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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第四章 理想家オーズンの四人の後継者

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第150話 激突~新生~

~前回までの状況~


ワッポノ、致命傷を受け絶体絶命。

ユンゼス、ロミスオッドに敗北し絶体絶命。


◇登場人物◇ ※●が視点者

__ヨダーシル・北区

●ワッポノ  :マーアの勇者

〇ロミスオッド:北区の区長


□セイ    :色々できる腕輪型のデバイス。人工知能(AI)搭載


__ヨダーシル・南区

●ユンゼス  :南区の区長

〇クレスタ  :ワッポノ捜索隊

〇ツツジ   :ワッポノ捜索隊

*ワッポノ視点*


 驚いた。


 目を覚ましたら、ツツジがいて。

 しかも攻撃されそうだった。


 だから。

 庇わないと、と思って。

 抱きかかえて、飛ぼうとしたんだ。


 でも、身体が思うように動かない。

 寝起きだから仕方ないとはいえ、カッコ悪い事だ。


 抱きかかえられず、突き飛ばしてしまった。

 最悪だ。怪我してないといいけど。


 すぐに駆け寄って、怪我の確認と、謝罪をしたい。


 でも、それは無理で。


 いや、謝りたくないとか、そんなんじゃない。


 身体が動かないんだ。

 血が、いっぱい出てる。


 これは。

 きっと死ぬ。


 (ほんと、ダセェな…。)


 まるで、他人事。


 きっと、認めたくないんだ。


 でも、ある意味。

 お似合いの末路だと思う。


 結局俺は、この程度なんだよ。




『そろそろ、よろしいですか?』


 誰かに呼ばれて、顔を上げる。


「誰だ?あんた。」


 見た事のない、女性だった。


『私は、あなたのセイです。』


 俺の所為?

 いや、セイか。腕輪の。


「え、そんな姿だったの?」


『ええ。特に変更は加えられていないので、デフォルト設定の姿ですね。』


 微妙に会話がズレている気がしないでもないが。

 進める。今は情報がほしい。


「で、そのセイが何の用だ?

 そもそも、ここは何処だ?」


 なんか、白くモヤってて、変な所だ。

 こんな所にきた覚えはない。


 だいたい俺は、ヨダーシルで…。


 (…待て。あの怪我で、なぜまだ生きている?)


 いや、ほんとに生きているのか?


 まさか、ここは。


「死後の世界…?」

『死んでいません。』


 生きているのか。


『でも、間もなく死にます。』

「…。」


 その時。


 何か聞こえた。


 何て言っているかは分からない。

 遠いのと、悲鳴みたいだから。


 でも、声の主は。


「ツツジ?」


 なんとなく、そう思った。


『ええ。

 今、一生懸命あなたに回復魔法を使ってますよ。』


 つまり。


 俺は致命傷を負って。

 ツツジの回復魔法で何とか生きながらえているけど、間もなく死ぬ、と。


「敵は?俺を貫いた奴。」


『クレスタが倒しました。

 その後、彼女は。

 あなたとツツジに敵を寄せ付けないように奮戦中です。』


 クレスタ。

 最近、勇者隊に加わったメンバー。


 そういや、来てるって、あの男が言っていたな。


『あなたには、三つの選択肢があります。』


 三つ?


