表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第四章 理想家オーズンの四人の後継者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

157/168

第156話 未来~そして旅は~

~前回までのユンゼス~


ロミスオッドは逃走し、俺達は戦いに勝利した。


◇登場人物◇ ※●が視点者

●ユンゼス  :???

〇ソルテローラ:???

〇ラデューム :???

●ワッポノ  :マーアの勇者

〇ツツジ   :勇者隊メンバー

●リハネ   :ゾトの勇者

〇カナミア  :アイーホルの勇者

●クレスタ  :フフゴケ商会商会員

〇ロミスオッド:ヨダーシルから逃走


□セイ    :色々できる腕輪型のデバイス。人工知能(AI)搭載

□アニサ   :クレスタがカスタマイズしたセイ

*ユンゼス視点*


「…ですので、私は誓います。

 ヨダーシルを、強く、優しい国にしてみせると。」


 会場は、拍手に包まれる。


 こうして。

 ソルテローラ新都市長の就任挨拶は、つつがなく終わった。




 あの日。


 北区と東区が激突して。

 ワッポノ君がCクレイジーMマシンDドラゴンを破壊して。

 ロミスオッドがヨダーシルから去って。


 その三日後、予定通り投票が行われて。


 本日、無事に就任挨拶が終わった。


「ローラもデューも、怪我人なんだから。

 あんまり無茶しないでよ?」


 会場の外。

 一人でぼんやりとしているラデュームに近づく。


「…なあ、ゼス。」

「なんだい?」


 彼の隣で、同じように青空を眺める。


「もし俺が、無様を晒す事なくロミスオッドを拘束できていれば。

 東区の力を、しっかりと示せていれば。

 俺が選ばれていたと思うか?」


「…どうだろうね。

 確かに、あの戦いの影響もあったと思うけど…。

 単純に、今のヨダーシルには、ソルテローラを支持する人の方が多かった。

 それだけだと思うよ。」


 票は、だいたい7対3。


 投票者の3割の人達は、デューの目指す街作りに賛成してくれたのだ。


 投票率は悪くない。

 そして世界最大都市の3割なのだから、相当な人数だ。


 この人達の協力が得られたなら。

 第二ヨダーシルは、きっと強い町になる。


「…まあ、なんにせよだ。

 まずは、ヨダーシルの復旧が最優先。

 次に、区長選か。

 それらが終わったら、新しい町…。」


 デューは思いきり伸びをして。

 激痛が走ったのか、変顔になり体勢を崩す。


 俺は、それを支えた。


「そう、やる事はたくさんあるよ。

 ちゃんとついていく。

 一緒に頑張ろう。」


 少し、嬉しい。

 彼と同じ目標で頑張れて。


 それこそトリッキーシューターの運営を辞めて以降、初めてじゃないか?

 同じ区長という立場になっても、区の方針の違いから別々の場所を目指していたし。


 …いや、違うか。

 ヨダーシルを、いい町にしようとしていたのは同じだ。


 今も、昔も。


 バチンと。

 背中を叩かれる。


「じゃあ、北区にいくぞ~。

 要塞を再建しないとだからな。」


 痛い。

 外傷はないけど、こっちも魔力欠乏症手前の身だ。加減してほしい。


 (…しかし、まあ。)


 ラデュームだし。こういうやつだし。


 俺は駆け足で、先に歩き出した彼に追いついて。


 その大きな背中の、隣に並んで歩いて行く。




*ワッポノ視点*


 あの日から、五日。


 俺はベッドの上にいる。


 戦いの影響で、じゃない。

 なんならツツジに回復薬を入れられたら、すぐに動けたくらいだ。


 改造人間だから。


 そう。

 改造人間になった俺は、ヨダーシルの技術者から大人気。


 連日、こうして検査というか調査というか、そういうのをされている。


 もしかして、死ぬまでヨダーシルの研究対象として拘束されるのでは?

