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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第四章 理想家オーズンの四人の後継者

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第153話 未来~勝利の為に~

~前回までのユンゼス~


ワッポノ君がCMDと戦っている中、俺達5人は合流を果たす。

情報共有をしていると、ロミスオッドにセイをジャックされる。

そして、ロミスオッドを名乗る女性が、ヨダーシル都市民に向けてメッセージを発信した。


◇登場人物◇ ※●が視点者

__ヨダーシル・南区

●ユンゼス  :南区の区長

●ワッポノ  :マーアの勇者

〇クレスタ  :ワッポノ捜索隊

〇ツツジ   :ワッポノ捜索隊

〇ルムリート :ユンゼスの秘書


__ヨダーシル・北区

〇ロミスオッド:北区の区長


__ヨダーシル・東区

〇リハネ   :ゾトの勇者

〇ラデューム :東区の区長

〇スーマミーサ:ラデュームの秘書


__ヨダーシル・西区

〇カナミア  :アイーホルの勇者


□セイ    :色々できる腕輪型のデバイス。人工知能(AI)搭載

「どういう事だ、これは?」


 画面を見ながら、リハネが呟く。


「足りない魔力を集めるんでしょうね、都市民から。」


 答えるのは、クレスタ。


「魔力の譲渡なんて、この距離で可能なのか?」


「セイは魔法が使えるの。通信とかも魔法だしね。

 だから魔力を渡す魔法、魔力贈物マジックパワーギフトが使えてもおかしくない。

 そして、ヨダーシル内全てが、セイの影響下。魔力制御範囲。

 渡す意思があれば、譲渡は可能よ。」


「いやでも、これで渡すやつなんているか?

 胡散臭すぎるだろ。」


「胡散臭い断罪者が、西区を襲撃したのは都市民全員が知っているわ。

 犯行声明が送られてきたから。

 そして、その事で東区が北区に進軍したのも、知れ渡っていると思う。

 なにより…。」


 苦々しそうに、クレスタは続ける。


「カナミアと戦うポノ君、ダークネスフレアドラゴンを見た人は多いの。

 深夜とはいえ大きな音だったから。

 起こされて、何事かと思った人はセイを使って調べたわ。

 姿を目撃した人も、記録した人もいる。

 多少の変化はあっても、基本的なデザインは一緒。

 あの時の黒いのだと、きっと分かる。」


 ハッとする。


 もし、あの戦いを最後まで見ていた人がいるなら。

 ワッポノ君の姿と、ロミスオッドの姿も目撃したはずだ。


 それでも。

 あのロミスオッドは、このロミスオッドじゃない。


 奴にしては迂闊に姿を晒したと思ったが、それはバレても問題ないからか。


「譲渡するのも、金品とかじゃなくて魔力だからね。

 休めば回復するし、死ぬまで搾り取られる訳じゃないし、渡す量だって調節できる。

 …ヨダーシルには、何かを成そうとして学びにきた若い子達も多いわ。

 侵略者と戦うから協力してほしいなんて言われたら、喜んで協力してくれるんじゃないかしら。

 添付してあるデータも、多分、しっかり作ってあるだろうし。」


「…だとしてもだ。

 そもそも、このロミスオッドは誰なんだ?

 誰も偽物だと気づかないのか?」


「気づかない。と、思ったから、実行したんでしょう。

 この女性は、おそらくセイよ。ロミスオッドのね。

 これほど自然ならバレない、というよりバレても問題ないんじゃないかしら?

 ロミスオッドの正体は、オーズン肝いりのAI。

 そういう落ちで、いくのかも。

 …実際、区長の業務を滞りなくこなしていたのは、本当に彼女かもしれない。

 仕事を彼女に丸投げして、ロミスオッドは色々と準備を進めたのよ。

 そして彼女を都市長にして、今度は復讐の準備を進めるつもりなのかも。」


 あり得る話だと思ってしまった。


 北区でロミスオッドとして接していたのは、あのセイで。

 男のロミスオッドは秘書か何かだと言えばいい。


 そう、きっと。

 北区に住む都市民の多くが、この認識なのだ。


 だから今、彼女が伝えている事が真実だと受け入れる。


 …それこそ西区襲撃を援護した工作員は、不法入国をした不正規住民達で。

 既に全員国外へ逃げているかもしれない。


「セイという存在は、この国で信頼を勝ち取ったのよ。

 常に傍にいて、裏切らない存在。

 物知りで、公正。なくてはならない存在。

 だからこそ。

 自分達の暮らしがよくなるのなら、国の代表はAIでも構わない。」


「奴はそこまで考えて?」


「どうかしら。

 たぶんゴールへの道筋は、いくつものパターンを考えていたのよ。

 それで、今の状況ならっていう手を打ってきた。

 そんな感じだと思う。」


「…私達が戻って、都市民に説明して回れば解決するんじゃないか?」


「私達は、私達が正しいという証拠を提示できないのよ。

 北区を攻めたのも、証拠があったからじゃない。

 証拠を掴む為に、強引に攻めたのよ。

 そしてまだ、証拠は掴めていないの。

 この状況で、仮にポノ君がやられてしまったら、どう?

