第144話 ユンゼス~きれい、だったから~
~前回までのユンゼス~
ロミスオッドは異世界人らしい。そして元の世界へ帰るらしい。
その方法が最悪で。だから、俺とラデュームはロミスオッドを止めようとした。
最後に。師匠オーズンがやってきて。事件は解決した。
◇登場人物◇ ※●が視点者
●ユンゼス :オーズンの弟子
〇ロミスオッド:オーズンの弟子
〇ラデューム :オーズンの弟子
〇オーズン :ヨダーシル都市長
ネクーツの兵隊がやってきて、子供達を保護。
馬車に乗せていく。
その様子を、ラデュームと並んで眺めている。
「情報を掴んで、俺に教えてくれたのは、師匠だ。」
ぽつりと。
経緯を話してくれる。
「だから、俺からお願いしたんだよ。
任せてほしいって。
あいつは俺の友達だから。
友達の手で、決着させるって。」
…師匠は、何だかんだで弟子が心配で。
だから、ロミスオッドの動向も掴んでいた。
彼は世界中に、目を持っている。
長い年月で築いてきたネットワークが、協力者が沢山いるんだ。
それで、ロミスオッドの現状を知って。
ラデュームに話した。
彼は多くの事業に携わった事で、師匠から高い評価を受けていて。
そしてロミスオッドの同期だったから。
どうしたいか、聞いた訳だ。
当然、自分が。
友達二人が行くと、ラデュームは答える。
師匠はそれを聞き入れた。
そうじゃないかと思って聞いた訳だし、止められるだけの力があると信じてくれたのかもしれない。
でも、失敗は許されない件だ。
子供達の命がかかっている。
既に誘拐という罪を犯した弟子を放置できないし、更なる罪を犯させる訳にもいかない。
だから、様子を見ていたんだ。
バレないように魔法で隠れながら。
それで。
どうにもならなさそうな状況になってしまい。
手を出したって事か。
「期待を、裏切っちまったなぁ…。」
それは、まさしく。
その通りだと思う。
「ごめん…。」
俺がロミスオッドを、止められなくて。
「いや、俺も連中を瞬殺して、そっちに行くつもりだった。
お前に注意が向いている間に、ロミスオッドを奇襲しようとしたんだ。
なのに…。
あ~、くそっ!
瓦礫に乗り上げて、魔走車を横転させちまうなんてっ!」
ラデュームは頭に包帯を巻いている。
その程度で、本当によかった。
音がして、振り向くと。
子供達を乗せた馬車が動き出していた。
その奥で。
ラデュームが戦った黒ローブの男たちも、拘束され馬車に乗せられている。
結構有名な用心棒集団で、盗賊紛いな事もやっていたらしい。
「凄かったよ、師匠は。
圧倒的で、…怖かった。
知ってはいたが、やはり、魔王だったんだな…。」
デューの手は、震えていた。
悔しさもあると思うけど、何より恐怖で。
師匠は今、兵隊の偉い人と話をしている。
事情の説明だろう。
その傍らには、拘束されたロミスオッド。
「あ。」
ロミスオッドが、連行されていく。
師匠に見送られて。
ネクーツの子供達を誘拐して、ネクーツ領で儀式をしようとしたんだ。
ネクーツの法で裁かれるのだろう。
どれくらいの罪だろうか?
未遂とはいえ、命を奪うつもりでの誘拐。
しかも、あの人数だ。
もう会えないなんて事は、ある。
「行って来いよ。」
こっちを見ないで、ぶっきらぼうに。
「俺は、やめとく。
かける言葉なんてないし、ボコボコに殴る事しか出来ない。
だから、俺はいい。」
俺は。
走った。
言いたい事とか、どうしたいとか。
そういうのは、分からない。
ぐちゃぐちゃで、まとまらない。
でも。
最後かも、知れないから。
兵隊の偉い人が、少し時間をくれた。
一言、二言だけならいいと。
あんまり長く話すと、変な気を起こされかねないから。
ロミスオッドの顔を見る。
暗い地下だったから、気づかなかった。
今は、周りで火が焚かれているから、分かる。
酷い顔だ。
やつれている。物、食べられていないんじゃないか?
