第148話 激突~業~
~前回までのクレスタ~
決戦の舞台は、北門の大要塞。
そこにリハネが突っ込んで行って…。
私達は、要塞に忍び込んだ。
◇登場人物◇ ※●が視点者
__ヨダーシル・南区
●クレスタ :ワッポノ捜索隊
〇ツツジ :ワッポノ捜索隊
〇ユンゼス :南区の区長
□セイ :色々できる腕輪型のデバイス。人工知能(AI)搭載
□アニサ :クレスタがカスタマイズしたセイ
__ヨダーシル・東区
〇リハネ :ゾトの勇者
〇ラデューム :東区の区長
__ヨダーシル・北区
〇ワッポノ :マーアの勇者
*クレスタ視点*
ヨダーシル北門周辺の大要塞。
通称、魔王城。
その、前に。
東区本隊。
ラデュームさんやミーサ達、そして22機の竜機兵が陣取る。
本当は包囲したかったはずだけど、さすがに大きすぎて無理だから。
内部への突入はしない。
この場から、遠距離魔法で魔王城の破壊を試みる。
最初にその旨を伝え、降伏勧告を行った後。
攻撃が開始された。
ここはヨダーシルの防衛施設。
本気で破壊するつもりなんてないのでは?
そんなふうに高を括っていると、本当に崩れる。
その覚悟で。
ラデュームさんは、ここにいる。
そして、魔王城の魔防壁に亀裂が入った頃。
相手も、本格的な防衛を開始。
竜機兵や、AMDが、ワラワラ出てくる。
でも、これこそが。
敵の防衛戦力を、ここに集結させる事が本来の作戦。
真っ先に内部へ突っ込んだリハネと。
後を追うように突入したユンゼスさん。
二人が。
余計な邪魔をされずに、それぞれの相手と出会えるように。
「…ここまでは、順調っと。」
私とツツジちゃんは、ユンゼスさんと同じタイミングで侵入に成功。
リハネが大暴れしてくれたお陰で、いい感じに隙をつけた。
今は、要塞内を徘徊しているAMDから身を隠している状態。
二人共、レインコートみたいのを着ている。
うちの自慢の新商品、対熱、対魔力探知機能のある優れモノ。
…難点は、動きにくく走りにくい所。戦闘には不向きなのだ。
私達は強くない。
万全の状態で戦っても、勝てないだろう。
だから、発見されない事を重視しての装備。
アニサちゃんの情報によると。
AMDは、熱、魔力、音、動きに関しての探知機能があるみたいで。
本当に、着て来てよかった。
(クレスタ。)
(ええ、分かってる。)
ツツジちゃんにバレないように、アニサちゃんと状況確認。
少し前。
リハネから、ポノ君がいる座標を教えてもらった。状況も軽く。
彼と戦闘になり、撃破。今は、気を失っていると。
(流石に、ポノ君は狙われないはず。
AMDに、人を運ぶなんて機能はない。
流れ弾が怖いけど、一応リハネは離れてくれてるみたいだし…。)
もちろん、長時間の放置なんて出来ないけど。
第一優先は、見つからない事。
見つかって、仲間を呼ばれたら。
ポノくんの元へ辿りつけても説得どころではない。
正直、こんなにうろつかれているとは思わなかった。
リハネがそれなりの量を壊して、本隊の方へ大半が向かったはずなのに。
(予定変更。
気を失っているポノ君を回収、その後、要塞を脱出して、説得は、その後…。)
ツツジちゃんの様子を確認。
大人しくしてくれている。
その横顔を見ながら。
昨日の出来事を思い出した。
『ポノは、私が連れ戻します。』
ユンゼスさんを休ませて。
新たにテントを立てている時、ツツジちゃんはやってきた。
開口一番に、それ。
『リハネさんも、ユンゼスさんも。
「いい顔してる」とか、「強くなった」とか、「約束を果たさせてくれないか」とか!
そんな事より、真っ先に言う事があります!』
リハネとユンゼスさんの、セイが記録した映像を見ての感想だろう。
怒っている、と。
全面に出しながらツツジちゃんが続ける。
私は、口を挟まず、作業の手を止めて向き直り、彼女をちゃんと見る。
しっかり、聞いているし、そのアピールの為に。
『何でそんな所にいるんだ!?
北区は悪い事をしたんだぞ!?
それに加担するなんて、何事だ!?