『その1。

 あなたの脳を。頭を全力で保護します。

 首から下は諦めてもらう感じですね。』


「は?」


『あなたは、手足を動かす事が出来なくなりますが、見たり、聞いたり、話したりが出来ます。

 そして、ツツジがお世話をしてくれるそうです。』


「いや、それは、嫌だ。悪いけど…。」


『その2。

 このまま死ぬ。』


「…。」


『その3。

 あなたを、改造します。

 成功すれば、手足は動きますし、戦闘行動も可能です。』


 なら、迷う事はない。

 その3だ。


 しかし。


「…詳しく頼む。」


 その1や、その2なんていう選択肢が用意されているという事は。

 とんでもないデメリットがあるのだろう。


『身体の壊死した部分、修復困難個所を、別の物に変えます。

 臓器や四肢、身体の一部を機械で補う事はヨダーシルでは珍しくない。

 しかし、あなたの場合は少し違います。

 身体の大半が別の何かに変わるんです。

 専用の機械などないので、魔道具による代用。

 材料は主に、クレスタが持ち込んできたものと、あなたの、ダークネスフレアドラゴンです。』


「待ってくれ、ダークネスフレアドラゴンは、戦う為に必要なんだ。

 取って置いてくれないか?」


『それは無理です。

 この改造は、ダークネスフレアドラゴンのパワーありきですから。

 それに、戦う為、という理由なら問題ありません。

 これは、あなた自身を、ダークネスフレアドラゴンにするようなもの。

 あなたが心配する箇所は、そこではありません。』


「…。」


『何をもって、人というかによりますが。

 私の感覚だと、これは人間を、やめる行為です。

 問題なく動かす為に、あなたの脳もいじります。

 人格にも、影響があるかもしれません。

 あなたが、人間として。

 人生を終えたいなら。

 その1や、その2の選択肢がお勧めです。』


「わかった。その3でお願いする。」


『一応、念を押しますね。

 その3の場合。

 あなたは、マーアの勇者ではありますが、同時にヨダーシルの改造人間です。

 今後、あなたが偉業を成したとしましょう。

 すると、ヨダーシルの技術が賞賛されます。

 常に、ヨダーシルという名前がくっついてきて。

 あなた一人が賞賛されるなんて事には、ならない。

 あなたの努力が、認められる事はない。

 妬みも、あるでしょう。

 そんな中で。

 生涯を、戦闘マシーンとして過ごす可能性もあります。

 それでも。

 あなたは、その3を選びますか?』


「ああ。頼むよ。」


 本来なら。

 問答無用で、その2だったはず。


 なんて恵まれた状況だろうか。


 もう一度。

 チャンスが貰えるなんて。


『ちょっと、安心しました。』


 それは。

 何て言うか、凄く人間ぽい表情。


『実はもう、改造に取り掛かってるんです。

 ツツジの手を借りて。

 だから、こうしてお話が出来ているんですよ。

 その1や、その2が選ばれなくてよかったです。』


「…何で聞いたの?」


 選択の余地なんてないのに。


『後から文句いわれるの、だるいな、と思いまして。』


 …こいつ。


『でも、その3を選ぶって、自信がありましたよ。』


「ほう?何、君が優秀だから?」


 皮肉を込めて。


『違いますよ。』


 そいつは、俺に近づいてきて。


『あなたが、ヨダーシルに来てからの努力を。

 ずっと近くで見てましたから。』


 満面の笑みを見せるのだった。




 改造『手術』という訳だから。

 時間がかかると思っていた。


 でも、まあ。

 手段も手法も、真っ当ではないからか。


 こんなものか、とも思う。


 ゆっくりと立ち上がって。

 ツツジの頭を、ポンポンと叩く。


 (ありがとう。心配かけてすまなかった。)


