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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第四章 理想家オーズンの四人の後継者

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第155話 未来~最後の記憶~

~前回までのユンゼス~


ワッポノ君が、CMDを破壊した。


◇登場人物◇ ※●が視点者

●ユンゼス  :南区の区長

〇ロミスオッド:北区の区長


●オーズン  :元ヨルタムアーの魔王

〇エンビッケ :ルートレスの魔王

*オーズン視点* 1年前。


 陽の光で、目覚めた。


 予感がある。


 私は、今日で終わりだ。


 (…。)


 落ち着いていられるのは、全てを託し終わったからだろう。

 私が死んでも、皆の生活に支障はない。


 多少は、まあ、ごたつくかもしれないが、彼らなら上手くやれる。


 (トーニギさん。私は、あなたに誇れるように生きれただろうか…。)


 古い友人。

 共に、コア王国を開放する為に戦った仲間。


 彼と喧嘩別れして、200年。

 色々と、あった。


 残りの時間は、今までの思い出を振り返りつつ過ごせばいい。

 もし、あの世なんてものがあって、トーニギさんと出会えたら。

 いい土産話になるし。


 いや、でも止めておいた方がいいか?

 口惜しさも思い出し、穏やかに最期を迎えられないかもしれない。

 思いのほか、思い出せなくてショックを受けるかもしれない。


 どうしたものかと、考えていた時だ。


「お邪魔しま~す。」


 来客。

 今日は、予定はなかったはずだ。


「最期らしいからね。挨拶に来たよ。」


 その顔は。

 私の友の、エンビッケだ。


 少し前。


 彼はヨダーシルに、ふらっとやってきて。

 今は、我が家に居候している。


 しかも、自分の立場を考えず街を見て回りたいとか。


 …正直、嬉しかったけども。

 興味を持ってもらえて。


 勝手な人なのだ。昔から。


「ふふ。」


 今もそうだ。

 許可を取らずに、人の寝室に入って来て。


「天使の仕事をしてくれるのかい?」


 天国へ連れていく、みたいな。


「僕はそういうのじゃないさ。知っているだろ?」


 彼はドカッとイスに座って。

 少しの間、沈黙が流れる。


 不快ではない。寧ろ、心地いい。


 (私が召されるまで、ここにいてくれるのだろうか?)


 そんな事を考えだした時。

 彼は口を開けた。


「覚えているかな。昔、よく話した事を。」

「色々話したと思うけど、どれの事かな?」


「理想の世界についてさ。」

「ああ。もちろん、覚えてるよ。

 どうすれば、争いの無い、皆が笑顔でいられる世界を造れるかってやつだね。」


「君はさ。」


 あの頃を、懐かしむように。


「当時から、凄い力を持っていた。

 …それでいて、繊細だった。

 心配だったんだよ。

 いつか、世界を滅ぼす魔王になるんじゃないかってね。」


 それは知らなかった。

 だから彼は、私に接触してきたのか。


「それで、理想の話?」


「そうだよ。

 どんな道を歩むのか、ハラハラしていたんだよ。

 場合によっては、僕が止めるつもりでもいた。

 でも、そうはならなかった。

 ヨダーシル。

 いい町であり、いい国じゃないか。」


 そう言ってもらえると、嬉しいけど。


「でも、世界を滅ぼす魔王になっていれば、君にもっと早く再会できた訳か。

 なら、惜しい選択をしてしまったとも言えるね。」


「冗談はやめてよ。

 天使になんて、会わないほうがいいに決まっている。」


 二人で笑いあう。


 そう、これは冗談。

 冗談として、言えるようになったんだ。


「なあ、ビッケ。」


 そして、これも。


「長生きして、わかったんだ。

 恒久的な幸せなんて、どこにもない。

 以前君が言ったように、洗脳しようが、夢を見続けようともね。」


 あの頃は、それを認めたくなくて。

 泣きながら、彼に詰め寄った事もある。


「それは、そうさ。

 不幸がなければ、幸福だってない。

 変化がなければ、そこには何もないんだ。」


 いけしゃあしゃあと言う。

 まったく、どこまで本気なんだか。


「一時の幸せを目指して。また、次の幸せを目指して。

 幸せになれるように努力して…。」


 願うならば、他者の幸せも考えられて。


「そういうふうに、一人一人が人生を歩めたなら。

 それこそが、幸せな世界と呼べるんじゃないかと。

 私は、そう思う。」


「いいじゃないか。

 そもそも幸せかどうかなんて、個人が決めればいい事さ。

 君は、君自身の理想に答えが出せた。

 満足のいく人生が、納得のできる人生が送れた。

 所謂、ハッピーエンドなんじゃないかい?」


「そうだね。

 私は、幸せ者だ。」


 それが私の。217年の答え。


 世界をどう見るか、何を問いにするかで、変わる答え。


 自分自身に、花丸をつける。


「じゃあ、そういう事で…。」


 彼は、立ち上がった。


「クーランに行くんだ。

 レーグと、ゾトの魔王が討伐されたのは知ってるかな?」

「もちろんだとも。

 そして、ディオルもリガーナも生きている事だって知っている。」


「…うわぁ、まじで、何で知ってるのさ。

 二人に会った事もないし、そもそもここから動いてないのに。」

「優秀な子がいるんだよ。」


 嬉しい。


 彼には一度も勝てなかったから。

 だから最後に、そんな顔をさせられて。


「じゃあ知ってるかもしれないけど、第二次クーラン大戦が起こるかもしれない。

 世界は、少し騒がしくなって。

 その余波が、君のいなくなったヨダーシルまでやってくるかもしれない。」


 もしかして彼は。

 そうならない為に、クーランに行くのか?