何て声をかけたらいいか、分からない。
「なあ、ゼス。」
向こうから。
「師匠、やっぱ、半端なかったな。
圧倒的で、…きれいだった。」
「俺も…。」
色んな感情が溢れてくる。
ロミスオッドを止められなくて、悔しい。
ロミスオッドに会えなくなり、悲しい。
ロミスオッドが俺との計画を反故にして、腹立たしい。
涙が出そうになって。
必死に、堪える。
そんな資格はないと思うから。
「俺も、きれいだと思ったよ。」
俺達は、やっぱり感性が似ていた。
その事が嬉しくて。だから、胸を切り裂きたくなって。
それで。
耐えるように、ロミスオッドの馬車を見送った。
賠償の為に没収されたロミスオッドの土地。
旧コア王国王都周辺の土地は、師匠が私財で買い戻した。
龍穴の魔力変換装置はそのままで。
つまり、新魔力への変化は継続中。
師匠が認めて、俺が責任者になって、あくまで実験の一つとして。
『魔物のいない土地計画』は、静かに今も続いている。
それから3年後。
俺は、27歳。
その年は、世界のあちこちで色んな事が起きていたと思う。
春、フレン王国で、その後の国の未来を変える事故が起きたり。
秋、ウーイング王国14代目勇者が、魔王討伐の旅に出発したり。
秋、マーア王国で一人の勇者が、魔王討伐を諦めたり。
まあ、何も起こらない年なんて、そもそも無いのだけど。
ともかく。
春のヨダーシル。
俺はやっぱり、研究室に籠っていた。
少し、凹んでいる。
俺が開発した魔道具の、廃棄処分が決まったから。
(自信、あったんだけどな…。)
名前は、MDF。
師匠に影響されて、開発した。
あの日。
己の無力を痛感して。
師匠の強さに憧れて。
何より。
きれいだと、思ったから。
俺とロミスオッドの、二人が。
だから、いつか。
あいつにも、見せてやりたいと、思って。
(…廃棄、かぁ…。)
手元にある、ICDを眺める。
テスト中だった3機のMDFは、もう廃棄されたらしい。
実験室にある未完成品も、近々回収される予定。
もちろん、これも。
(…。)
こっそり隠し持つなんて不可能だし、そんな事をしたら捕まるかもしれない。
国家反逆の疑いあり。みたいな感じで。
だというのに。
もう決まった事だというのに。
切り替えられない。
相変わらず女々しいなと思いつつも、結局その日は、大した作業も出来ず。
気づくと、陽が落ちて真っ暗だった。
(…帰るか。)
寝て起きたら、少しはマシになるといいな、なんて考えながら帰り支度をしていると。
コンコンと。
何かを叩く音が聞こえた。
扉じゃない。
じゃあ、どこから?
辺りを見回して、音の発生源が分かる。
窓だ。
ちなみにこの研究室は2階で、ベランダなんかも無い。
「ゼス、いるか?」
警戒心MAXになっていた俺だが、その声が聞こえて。
勢いよく窓を開け放つ。
「ロミスオッド!?」
「よう、久しぶりだな。」
木の上にいたロミスオッドが、ジャンプして中に入ってきた。
「おまえ、ネクーツにいるはずじゃあ?」
もっと言えば、捕まっているはずでは?
「ああ、逃げて来たんだ。」
そんな、近くまできたから寄ってみたんだ。
なんて感じで言わないでほしい。
「脱走してきたって事か?それは、流石に…。」
匿ってやる事は出来ない。
あの件で、師匠には色々と世話になった。
これ以上、迷惑はかけられない。
「そんな顔をするなよ。
すぐに出て行くさ。
最後に、挨拶しようと思っただけだ。」
「最後って、また、異世界に行こうと考えているのか!?」
「異世界へ行くか。ある意味、そうかもな。
ああ、違う、もうあんな事はしない。誰かを生贄にしようとかは、絶対に。」
流石に、怒りが湧いてくる。
(なんて勝手な奴だろう。こっちの事情などお構いなしだ。
最後だと?ふざけるなよ。)
だから。
その手を掴む。
「ちょっと、こい。」
引っ張る。
「!…いや、時間はなくてな…。」
「分かってるよ。
逃亡犯だもんな。俺だって、お前と一緒の所を見られたらやばい。
でも、最後なんだろ?
