第151話 激突~全力~
~前回までのリハネ~
魔王城に突っ込んで。
ポノを倒して、カナミアと再戦。
ここで、決着をつける。
◇登場人物◇ ※●が視点者
__ヨダーシル・東区
●リハネ :ゾトの勇者
__ヨダーシル・北区
〇カナミア :アイーホルの勇者。洗脳状態
*リハネ視点*
(ここだ!)
誘導に成功し、仕掛けた罠がいい感じに機能して、隙を作る事に成功。
完璧な踏み込みと共に、必殺の一撃を放つ。
それを。
カナミアは、避ける。
まるで曲芸師だ。
「これも躱すのかよ。
まったく、流石だよアイーホルの勇者様!」
どれほど打ち合っただろうか。
何回、勝負に出ただろうか。
わからない。
わかるのは。
この戦いは、まだ続くという事。
(ああ、楽しいな。)
私は、戦う事が好きだ。
勝つのも。勝つ為に努力する事も。
昔からそうだった訳じゃない。
これは、勇者隊の影響だ。
あそこは、戦う相手に事欠かないから。
中々、面白い奴もいるし。
戦う事に対する価値観も変わってきて。
勇者隊以外の人とも勝負をするようになって。
勝ちたい奴がいて。
負けたくない奴もいて。
戦いたい奴も、再戦したい奴も、リベンジしたい奴も出来た。
でも、こいつは。
そういうのと、ちょっと違う。
最初は、ちょっとした対抗心。
目の前に、同じ勇者の肩書を持つ者が現れたから、どんなもんかと、ちょっかいをかけた。
そしたらトリッキーシューターで、技術の差を見せつけられて。
興味が出て来た。
そして、勝ちたいという思いが強くなった。
舞台を用意してもらって。
ライダ大陸最強勇者VSワイバン大陸最強勇者なんて煽られて。
これはもう、勝つしかないと。
でも、結果は引き分け。
いや。
見る人が見れば、分かる。
あのままいけば、私は負けていた。
そう思ってしまったという事は、私の負けなんだ。
西区が襲撃されて、カナミアが敗れたと聞いて。
腹が立った。
なに負けているのか、と。
私との戦闘で消耗した魔力が回復していない?
相手がポノだったから?不意打ち?
言い訳をするな。
お前は私に勝ったんだぞ。
それなのに。
怒りと、失望。
まったく勝手な話だが、それが私の感想だった。
でも。
再び戦ったあいつは。
MDFなんてのを使っていたが。
洗脳された状態だったが。
強かった。
その事が、たまらなく嬉しかった。
今度は絶対に勝ってみせると、同じ力も使えるようにした。
そして今。
こうして戦っている訳だが。
考えた必勝の策は、全て捌かれた。
正直、こいつにどうすれば勝てるのか、イメージが湧かない。
でも、その事が。
私の胸を躍らせる。
(好敵手って、こういう感じなのかもな。)
ヨダーシルに来れてよかった。
ポノのお陰だ。
(…あいつら、上手くやってるかな。)
クレスタは、ポノと合流できただろうか?
ユンゼスは、ロミスオッドと話せただろうか?
ラデュームは、ちゃんと耐えれているだろうか?
(もう、十分楽しませてもらったしな。)
ゾトの勇者として。
勇者隊の一人として。
東区の主力として。
責任を。
与えられた役割を、こなさなければならない。
(それに、折角なら。
洗脳されていないこいつと、何のわだかまりもなく戦いたい。)
どちらかというと、その気持ちの方が強いけど。
何にせよ、決着をつけねばならない。
実力は拮抗。小細工は無意味。
なら、後は。
(より、頑張った方が、勝つ!)
魔力を、振り絞る。火力を上げる。
朱色の鎧を、燃え上がらせる。
計測された魔力数値を確認。
少し、カナミアより上か?
(もっとだ、もっと!)
ここで、出し尽くすつもりで。
「おおお!!」
吠える。
そして、突っ込む。
カナミアは、真っ向から迎え撃つつもりだ。
向こうも魔力を振り絞っているのだろう。
数値が急上昇している。
考える事は、同じらしい。
口元が、少しだけ緩んで。
炎剣を、叩き込む。
奴の雷剣とぶつかり、互いに弾かれ、距離が出来る。
「火球!」
「雷矢!」
炎と稲妻が、空中でぶつかりあう。
もちろん、攻め手は緩めない。
「バーンエッジ!」
触れたモノを焼き焦がす刃を飛ばす。
連続で発射しながら、距離を詰める。
「雷網!」
焼ける刃が、雷の網に捕まっていく。
網は焦げるが、炎はあいつまで届かない。
しかし、距離は縮められた。
「インフェルノフォール!」
手を、地面について。
放出した魔力で、消滅させる。
現れるのは、巨大な穴。
その穴の中を、猛火で満たす。
落ちた者を決して逃さぬ、地獄の入口の完成だ。
カナミアは咄嗟にジャンプして躱すが、この穴は広い。
着地点まで炎の海だ。
「雷渦!」
真下に放たれた閃光の奔流が。
私の炎を飲み込んでいく。
更に彼女は、その衝撃で方向転換。
私に向かって、突っ込んでくる。
(そうくると思って、準備してたさ!)
私は炎剣を振り上げる。
「ブレイブフェニックス!」
「雷大砲!」
あの日、上空でぶつかり、大爆発した雷と炎鳥が。
今度は至近距離で、激突する。
その衝撃で。
私もカナミアも、吹っ飛んでいった。
意識が飛んだのは、一瞬のはず。
私はよろよろと、立ち上がる。
BBDは稼働状態。
しかし魔力は、ほぼ使い切った。まもなく砕けるだろう。
身体中も痛い。
それでも、立たない訳にはいかない。
なぜなら。
(お前が、立ち上がっているんだからな!)