 と、不安にもなったが。


 そこは、ユンゼスが何とかしてくれたらしい。


 俺はツツジ達と一緒に、マーアに帰る。

 ただ出発までは調べさせてほしいと言われて、それで協力している。


 色々迷惑をかけたし、世話にもなった。

 これくらいお安い御用というか、寧ろ、こちらからお願いしたいというか。


 マーアに戻った瞬間に、壊れて動かなくなりました。では、洒落にならないし。


 (…。)


 技術者達は、皆、いい人そうで。


 俺の事とか。

 セイの指示通りとはいえ、俺を改造したツツジの事を褒めてくれるから、不快になるような事はない。


 ただ。

 こうして何もせずに横になっている時間は、考えてしまう。


 あの、戦いの事を。


 (俺は、ロミスオッドと対等な関係で話がしたかったのに。)


 その為に、戦ったのに。


 CクレイジーMマシンDドラゴンの破壊には成功したが、そこで力尽きてしまった。

 だから結局、話をする事は出来ていない。


 つまり、目的を果たせなかった訳だ。


「俺は、勝ててなかったって事か…。」


「そんな事ない。」


 ビックリして。

 身体が跳ねてしまう。


 いつの間にか、隣にツツジがいた。


「ポノは強くなったし、ちゃんと勝ったよ。

 ヨダーシルの人は、ポノに感謝してる。」


 何というか。

 その表情は暗い。


「はい、リンゴ。」


 差し出されたのは、食べやすくカットされたリンゴ。


「…いや、俺は…。」


 食べられない訳ではない。

 実は味覚は残っているし、経口摂取は不可能じゃない。


 ただ、いつもみたいに液体にして横腹から流し込んでくれれば、速いし楽じゃないか?


 そう言おうとして。

 気づいた。


 ツツジは、涙目だ。


「…いただきます。」


 一切れもらって、口に入れる。

 普通のリンゴだ。


「うん、おいしい、おいしい。」


 きっとこれは、ツツジが切ってくれたもの。

 手間をかけている訳だから、愛情とか、そういうのがあって。

 だから、その分おいしいはずだ。


 もう一切れもらって、それもおいしいと言いながら咀嚼する。

 なんというか、沈黙が怖くて。


「…ポノは、人間なの。」


 凄く、小さな声だった。


「人間でいて、いいの。」

「…なんか、言われた?」


 ツツジは、首を横に振った。


 だが、この状況で。

 何もないなんて事が、ある訳がない。


 絶対、俺関係で何かあった。


 (…。)


 俺は、この選択に。

 後悔はない。


 けど、これは。

 ちょっと辛い。


 俺の事でツツジが泣くのは、嫌だ。


「ツツジ。」


 きっと、俺の本心を。

 ありがとう、と言った所で。


 ツツジは、納得なんて出来ない。

 だってツツジが傷ついている部分は、そこじゃないから。


 今の俺に。

 ツツジの心は晴らせない。


 だから。


「俺はもっと強くなる。」


 誓う。


 心配なんてさせないように。

 安心してもらえるように。


 俺を改造した事を。

 ツツジが、誇れるようになるように。


「だから一緒にいてほしい。

 近くで、俺を見ていてくれ。」


 ツツジは。


 何か、顔が赤くなっていって。

 口をパクパクさせて。


 凄い勢いで、部屋を出て行った。


「…あれぇ…?」


 俺、何か間違えたか?




*リハネ視点*


 8.3秒。

 それが、表示されたタイム。


 あの日から、六日。


 西区は、だいぶ落ち着いた。

 北区の要塞の復旧も順調。


 だから私達は。

 当初の予定通り、明日、マーアに帰る。


 その前に、最初の借りを返そうと。

 トリッキーシューターでカナミアに勝負を挑んだのだが…。


「…私の負けだな。」


 結構練習したんだが、8.5秒を越えられない。

 これが、壁というやつか…。


「二週間弱で8秒台を出しておいて、そんな顔とは。

 ムカつきますね。」


 ニコニコ顔で近づいてくるカナミアが、そんな事を言ってくる。


「カナミアは、8秒台はどれくらいで出せたんだ?」

「…さぁ。ちょっと覚えてないですね。」


「お、記事あんじゃん。二か月前の西区の大会の。

 優勝者は、トリッキーシューターを始めて三か月の超新星。

 お前の事か、流石クイーン。」


 カナミアが、私のセイを奪い取ろうとしてきたので、華麗に避ける。


「おーおー、涙が出るほど喜んじゃって~。

 そうか、自己ベストで優勝か~。

 7.9秒か、そうか~。」


「今は!

 9秒台ですから!

