第150話 激突~新生~
~前回までの状況~
ワッポノ、致命傷を受け絶体絶命。
ユンゼス、ロミスオッドに敗北し絶体絶命。
◇登場人物◇ ※●が視点者
__ヨダーシル・北区
●ワッポノ :マーアの勇者
〇ロミスオッド:北区の区長
□セイ :色々できる腕輪型のデバイス。人工知能(AI)搭載
__ヨダーシル・南区
●ユンゼス :南区の区長
〇クレスタ :ワッポノ捜索隊
〇ツツジ :ワッポノ捜索隊
*ワッポノ視点*
驚いた。
目を覚ましたら、ツツジがいて。
しかも攻撃されそうだった。
だから。
庇わないと、と思って。
抱きかかえて、飛ぼうとしたんだ。
でも、身体が思うように動かない。
寝起きだから仕方ないとはいえ、カッコ悪い事だ。
抱きかかえられず、突き飛ばしてしまった。
最悪だ。怪我してないといいけど。
すぐに駆け寄って、怪我の確認と、謝罪をしたい。
でも、それは無理で。
いや、謝りたくないとか、そんなんじゃない。
身体が動かないんだ。
血が、いっぱい出てる。
これは。
きっと死ぬ。
(ほんと、ダセェな…。)
まるで、他人事。
きっと、認めたくないんだ。
でも、ある意味。
お似合いの末路だと思う。
結局俺は、この程度なんだよ。
『そろそろ、よろしいですか?』
誰かに呼ばれて、顔を上げる。
「誰だ?あんた。」
見た事のない、女性だった。
『私は、あなたのセイです。』
俺の所為?
いや、セイか。腕輪の。
「え、そんな姿だったの?」
『ええ。特に変更は加えられていないので、デフォルト設定の姿ですね。』
微妙に会話がズレている気がしないでもないが。
進める。今は情報がほしい。
「で、そのセイが何の用だ?
そもそも、ここは何処だ?」
なんか、白くモヤってて、変な所だ。
こんな所にきた覚えはない。
だいたい俺は、ヨダーシルで…。
(…待て。あの怪我で、なぜまだ生きている?)
いや、ほんとに生きているのか?
まさか、ここは。
「死後の世界…?」
『死んでいません。』
生きているのか。
『でも、間もなく死にます。』
「…。」
その時。
何か聞こえた。
何て言っているかは分からない。
遠いのと、悲鳴みたいだから。
でも、声の主は。
「ツツジ?」
なんとなく、そう思った。
『ええ。
今、一生懸命あなたに回復魔法を使ってますよ。』
つまり。
俺は致命傷を負って。
ツツジの回復魔法で何とか生きながらえているけど、間もなく死ぬ、と。
「敵は?俺を貫いた奴。」
『クレスタが倒しました。
その後、彼女は。
あなたとツツジに敵を寄せ付けないように奮戦中です。』
クレスタ。
最近、勇者隊に加わったメンバー。
そういや、来てるって、あの男が言っていたな。
『あなたには、三つの選択肢があります。』
三つ?
