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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第四章 理想家オーズンの四人の後継者

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第146話 ユンゼス~理想~

~前回までのユンゼス~


夜中に目を覚ました俺は、クレスタからゲームに誘われる。

クレスタが魔王で、俺が勇者。そういう、ごっこ遊び。

設定上、人類皆幸せマシーンを否定している訳だけど…。


◇登場人物◇ ※●が視点者

●ユンゼス  :南区の区長

〇クレスタ  :ワッポノ捜索隊

〇ツツジ   :ワッポノ捜索隊


〇ロミスオッド:北区の区長

〇ワッポノ  :マーアの勇者

「なるほど、現実への影響か…。

 なら、ここで驚愕の新事実よ。

 実はこの世界も、あなたの夢なの。」


 その言葉の意味を、咀嚼する。


「え、じゃあ、あなたは、夢の中で夢を見させようって事?」


「そう。

 既に私達は、上位存在との戦いに敗れたの。

 自覚はないと思うけど、私達は脳みそだけの存在。

 上位存在は、私達で色々実験しているのよ。

 だから、悪夢を見させられている。

 そんなの嫌でしょう?

 だから私が、その制御を奪うのよ。

 悪夢ではなく、幸せな夢を見られるように。」


 ちょっとイメージしづらいし、可能だとは思えないけど。

 でも、それが事実だと仮定すると。


 …そうだな。


「それは、あなたが言ったように。

 その事実を知らなければ、関係のない事で…。」


 いや、これだと相手を肯定する事にもなるから…。

 魔王を説得させる事なんて出来ない。


「なら、この事実を公表しましょう。」

「え?」


 その提案が。

 魔王側から提示されて驚く。


「ここは悪夢の中。

 起きる事は出来ないわ。

 もし起きれたとしても、身体の無い私達は目覚めても何も出来ない。

 それを皆に伝えるの。

 ある異世界だと、空をずっと上まで昇っていくと宇宙っていう空間に出て、そこから星を見ると、丸くて青いそうなのよ。

 実際に見た人は、一握り。

 でも、多くの人が、そう認識している。

 根拠とか、証拠とか?そういうのがあれば、きっと信じてもらえるわ。

 その後に、選んでもらいましょう。

 悪夢の中で抗うか、幸せな夢を見続けるか、起きて死ぬか。

 きっと皆は、幸せな夢を選んでくれるわ。」


「そうだね。そうしよう。」

「…。」


 変な顔をされた。

 意外だったろうか?


 とりあえず、続ける。


「もちろん、公表の仕方には気を遣いたい。

 まあ、事実は変わらないから、人によってはどう伝えようが同じかもしれない。

 上位存在の掌の上で生きるなんて、嫌だと考える人がいるかもしれない。

 でも、やっぱり絶望して自殺とかは選んでほしくないからさ。

 2択にしたい。

 今の世界か、幸せの夢の世界かの。」


「今の世界も、夢なのよ?」


「だとしてもだよ。

 さっきまで俺は、この世界の話をしていたんだ。

 この世界でなら起こり得る話をしたんだよ。夢の世界だったとしてもね。

 上位存在は、悪夢を見せたいのかもしれない。

 でも、その割には幸せだってちゃんとある。

 少なからず、抗えるんだよ。」


「…。」


「あなたは、選んでもらおうと言った。

 それが、一番大事だと思う。

 レールが敷かれていて。

 そのレール通りに進んでも、別の道を進んでもいい。

 正直さ。

 悪夢なんて見たくない。

 楽に幸せになれるなら、最高じゃないか。

 絶対いるよ。夢の世界がいいって人は。」


 どうしようもない絶望を。

 喪失を味わった事があるなら、尚の事。


「全員とか、強制とかじゃなくて。

 この世界で頑張りたい人は、この世界で。

 そして夢を見たい人は、夢の世界で。

 そして、欲を言うのなら。

 二つの世界を行き来したい。

 休みたくなれば、夢の世界へ。

 頑張りたくなったら、この世界へ。

 …そういう感じで、どうだろうか?」


 一度、楽を覚えると、必要性が無い限り頑張るのは難しい。

 なんて話も聞くけれど。


 何でも思い通りになるのも、つまらないと思う。

 何も思い通りにならないのも。


「…全員を起きる事のない眠りにつかせる事って、意味があるのよ。」


 クレスタの雰囲気が変わる。

 真意は分からないが、おそらく決着は近い。


「脳みそだけにすれば、その分スペースが確保できるし、後はマシンと、生命活動の維持に必要なものだけで済む。

 管理は全部、機械に任せて。

 空いた土地全部で、エレキとか、栄養が取れる物とか、新しい機械とかを生産して。

 それで、私の楽園は完成よ。

 でも、人が生活するのなら、他にも色々必要になるじゃない?

 起きたりもするなら、身体が必要で。

 それを維持するエネルギーも必要になるし。

 それじゃあ、エネルギーが足りない。維持できないわ。

 それに、そう!