 西区、南区、東区がどうにもできなかった敵を、北区が倒した絵が完成する。

 後は、信用勝負。

 今までのユンゼスさん達の行いと、今回の一連の出来事のね。

 この状況での選挙は、相当分が悪いと思う。」


「…西区を襲撃して、東区を返り討ちにして、その罪をポノに全部押し付けて、最後にポノを倒して支持率を上げる?

 なんだそのマッチポンプ…。」


 地鳴りがする。


 きっと、クレイジーマシンドラゴンの変形が再開したんだ。


 魔力が、供給されている。


「ポノと連絡はつかないのか?」


 これは、俺が答える。


「つかない。

 こちらからの通信を受けとってもらえない。

 彼自身電源を切ったか、戦っている内に壊されてしまったんだと思う。」


「なら、仕方ないな。」


 リハネが出て行こうとして、カナミアに止められた。


「ポノを下がらせないといけない。

 敵の魔力が上昇しているなら、これ以上は危険だ。」


「それには賛成だけど、ガス欠のあなたはワッポノさんの元まで辿り着けないわ。

 無謀な戦いをさせられない。」


「やってみなければわからない。」


 そこに、クレスタが混ざる。


「ポノ君は、諦めていないわ。」


 映像の中で、ワッポノ君が腕を振り、迫る石柱を砕いた。

 そのまま前進する。


「彼が諦めていないなら、私達のする事は彼を勝たせる事よ。

 例えば、魔力供給を断つとかね。

 状況は変わってしまった。

 ポノ君の敗北が、向こうの勝利。

 そして、ポノ君の勝利が、私達の勝ちよ。」


 クレスタが、俺を見た。


「もちろん逃げる選択肢は残しておくべき。

 全滅なんて嫌だもの。

 でも、出来れば、ね。

 勝って喜びたいじゃない、皆で。

 ワッポノ君も、ラデュームさんも一緒に。」


 ロミスオッドも。


 そう、言われた気がした。


 その時、兵舎の扉が勢いよく開く。


「お待たせ!」


 我が南区が誇る優秀な秘書、ルムリートだ。


「色々もってきたぜ~。」


 背負っていたリュックを降ろす。

 ズシリとした重量が頼もしい。


「クレスタ!」


 奥から飛び出してくる人影。

 それが、クレスタに体当たりした。


「ミーサ!」


「クレスタ…リハネも…ごめんネ。

 私、ラデュームを守れなかっタ…。」


 スーマミーサさんが、クレスタとリハネに慰められている中。

 俺は秘書から報告を受ける。


「東区本隊の被害は、ラデュームが連れ去られたのと、竜機兵りゅうきへいが全滅したくらいだな。

 怪我人は多いが、死者はゼロ。

 あいつは軽傷で、本陣でいじけてたから護衛を頼んだんだよ。

 連れて来てよかった。こんな状況でも、まだアーミーマシンドラゴンがうろついててさ。」


 その頭を撫でる。

 こちらから頼んだ事とはいえ、よく来てくれた。


 これでまだ、出来る事がある。


「皆、聞いてほしい。

 作戦があるんだ。」




*ワッポノ視点*


 ここに来て、敵の魔力が跳ねあがった。

 足場が、次々と奴に取り込まれていき、飛んでくる魔力弾の頻度も上昇。


 押していたのに、押し返されて。

 あっという間に劣勢だ。


『ここまでですね。逃げましょう。』


 頭の中で、声がする。


「嫌だね。」


 口に出して、反論する。


『死にますよ?このままだと。』


 声の正体は、俺に組み込まれたセイだ。

 マシンDFドラゴンフォーム起動状態なら、こうして話しかけてくる。


 ネットワークには繋げられないみたいで、情報取得は不可。

 しかし演算能力はそのままで、同じく組み込んだダークネスフレアドラゴンの機能は使える。


 どういう事かというと、敵の魔力量とこちらの魔力量から戦闘シミュレーションして、結果の予測が可能らしい。


 ただ、今回は。

 言われるまでもなく、わかる。


 このまま続けても、俺は勝てない。


『一度退いて、再戦すればいいんです。

 死なない限り、あなたの敗北ではないでしょう?』


「…俺はさ。」


 転がっている鉄柱を振り回し、飛んできた魔力弾を弾く。


「聞かれたんだよ、勇者に。」


 鉄柱が砕けたから移動。建物の影に隠れる。


「『勇者って、何だと思う?』って。」


 建物が穴だらけになってきたから、再び移動だ。


「そいつは、信念のある奴だって言ってた。

 …あいつは、立派な勇者だよ。だから、間違いじゃないんだろう。

