表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第四章 理想家オーズンの四人の後継者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

140/170

第139話 北区VS東区~clear~

~現在の状況~


北区と東区が激突。

リハネVSワッポノの決着間際、カナミアが乱入。リハネVSカナミアが発生。

ワッポノは東区本陣に突撃。ラデュームを討ち取る為、攻撃するが何者かに防がれる。


◇登場人物◇ ※●が視点者

__ヨダーシル・南区

●クレスタ  :ワッポノ捜索隊

●ユンゼス  :南区の区長


__ヨダーシル・北区

〇ワッポノ  :マーアの勇者

〇ロミスオッド:北区の区長

〇カナミア  :アイーホルの勇者。洗脳状態


__ヨダーシル・東区

〇リハネ   :ゾトの勇者

〇ラデューム :東区の区長


□セイ    :色々できる腕輪型のデバイス。人工知能(AI)搭載

*クレスタ視点*前日、三人の話し合いの続き。


「カナミアさんは、マシンDFドラゴンフォームを使えると思う。

 しかし、ワッポノ君ほどのパワーアップはしないはずだ。」


 私の質問に、ユンゼスさんが答えてくれる。


「本来、道具っていうのは。

 魔道具でも機械でもそうだけど、誰が使ってもその性能に変化はない。

 例えば、フフゴケ商会の掃除機。

 ボタンを押すと、埃とか吸い取ってくれる。

 吸い取る力は、誰がボタンを押しても変わらないんだ。

 動力に魔力を使おうが、エレキを使おうがね。

 もちろん、掃除の結果は、やり方とか手入れの有無とかで変わるけど。

 同じ掃除機を使うなら、そこには平等性がある。」


 フフゴケ商会商品開発部の主任としては。

 ヨダーシルの開発者に、商品が認知されていて嬉しい。


「でも、マシンDFドラゴンフォームはそうじゃない。

 人が、道具を使うという感じじゃないんだ。

 言ってみれば、使用者もマシンDFドラゴンフォームの一部。

 使う部品が合っているかどうかで、性能が全然違う。

 使えたとしても、使わない方が強いなんて事だってある。

 使用者から見れば、平等性なんて欠片もない。」


 使う人の為の道具ではなく。

 強くなるという目的の為に、使う人を部品にする道具なのね。


 …ポノ君が心配になる。

 このまま使い続けて、大丈夫なの?


「正しく、欠陥兵器だな。」


 ラデュームさんが、ため息と共に続ける。


「ワッポノは相性がよかった。だから、あれほど強くなった。

 仮に5倍強くなったとしよう。

 そしてカナミアは、ワッポノほど相性がよくない。

 2倍しか強くなれなかったとする。

 しかし、元が全然違うだろ?