 現時点で、私が上ですから!!」


 そこから、鬼ごっこが始まって。


 正直、楽しかった。

 久々に、笑った気がする。




「そう言えば。」


 鬼ごっこが終わって。

 トリッキーシューターの球を投げながら、カナミアが言い出す。


 勝負じゃなくて、ただの練習。


 背中合わせに球を投げながら、それを聞く。


「あなたは、どうしてヨダーシルに来たんですか?」

「いや、どうしてって、クレスタ達の護衛だけど?」


「クレスタさんから聞きました。

 あなたは、自ら希望して護衛になったのだと。」


「あぁ、それか。」


 別に、隠すような事でもない。


「私は一応、勇者隊のリーダーみたいな立ち位置でな。

 実際は違うんだが、まあ勇者だし。

 そういうの拘らない集団だから、対外的にはそうなってるんだよ。」


 変な方向へ球が飛んでいってしまう。

 キングの、ドーナツを練習しているんだが、これは難しい。


「で、だ。

 王様直々に、ポノの事をよろしくって頼まれた。

 それで実際に戦ってみて。

 そこまで強くなかったけど、内に秘める闘志みたいな、いい素質を持ってたんだよ。

 だから私は思ったよ。こいつはきっと、強くなるって。」


 カナミアも、ドーナツの練習を始めた。

 明後日の方向に飛んで行き、ムッとしている。


「数か月、経ってさ。

 ようやく気付いたよ。

 私、それから勇者隊のメンバーは。

 人に教えるのが下手過ぎる。」


 ほぼ全員が我流。

 自分なりの方法で強くなった奴ばかりだった。


 そのやり方が、相手にも合っているならばいい。

 ただ、そうでない場合。

 そのやり方で、強くなれなかった場合。


 どうすれば強くなれるのかは、答えられない。


「それでもさ。

 確実に強くはなっていたんだ。

 その証拠に、追いつけなかったけど離されもしなかった。

 周りも同じように強くなっていったから、実感はなかったんだと思う。

 で、ポノが家出したらしいって話を聞いた。

 笑えないだろ?

 ポノをどうやって強くさせようかは考えていたけど、あいつ自身の気持ちとかは考えていなかったんだ。

 流石に責任を感じたよ。

 …まあ中には、そういうのも自力で乗り越えるべきだって思ってて、知ってて放っておいた奴もいたけどな。」


「つまり、責任感でついてきたと?」


「そうだよ。

 言ってやりたかったんだ。

 焦らなくてもお前は強くなれるし、結果も出始めているって。

 …まあ、今なら。

 この言葉はあいつに届かなかったと分かるけどな。」


 六回転。新記録だ。

 まあ、最後は制御を外れて飛んで行ってしまったからトリッキーシューターなら0点だけど。


「来てよかったよ、ヨダーシルに。」


 あいつも、私も。

 色々あったけど、そう思えた。


「それは、よかったですね。」


 カナミアの投げた球が円を描く。ドーナツのように。

 その球は、七回転してどっかへ飛んで行った。


「…。」

「…♪」


 カナミアは、勝ち誇った顔で私を見た。


 (…こいつ。)


