に、光輪。


 まるで。

 絵本で見た、天使のような姿。


 …まあ私の知っている天使は、おじさんではなかったけど。


「っ!!」


 また、変化があった。


 今度はおじさんじゃない。

 おじさんの、相手をしている人物の方。


 炎が。

 黒い、炎が噴き出して。


 その黒が、瞬く間に広がって。


 おじさんの、白い光を飲み込んでいく。


 天使を飲み込む黒い闇、なんて。

 この世の終わりみたいな状況だけど。


 不快じゃない。

 見ていると、落ち着くような。


 そんな、静かな炎だった。


 だから、私はリラックスして。


 またしても反応が遅れる。


「い!?」


 おじさんが。

 その闇から逃げるように飛び出してきた、私の方へ。


 彼と、目が合う。


 血走っていた。悪意に満ちた顔だ。

 天使というよりは、悪魔のような。


 おじさんの翼が羽ばたいて。

 剣を振り上げ、文字通り私に飛び掛かってくる。


 そして。


 私とおじさんの間に、誰かが飛び込んできた。


 最初に見えたのは、白。

 大きな盾みたいな物が、おじさんの剣を防いでいる。


 次は紫、服の色。

 赤紫色、髪の色。


 そして、彼と目があった。


 私の無事を確認して。

 彼は、優しく微笑んだ。


 ブンっという風切り音がして。


 おじさんが逃げていく。

 反対方向へ飛んで行く。


 けど、その途中で。

 おじさんは、爆発した。


 (…。)


 木っ端微塵。


 命を狙ってきた相手だけど。

 それでもショッキングな最期だ。


「おっし、捕獲完了だ。」


 声がして、振り向くと。


 また知らない人物がいる。

 赤髪で眼帯の人だ。


 (…あの。相手の方、粉々になりましたけど…。)


 捕獲とは?


 その疑問は口には出さない。

 まだ、味方と決まった訳ではないのだから。


「輝旗であってるよな?」


「ああ、あの服装は間違いない。

 ただ、下っ端だろうな。転移も使えなかったみたいだし。」


 謎の会話を繰り広げる、赤紫髪の人と赤髪の人。

 どうやら知り合いみたいだけど…。


「パルケさんだよね?」


 名乗った覚えのない名前を呼ばれて、警戒心が上がる。

 助けてくれたけど、それでも味方とは限らないから。


 そんな私の様子を見て。


 赤紫髪の人は、また微笑む。

 たぶん、私を安心させる為に。


「俺は、ガットル。

 大丈夫。俺達は、君の味方だ。」


 手が、差し伸べられた。


 現状、何もわからず、ただ混乱するだけの私の前に。


 (…。)


 私は。

 波乱万丈な人生を。


 それこそ、第四章まで越えて来た。

 多くの人と、関わってきた。


 いい人も、悪い人も。

 善意も悪意も、経験してきたのだ。


 だから私は。

 その手を、掴む。




 爆発と、眩しい光と、静かな黒と、新しい出会い。


 それが。

 パルケ物語、第五章の始まりだ。

前章までのキャラ達に触れて、今回登場したパルケが成長していく。

みたいのが、物語としては綺麗かなと思いましたが。

たぶん成長は特になく、他キャラの活躍を見守る側になります。


第五章のテーマは、合流。

色々と乗り越えてきたキャラが、同じく色々乗り越えてきたキャラと出会っていく感じの物語。


ヒロインはパルケ。主人公は、当番制みたいな感じです。

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