『その1。
あなたの脳を。頭を全力で保護します。
首から下は諦めてもらう感じですね。』
「は?」
『あなたは、手足を動かす事が出来なくなりますが、見たり、聞いたり、話したりが出来ます。
そして、ツツジがお世話をしてくれるそうです。』
「いや、それは、嫌だ。悪いけど…。」
『その2。
このまま死ぬ。』
「…。」
『その3。
あなたを、改造します。
成功すれば、手足は動きますし、戦闘行動も可能です。』
なら、迷う事はない。
その3だ。
しかし。
「…詳しく頼む。」
その1や、その2なんていう選択肢が用意されているという事は。
とんでもないデメリットがあるのだろう。
『身体の壊死した部分、修復困難個所を、別の物に変えます。
臓器や四肢、身体の一部を機械で補う事はヨダーシルでは珍しくない。
しかし、あなたの場合は少し違います。
身体の大半が別の何かに変わるんです。
専用の機械などないので、魔道具による代用。
材料は主に、クレスタが持ち込んできたものと、あなたの、DFDです。』
「待ってくれ、DFDは、戦う為に必要なんだ。
取って置いてくれないか?」
『それは無理です。
この改造は、DFDのパワーありきですから。
それに、戦う為、という理由なら問題ありません。
これは、あなた自身を、DFDにするようなもの。
あなたが心配する箇所は、そこではありません。』
「…。」
『何をもって、人というかによりますが。
私の感覚だと、これは人間を、やめる行為です。
問題なく動かす為に、あなたの脳もいじります。
人格にも、影響があるかもしれません。
あなたが、人間として。
人生を終えたいなら。
その1や、その2の選択肢がお勧めです。』
「わかった。その3でお願いする。」
『一応、念を押しますね。
その3の場合。
あなたは、マーアの勇者ではありますが、同時にヨダーシルの改造人間です。
今後、あなたが偉業を成したとしましょう。
すると、ヨダーシルの技術が賞賛されます。
常に、ヨダーシルという名前がくっついてきて。
あなた一人が賞賛されるなんて事には、ならない。
あなたの努力が、認められる事はない。
妬みも、あるでしょう。
そんな中で。
生涯を、戦闘マシーンとして過ごす可能性もあります。
それでも。
あなたは、その3を選びますか?』
「ああ。頼むよ。」
本来なら。
問答無用で、その2だったはず。
なんて恵まれた状況だろうか。
もう一度。
チャンスが貰えるなんて。
『ちょっと、安心しました。』
それは。
何て言うか、凄く人間ぽい表情。
『実はもう、改造に取り掛かってるんです。
ツツジの手を借りて。
だから、こうしてお話が出来ているんですよ。
その1や、その2が選ばれなくてよかったです。』
「…何で聞いたの?」
選択の余地なんてないのに。
『後から文句いわれるの、だるいな、と思いまして。』
…こいつ。
『でも、その3を選ぶって、自信がありましたよ。』
「ほう?何、君が優秀だから?」
皮肉を込めて。
『違いますよ。』
そいつは、俺に近づいてきて。
『あなたが、ヨダーシルに来てからの努力を。
ずっと近くで見てましたから。』
満面の笑みを見せるのだった。
改造『手術』という訳だから。
時間がかかると思っていた。
でも、まあ。
手段も手法も、真っ当ではないからか。
こんなものか、とも思う。
ゆっくりと立ち上がって。
ツツジの頭を、ポンポンと叩く。
(ありがとう。心配かけてすまなかった。)
後で、ちゃんという。
でも、今は。
やらないといけない事がある。
「MDF、起動。」
俺の腕には、それがない。
だから、あの声は聞こえない。
だから、自分で言う。
これは、儀式。
切り替える為の、スイッチ。
俺は今から。
戦う為の、兵器となる。
「DFD。」
纏うというより、なる。
俺自身が、DFDに。
不快感は、ない。
まさに、今の状態こそが。
正しい状態なのだと、俺の身体は認識している。
そのまま駆け出して。
これも。非常に調子がいい。
今までで、一番、身体が軽い。
これは、悲しい事かも知れない。
今までの、俺の努力を、人間として生きてきた今までを。
全部、無かった事にしたのかもしれない。
でも、今まで生きてきたからこそ。
俺の人生を、歩んできたからこそ。
この決断をした。
決断できた。
後悔は、ない。
「待たせた。」
彼女の前に立つ。
かなり善戦していたようで。
周囲は、機械の残骸の山だ。
「ここからは、勇者に任せてくれ。」
両手を前に突き出して。
炎を出す。
それは、瞬く間に広がり。
周辺のAMDを一掃した。
「ポノ君?」
クレスタに呼ばれて、振り返る。