 そうして始まる、何度目かの勝負。


 ああ、もう本当に。

 こいつには、負けたくない。




*クレスタ視点*


 あの日から、七日。

 二週間の滞在を終え、私達はマーアへ帰る。


 私と、リハネと、ツツジちゃんと、ポノ君。

 全員で。


「…アニサちゃん…。」


『はいはい、そんな顔しないで。

 またヨダーシルに来れば会えるから。』


 ユンゼスさんを見る。


「会えるよ。

 住民や旅行者には個人IDがあるからね。

 再訪した際、希望があればセイのデータは引き継げる。」


「アニサちゃん!」


『クレスタと過ごせて楽しかったわ。

 それじゃあ、元気で。』


 名残惜しいけれど。

 ユンゼスさんにセイを返却した。


 ここは駅のホームで、私達の乗る列車は到着済み。


 ポノ君やツツジちゃんは既に乗り込んでいて、リハネは向こうでカナミアと話している。


 発車まで、まだ少しだけ時間があった。


「ねえ、ユンゼスさん。」


 だから、声をかける。


「何かな。」

「ロミスオッドさんのセイは、あれからどう?」


「協力的だよ。

 ただ、犯人は断罪者だと言って譲らない。

 断罪者とロミスオッドが同一人物だとは、絶対に認めないんだ。

 その事だけは、徹底的に隠してる。」


 それは。

 ロミスオッドの指示なのか、それともセイの意思なのか。


 そして。

 誰を、守っているのか。


「流石ね。

 ユンゼスさんは、作れたのよ。

 個人に寄り添い、その人を絶対に裏切らないパートナーを。」


「いや~、それで犯罪の手助けをされる訳にはいきませんよ…。

 プログラムを見直さないと。

 う~ん…どうやって変えようかな…。」


 そうよね。

 どんな時でも、どんな状況でも、どんな人にも、正しい行動なんて。

 そんなのは、無いだろうし。


「ロミスオッドさん、全国指名手配になったのよね。」


 放っておくと、ずっと悩んでそうだったから話題を変える。


「ええ。

 あいつは、やる事はやってましたから。

 捕まえて、罪を償わせて、それから話をしますよ。もう一度。」


 ユンゼスさんは、多分、私と同じ感想だと思う。

 だから、口には出さないけど。


 ロミスオッドは、根っからの悪人ではない。


 ユンゼスさんの友人を殺し、ポノ君を唆し、西区を襲撃し、ヨダーシルを混乱させて、また人を殺そうとしている男だけども。


 それでも彼は最後、ユンゼスさんを殺さなかった。

 自身の計画を潰した人物に、復讐をしなかったのだ。


 それこそロミスオッドがその気なら、ユンゼスさんは簡単に殺られてしまったし。

 その後、ネクーツにヨダーシルの機密情報を売り渡し、ヨダーシルを潰す事も出来た。


 表面上ヨダーシルから手を引いたように見せて、ポノ君に復讐を手伝わせる事だって出来た。


 でも。

 そういう事はしなかったのだ。


 (しなかった理由は、想像の範疇を出ないし。

 罪人で、危険人物には変わらないんだけど…。)


 ユンゼスさんとロミスオッド。

 二人が、もう一度。

 話せたらいいな、とは思う。


「今回、俺はあいつに復讐をやめさせる事は無理だった。

 でも、あいつに言った言葉に嘘はないし、もう一度、同じような状況になったら、チャンスがもらえたら、きっと同じことをすると思う。

 結果は残念で仕方ないけど、行動は、間違えたとは思わない。

 …もちろん、説得力は高めたいけどね。今度は成功させたいし。」


 色んな感情があるけれど。


 ユンゼスさんは。

 笑った。


「個人的な意見だけど、ユンゼスさんは、そうであってほしいわ。」


 そういう人が、いてもいい。


「そうそう、リハネが言っていたんだけど、本当にマシンDFドラゴンフォームって持って行っていいの?」


「ええ。どちらかと言えば、データが欲しいんですよ。

 それこそ、ワッポノ君の為にも。」


 ポノ君は、それこそ定期的にヨダーシルに来る事になっている。

 検査の為だ。


 (クーランの件が片付けば、ポノ君はヨダーシルに住んだ方がいいのかも…。

 いえ、それは彼が決める事だし、私は彼のやりたい事をサポートしないと。)


 私にも、責任があるのだから。




 そうこうしているうちに、出発時間。


 私とリハネは列車に乗り込み、ポノ君達と合流。


 窓からホームを見ると、結構な人数がそこにいた。


 南区の、ユンゼスさん、ルムリートちゃん。

 東区の、ラデュームさん、ミーサとティルム。

 西区の、ソルテローラさん、カナミアと、アクスとギリュウ。


 皆に手を振って。


 列車が動き出す。


 こうして、私達のヨダーシルでの冒険は終わった。


 解決した問題と、解決していない問題。

 ずっと続いて行く、問題があって。


 未来がどうなるか、まだ分からないけれど。


 それでも。

 私達の旅は、続いて行く。

第四章完結です。

お付き合いしていただけた方、本当にありがとうございます。


第一章は真面目に作って、第二章はノリで作って、第三章は頑張って作って、第四章は吐き出して…

第五章は、今までの集大成その①

ドッカンバッタンできたらいいなと思います。


1月中には投降開始予定です。

よいお年を!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