第152話 未来~情報戦~
~前回までの状況~
リハネは洗脳の解けたカナミアを抱えて、クレスタ達との合流を急いだ。
ワッポノはロミスオッドを追い詰めた。
◇登場人物◇ ※●が視点者
__ヨダーシル・南区
●ユンゼス :南区の区長
〇クレスタ :ワッポノ捜索隊
〇ツツジ :ワッポノ捜索隊
〇ワッポノ :マーアの勇者
__ヨダーシル・北区
〇ロミスオッド:北区の区長
__ヨダーシル・東区
〇リハネ :ゾトの勇者
〇ラデューム :東区の区長
__ヨダーシル・西区
〇カナミア :アイーホルの勇者
□セイ :色々できる腕輪型のデバイス。人工知能(AI)搭載
*ユンゼス視点*
「一先ず、合流できた事を喜ぼうか。」
魔王城内、兵舎らしき建物の中に俺達は集まった。
メンバーは、俺、クレスタ、ツツジ、リハネ、カナミア。
「あれが、CMDって事であってるか?」
リハネが、窓の外を睨みながら聞いてくる。
「あってる。
…まずは、状況確認をしよう。ずっと別行動だったからね。」
俺達は共有する。
カナミアの洗脳が解けた事。
ワッポノ君を改造した事。
その事でワッポノ君が凄まじいパワーアップを果たした事、を。
実際に、パワーアップした彼を見たわけだけど。
それでも信じられないというのが、正直な感想だ。
理屈は分かる。
魔力で、身体を動かす事は可能だから。
神経はなくとも、魔道さえちゃんとしていれば義手は動く。
とはいえ、あんな短時間で。
しかも、パワーアップまで。
(DFDとの相性が凄く良かった…。
更に幾度も起動させた事により、少しずつ、彼自身もDFDに近づいていた…?)
MDFは、テスト期間で開発が中止になった。
だから、継続使用による影響のデータは少ない。
改めて調査した方がいいかもしれない。
もちろん、事態が収束した後で。
「…ロミスオッドの目的は、ある人物に復讐する事。
ヨダーシルの都市長になりたいのは、ヨダーシルの力が欲しいから。
あいつの意思は固く、戦いになって、それで俺は負けた。
そして、ワッポノ君に助けられたんだ。
ワッポノ君は、復讐を手伝うからヨダーシルから手を引けと、ロミスオッドと交渉して、決裂。いや、交渉中かな。
彼に力を見せる為に戦いを始めた。」
「ポノは、復讐を手伝うつもりなの?」
ツツジだ。顔に反対と書いてある。
「ワッポノ君の真意は不明だよ。
別の狙いがあるかもしれない。
ただ、もし本心なら止めるよ。
彼に復讐の手伝いなんてさせるつもりはないからね。」
仮に、ワッポノ君の提案をロミスオッドが受け入れたとする。
そうなれば、まずCMDが止まるはず。
あれが動いている以上、進展はない。
ワッポノ君と話をするチャンスはまだある。
だから、あれの対応が最優先。
「凄い爆発音を聞いた。ポノか?」
リハネが、先を促してくる。
「そう。
彼は強かった。ロミスオッドを圧倒した。
あの爆発で、決着がついたかと思ったんだけど。
ロミスオッドは、あのワッポノ君の攻撃に耐えた。
奴も、ICDも。
俺が知るより、全然強かった。
まあ、流石にダメージは大きかったみたいだから、ロミスオッドは撤退。
ワッポノ君がそれを追跡。
俺は足手まといだから置いて行かれた感じだね。」
セイを操作して、皆と映像を共有できるようにする。
これだけ近ければ有線でのやりとりが可能だ。
「ワッポノ君に、フフゴケ商会の映像送信装置を渡したんだ。
額の位置に着けてもらってる。
受信機をセイに繋げて、リアルタイムで確認できる状態にしてあって…。
ほら。
彼は今、CMDの前にいる。」
映し出された、それは。
城壁を遥かに上回るほど巨大な物体。
ガラクタを無理やりくっつけたような、用途も分からないような機械の、塊。
取り繕う事を止めたような、無機質な姿。
無慈悲の象徴。
機械の、翼の無いドラゴン。
その上半身が、地面から突きでたような見た目だ。
「すげーな、ポノ。
たった一人で、あんなデカ物と対峙してる。
まさに、勇者じゃないか。」
確かに絵になってるけど、言ってる場合じゃない。
「要塞の半分が、あれに変形した。
合流している時に地面が凄く揺れたのは、その影響だよ。
しかも、まだ変形途中。
魔力不足で進行が遅いけど、最終的には要塞全てがあれになると思う。
つまり、今いるこの場所も危ない。
逃げないと俺達は、あれに取り込まれる。」
「確かか?」
「確か。
ロミスオッドから、データが送られてきたんだよ。」
その時、ポノ君から受信している映像が切り替わった。
ロミスオッドの顔が、画面に映る。
『やあ、皆さん。元気そうで何よりです。』
その声は。
この場にいる者、全員のセイから聞こえた。
どうやら、ジャックされたらしい。
『状況の確認は出来ましたか?