見た所、大した怪我はなさそうだ。
折角だし。
改めて、自己紹介。
「そう、俺はワッポノ。
マーアの勇者にして、ヨダーシルの改造人間。
そして、DFDだ。」
クレスタと一緒に、ツツジの元へ戻り。
それはもう、凄く怒られた。
曰く、勝手に国を出るな。
曰く、襲撃に加担するな。
曰く、悪い事をしているという自覚を持て。反省しろ。
曰く、心配させるな。
曰く。
「無事で、本当に、よかったぁ…。」
ツツジは、その場にへたり込んだ。
「申し訳ありませんでした。」
直角に。
頭を下げる。
すまないと思っているのは、嘘じゃないから。
「さて、ポノ君。」
クレスタが、ちょっと言いにくそうに、切りだす。
「改めて、ありがとう。
お陰で私達は助かったわ。
そして、無事、と言っていいかは分からないけど、元気そうで良かった。
…それで、この後なんだけど?」
「ロミスオッドに会ってくる。」
それは、決めていた事。
「ポノ…。」
「俺は、もう東区と戦うつもりはない。
そして、北区の皆が、大事なのも変わらない。」
二人は、黙って俺の話を聞いてくれる。
「昨日、あの、戦闘の後。
魔力がなくて、動けなかったから。
ちょっと、調べてみたんだ。セイを使って。」
今までは。
時間があれば、訓練なり調整なりをしていて。
だから、そういう事は、していなかった。
「東区の区長の言っている事は、俺も、そうだと思える事もあった。
あいつが新都市長になったら、ヨダーシルは、熱い町になると思う。
西区の区長も、ヨダーシルの事が好きだというのが伝わった。
きっと、優しい町になる。」
対して、ロミスオッドが都市長になったら。
力を入れるのは、軍備。
不要だとは言わないけど、一番は、あいつ自身の目的の為だから。
たぶん。ヨダーシルの事を考えるなら、東か、西の区長が都市長になった方がいい。
その方が。
結果的に、北区の皆の為になる。
「俺は、ロミスオッドに感謝している。
だから、言いたい事がある。」
「…わかったわ。
気を付けてね。ユンゼスさんをお願い。」
クレスタが、右手を差し出してきたから。
その手を、握り返す。
「ポノ。」
ツツジだ。
目に見えて、心配そうな顔。
「無事に、帰ってきて。」
「ああ。行ってくる。」
心配させないように。
精一杯の、笑顔をつくって。
そして。
俺は再び、黒になる。
拡張した探知機能は、奴の魔力を捕えている。
そこを目指して、俺は、駆けた。
拡張したのは、魔力探知だけじゃない。
熱とか、音なんかも探知できる。
だから。
途中から、二人の会話は聞いていた。
中々複雑な事情があるみたいで。
正直、わからない所もあったけど。
まあ、それでも。
俺のやる事は変わらない。
「復讐は、やめません。」
どうやら、二人の戦いは決着したようだ。
(少し、急がないとか?)
まだ距離がある。
このままだと、ロミスオッドがユンゼスを殺す。
ユンゼスも、俺にチケットをくれたりしてくれた。
頼まれた手前もある。
殺らせるわけにはいかない。
脚に、魔力を。
リハネの、噴出炎を模倣する。
今の俺なら、きっと出来る。
*ユンゼス視点*
仰向けになった俺の視線の先。
黒い鎧が、ロミスオッドの石剣掴み、止めている。
(いつの間に?いや、それより、誰だ?)
ぱっと見、それはDFDだ。
黒色だし、トゲトゲしてるし。
しかし。
昨日戦ったものとは、明らかに違う。
全体的に棘の数が増えていたり。
真っすぐ突き出していた棘が、曲線となってたり。
何より、全身に金色の差し色が入っている。
(パワーアップした、DFD?)
原因は不明だが。
外見だけで判断すると、そうなる。
「ワッポノ君か!?」
「何をしているのですか?ワッポノさん。」
俺とロミスオッドが、同時に問う。
「お前と、話がしたいんだ。ロミスオッド。」
落ち着いた、というより、余裕のある声だ。
え?本当にワッポノ君?
「聞きましょう。」
「ヨダーシルから、手を引こう。」
「…なるほど。裏切り、いえ。
協力体制解消といった所でしょうか。」
凄い。
ツツジさん達は、説得に成功したんだ。
「残念です。
私達は、いいパートナーになれると思ったのに。」
「…あんたには世話になったし、感謝もしてる。
だから。
あんたがまだ、そう思ってくれているなら。
協力体制は続けたい。」
…雲行きが、怪しいか?
「意味が分かりませんね。
私はヨダーシルがほしいんですよ?
手を引いてほしいなら、私と対立する事になります。
協力体制は、終わりです。」
「あんたが欲しいのは、ヨダーシルの力だ。
復讐が遂げられるほどの、強い力。
俺が、それになる。」
「!?