 後で、ちゃんという。


 でも、今は。

 やらないといけない事がある。


マシンDFドラゴンフォーム、起動。」


 俺の腕には、それがない。


 だから、あの声は聞こえない。

 だから、自分で言う。


 これは、儀式。

 切り替える為の、スイッチ。


 俺は今から。

 戦う為の、兵器となる。


ダークネスフレアドラゴン。」


 纏うというより、なる。


 俺自身が、ダークネスフレアドラゴンに。


 不快感は、ない。


 まさに、今の状態こそが。

 正しい状態なのだと、俺の身体は認識している。


 そのまま駆け出して。

 これも。非常に調子がいい。


 今までで、一番、身体が軽い。


 これは、悲しい事かも知れない。


 今までの、俺の努力を、人間として生きてきた今までを。

 全部、無かった事にしたのかもしれない。


 でも、今まで生きてきたからこそ。

 俺の人生を、歩んできたからこそ。


 この決断をした。

 決断できた。


 後悔は、ない。


「待たせた。」


 彼女の前に立つ。


 かなり善戦していたようで。

 周囲は、機械の残骸の山だ。


「ここからは、勇者に任せてくれ。」


 両手を前に突き出して。

 炎を出す。


 それは、瞬く間に広がり。

 周辺のアーミーマシンドラゴンを一掃した。


「ポノ君?」


 クレスタに呼ばれて、振り返る。

 見た所、大した怪我はなさそうだ。


 折角だし。

 改めて、自己紹介。


「そう、俺はワッポノ。

 マーアの勇者にして、ヨダーシルの改造人間。

 そして、ダークネスフレアドラゴンだ。」




 クレスタと一緒に、ツツジの元へ戻り。


 それはもう、凄く怒られた。


 曰く、勝手に国を出るな。

 曰く、襲撃に加担するな。

 曰く、悪い事をしているという自覚を持て。反省しろ。

 曰く、心配させるな。


 曰く。

「無事で、本当に、よかったぁ…。」


 ツツジは、その場にへたり込んだ。


「申し訳ありませんでした。」


 直角に。

 頭を下げる。


 すまないと思っているのは、嘘じゃないから。


「さて、ポノ君。」


 クレスタが、ちょっと言いにくそうに、切りだす。


「改めて、ありがとう。

 お陰で私達は助かったわ。

 そして、無事、と言っていいかは分からないけど、元気そうで良かった。

 …それで、この後なんだけど?」


「ロミスオッドに会ってくる。」


 それは、決めていた事。


「ポノ…。」


「俺は、もう東区と戦うつもりはない。

 そして、北区の皆が、大事なのも変わらない。」


 二人は、黙って俺の話を聞いてくれる。


「昨日、あの、戦闘の後。

 魔力がなくて、動けなかったから。

 ちょっと、調べてみたんだ。セイを使って。」


 今までは。

 時間があれば、訓練なり調整なりをしていて。


 だから、そういう事は、していなかった。


「東区の区長の言っている事は、俺も、そうだと思える事もあった。

 あいつが新都市長になったら、ヨダーシルは、熱い町になると思う。

 西区の区長も、ヨダーシルの事が好きだというのが伝わった。

 きっと、優しい町になる。」


 対して、ロミスオッドが都市長になったら。

 力を入れるのは、軍備。


 不要だとは言わないけど、一番は、あいつ自身の目的の為だから。


 たぶん。ヨダーシルの事を考えるなら、東か、西の区長が都市長になった方がいい。


 その方が。

 結果的に、北区の皆の為になる。


「俺は、ロミスオッドに感謝している。

 だから、言いたい事がある。」


「…わかったわ。

 気を付けてね。ユンゼスさんをお願い。」


 クレスタが、右手を差し出してきたから。

 その手を、握り返す。


「ポノ。」


 ツツジだ。

 目に見えて、心配そうな顔。


「無事に、帰ってきて。」


「ああ。行ってくる。」


 心配させないように。

 精一杯の、笑顔をつくって。


 そして。


 俺は再び、黒になる。

 拡張した探知機能は、奴の魔力を捕えている。


 そこを目指して、俺は、駆けた。




 拡張したのは、魔力探知だけじゃない。

 熱とか、音なんかも探知できる。


 だから。

 途中から、二人の会話は聞いていた。


 中々複雑な事情があるみたいで。

 正直、わからない所もあったけど。


 まあ、それでも。


 俺のやる事は変わらない。


「復讐は、やめません。」


 どうやら、二人の戦いは決着したようだ。


 (少し、急がないとか?)


 まだ距離がある。


 このままだと、ロミスオッドがユンゼスを殺す。


 ユンゼスも、俺にチケットをくれたりしてくれた。

 頼まれた手前もある。


 殺らせるわけにはいかない。


 脚に、魔力を。

 リハネの、噴出炎ジェットファイアーを模倣する。


 今の俺なら、きっと出来る。




*ユンゼス視点*


 仰向けになった俺の視線の先。


 黒い鎧が、ロミスオッドの石剣ストーンソード掴み、止めている。


 (いつの間に?いや、それより、誰だ?)


 ぱっと見、それはダークネスフレアドラゴンだ。

 黒色だし、トゲトゲしてるし。


 しかし。

 昨日戦ったものとは、明らかに違う。


 全体的に棘の数が増えていたり。

 真っすぐ突き出していた棘が、曲線となってたり。


 何より、全身に金色の差し色が入っている。


 (パワーアップした、ダークネスフレアドラゴン?)


 原因は不明だが。

 外見だけで判断すると、そうなる。


「ワッポノ君か!?」

「何をしているのですか?ワッポノさん。」


 俺とロミスオッドが、同時に問う。


「お前と、話がしたいんだ。ロミスオッド。」


 落ち着いた、というより、余裕のある声だ。

 え?本当にワッポノ君?


「聞きましょう。」

「ヨダーシルから、手を引こう。」


「…なるほど。裏切り、いえ。

 協力体制解消といった所でしょうか。」


 凄い。

 ツツジさん達は、説得に成功したんだ。


「残念です。

 私達は、いいパートナーになれると思ったのに。」


「…あんたには世話になったし、感謝もしてる。

 だから。

 あんたがまだ、そう思ってくれているなら。

 協力体制は続けたい。」


 …雲行きが、怪しいか?


「意味が分かりませんね。

 私はヨダーシルがほしいんですよ?

 手を引いてほしいなら、私と対立する事になります。

 協力体制は、終わりです。」


「あんたが欲しいのは、ヨダーシルの力だ。

 復讐が遂げられるほどの、強い力。

 俺が、それになる。」


「!?