あなた方は予想よりも強かったです。
ですのでこちらは、切り札を切らせてもらいました。
流石にこの質量はどうにも出来ないでしょう?
大人しく、投降してください。』
「投降はしない。」
リハネが言い切った。
「確かに、あれを破壊するのは骨が折れそうだ。
くそデカい両腕を振り回したり、全身から魔力弾を出したり、戦闘力もありそうだしな。
でも、魔力消費が激し過ぎる。
あの場から動くどころか、変形だって中途半端。
だから出し渋ってたんだ。本当は使いたくなかった。
でも、使わざるを得ないほど、追い詰められている。
投降するのはお前の方だな。
しないなら、私達は少し離れて様子見だ。
お前が逃げないように見張りながら、あのデカ物の魔力が尽きるのを待てばいい。
もう勝ち目はないぞ?」
『流石はゾトの勇者様。
CMDの見立ては完璧です。
魔力が足りなくて、だから使いたくなかった。
しかし、それでも使ったのは。
勝てると思ったからですよ。』
映像が切り替わる。
映し出されたのは、柱に括られたラデューム。
傷だらけで、ぐったりしている。
最初に、フェイク映像を疑った。
ただ、本物の可能性はある。
CMDでワッポノ君の注意を引き、本隊を強襲。
ICDなら不可能ではないから。
本隊と連絡がとれない現状、確かな事は言えないけど。
ただ、なんとなく。本物な気がする。
『ご覧の通りです。
あなた方の総大将は捕まえました。
ちなみに、ちゃんとまだ生きていますよ。
あなた方にも、彼にも。
危害は加えません。
投降さえしてくれればね。』
「断る。」
リハネは、迷いなく返事をした。
「ストップ!リハネ!ストップ!!」
クレスタが、そんなリハネを連れて部屋の隅まで連れて行く。
「いいか。
私達は、ロミスオッドを捕える為に戦っているんだ。
なぜか?
ヨダーシルを、あいつの好き勝手にさせない為だ。
ラデュームは、覚悟を持って戦場に出てきたんだよ。
守りきれなかったのは、すまないと思う。
でも、あいつが死んでも、ロミスオッドを捕える事さえ出来れば、ヨダーシルは立て直せる。
ユンゼスも、ソルテローラもいるからな。
あいつのお陰で、私達は邪魔されずに戦えた。そして、勝った。
それでいいんだよ。
折角ここまで追い詰めて、自分の所為で負けたとなったら、あいつは死んでも死にきれない。」
クレスタの声は聞こえないけど、リハネの声は聞こえる。
ちょっと嬉しい。
リハネが、ラデュームを理解してくれて。
リハネの主張は正しい。
でも。
それでも俺は、ラデュームに死んでほしくない。
「ロミスオッド、すまない。
10分くれないか?