 動いている人間がいるのは危険よ。

 悪意をもって、私の楽園を壊そうとするかもしれない。

 その気がなくても、事故が起こるかもしれない。

 だから、あなたの提案は受けれない。」


 えぇ…。選択させようって言ったのに?

 あれか。全員夢の世界を選ぶ計算だったとか?


 でも、俺は。

 選択できる未来がいい。


 そうだとも。

 あの日。トリッキーシューターの運営を辞めた時。


 すみ分ける事で、相手の世界を尊重できるのだと、解ったんだ。


「俺は、あなたの楽園を壊したくない。」


「…。」


「そうだな。

 物理的な距離は必要かもしれない。

 この世界で言うなら、ライダ大陸とワイバン大陸で分けるとか。

 そうすれば事故は起きないし、あなたの楽園への入園管理を徹底すれば、悪意に対処するのは不可能じゃない。

 ヨダーシルが防衛協力をするよ。

 それに、維持する為の諸々にも、ヨダーシルは協力する。

 ヨダーシルは、その為にある。」


 皆が、幸せな世界。それを目指す為に。


 そっちだって、後出し情報があるんだ。

 この世界にヨダーシルがあってもいい。


「…なるほどねぇ…。」


 クレスタは、身体を反らして星空を見る。


「ヨダーシルなら、出来そうなのが怖いわ。」


 そして、笑った。


「私は、幸せな夢の国の代表。

 そしてあなたは、現実で頑張る国の代表。

 世界を二つに分けて。

 その半分を、あなたに上げる。

 そういう事でいいかしら?」


 クレスタが、右手を差し出してきた。


 国の名前はともかく。

 俺の提案が受け入れられたなら、嬉しい。


「半分もくれるなんて、太っ腹じゃないか。」


 その手を、握る。

 交渉成立。


 これは、和解できたという事で、ゲームクリアかな?


「お疲れ様、ユンゼスさん。

 これでゲームは、おしまい。」


 クレスタがニヤついている。


「でもこれ、バッドエンドよ。」


「え?

 いや、俺的には最高のエンドだけど?」


「世界の半分って実は…。

 いえ、止めましょう、この話は。」


「???」


「でも、そうか~。

 ユンゼスさんの目指す世界は、そういう感じか~。」


 クレスタは大きく伸びをした。


 中々楽しめたから、お礼を言おうと思ったけど。

 変な感じになってしまい、タイミングを逃してしまう。


「セイが記録した戦闘映像を見たわ。

 ユンゼスさんは、迷っているのね。

 敵の、ロミスオッドさんを倒す事に。」


「え?いや、それは…。」


 切り替えが早くて。

 とまどってしまう。


「確定ではないけれど、彼は、ユンゼスさんの友達だったロミスオッドさんの仇だと思う。

 ユンゼスさんもそう思っているはず。

 でも、実際に会って、会話をして。

 友達の面影を見出してしまった。

 パラレルワールドとはいえ、本人だし。」


「…。」


「『あなたの楽園を壊したくない。』

 さっきのゲームで、ユンゼスさんが言ったわ。

 きっとそれが、ユンゼスさんの基本方針。

 対立する魔王に言うんですもの。

 あなたは自分の敵にも、そう思っているのよ。」


「でもそれは、魔王役だったとしてもクレスタだったし。

 憎むべき敵だと思えなかったというか…。」


「なら、友達の面影がある相手に関しては、そう思ってしまうでしょう?」


「…。」


「でも同時に、仇でもあるから。

 情けをかけようものなら、友達のロミスオッドさんはどう思うか。

 そんな事を考えて、迷ってしまっている。

 どうすればいいのか、分からなくなってる。」


 ずいっと、クレスタが近づいてくる。


 その表情は、真剣だ。


「そんな状態で勝てるほど、敵は弱くないわ。」


 ああ、そうか。

 そこを心配してたのか。


インディビジュアルクリアドラゴンが、最強のマシンDFドラゴンフォームだとして、その性能を一番引き出せるのがユンゼスさんだとしても。

 それだけでは勝てない。

 元々の戦闘能力が高いカナミアと戦えば、あっさり負けてしまうわ。

 勇者達は、自分より力が強くて、速くて、固い魔物達と戦って、勝ってきたの。

 だからカナミアの相手は、リハネしか出来ない。

 彼女に任せるしかない。

 必然的に。

 ユンゼスさんが、ロミスオッドさんの相手をする事になるわ。」


「わかってる。

 俺は迷ってない。

 この戦いに勝つには、俺が奴を倒すしかないんだ。」


「倒すの、やめましょう。」


 …いや、相手をする事になるって、クレスタも言ったじゃないか。


「あなたの友達のロミスオッドさん。

 きっと、自分の仇を討つ事より、共に夢見た世界の実現を優先してほしいはず。

 話を聞く限り、間違いない。

 だから、敵のロミスオッドさんと対峙したら。

 まず、話をするのよ。

 話が出来そうもなかったら、捕縛。生け捕り。

 絶対に、命は奪わないで。」


「いや、それは、倒すよりも難しい事では?」


「技術的にはそうね。

 でも、ユンゼスさんは技術で戦っていない。

 インディビジュアルクリアドラゴンの性能でゴリ押しているのよ。

 この場合、色々考えて戦うより、何も考えずに拳を振りぬいたほうが、速いし強いわ。

 しかも、マシンの計測能力が高くて、出力の調整まで出来る。

 いいパンチだったわよ。ポノ君への腹パン。

 マシンDFドラゴンフォームだけを破壊してくれたんでしょう?

