第147話 激突~肩慣らし~
北区VS東区、二日目。
◇登場人物◇ ※●が視点者
__ヨダーシル・東区
●リハネ :ゾトの勇者
〇ラデューム :東区の区長
__ヨダーシル・北区
●ワッポノ :マーアの勇者
〇ロミスオッド:北区の区長
〇カナミア :アイーホルの勇者。洗脳状態
__ヨダーシル・南区
〇クレスタ :ワッポノ捜索隊
□セイ :色々できる腕輪型のデバイス。人工知能(AI)搭載
*リハネ視点*
ヨダーシルは城塞都市。
都市全体を、それはそれは立派な壁で囲んでいる。
魔王最前線だったバクー王国の首都キッドニ。
あそこも威圧的な城壁で有名だ。
しかし、両方を見た人物は同じ感想を抱く。
ヨダーシルが、圧倒的だと。
特にネクーツ領からみる北側は、それこそ魔王城。
壁一面に魔力弾の発射口が埋め込まれていたりする。
元魔王が造ったと聞いて納得しかない。
実物を見ても、なぜ実現できたのか理解できない物。
それこそが、ヨダーシル製。
北区は、基本的に長閑な場所だ。
東部が居住区で、西部が工業地域。
「しかし北部の。北門周辺は、魔王城とはな。」
それが見える位置まで、東区本隊は進軍した。
理由は簡単。ロミスオッドが、ここにいるからだ。
そりゃあ、こんな所があれば立て籠もるよ。
(MDFとか、CMDとかより、この要塞が切り札だろ…。下手な町よりデカいぞ…。)
実際、壁に囲まれた町みたいなものだ。
兵器を補完する建物が乱立しているらしいから。
勝利後の事を考えれば。
使わずに温存して勝ちたかったのも分かる。
こんなのがある国と、一戦交えたい国なんてないだろう。
機能を停止させたり出来ない限り。
「調子はどうだ?」
左腕の小手を眺めていたら、ラデュームに声をかけられた。
「問題ない。と、言いたい所だが。
使ってみないと分からないな。」
MDFの事だ。
ちなみに、体調は万全。
「起動させてないのか?」
「起動はしたさ。でも、実際に戦ってみないと分からないだろ?」
「それはそうだ。」
柔らかく笑った後、真面目な顔でラデュームは告げる。
「死ぬなよ。
武運を祈る。」
「お前もな。
やられんなよ、総大将。」
グータッチして。
突っ込もうとしたが、ふと、思い浮かぶ。
「再開の合図とか、号令とかするか?」
「いらんだろ。中断の宣言もしていない。」
「それもそうか。」
戦闘は継続中。
昨日開戦して、今日で終戦だ。
一度、大きく深呼吸をして。
駆け出す。
見える範囲で、敵はいない。
きっと全員、あの中で待ち構えているはずだ。
魔王城攻略は初めてではない。
本物の魔王の居城は、これに比べれば玩具だった。
しかし、作法は知っている。
力いっぱい扉を叩いて、元気に挨拶。これだ。
「た、の、もおぉぉ!!」
助走をつけてジャンプした私は。
ブレイブフェニックスで扉を破壊。
そのまま一直線に、噴出炎で突っ込む。
要塞内部の様子は教えてもらったし、頭に入れた。
が、知らない建物が多い。
(想定内だ。敵に漏れている情報のままな訳がない。)
それにしても広い場所だ。
これではロミスオッドの場所も、カナミアの場所も分からない。
だから、向こうから出て来てもらう。
丁度、私を迎撃する為に、ワラワラと無人機が出て来たじゃないか。
(…いや、多くね?)
見た事ないタイプだ。
大きさは私の腰くらい。見た目は、トカゲ。いや、ドラゴンか?
牽制で投げた火球が、直撃前に霧散した。
おそらく、魔防壁が張られている。
(こいつが、CMDか?)