 ワッポノ君、それは!…ぐほっ!」


 お腹を蹴られた。


 ワッポノ君は、軽く蹴ったつもりかもしれないけど。

 ダークネスフレアドラゴン状態なんだ。


 その威力は凄まじい。


 そして、彼は知らないかもしれないが、俺は重症だ。


 右肩の傷は塞がっているけど、血を沢山流したし。

 魔力もすっからかん。


 し、死ぬ…。


「いりませんね。

 あなた一人、いた所でどうにもならない。

 薄々気づいていたでしょう?

 あなたは、カナミアさんを仲間にする為の道具。

 カナミアさんはヨダーシルを取る為の道具。

 あなたに贈った言葉のほとんどは、あなたを仲間にする為の虚言です。」


「気づいていたさ。

 それでも、あんたは俺に、色々くれたんだよ。

 DFDこいつがあったから、俺は強くなれたんだ。」


 ワッポノ君が、掴んでいた石剣ストーンソードを灰にした。


「まだ、力不足かどうか。

 ちょっと試してみてくれよ。」


「面白い。」


 ロミスオッドが、距離をとる。


 そして、その周囲に。

 黒く濁った泥が現れ始めた。


「に、逃げるんだ…ワッポノ君…。」


 インディビジュアルクリアドラゴンを起動できる魔力が残っていなくて。

 ニューマジックモードが使えない。

 奴の、魔力変質能力への対抗手段がない。


 あの、濃い魔力の中で。

 動けるのは、奴だけだ。


「あんたの作るパンさ。

 食ってみてえって、思ったよ。」


 ワッポノ君が、そんな事を言う。


「ごめん。例えであって、実際にパンを作っているわけじゃあ…。」


「わかってるよ!

 乗っかったのに、梯子を外すな!」


 そう言って、ワッポノ君は駆け出した。ロミスオッドに向かって。


 静止の声を出そうとしたけど、出せない。

 魔力の影響だ。


 身体を動かそうとすると、全身が悲鳴を上げる。


 すぐに死んだりはしないかもだけど、これじゃあ何も出来ない。

 見守るしか、ない。


 ワッポノ君が、鋭いパンチを繰り出して。

 ロミスオッドが、それを避ける。


 ロミスオッドは。

 すくなくとも、俺の友達の方のロミスオッドは、そこまで運動能力が高くない。

 俺よりは上で、ラデュームより下くらい。


 だからまず、相手を弱体化させて。

 その後、マシンDFドラゴンフォームの性能で押し切る。

 そういう戦法なのだと思っていた。


 だけど、今。

 奴は、ワッポノ君の攻撃を捌ききっている。


 俺との戦闘のダメージは無いかのような、軽快な動きだ。


 ワッポノ君は、強くない。


 そんな評価な訳だけど、それは、周りが凄すぎるから。

 魔王を打倒したメンバーや、魔王軍の幹部とかと比べられているからだ。


 勇者なんて肩書があるから仕方のない事ではある。


 けれど例えば、ある国で、武術大会が開催されたとして。

 そこに彼が参加したとする。

 そこで優勝するくらい、彼は強い。


 その彼が、相性抜群のダークネスフレアDドラゴンを使っている。


 昨日、俺が彼を圧倒できたのは、彼がヘロヘロだったから。

 反応できずとも、インディビジュアルクリアドラゴンの装甲が攻撃を通さなかったから。


 そう。俺の予測よりも彼の実力は、かなり上だったのだ。


 軽く喋った感じ、今のワッポノ君は絶好調。

 魔力は、ほぼ満タン。謎のパワーアップもしている。


 そしてマシンDFドラゴンフォームのお陰で、魔力変質の効果が現れるまで数分の猶予がある。


 なのに。

 ロミスオッドに、その攻撃が当たらない。


 そう。

 ロミスオッドは、強い。


 (俺が一発入れられたのは、動揺の隙をつけたからで。

 俺との戦いは、全然本気じゃなかったって事か。)


 まあ、確かに。

 戦いというよりは、主張のぶつけあいみたいだったし。


 (まずいぞ、ワッポノ君…!あと少しで、君は自由に動けなくなる。

 頼む!そうなる前に、逃げてくれ!)