ワッポノ君、それは!…ぐほっ!」
お腹を蹴られた。
ワッポノ君は、軽く蹴ったつもりかもしれないけど。
DFD状態なんだ。
その威力は凄まじい。
そして、彼は知らないかもしれないが、俺は重症だ。
右肩の傷は塞がっているけど、血を沢山流したし。
魔力もすっからかん。
し、死ぬ…。
「いりませんね。
あなた一人、いた所でどうにもならない。
薄々気づいていたでしょう?
あなたは、カナミアさんを仲間にする為の道具。
カナミアさんはヨダーシルを取る為の道具。
あなたに贈った言葉のほとんどは、あなたを仲間にする為の虚言です。」
「気づいていたさ。
それでも、あんたは俺に、色々くれたんだよ。
DFDがあったから、俺は強くなれたんだ。」
ワッポノ君が、掴んでいた石剣を灰にした。
「まだ、力不足かどうか。
ちょっと試してみてくれよ。」
「面白い。」
ロミスオッドが、距離をとる。
そして、その周囲に。
黒く濁った泥が現れ始めた。
「に、逃げるんだ…ワッポノ君…。」
ICDを起動できる魔力が残っていなくて。
NMMが使えない。
奴の、魔力変質能力への対抗手段がない。
あの、濃い魔力の中で。
動けるのは、奴だけだ。
「あんたの作るパンさ。
食ってみてえって、思ったよ。」
ワッポノ君が、そんな事を言う。
「ごめん。例えであって、実際にパンを作っているわけじゃあ…。」
「わかってるよ!
乗っかったのに、梯子を外すな!」
そう言って、ワッポノ君は駆け出した。ロミスオッドに向かって。
静止の声を出そうとしたけど、出せない。
魔力の影響だ。
身体を動かそうとすると、全身が悲鳴を上げる。
すぐに死んだりはしないかもだけど、これじゃあ何も出来ない。
見守るしか、ない。
ワッポノ君が、鋭いパンチを繰り出して。
ロミスオッドが、それを避ける。
ロミスオッドは。
すくなくとも、俺の友達の方のロミスオッドは、そこまで運動能力が高くない。
俺よりは上で、ラデュームより下くらい。
だからまず、相手を弱体化させて。
その後、MDFの性能で押し切る。
そういう戦法なのだと思っていた。
だけど、今。
奴は、ワッポノ君の攻撃を捌ききっている。
俺との戦闘のダメージは無いかのような、軽快な動きだ。
ワッポノ君は、強くない。
そんな評価な訳だけど、それは、周りが凄すぎるから。
魔王を打倒したメンバーや、魔王軍の幹部とかと比べられているからだ。
勇者なんて肩書があるから仕方のない事ではある。
けれど例えば、ある国で、武術大会が開催されたとして。
そこに彼が参加したとする。
そこで優勝するくらい、彼は強い。
その彼が、相性抜群のDFDを使っている。
昨日、俺が彼を圧倒できたのは、彼がヘロヘロだったから。
反応できずとも、ICDの装甲が攻撃を通さなかったから。
そう。俺の予測よりも彼の実力は、かなり上だったのだ。
軽く喋った感じ、今のワッポノ君は絶好調。
魔力は、ほぼ満タン。謎のパワーアップもしている。
そしてMDFのお陰で、魔力変質の効果が現れるまで数分の猶予がある。
なのに。
ロミスオッドに、その攻撃が当たらない。
そう。
ロミスオッドは、強い。
(俺が一発入れられたのは、動揺の隙をつけたからで。
俺との戦いは、全然本気じゃなかったって事か。)
まあ、確かに。
戦いというよりは、主張のぶつけあいみたいだったし。
(まずいぞ、ワッポノ君…!あと少しで、君は自由に動けなくなる。
頼む!そうなる前に、逃げてくれ!)