「大丈夫さ。私の弟子達は、皆、強い。」


 だからビッケも。

 やりたいように、してくれていい。


「そうだ。

 私の目になってくれている子で、君の、ルートレスの魔王のファンがいるんだ。

 連れて行ってほしい。」


 机の上の紙をとり、名前と連絡方法を記す。

 ビッケは渋い顔をするが、私の最期の頼みなら断れないだろう。


 大丈夫。

 君の、表には出ない武勇伝に感銘を受けた子だ。きっと役に立ってくれる。


 さて。

 あと、言いたいことは…。


「今更だけど…。」


 どうせなら、聞いておこうか。


「外見は同じだけど、君は、私の友達のエンビッケなのかい?」


 なんたって。

 君と会うのは、200年ぶりだからね。


「秘密だよ。全ての謎が解けたら、それはそれで面白くない。

 あの世で考えるといいさ。ゆっくりとね。」


 彼は私とお揃いの、深緑色の深めの帽子を被る。


「楽しかったよ。

 バイバイ。またね。」


「ああ、私もだよ。

 …いつか、どこかで。」


 扉から出て行く彼を見送って。


 意識が、遠くなるのを感じて。


 最後に。

 弟子達の顔が浮かんだ。


 (…。)


 これからも。

 色々と、大変なのだろう。


 失敗してもいい。後悔してもいい。

 それでも最後には、自分を許せるように。


「君達の事を、応援している。」




*ユンゼス視点*


「了解。

 …皆、お疲れ様。」


 少し前、ワッポノ君がクレイジーマシンドラゴンの破壊に成功した。


 そして今の報告は、スーマミーサさんがラデュームの救出に成功したという事。


 つまり。

 北区と東区の戦いは、東区の勝利だ。


 後、残す所は…。


「あなたも、本当にしつこい方だ。」


 その声に振り向く。

 ロミスオッドが、そこにいる。


クレイジーマシンドラゴンが破壊された今、お前はヨダーシルから逃走する。

 あの龍穴の場所から、地上へ上がるルートは3つ。

 それぞれを、俺とリハネとカナミアが見張ってたんだ。」


 確率は、1/3。


 だから。

 俺の所に現れたのは。


 師匠が。

 最後のチャンスをくれたのかもしれない。


「ロミスオッド。」


 彼の前に立つ。

 その道を、遮るように。


「先の無い復讐なんて、やめよう。」


 あの時。

 断られた提案を、もう一度。


「俺を手伝ってくれないか?

 一人で出来ないような、難しい事でもさ。

 仲間となら実現できたりするんだよ。」


 仲間がいたから、俺達はお前に勝ったんだ。


「お前が協力してくれるなら、こんなに頼もしい事はない。

 一緒に、新たなヨダーシルを造ろう。

 列車も、今度はワイバン大陸を横断させよう。

 魔物の現れない土地で、新しい町も造ろう。

 やる事は沢山あるんだ。」


 実現できれば。


 それは。

 きっと、嬉しい事だ。


 立ちふさがる壁だって、笑顔で乗り越えてみせる。


「色々やってみてさ。

 その中でさ。

 もしやりたい事が出来たなら。

 今度はそれを、俺に手伝わせてくれ。」


 お前という存在を否定したくない。破滅に向かわせたくない。


 だから。

 手を、伸ばす。


 この手を、掴んでほしくて。


「私は、あなたの友の仇ですよ。」


「それで、あいつの。俺達の夢が叶うなら。」


 あいつは。

 俺の造る未来を、楽しみにしてくれている。


 ロミスオッドが。

 手を伸ばす。


 そして、その手が。

 重なりそうになった時。


 ひんやりとした感触があった。


 俺が掴んだのは。

 ロミスオッドの、セイだ。


「お断りです。」


 轟音がして。

 突風にバランスを崩し転ぶ。


 顔を上げると、そこにいたのは竜騎兵りゅうきへい

 そして竜騎兵りゅうきへいの手に乗る、ロミスオッドだ。


「私の負けを認めましょう。

 ヨダーシルの町からは、完全に手を引きます。

 もう害は、加えません。」


 丁度、逆光になっていて。

 その表情は見えなかった。


「だから、もう。

 追ってきたりはしないで下さい。」


 でも、その声に。

 俺への、気遣いみたいのが感じられて。


 それからは、あっという間。


 竜騎兵りゅうきへいが浮かび上がり、掌から光弾を発射して。

 北門の城壁を破壊し、そこから外へと飛び立った。


 その様子を。


 俺は尻もちをついたまま、茫然と見送って。


 バタンと大の字に寝転んだ。


 (あ~、最後にやってしまったなぁ…。)


 真面目なやつだから。

 本当にヨダーシルへは攻撃してこないのだろう。


 このセイの中に、改竄の証拠や、他国との交渉材料やらも全部入っているのだろう。


 それでも。

 敵の首謀者を、みすみす逃す事にはなってしまって。


 勝ちはしたが、完全勝利とは言えなくて。


 (あ~、皆になんて言おう…。)


 まあ、竜騎兵りゅうきへいを持ち出された訳だし。

 なんならアーミーマシンドラゴンだって残っているし。


 マシンDFドラゴンフォームを起動できる魔力が残っていない俺には、どうしようもなかった訳だけど。


「まったく。

 本当に、頑固な奴だ…。」


 最後に。

 空に向かって悪態をついて。


 俺は、目を閉じた。

一章、二章、三章と、作中時間で半年~1年過ぎています。

そんな中、第四章はワッポノ失踪から数えても一か月以内の話でした。


次回で終わりです。

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