 でも、自分で言ってたんだよ。

 『あくまで、私の勇者像』って。」


 跳ねて。避けて。転がるように走りながら。

 言葉を重ねる。


「なら、俺の勇者像ってなんだろうって。

 考えてた。

 あの頃。

 自分が勇者だと、誇りを持っていた頃。

 俺が思い描いていた、未来の自分は…。」


 迫ってきた瓦礫を、グーパンで砕く。


 脚は止めない。

 少しずつでも、敵へと近づいていく。


「当然、魔王を打倒する自分だ。

 つまり勇者とは、魔王を倒す者だ。

 でも。」


 右手が。

 迫ってきた。


 跳んで避けるにはデカすぎる。

 覚悟を決めて、体当たり。


 流石に無謀だった。

 圧倒的質量にあっけなく敗北。


 俺は飛ばされて、建物に激突。

 縮めた距離が、また離された。


「俺は、カナミアも、立派な勇者だと思う。

 あいつは魔王を倒していない。それでもだ。

 と、いう事は。

 今の俺の勇者像は、魔王を倒す者じゃない。」


 追撃で飛んできた魔力弾を転がって避けて。

 立ち上がる。


「勇者とは、ここぞという時に、勝てる奴の事だ。」


 駆け出す。


「勇者の勘、いや、違うな。

 たぶん、DFDRこれの起動状態なら、お前の演算能力を、俺も少し使えるんだと思う。

 今までのロミスオッドの、そしてユンゼス達の行動。

 わかるんだ。

 きっとこれが、ヨダーシルでの最後の戦いで。

 ここで俺が退いたら、俺達は負けるんだ。

 俺の望んだ世界に行けない。」


 俺の望む世界。


 ヨダーシルをユンゼス達に任せて。

 俺はロミスオッドの復讐を…。


 いや、まずは話を聞きたい。


 どんな事をされて復讐を考えているのか?

 復讐相手は誰なのか?


 『話す事で、楽になる事もある。』


 あの浜辺で。

 ユンゼスに言われた事を思い出す。


 あの時、俺は。


 『あれより強くしてくれ。』と。

 その一言を、言えたから。


 俺の物語は、動き出した。


 その、物語の最後に。


「俺は、勇者になりたい。」


 結局、俺は。

 一度も勝てていない。


 追い詰める所までいけても、勝ち切る事が出来なかった。


 だから、ここだ。

 この場面で。ここぞという時に。


 勝利しなければならない。


 そうして誇れる勇者となって。

 その姿を、ロミスオッドに見せつけて。


 それで、今度こそ。

 対等な関係で話をするんだ。


『…。』


 セイは、もう逃げろと言わない。

 勝利の為の方法を、必死に演算してくれている。


 クレスタやツツジは、俺を改造した事を悔やんでいた。


 でも、今の所。

 いい事しかない。


 (後で、ちゃんとお礼を言わないとな。)


 改めて。

 地面を強く踏み込んで。


 俺は飛ぼうとした。


 そう。

 飛ぼうとしたけど、飛べなかった。


 地面が割れて、体勢を崩したから。


「!?」


 俺は何かに脚を掴まれて、思い切り上空へと放り投げられてしまう。


『皆さん!ありがとう!!』


 響き渡る、聞いた事の無い女の声。


『お陰で、断罪者を倒せるだけの、魔力が溜まりました!!』


 敵の。

 クレイジーマシンドラゴンの口が開いた。


『御覧ください!!

 これで、私達の、勝利です!!!』


『避けて下さい!

 大きいのが来ます!』


 ドラゴンの口から放たれたのは、超高濃度の魔力砲。


 演算するまでもない。

 あんなのに呑まれたら、死ぬ。


「…嫌だ。」


 奴は、これで勝利だと言った。


 それはダメだ。

 だって。


「勝つのは、俺達だ!!!」


 噴出炎ジェットファイアー

 空中で、何とか体勢を立て直す。


 そして俺は。


 迫る魔力の塊に。


 渾身の拳を叩き込む。

ユンゼスの考えの補足。


西区を襲撃した後、ワッポノに色々言っていた人達は、北区の人ではありませんでした。

国外で雇われて連れてこられた傭兵みたいな人達です。

ちなみに、お金を貰って帰りました。


西区の襲撃の時も、今回の東区との戦いにも、北区の人は参加していません。

ロミスオッド(セイ)から、話し合いで解決するので待機していて下さい。みたいな事を言われたので。

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