そんな、俺の願いも空しく。
その時が訪れる。
ガクンと、ワッポノ君が膝をついた。
「どうしました?ワッポノさん。」
ロミスオッドの、勝ちを確信したような声。
「ん?ああ、すまない。
ちょっと考え事をしていて、注意力が散漫になってた。」
何事もないように立ち上がるワッポノ君。
しかし、俺もロミスオッドも。
それが、やせ我慢のハッタリだと知っている。
「いやさ。
ほら俺、見た目が変わったじゃないか。
実際、パワーアップもしたんだ。
だから、名前もさ。
パワーアップさせたいなと。」
「…。」
(…。)
「2、Mk-II、改、カスタム、新、真、シン?スーパー、ハイパー…。
色々考えたんだけどさ。
ようやく決まったよ。」
「…聞きましょう。」
「リベリオン。」
確か、反逆とか、反抗とかの意味だったはず。
「確かに。
拒絶して、家出して、暴れて。
反抗期のあなたにピッタリな言葉ですね。」
「…それらを経て。決めたんだよ。」
「そうですか。」
ロミスオッドが動く。
さっきの会話は時間稼ぎだ。
効果が出始めているから。時間が経てば経つほど有利だから。
それで。
もう十分だと思ったから。
石剣を発動、真っすぐ突きを放つ。
ICDの性能もあるとはいえ、恐るべきスピード。
その一撃を、ポノ君は躱す。
更に、カウンターで拳を構える。
完璧なタイミングだ。
しかし。
これはロミスオッドの罠。
拳が当たる瞬間、ロミスオッドの姿が消える。
(幻惑魔法!?)
奴は、ポノ君の背後に。
「さようなら、リベリオン。」
更に速度を上げた突きが、ポノ君の頭を貫く為に迫る。
死角からの、必殺の一撃。
それを。
ワッポノ君は裏拳で弾き飛ばした。
「!?」
俺も。
そしてロミスオッドも、驚愕する。
凄い体制で裏拳を繰り出したバランス感覚とか。
とんでもない反応速度とか。
何より。
(どうしてこの状況で、こんなに動ける?)
魔力は、明らかに濃くなっている。
だって、こんなにも目が霞むし、呼吸するのだって苦しいから。
DFDだって、影響を受けないはずがない。
しかしワッポノ君は、続くロミスオッドの攻撃の全てに対応していく。
(!…影響を受けた上で、あの動きなのだとしたら?)
魔力の質が悪いと、濃度が薄すぎると魔法が使えない。
魔力の質が良すぎると、濃度が濃すぎると、やはり魔法は使えない。
どころか、俺のように苦しむ事になる。
でも。
この、濃い薄いというのは。
はたして、誰にとってなのか。
もちろん、一般的な基準はある。
ただ、例外というのはどこにでもいて。
例えば。
質の悪い反魔力で魔法が使える人がいたり、質が高すぎる断海の魔力で魔法が使える人がいる。
(ワッポノ君は、そのレベルになったって事か!?)
一体、どんな魔法を使ったのか。
ただ、その証拠と言わんばかりに、ワッポノ君はスピードを上げていく。
まるで、水を得た魚のように。
そして遂に。
ワッポノ君が、ロミスオッドを捕えた。
その両腕を、ガッチリと。
「少し、違うな。」
ロミスオッドが何とか振りほどこうとするが、ビクともしない。
「俺は、ただのリベリオンじゃない。
正式名称は、DFDR。」
ロミスオッドが、ワッポノ君の腹を蹴る。
が、それでもやはりビクともしない。
「無知だった、あの頃も。守れなかった悲しみも。
辿り着けない絶望も。悪行に加担した愚かさも。
そういうの全部、燃料にして、燃え上がらせるんだ。
その炎で、鍛えるんだよ。
何者にも屈しない、揺るがない魂を。」
辛いとか、苦しいとか、言っていられない。
俺は、這って。少しでも彼らから遠のく。
「それで、今度こそ守るんだ。守りたい人達を。」
巻き添えを喰らわない為に。
その、濃すぎる魔力に殺されない為に。
「ダークネス、ペインフレア。」
俺の背後で。
蒼い炎が、爆発した。
ワッポノ、パワーアップイベントでした。
人として死ぬか、生きる為に人間やめるか問題。
ワッポノ的には、メリットしかなかったので悩みませんでした。
浅慮だったのか、覚悟が決まっていたのか。
分かるのは、もっと後になるでしょう。