…来てくれよ。見せたいものがあるんだ。」
黙ったロミスオッドを、隣の実験室まで連れて行く。
このタイミングで、こいつがここに来たのは。
きっと運命か、何かだ。
「そこら辺に座って待っててくれ。準備がある。」
飲み物は、出さなくていいだろう。時間が惜しいし。
「あの日、お前が龍穴につれていってくれたから。
魔力の質を変えるっていうアイディアをくれたから。
だから、これは開発できたんだ。」
魔防壁の設定をしながら、話す。
本当は、あの土地の現状を伝えたかった。
でもまだ、成果は出せていないから。
これも。
今回は、開発中止になってしまったけど。
アイディアも、培った技術も、次に活かす事が出来る。
あの頃の俺達のやった事は、決して無駄じゃないと。
決して無駄にしないと。
最後なら。
それを、伝えたかった。
「ロミスオッド。
しっかり、見ていてくれよ。」
魔力を、流す。
『MDF、起動。』
ありったけを、込める。
『ICD。』
実験室が、眩い光に包まれて。
やがて光が収まって。
俺は魔防壁の外の鏡で、自分の姿を確認した。
大丈夫、成功だ。
透き通るような、薄い水色の鎧を、俺は纏えている。
感想を聞こうとして、ロミスオッドの方を向いた。
そしたら。
ICDが計測した、ある数値が目に入って。
魔力が空っぽだと分かり。
初めて。彼の異変に気が付いた。
「ロミスオッド!?」
駆け寄る。
どうして気づかなかったのか。
彼は、玉のような汗を出して、息も荒い。
何より、こんなにも青白い。
(幻惑魔法!?)
使っていた効果が、今、切れたのか!?
「ゼス。
凄く、きれいだった。凄いな。師匠みたいだ。」
「ま、待ってろ!」
急いで隣の研究室に戻り、ヒールリングを取って来る。
そして、全力で回復魔法を使う。
大丈夫だ。
ICDで、俺の魔力は上昇している。
「すぐ、立ち去るつもりだったんだよ。
だから、大丈夫かなって。
なのに、お前が呼び止めたりするから…。
…でも、見れてよかったよ。」
彼の背中に、大きな斬り傷があって。
それはなんとか塞がったけど、顔色は、一向によくならない。
「謝りにきたんだ。
まだ、言えてなかったから。
ごめんな、ゼス。
勝手に巻き込んで、勝手に諦めて。
怖かったんだ。お前に、諦めたって言うのが。
だから黙って、異世界へ行こうとして…。
本当に、ごめん。」
「いいんだよ!
さっきも、言ったろ!?
お前のお陰で、ここまで出来たんだ!
これから、もっと凄いのを造るから!
最後まで見ないと、後悔するぞ!」
そこまで言って。
ガラスの割れる音がして。
ICDが砕け散った。
「はは、なんて顔、してんだよ…。」
ロミスオッドは、笑った。
「そっかぁ。もっと凄いのが出来るのかぁ…。
楽しみだなぁ…。」
そう言って、彼は目を閉じた。
俺は立ち上がる。
魔力切れで、くらくらする中、それでもなんとか通信機のある所まで移動して。
師匠へ緊急通信だ。
「師匠!!すみません!助けて下さい!!」
師匠なら、この状況でも何とか出来るんじゃないかと期待して。
「師匠!!ロミスオッドが!!助けて下さい!!」
俺は、なりふり構っていられない。
「師匠!!師匠!!!」
声が枯れるまで、叫び続けた。
ロミスオッドは亡くなった。
流石の師匠でも、死者は蘇らせられない。
到着まで持たせられなかった、俺が悪い。
ああ、違う。
お前の所為じゃないって、散々言われたんだ。
師匠に、気を遣わせるわけにはいかない。
じゃあ。
誰が悪いのか?