 そんな、俺の願いも空しく。

 その時が訪れる。


 ガクンと、ワッポノ君が膝をついた。


「どうしました?ワッポノさん。」


 ロミスオッドの、勝ちを確信したような声。


「ん?ああ、すまない。

 ちょっと考え事をしていて、注意力が散漫になってた。」


 何事もないように立ち上がるワッポノ君。


 しかし、俺もロミスオッドも。

 それが、やせ我慢のハッタリだと知っている。


「いやさ。

 ほら俺、見た目が変わったじゃないか。

 実際、パワーアップもしたんだ。

 だから、名前もさ。

 パワーアップさせたいなと。」


「…。」

 (…。)


「2、Mk-II、改、カスタム、新、真、シン?スーパー、ハイパー…。

 色々考えたんだけどさ。

 ようやく決まったよ。」


「…聞きましょう。」


「リベリオン。」


 確か、反逆とか、反抗とかの意味だったはず。


「確かに。

 拒絶して、家出して、暴れて。

 反抗期のあなたにピッタリな言葉ですね。」


「…それらを経て。決めたんだよ。」


「そうですか。」


 ロミスオッドが動く。


 さっきの会話は時間稼ぎだ。

 効果が出始めているから。時間が経てば経つほど有利だから。


 それで。

 もう十分だと思ったから。


 石剣ストーンソードを発動、真っすぐ突きを放つ。


 インベージョンクリアドラゴンの性能もあるとはいえ、恐るべきスピード。


 その一撃を、ポノ君は躱す。


 更に、カウンターで拳を構える。

 完璧なタイミングだ。


 しかし。

 これはロミスオッドの罠。


 拳が当たる瞬間、ロミスオッドの姿が消える。


 (幻惑魔法!?)


 奴は、ポノ君の背後に。


「さようなら、リベリオン。」


 更に速度を上げた突きが、ポノ君の頭を貫く為に迫る。


 死角からの、必殺の一撃。


 それを。


 ワッポノ君は裏拳で弾き飛ばした。


「!?」


 俺も。

 そしてロミスオッドも、驚愕する。


 凄い体制で裏拳を繰り出したバランス感覚とか。

 とんでもない反応速度とか。


 何より。


 (どうしてこの状況で、こんなに動ける?)


 魔力は、明らかに濃くなっている。

 だって、こんなにも目が霞むし、呼吸するのだって苦しいから。


 ダークネスフレアドラゴンだって、影響を受けないはずがない。


 しかしワッポノ君は、続くロミスオッドの攻撃の全てに対応していく。


 (!…影響を受けた上で、あの動きなのだとしたら?)


 魔力の質が悪いと、濃度が薄すぎると魔法が使えない。

 魔力の質が良すぎると、濃度が濃すぎると、やはり魔法は使えない。

 どころか、俺のように苦しむ事になる。


 でも。

 この、濃い薄いというのは。


 はたして、誰にとってなのか。


 もちろん、一般的な基準はある。

 ただ、例外というのはどこにでもいて。


 例えば。

 質の悪い反魔力で魔法が使える人がいたり、質が高すぎる断海の魔力で魔法が使える人がいる。


 (ワッポノ君は、そのレベルになったって事か!?)


 一体、どんな魔法を使ったのか。


 ただ、その証拠と言わんばかりに、ワッポノ君はスピードを上げていく。


 まるで、水を得た魚のように。


 そして遂に。

 ワッポノ君が、ロミスオッドを捕えた。


 その両腕を、ガッチリと。


「少し、違うな。」


 ロミスオッドが何とか振りほどこうとするが、ビクともしない。


「俺は、ただのリベリオンじゃない。

 正式名称は、ダークネスフレアドラゴンリベリオン。」


 ロミスオッドが、ワッポノ君の腹を蹴る。

 が、それでもやはりビクともしない。


「無知だった、あの頃も。守れなかった悲しみも。

 辿り着けない絶望も。悪行に加担した愚かさも。

 そういうの全部、燃料にして、燃え上がらせるんだ。

 その炎で、鍛えるんだよ。

 何者にも屈しない、揺るがない魂を。」


 辛いとか、苦しいとか、言っていられない。

 俺は、這って。少しでも彼らから遠のく。


「それで、今度こそ守るんだ。守りたい人達を。」


 巻き添えを喰らわない為に。

 その、濃すぎる魔力に殺されない為に。


「ダークネス、ペインフレア。」


 俺の背後で。

 蒼い炎が、爆発した。

ワッポノ、パワーアップイベントでした。


人として死ぬか、生きる為に人間やめるか問題。

ワッポノ的には、メリットしかなかったので悩みませんでした。

浅慮だったのか、覚悟が決まっていたのか。

分かるのは、もっと後になるでしょう。

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