少し離れた位置に、LRDがいる。
ふらふらしているが、戦う意思を感じる。
(ああ、流石だよ。)
それでこそ、だ。
「なあ!フェニックスって知ってるか?」
嬉しくて、つい。
語り掛けてしまう。
「死んでも蘇る、不死鳥なんだってよ!」
反応はない。
構わないさ。私が、話したいんだ。
「実は、私も詳しくない!
私の魔法のブレイブフェニックス!
あれは、友達が名付けてくれたんだ!」
サーチェ。亡き、私の親友。
「私はさ、負け知らずだったんだよ。
戦闘になれば、相手が人間だろうと、魔物だろうと全部に勝ってきた。
でも、1回、戦う前に負けた事がある。
…悪い領主がいたんだよ。
クーデターが計画されるような奴で。
私達は、そのクーデターに手を貸す事になったんだ。
私はこれっぽっちも負ける気がしなかった。
なんなら、領主の館に一人で乗り込んでも勝てたと思う。
でも、決行の前日にさ。
中止になったんだよ、クーデター。
中心となる人物が、裏切ったんだよ。大金をもらって。
私達は大義を失って、だから逃げた。
私は全然納得できなくてさ。
裏切り者もろとも、領主を成敗したかった。
でも、その頃は勇者になる為に頑張ってた頃だったんだよ。
そういう、私怨による戦いは御法度だった。
ずっとモヤモヤしてたんだ。
そうまでして、私は勇者になりたいのかと。
そんな時期に、友達と話して。
フェニックスの事も、この時、教えてもらったんだよ。」
あの。
夜に見た星空は、ちゃんと覚えている。
いや、思い出させてもらった。
ガットル達に。
「勇者として生きるなら、あらゆる困難が立ちふさがる。
私は、どちらかというと戦う事でしか解決できない。
だから、仲間の助けを借りたりするけど。
越えられない壁っていうのは、やっぱりあるんだよ。
その壁にあたった時にどうするかが、格の、器の違いってやつだと思う。
私はさ。
ブレイブフェニックスを編み出した時に、約束したんだ。友と。」
魔力を、かき集める。
朱の鎧が、再び燃えだす。
「フェニックスは私にとって。
何度まけても挑み続けるっていう、誓いそのものなんだよ。」
炎は、勢いを増し続ける。
背後に流れ、鳥の翼のように広がっていく。
「ブレイズフェニックス。
お前に勝つ為の、新魔法だ。」
ブレイブフェニックスを、その身に纏う。
BBDだから実現可能な、攻防一体の魔法。
これが今の、全力。
最後にして、最大の攻撃手段。
「…友との誓いの言葉を、名前に入れた新魔法。
それが、見掛け倒しな訳がありませんね。」
驚いた。
言葉が返ってきて。
昨日も喋ってたから、洗脳状態でも喋れるのは知っている。
でも、さっきまで、一言も喋ってなかったから。
「全力で、迎え撃ちます。
いつでも、どうぞ。」
剣を鞘に戻し、腰を落とし、構える。
技術発表会でも見た構え。
あの時は、ブレイブフェニックスが真っ二つにされた。
不死鳥の名をつけた魔法を使っているからといって、本物の不死鳥になれた訳ではない。流石に真っ二つにされれば、死ぬ。
しかし、恐れはない。
だって、私が勝つから。
「いくぞ!!」
炎全部を推進力に。
真っすぐに。一直線に。
『だって、迷いなく進んでいる時が。リハネは一番強いんだから。』
あの夜の。
言葉と共に。
…ちょっと、意識が飛んだ気がする。
それで、ガラスの割れる音で、覚醒した。
まだまだ改良の余地がありそうだ。
使う度に気絶していられないから。
でもとりあえず、今回は。
「私の勝ちだな。」
「そうですね、私の、負けです…。」
お互いのMDFは砕けた。
そして私の右拳が、カナミアの腹に、しっかりと入っている。
「でも、次は、勝ちます…。」
言いながら、彼女は倒れる。
「その再戦、喜んで受けるよ。」
それを、受け止めた。
同時に、遠くの方で凄い音がした。
爆発音だ。
そう、私達の戦いが終わろうとも。
ここは戦地で、まだ戦っている者がいる。
「とりあえず、移動する。
まずはクレスタと合流して、後はそれからだな。」
カナミアを抱きかかえて、歩き出す。
「ちょ!?
この体勢はダメです!降ろしてください!」
お姫様抱っこは、不評だった。
「まともに歩けないだろ?
我慢しろ。もたもたしてたらAMDに囲まれる。」
「せ、せめて背負って下さい!
こんなの、誰にも見られる訳にはいきません!」
「ところでさ。」
彼女の要望をガン無視して、疑問の解消にかかる。
「お前、洗脳とけてただろ?
ブレイズフェニックスで、突っ込む前に。」
カナミアは、そっぽを向いた。
まったく、わかりやすい奴め。
お互い、決着はつけたかったもんな。
いや、ひょっとすると、滅茶苦茶やる気になっていた私に付き合ってくれただけかも知れないけど。
まあ、いいさ。
今度は最初から、洗脳とかなしで勝負しよう。
その為にも。
まずは、この戦いを終わらせる。
それぞれの戦いが終わり。
最後の戦いへ。