…最初に言うのは、そういう事でしょう…。』
ツツジちゃんにとって。
北区は悪。
それは、そう。
いきなり西区を襲撃してきたのだから。
(あ~、大人組にとってポノ君は、そそのかされた被害者で。
だから責めたりはしない。
でも、ツツジちゃん視点からしたらそうじゃない。
ポノ君は、そういうの、ちゃんと判断できる人で。
だから、悪に加担しているのが許せない。
そのままの現状も。
何も出来ない、自分の無力も。)
『ポノは、今、視野が凄く狭くなっています。
きっと自分が、間違った事をしているなんて思ってない。
だから、ちゃんと言ってあげないと、気づけない。
お前は、間違っているんだぞって!』
作業用の手袋と、上着を脱いで立ち上がる。
そして、その手を取る。
『わかったわ。明日は一緒に行きましょう。
それで、ポノ君に、言ってやりましょう。』
たぶん。
ポノ君は戦場には出てくると思う。
でも、リハネもユンゼスさんも。
ポノ君には構っていられないはず。
適当にぶちのめして、戦闘終了後に回収。
その後、説得。
そういう流れを考えていると思う。
そういう流れにするしか、ないと。
そして。
ツツジちゃんも、それは分かっている。
だから自分が、連れ戻すしかないと言ってきた。
それは、ポノ君自身に。
一刻も早く、悪に協力するのを止めてもらいたいという気持ち。
そして、もう一つ。
やはり、心配なのだ。
戦いは激しさを増している。
乱戦ともなれば、事故だって起こる。
その気がなくとも。
ポノ君が、誰かの命を奪う結果になってしまうかもしれないし。
ポノ君が、死んでしまうかもしれない。
そんな中で。
じっと待つなんて、出来ない。
彼女は、そう思って。
どうすれば、実現可能かを考えて。
それで、私の元へ来た。
レーグの魔王討伐メンバーで、さっきもICDから逃げ切った。
私の協力があれば、ポノ君を連れ戻せるんじゃないかと。
(まったく。頼りにされるなんて、嬉しいじゃない。)
私は、ヨダーシルに来る前に決めた。
二人の応援をすると。
その気持ちは、当然、今も変わらない。
『あ、あの!ごめんなさい、実は、私、クレスタさんを…。』
『いいのよ。私がそうしたいんだから。』
仮に。
私一人が行ったとする。
おそらく、ポノ君の所までは辿り着ける。自信がある。
不意打ちはしない。
堂々と姿を現す。
ポノ君も。
私に、いきなり攻撃なんてしない。彼は悪人ではないから。
説得しようとするけど、私では無理。
彼は私を置いて、さっさとどっかへ行ってしまう。
だからそれだと、意味がない。
でも、ツツジちゃんも一緒なら?
その場で説得が出来れば、言う事はない。
無理でも。ツツジちゃんを完全無視なんて出来ないはず。
動揺する、隙が生まれる。そんな状態なら、私でも捕縛できる。
ダメージだって、残っているだろうし。
その後は。
二人で、星でも見ながら語り合えばいい。
(利用するのは、お互い様って事で~。)
簡単な打ち合わせをして、ツツジちゃんは戻って行った。
具体的な動きは、本隊や、ユンゼスさんの動きを聞いてから改めて決める。
(…さて、気合いれないとね。)
当然、リスクのある動きだ。
もし、ツツジちゃんが死んでしまったら。
私にとっては、申し訳ないけどヨダーシルが滅ぶより最悪だ。
(それでも、最善手だとは思う。)
例えば。
私が行くから、ツツジちゃんは待つように言ったとする。
この場では、納得してくれるかもしれない。
でも、土壇場で。
やっぱり、気持ちが抑えられなくて。
一人でポノ君の元へ行ってしまったら?
それこそ、もう、打つ手がない。
(私一人だと、守れるか不安だから、リハネに来てもらったんだけどな~。)
仕方がない。
皆が笑える世界がいいんだから。
そんな事を考えながら、テントの組み立てに戻るのだった。
(…いた。)
倒れているポノ君を発見。
その周辺に、3、いや、4機のAMD。
(アニサちゃん?)
(4機で間違いないわ。でも、少し離れた所に3機いる。
仲間の信号を受信したら、すっ飛んでくるわ。到達まで10秒ね。)
(4機倒して、次の3機も倒して。でもきっと次がくるわよね?)
(ちょっと待ってね。…1分以内に、30機倒せれば、次がくるまでに5分の猶予が出来るわ。)
(う~ん。…別のプランをお願い。)
(侵入者発見の信号を、仲間に送信される前に倒す。暗殺者みたいに。)
どっちが現実的かと言われれば。
…いや、どっちもどっちでは?
(このままこの付近で、隠れて様子を見ていれば、好転すると思う?)