 そんな感じでお願いするわ。」


「ロミスオッドは、可能なら止めを刺した方がいい。

 生きている限り、敵が奪還しようとしてくるかもしれない。

 戦いは終わらない。

 それに、クレイジーマシンドラゴンなんてのとは、戦わずにすめばそれが一番なんだ。

 だから。」


「断言するわ。

 命を絶つ為に拳を振るった場合、ユンゼスさんは躊躇する。

 どんなに決意を固めても、土壇場で止まってしまう。

 それは素晴らしい美徳。

 でも、戦いにおいては致命的。

 その隙で、逃げられたり、負けて、死んでしまうかもしれない。

 ユンゼスさんのいうように、切り替えって大事よ。

 仕事とプライベートとか。

 やりたくない事だってやらないといけない。

 でも、同じ人だから。

 完全に切り離して考えるなんて、難しいんだから。

 ましてや、亡き友と一緒に目指した理想と、真逆の事をするのよ?

 無理。

 諦めましょう。」


 納得、というか。

 勢いに、圧倒される。


 流されそうになる。

 きっと、流されたいのだ。魅力的な提案だから。


 それでも流される訳にはいかないのは。


 俺とロミスオッドの戦いの勝敗が、全体の勝敗に直結すると思うから。


「確かに、俺がロミスオッドを説得できれば一番だと思う。

 でも、それは不可能だとも思う。

 少なくとも俺の知ってるロミスオッドは頑固だから。

 俺の言葉であいつが行動を変えた事なんて…。」


 『そうだったよ。俺も、トリッキーシューターは好きだった。』

 そう言えば、一度だけ。あったっけ。


「で、でも。

 俺とロミスオッドの戦いが長引くのはよくない。

 リハネがカナミアに勝てる保証はないし、クレイジーマシンドラゴンが動き出すかもしれない。

 そんな中、悠長に話なんて…。」


「そこは。

 私達を信じてよ。」


 力強さのある、言葉。


「私達は、東区本隊の皆は負けない。

 リハネも、ミーサも、ティルムも、ラデュームさんも、私も。」


 そして、優しい声だった。


「それにね。

 ユンゼスさんが休む前に、私に教えてくれた戦況予想があるじゃない?

 1点、指摘させてもらうわ。

 きっとポノ君は、戦場に出てくる。」


 俺の見立てだと、一日じゃあ回復できないはずだけど?


「ちょっと不貞腐れちゃったけど、彼も根は負けず嫌い。

 戦闘映像や、ツツジちゃんから聞いた話だと、間違いないわ。

 このまま大人しく寝ているなんて事はない。

 だからね。

 私とツツジちゃんで説得するわ。

 彼をこっちに、寝返らせてみせる。」


「…えっと、戦場で、って事?」


 危険だし、無理では?

 と続けそうになったけど。


 そもそも、俺にロミスオッドと話をしろと言ってきた人だ。

 そして俺も。一度、ワッポノ君の説得を試みている。


「そう。

 私とツツジちゃんも前線に行くわ。

 流石に、ずっと前線で戦うなんて無理。

 だから、お願いしたいのよ。

 ユンゼスさんと、あとリハネにも。

 ポノ君を見つけたら、場所を教えてほしい。

 後はこっちで何とかするわ。」


 この人も、レーグの魔王を討伐した勇者パーティーの一人。


 その人が、ここまで言うのなら。

 信じてみても、いいのかもしれない。


「今日、日が昇ったら。」


 改めて。

 作戦の確認をする。


「リハネが、カナミアさんを押さえて。

 クレスタとツツジが、ワッポノ君を説得して。

 俺がロミスオッドを説得、もしくは捕縛。」


 それで、勝てる?


「後は、そうね~。

 ラデュームさんは、ミーサ達を護衛につけて逃げ回ってもらって。

 クレイジーマシンドラゴンは、状況次第かしら。」


 作戦というか、立ち回り方。

 出たとこ勝負なイメージだ。


「ねえ、ユンゼスさん。」


 それでも、勝ちたい。

 だから、頑張る。


「私もね。皆が笑える世界がいいわ。」


『ゴールテープは、皆で手を繋いで切りたいよな。』


 俺は、頷いた。




 そして、その数時間後。

 決戦の火蓋は切られる。

ユンゼスとロミスオッドの選択は?

リハネとカナミアの戦いの行方は?

クレスタ達はワッポノを連れ帰れるのか?

そして、ヨダーシルの新都市長は?


次回より、第四章、終盤戦。

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