 ワッポノの戦闘力が20だとすると、カナミアの戦闘力は100ぐらい。

 マシンDFドラゴンフォーム使用後は、ワッポノが100でカナミアが200だ。

 …ここまで単純じゃないだろうが、そういう事だろ?」


「カナミアは洗脳状態だから、動きが鈍くなったりは…。

 いえ、無いわね。

 寧ろ逆。

 遠慮とか、躊躇いが無い分、強いかも。」


 リハネとカナミアの実力は拮抗していた。

 戦闘力向上率200%なんていらない。5%でも上がれば、私達は勝てない。


「カナミアさんが、どれくらい強くなるかは、正直わからない。」


 ユンゼスさんが、頭を下げた。


「ごめん。」


 そのまま続ける。


「隠したかったんだ。保身のために。

 開発中止になったマシンDFドラゴンフォームを廃棄処分しなかった事を。

 それが、こんな事になってしまった。」


 保身の為。

 じゃないと思う。


 でも今は、そこを追求しても仕方がない。


「俺の知っている事は、全部、話す。」


 ゆっくりと、ユンゼスさんは顔を上げて。


「まずは、敵が持っているマシンDFドラゴンフォームについて。」


 データが送られてくる。


「ワッポノ君の、黒い鎧。

 名前は、ダークネス・フレア・ドラゴン(DFD)。

 特徴は、防御力。

 そして、固い装甲だから使える魔法がある。

 本来なら、自身もダメージを受けるようなものとかも。」


 カナミアの、雷光龍風を熔かした魔法ね。


「ロミスオッドの、白い鎧。

 名前は、インベージョン・クリア・ドラゴン(ICD)。

 特徴は、隠密性。

 だったんだけど。

 戦闘映像を見る限り、戦闘力は想定より高い。

 こっそり侵入というより、無理やり侵略する感じだ。

 ロミスオッドとの相性がよかったのか、改造したのかは分からないけど。

 おそらくワッポノ君と同等の力がある。」


 高い隠密性で敵に近づいて、高い戦闘力で圧倒する。

 厄介ね。


「そして、カナミアさんが使うと思われるもの。

 名前は、ライトニング・レイジ・ドラゴン(LRD)。

 白銀に金の差し色が入った見た目で、特徴は敏捷性。

 カナミアさん自身も、高速戦闘が得意だったから、その点でも相性はいいと思う。

 推測というか、ただの予想だけど。

 現時点で、ヨダーシル最強だと思う。」


 それは、そうかも。


「それで、完成品の最後の一つだけど。

 名前は、インディビジュアル・クリア・ドラゴン(ICD)。」


 あ、ロミスオッドさんの物とイニシャルは同じなのね。


「色は、薄い水色かな。

 最初に造られたマシンDFドラゴンフォームだよ。

 以降のシリーズのベースになってる。

 これの防御力を上げたのが、ダークネスフレアドラゴンみたいな。」


「つまり、没個性って事か?」


「まあ、そうかな…。

 あ、いや、一つ特徴があった。」


 なんとなくだけど。

 碌な特徴じゃあない気がする。


「最初に造ったやつだからね。さじ加減が、よくわからなくて。

 魔力上昇率は群を抜いていると思う。その、人体への影響も。」


「なるほどな。

 他のもイカレているが、中でもヤバイやつだというのはわかった。

 で、それがどこにあるのか知っているのか?」


「知ってる。」


 ユンゼスさんは、自分の袖をめくった。


「これがそうだよ。」




*ユンゼス視点*現在


「誰なんだよ!お前は!?」


 ワッポノ君は、叫びながら剣を振るう。


 鋭い攻撃だ。


 彼は、リハネと戦って。その後、竜機兵りゅうきへいの防衛ラインに突っ込んでいる。

 もう、魔力はほとんど残っていないのに。


「俺はユンゼス。南区の区長だ。」


 問われたから、答える。

 迫る剣を、両手で防御しながら。


「覚えているかな。

 あの砂浜で、君に列車のチケットを渡した男だよ。」


 ワッポノ君は、攻撃の手を緩めない。

 このまま俺を両断してやるという気迫がある。


「ツツジさんとクレスタさんがいるんだ。

 君を迎えに来ている。

 だから、帰ろう。マーアに。

 こんなに強くなったんだ。目的は、果たせたんじゃないか?」


 まだ、なんとか押さえられているけど。

 正直、きつい。


 剣がぶつかる両腕もだけど、身体全体が痛い。

 インディビジュアルクリアドラゴンの反動だ。


「今の俺は、魔王を倒せるか?」


 押し殺した声。


 彼は、覚えていてくれた。

 もちろん俺だって、忘れていない。


 『君を強くして見せる。クーランの魔王よりも。』

 そう言ったのは、俺だ。


 そして今のワッポノ君は、魔王より強くない。


「まだ帰れるか!!」


 ワッポノ君が、剣を投げた。


 剣を注視していた俺は、明後日の方向に向かうそれを追ってしまう。

 つまり、ワッポノ君の姿を見失い。


 顔面に、拳が叩き込まれた。


 (ああ、痛いな…。)