「葬儀をしない、ですか?」
翌日。俺は師匠に呼び出された。
「脱獄犯だからですか?」
少し、言葉が強かったか?
冷静に。相手は、師匠だぞ。俺の恩師だ。
「違うよ。」
師匠の声音は優しい。
「これを。」
渡されたのは、紙の資料。
報告書のようだけど?
「お前が、ロミスオッドを殺害した証拠だよ。」
「えっと?すみません。意味がわかりません。」
本当に意味が分からない。
「もちろんお前は殺していない。
そんな事は、私がよく知っている。
なのに、こんなに証拠が出て来てしまった。」
そこまで言われれば、察せる。
「敵がいる、という事ですか?
ロミスオッドを殺し、俺に罪をなすりつけようとした奴が。」
師匠は、ゆっくりと頷く。
「ロミスオッドは刑期を終えた。
というより、何者かが罰則金を払い、終わらせた感じだね。」
懲役を罰金で肩代わり?
ヨダーシル含む、旧ヨルタムアー領土の国では不可能な事だ。
だいたい、財産没収と懲役の両方というのも、こっちでは基本的にない。どっちかのはずだ。
まあ、俺もそこまで詳しくないし、ネクーツの法律に文句を言っても仕方がない。
(そのロミスオッドを、わざわざヨダーシルへ呼び寄せて殺し、犯人を俺に仕立て上げる…?
いや、ロミスオッドは刑期が終わったからヨダーシルに帰って。
そこを襲われ、俺の研究室まで行ったから、俺を犯人にしようとした?)
どちらにしろ、意味が分からない。
確かに、ロミスオッドは罪を犯した。
恨みは買った事だろう。
でも、刑期を終えた彼を、殺していいはずがない。
「敵の目的は分からない。
でも、我々が攻撃を受けているのは確か。
この攻撃を躱す為に、ロミスオッドの死を隠す。」
葬儀をやらないというよりは、そもそも死んでいない事にする?
「この証拠、かなり出来がいい。
ロミスオッドの死体を見れば、殺された事は明らか。
調査が始まれば、この証拠が見つかる。
客観的に見れば、犯人はお前だ。
正直、覆せるか分からない。」
調査書をまじまじと見てしまう。
ロミスオッドは傷一つない状態でヨダーシルにやってきて、まっすぐ俺の研究室までやってきて、その間ロミスオッドは誰とも接触してなくて、俺と会った後、死体となっていた。
(いや、ロミスオッドは幻惑魔法を使っていたはずだ。魔法の痕跡は!?)
無いらしい。
そして、昨日あの時間。研究室のある建物内はもちろん、周辺には誰もいなかった。
(これは、あれだ。俺以外に犯行は無理で、俺ならいくらでも可能だったという状況の証拠だ。)
絶対に、魔法が使われているはずで。
でも、それが見つからない。
オーズンでさえも。
(…誰なんだよ、敵は…。)
「相手は魔法に、そしてヨダーシルにも精通している強敵だ。
現在、ヨダーシル内にいるとみて間違いない。
だからこそ、ロミスオッドの死を隠し、敵の出方を見る。
これは、防御であり、攻撃だ。」
正直、嫌だ。
死んだ後も、ロミスオッドを駆け引きみたいに使うのは。
でもこれは、俺を守る為で。
敵をあぶり出す為で。
師匠が、弟子の為に戦ってくれている事だから。
「分かりました。ロミスオッドの件は、誰にもいいません。」
ラデュームにも。
「済まないな。」
師匠は、一息いれてから。
「お前は、どうする?」
俺に聞いてきた。
「お前は、ロミスオッドと共に攻撃を受けた本人だ。
犯人追跡、及び拘束する作戦に参加するか?」
なるほど、これは。
師匠の気遣いだ。
敵は得体の知れない魔法使い。
当然、危険が伴う。
それでも、当事者だから。
希望があるならば、共に戦おうと。
きっとあの時。
ラデュームにも、こんな感じで聞いたのだろう。