見ての通り意見が割れている。
話し合いの時間をくれ。」
くれるはずだ。
だってラデュームが死んだら、俺達はリハネの言ったようにする。
ロミスオッドの逃走を警戒しつつ、CMDの魔力切れを狙う。
だからラデュームは、まだ殺されないはず。
『まあ、いいでしょう。』
ほっとした。
浮かせていた腰を下ろす。
俺達は投降する。そして、逆にロミスオッドを捕まえる。
その下準備を、この10分間で行う。
大丈夫だ。
あと数分で、彼女はきてくれるから。
『ラデュームはそこまで脅威だとは思っていませんでした。
私の敵は、ソルテローラさん。
いえ、あなたと組んだソルテローラさんです。』
違和感。
会話に、ずれがある。
「すまない、何の話だ?」
『私は、ヨダーシルの新都市長になりたいんですよ。』
知ってる。
『都市長になるには、選挙に勝つ必要があるじゃないですか?
今まで選挙活動をサボっていたので、ここから頑張って支持率を上げないと。
あれ、ひょっとして。
他の候補者を全員潰してなる気だと思ってました?』
思ってたよ。
「この状況で選挙活動の心配だと?出来るつもりでいるのか?」
リハネが、クレスタと共に戻ってきた。
『ええ。寧ろ、絶好のチャンスだと思っています。』
映像が、また切り替わった。
映し出されたのは、知らない女性。
…個人の感想で申し訳ないが、とんでもない美人だ。
その彼女が、口を開く。
『いきなりで、驚かせてごめんなさい。
私は、北区区長、ロミスオッドです。』
「は?」
「え?」
「ん?」
周りからあがる疑問の声。
「えっと、ユンゼスさん?」
「いや、北区の区長のロミスオッドは、さっきまで話していた男の方だよ。
こんな人は知らない。」
困惑する俺達を放置して、彼女の話は続く。
『今、私達は戦っています。
敵は、一昨日、西区を襲撃した断罪者を名乗る者です。』
データが送られてきた。
それは西区襲撃後に、断罪者が都市民に送ったデータ。
その矛盾点を指摘するものだった。
「これ、ヨダーシル都市民全員に送られているのね。」
呟くようにクレスタが言う。
それで俺も、奴の狙いに気づく。
『断罪者の狙いは、ヨダーシルの技術を盗む事。
その為に、ヨダーシルを混乱に陥れようとしました。
西区襲撃を北区の仕業に偽装し、東区、南区と争わせたのです。』
セイを操作する。
この映像送信を止める為に。これは、続けさせたら不味いやつだ。
可能なはず。
向こうから送信できる状態の、今なら。
『私達北区は潔白の証明に成功し、両区と和解。
そのまま、元凶である断罪者を共に攻めました。
しかし…。』
画面が動いて。
自称ロミスオッドと、横たわるラデュームが映った。
『断罪者は強敵です。
私達は徐々に追い詰められ、ユンゼスさんは行方不明。
ラデュームさんは、重傷を負いました。』
「こいつ…。」
リハネが怒る。
ラデュームが利用されて。
『お願いです、皆さん。
私達に力を貸してください!』
画面が、ワッポノ君を映す。
彼は、必死に戦っている。
俺達には、よく伝わる。
しかし、彼の姿は。
漆黒の鎧に、獣のような咆哮をあげる様は。
暴れ回る化け物に見える事だろう。
『今は、北門の要塞内で、何とか食い止められています。
しかし、ここが突破されれば、一昨日以上の被害を出してしまう!』
映像に、CMDは映らない。
変わりに、必死に抵抗する東区の兵士の姿が映る。
編集だ。
リアルタイムではなく、数秒前の、作られた映像だ。
『まだ、我々には秘密兵器があります!
それならば敵に、断罪者に勝てます!
でも、起動するには魔力が足りない!』
ダメだ。
セイのコントロールを奪えない。
『皆さんの魔力を、分けて下さい!』
魔力の譲渡を行いますか?
【は い】【いいえ】
それが、画面に表示されていた。
リハネを『呼び捨て』で、カナミアを『さん付け』したら、差をつけられたみたいに感じてリハネが不機嫌になった。
だからユンゼスは、カナミアも『呼び捨て』にするようにした。
というやり取りは、テンポの都合により省略しました。