てっきりデカいのを想像していたが、軍隊型とはな。
『データがあります。
名前はAMD。
機犬の発展型です。
パワーや耐久力は竜機兵に及ばず、魔力弾も発射しません。
しかし魔力運用面では、竜機兵よりも優れた兵器です。
魔防壁の展開により高い防御力を、前腕部の刃に魔力を流し高い攻撃力を獲得。
なにより高スピードで小回りが利く為、対人戦において竜機兵よりも高成績でした。
数年前に、開発が中止されたはずの兵器です。』
セイが、解説してくれる。
なるほど。
対魔物戦に強い竜機兵と。
対人戦に強いAMDって事か。
「いいな。歯ごたえがありそうじゃないか。」
二人の区長から、ハチャメチャにやっていいと許可をもらっている。
「ちょっと、肩慣らしに付き合ってくれよ。」
炎剣の切先を、そいつらに向けた。
*ワッポノ視点*
「間もなく東区の連中が攻めてくると思いますが、ワッポノさんは、ここで休んでいて下さい。」
「…それは、足手まといだがら引っ込んでろって事か?」
カナミアがいれば十分だから、俺はもう用済みって事か?
「戦術ですよ。
私の見立てだと、戦いはこれで終わらない。
連中を、いい感じに引きつけたらCMDで迎撃します。
大打撃は与えられる予定ですが、逃げられてしまうでしょう。
そういうしぶとさが、あるんですよ。
CMDは、エネルギー問題で要塞の外へは出せない。
そして、カナミアさんはこの戦いが最後です。
幻惑魔法の効果が切れますから。
あれは特性上、重ね掛けの効果はないんです。
つまり、あなたが追撃戦の要となります。
納得いただけますか?」
「…。」
俺は、北区の皆の為に戦うと決めた。
それは嘘じゃない。
彼らは、俺を認めてくれたから。
間違っているとは思わない。
ならば、北区の勝利の為に、こいつの戦術とやらに従うのが、正解なんじゃないか?
(…いや、違う…。)
そもそも俺は。
強くなりにきたんだ。
DFDは俺の力だ。
慣らして、訓練して、調整して。
マーアにいた頃と比べたら、各段に強い。
それでも昨日は。
リハネにも、そして南区の区長にも負けた。
DFDは、強い。
なのに、あんな結果になってしまったのは。
俺が、弱かったから。
あの。
技術発表会の、リハネとカナミアが戦う映像を見て。
あのまま続けていたら、カナミアが勝つと思った。
カナミアの方が、上に見えた。
だから、そのカナミアを追い詰めた俺は。
リハネより強いと思っていた。
過信して、見下して、油断して。
あっさり罠にかかって負けた。
続く戦いは、戦いじゃなかった。
悔しくて、認めたくなくて、暴れただけだ。
だから、素人に負けた。
そう。
俺の、心が弱かった。
今も、そうだ。
北区の勝利の為。
それを、心から望むのならばいい。
でも、本当にそうか?
逃げる為の、戦いを避ける為の口実にしていないか?