「俺は、遠慮します。
師匠達に任せます。」
俺は迷いなく、言った。
師匠の視線が、理由を聞いてくる。
もちろん、理由あっての判断だ。
ノリや気分で決める訳がない。
「そういうのは向いてないですし、向いてない事をやると、失敗してしまうんですよ。
開発における失敗は、成功の元であり、恐れるものではありません。
でも今回の件は、絶対に失敗したくないです。」
理由としては、それで十分だと思う。
けど、俺は続けた。
「ロミスオッドは言ったんですよ。
諦めてごめんって。
それってつまり、諦めた自分が悪いってことでしょう。
俺達の理想の世界が、悪かった訳じゃない。
俺達の理想の世界は、皆で、ゴールテープを切るんです。
全員で協力するんですよ。
そこに敵はいない。報復や復讐を望まない。
その世界の実現に携わっている限り俺は、そういうのから距離を取らないといけないんです。」
そう、言い訳だ。
沢山の言い訳をしなければ。
ロミスオッドの仇をこの手で八つ裂きにしたくなる。
そんなの。
あの頃の俺とロミスオッドは、目指していない。
目指した世界は、もっと、きれいだったから。
「俺は、平和主義者ではありません。
でも、平和は好きです。
暴力を憎みます。
そして、暴力を認めます。
俺は、いい奴ではないんです。」
ラデュームは凄い人で。
ロミスオッドは純粋な人で。
そして俺は、ずるい奴だ。
それでも。
実現したい、理想がある。
「距離を置くのが、仕切りをするのが大事なんです。
道に、ゴミが落ちていたら拾います。
ゴミ処理場は大事だと思います。
でも、その近くには住みたくありません。
近づくのなら、仕切りを越えるなら。
敷居を跨ぐときは、是非、靴を脱いでもらいたい。」
要約すると。
ロミスオッドの仇を、俺の見えない所で殺してくれと。
そういう、ずるい話。
俺は、興奮気味で。
今、肩で息をしている。
感情に任せて一気に喋った。
もう何言ったか、自分でもよく覚えていない。
要領を得ない話を聞かせてしまい、師匠には悪いと思う。
その罪悪感で、余計に気が重くなる。
「分かった。
進展があれば、伝えるよ。」
師匠の声音は、優しいまま。
その後二人で、秘密裏にロミスオッドを火葬した。
彼は異世界人。
当然、親族なんかもいなくて。
俺達と出会う前から、師匠が親代わりだったらしい。
言葉の分からなかった異世界の子供を育て上げたのは流石だし。
子供同然のロミスオッドがこんな事になってしまい、その悲しみは計り知れない。
それから。
彼の死を隠すとともに、俺の持っている2機のMDFの存在も隠してもらえた。
公式には廃棄された事にして、隠し持っている感じだ。
理由は二つ。
廃棄されたとされる3機のMDF。
本当に廃棄されたのか怪しいという疑いが出たから。
証拠の捏造は敵の得意分野。
もし盗まれていたとしたら、そして使える者が現れたなら。
それに、対抗する為に。
そして、もう一つの理由は。
ロミスオッドが。
きれいだと言ってくれたから。
俺は定期的に、調査報告を聞いた。
あまり進展はなかった。敵は動かなかった。
結局、師匠が死ぬ時になっても、不明のまま。
そして、おそらくもうヨダーシルにはいないだろうと、調査は打ち切られる。
30歳、春。
ロミスオッドが死んで3年。師匠が死んで調査が終わり1年。
西区が、襲撃される。
その後にばら撒かれた、偽装証拠の数々。
俺は、確信している。
俺の友達の、ロミスオッドを殺したのは。
異世界の、ロミスオッドだ。
回想は、お終い。
ユンゼスの話はもう少しだけ続いて。
それが終われば、中盤も終わり。
いよいよ終盤です。