(…リハネがカナミアを倒して、戻って来てくれれば好転すると思う。
でも、それをするなら、要塞から逃げる事を推奨するわ。
敵の数が増えて、退路がなくなる可能性もあるから。)
撤退。
それも、手ではある。
見込みより敵の数が多すぎたのだから、仕方が無い。
ツツジちゃんを確認する。
恐怖に耐えながらも、強い目だ。
ポノ君を、絶対に連れ帰ると。覚悟を決めている。
(私も決断する時であり、覚悟を決める時か。)
「ツツジちゃん。」
その名を、呼ぶ。
気づかれないように、気を付けながら。
「ポノ君がいた。彼は気を失っていて、周りには敵。」
声を上げずに、聞いてくれる。
「今から、作戦を伝えるわ。
まず、プランA。
ツツジちゃんは、一旦待機。
私は、少し移動して、敵を狙撃する。
バレずに4機、落とせたら勝ち。
戻って来るから、一緒にポノ君を運びましょう。」
バッグから取り出した物に、魔力反応を検知されないように魔力を入れる。
それは膨らみ、クッションみたいになった。
車輪もついていて、魔力という動力もある。
例え一人でも、人間一人を楽々運べる優れもの。
二年前。
これを使って、ガットル君と二人でお尋ね者を運んだのも懐かしい。
「もし、私の事が敵にバレたら。
そこからは、プランBよ。
私は全力で逃げる。敵を引きつけながら。
十分に引きつけられたら、ツツジちゃんのセイが教えてくれる。
後は指示に従って。
要塞の外に出て、可能なら本隊に合流。戦闘真っ最中なら、東区を目指してもいい。
その辺りも、セイの指示に従ってね。」
「クレスタさんは?」
「私なら大丈夫よ。魔王の炎槍に比べれば、全然マシ。
最後まで傍にいられないのは残念だけど。
お互い頑張って、後で落ち合いましょう。」
ツツジちゃんは。
頷く。
いい子で、強い子だ。
さて、決定したのだから、後は迅速に動くのみ。
私は屈みながら、狙撃しやすそうな位置へ移動する。
(タン、タン、フー、タン、タン…。)
シミュレーションする。
使用するのは、土属性の基礎魔法の石。
腕輪による強化のみ。特殊薬の使用は無し。
一発撃ったら、後は続けて撃つしかない。
一撃で仕留めつつ、2機目と3機目が少し離れているから、そこは注意して。
コートはすぐ脱げるように。
仕留めそこなった瞬間、脱いで走る。
深呼吸して。
運命の一発を、放つ。
命中。
続けて、放つ。
命中。
敵、残機に反応あり。
異変には気づいた。
が、敵襲だとはバレていない。
次弾発射。
命中。
(ラスト!)
それは、狙い通りの軌道を描き飛んで行く。
しかし、僅かに。
敵が先に動いた。
命中はしたが、着弾個所がズレる。
一撃で、破壊しそこなう。
続けて発射した石弾で、完全に機能は停止する。
でも、止まる瞬間、確かに見た。
赤いランプが、点灯したのを。
(プランB!!)
私は、コートを脱ぎ棄て走り出す。
ツツジちゃんの無事を祈りながら。
(クレスタ!)
(はいよ!)
飛び掛かってきた1機を、撃ち落とす。
(囲まれたら終わりよ。まずは、このルートに従って…。)
繰り返すが。
私は、強くない。
狙撃にはそれなりの自信があるけど、接近戦とかは無理。
だから、言い訳にはなってしまうのだけど。
周囲を警戒しながら。
全力で走りながら。
飛び掛かってくる敵を攻撃しながら。
アニサちゃんを確認する。
そんな事、完璧に出来る訳もなく。
結果、無理をする事になり。
足元がお留守になり。
私は、つまずいた。
(やっべ!)
バランスを崩して。
でも、なんとか転倒は避けられて。
それでも、大きすぎる隙となる。
左右両方から飛び出してくるAMD。
反射的に、右の奴を撃ち落として。
(南無三!)
よく意味も分かっていない言葉を、心の中で絶叫しながら身を屈める。
その私の頭の上を、魔力を纏う刃が通り過ぎた。
完全に、ただの運。
しかし、攻撃を躱す事には成功。
至近距離からの石で、破壊する事にも成功。
まさに、超、ファインプレー。
自分の可能性に感動する。
しかし敵は、残り23機。
全然気は抜けないし、寧ろ、ここからが本番まである。
(上等よ!このまま全部、ぶっ壊してやるわ!)
絶望的な状況。
だからこそ自分を鼓舞し、勢いよく顔を上げる。
顔を上げたから。
少し離れた所にいる、ツツジちゃんと目があった。
彼女は、ほっとした表情だ。
一瞬。
現実逃避しかけた。なんで?とか思ってしまった。
でも、すぐに理解して。
だから走る。ツツジちゃんの元へ。
私は、まだ碌に距離を離せていない。
最序盤でピンチになった。
だから、その姿は。
バッチリ、ツツジちゃんに見られていて。
さっきの。
私が屈んで避けたシーン。
私が切り裂かれたように見えた事だろう。
だから、ツツジちゃんは。
出て来てしまったのだ。
私を、心配して。
そして、私が無事で安堵した。
確かにツツジちゃんは、対熱、対魔力探知機能のあるコートを着ている。
でも、AMDは。
音にも、動きにも反応する。
私を心配して出て来てしまった彼女は。
そこまで動いてしまったという事で。
敵は、今、集結している最中だ。
「!!」
構える。
ツツジちゃんに向かっていく、AMDを見つけたから。
しかし位置が悪い。
やってきたのは、私の前方。
つまり、射線上にツツジちゃんがいる。
「!?」
魔法を撃てず、固まる私は。
見た。
ポノ君が。
ツツジちゃんを突き飛ばし。
その背に、AMDの刃を受けて。
それは、彼の身体を貫いて。
引き抜かれ。
ポノ君が。
大量の血をまき散らしながら、倒れる様を。
~戦況まとめ~
リハネ :カナミアと交戦
クレスタ・ツツジ:ワッポノと合流…
ユンゼス :???
ラデューム :要塞に直接攻撃