少なくとも。
俺の心は、そうだと言っている。
それで、勝ったとして。
そんな自分を認められても、嬉しくない。
「俺達は、対等の協力関係のはずだ。」
ここで逃げたら、きっと俺は弱いままだから。
「だから、行かせてもらう。戦場に。
ここで勝てれば、問題ないはずだ。」
ロミスオッドは。
しばらく、俺の事をじっと見て。
「そうですね、勝てれば。問題ありません。」
そう言った。
俺は頷いて、棚に置いてある小手を手に取り、装着する。
「ワッポノさん。」
部屋を出る時。
その背中に、声が掛けられる。
「ご武運を。応援してますよ。」
「ああ。」
ここまで。
ありがとう。
*リハネ視点*
最後のAMDを真っ二つにする。
しかし、私は臨戦態勢のままだ。
途中から、気づいていた。
そいつが、いる事に。
「昨日ぶりだが、また随分といい顔になったじゃないか。ポノ。」
「今日は、俺が勝つ。」
『MDF、起動。』
「そうかよ、頑張れ。」
『MDF、起動。』
マーアにいた頃。
何かと理由をつけて、一生懸命になれないやつだった。
(それが。…まったく。)
あいつにとって、この旅は。
ヨダーシルに来た事は、間違いじゃなかった。
だからこそ、思う。
(死ぬなよ、ポノ。私はまだ、これに慣れていない。)
それでも。
使わないといけないと。
出し惜しみはするべきじゃないと、私の直感が告げている。
『DFD。』
『BBD。』
ポノは、いつもの黒の鎧。
そして私のは。
燃え盛る炎のような、朱色の鎧だ。
「冷静じゃないか。
正直、もっと取り乱すかと思ってた。
なんでお前まで~みたいに、癇癪おこすと思っていたのに。」
「あの後、カナミアにボコボコにされたらしいじゃないか。
それでもやってきたって事は、勝算があるから。
だから、それぐらいはやって来ると思ってた。」
「♪~、いいね。」
計測したあいつの魔力は、私のと比べると大分低い。
単純な実力差と、昨日の消耗が回復しきれていない。
それでも。
昨日のあいつより余程、手ごわそうだ。
(自らの意思で私の前に立った。だからこその気迫。)
あいつと、心ゆくまで剣を交えたい。
そんな気すら、してくる。
しかし。
今はダメだ。
プリンセス。いや、ヒーローを待たせているからな。
「行くぞ!ポノ!」
強く、踏み込んで。
突っ込む。
BBDを起動して、初めての対人戦。
悪くない。寧ろ、いい。
今までの。
竜機兵や、AMDを真っ二つにしてきた一撃。
それよりも。
速く、鋭く、重く。
剣を振り下ろす。
それを。
ポノは剣で受けきった。
身を翻し、横薙ぎに一閃。
それも防がれる。
弧を描くように再び振り上げた剣は、炎を纏う。
(ブレイブ…!)
その、顔を見る。
フルフェイスの鎧だから、表情なんて分からない。
でもきっと。
勇ましい顔をしているはずだ。
だって、一歩たりとも、退いていないから。
(フェニックス!!)
叩きつける。
向こうの剣も、頑丈だ。
この一撃も防がれた。
しかし、衝撃は殺しきれない。
ポノは体勢を崩した。
(攻め切る!)
炎剣を、突く。斬り上げ、下ろし、薙ぐ。
その連撃を、ポノは凌ぐ。
(もっと速く!)
乱撃。
軌道なんて見えないはずだ。
実際防ぎきれていない。
肩を、脇腹を、腕を、脚を。
激しく叩く。
それでも。
その鎧は砕ける事なく。
ポノも、倒れなかった。
「誇れ、ポノ。」
ふらつきながら、尚も立ち続ける、そいつに。
「私の剣を、28発も受けて倒れなかった事を。」
ピシリと。
罅の入る音がした。
「そんな奴、勇者隊にだって、いやしない。」
DFDが、砕ける。
ポノは、膝をついて、そのまま倒れた。
「そして、励めよ。
受けられる奴はいないが、そもそもあいつらは、28回も斬らせてくれないからな。」
セイで座標を調べて、フフゴケ商会の通信機でクレスタに報告。
送り届けてやりたい所だが、そんな暇はない。
轟音と共に、高い建物の上に現れる人影。
主賓の、到着だ。
(さて、ウォーミングアップというには、激し過ぎる運動だったが…。)
肩を回して、軽くジャンプして。
大丈夫。いける。
「さあ!決着をつけようか!!」
噴出炎で、一直線に突っ込む。
こっちから向かう理由は、二つ。
一つは、流れ弾がポノに当たらないようにする為の配慮。
そしてもう一つは。
待ちきれないからだ。
技術発表は、引き分けた。
昨日も、まあ、引き分けだろ。
戦績は、2戦2引き分け。
三度目の正直。
今回で、どっちが強いか、はっきりさせようじゃないか!
「カナミア!!」
『MDF、起動。』
『LRD。』
~戦況まとめ~
リハネ :カナミアと交戦
クレスタ・ツツジ:???
ユンゼス :???
ラデューム :???