 彼の、悲痛な叫びが。


 ワッポノ君の手元に、剣が戻っていく。

 火縄ファイアーロープとか、そういう魔法だろう。


 俺に向かって振り下ろされる、それを。


 俺は手で防がないし、避けない。


 ドゴンという衝突音。

 剣が出す音じゃない。


 ワッポノ君の剣は、俺の肩に直撃。

 その装甲に阻まれ、止まった。


マシンDFドラゴンフォームを使わなければ、俺は君より弱いよ。」


 その表情は見えないけれど。

 きっと悔しそうな顔なのだろう。


 そして、その腹に。

 思い切り拳を叩き込む。


 ありったけの魔力を込めて。


「…がはっ…!」


 彼は、二、三歩よろめいて、後ろに下がる。


 ガラスが割れる音がして、ダークネスフレアドラゴンが砕け散った。


 お腹を押さえながら、両膝をついて、くの字に倒れるワッポノ君。


 これで、力は示せたはずだ。


インディビジュアルクリアドラゴンって言うんだ。

 望むなら。これを君に譲ってもいい。」


 彼は倒れたまま、俺を睨みつけた。

 興味を持ってくれたようだから、続ける。


「今は俺用に調整してあるから、すぐには渡せない。

 南区に来てほしい。君用に、調整する。」


 それで魔王より強くなれるかは、未知数。


 でもそこは、俺が頑張ればいい。

 元々、そうするつもりだったんだ。


「俺に、約束を果たさせてくれないか?」


 彼の前に屈みこんで、手を差し出す。


 彼に、選んでほしかったから。


「…俺…は、」


 俺を睨んだまま、彼は言う。


「北区の、皆の…為に!戦うと、決めた…!」


 頭に、強い衝撃。


 確かに、彼に拒否されたのはショックだったけど。

 それとは別。


 物理的に。

 俺は蹴っ飛ばされた。


 コロコロ転がって、仰向けで止まる。


 視界の先にいたのは、白の鎧。

 インベージョンクリアドラゴンだ。


 俺は油断しきっていたけど、インディビジュアルクリアドラゴンにも探知機能がある。


 (それを、かいくぐるとは。流石の隠密性だ。)


 来てしまったのだから、文句を言っても仕方が無い。


 でも、奴がここにいるという事は、一つの可能性がある訳で。

 心が、ざわつく。


「すみません、ワッポノさん。

 少し、手こずってしまいまして。」


 ロミスオッドは、小脇に抱えたワッポノ君に語りかける。

 なんらかの魔法で、上空に浮かびながら。


 ワッポノ君の反応は、ない。無事だとは思うけど。


「ロミスオッド!」


 よろよろと立ち上がりながら、その名を。

 友の名前を、叫ぶ。


「それ。

 やはり、あなたが持っていたんですね。」


 それ、とは。

 インディビジュアルクリアドラゴンの事だろう。


 そうだよ。ずっと俺が持っていた。


「俺は、ロミスオッドの最期を看取った。

 お前は、並行世界のロミスオッドなのか?」


「その通りです。」


「…お前の目的は、なんだ!?」


 本当は。

 酒でも飲みながら、ゆっくり語りたい。


 でも、そんな状況じゃないし、そんな時間もないだろう。


 だから。

 俺が、一番気になっている事を聞く。


「決まっているでしょう。

 新都市長になる事ですよ。」


「それは手段だ。

 新都市長になって、遂げたい目的が聞きたいんだ!」


 蹴られた事で、魔力探知が不調だ。

 近くに誰かいるかどうか、わからない。


 ラデュームとかが聞いていないな、と思いながら、叫ぶ。


「力になれるかも知れないだろ!」


 あいつは、西区を襲撃して。

 あいつは、ワッポノ君を唆して。

 あいつは、ひょっとしたら俺の仲間を殺してきたかもしれなくて。


 罰を受けるべきだと思う。


 それでも。

 これも、俺の本心だ。


「なるほど。

 相変わらず、イカレているようですね。」


 この反応は。

 こいつは俺を知っている。


 並行世界の住民だとしても。

 俺の友達だった、ロミスオッドなのか?


「ですが。

 そんな時間はありません。」


 ロミスオッドはワッポノ君を連れ、猛スピードで飛んで行く。


 魔力は、まだ残っていた。

 全力で追いかければ、追いつけたかもしれない。


 追わなかったのは。


 例えば、罠があるかもしれないし。

 奥の手があるかもしれないし。

 そうなれば、勝てるかどうかもわからないし。

 負けて、インディビジュアルクリアドラゴンを奪われるのは避けなければいけないから。


 そんな言い訳ばかり浮かぶのは。


 ワッポノ君に、拒絶されたからで。

 そんな状況でロミスオッドを倒したとしても…。


 (いや、違うか…。)


 ロミスオッドを倒せば、ヨダーシル内の戦いが終わる。被害がこれ以上でない。

 ワッポノ君を拘束してでも連れてこれれば、説得はツツジ達がしてくれる。


 つまりは要するに。

 俺は、ロミスオッドと戦いたくなかっただけだ。


 向かってくるなら、まだ戦えた。

 しかし、こちらから追いかけてまでは、流石に。


 (…。)


 マシンDFドラゴンフォームを解除して。

 あいつが飛んで行った空を、ぼんやりと眺める。


「おい。」


 ラデュームに小突かれる。


「呆けている場合じゃないぞ。

 敵は退いたんだ。

 前進して、包囲網を狭める。準備しろ。」


 これだけ早く俺に接近できたということは。

 割と近くにいたのだろう。


 さっきの会話は、聞かれていたかもしれない。


「…わかったよ。」


 パン、と。

 頭を叩かれた。


 え、このタイミングで?


「バカ野郎が。」


 彼は、俺を見ない。


「まずは、状況の確認からだ。

 ついてこい。」


 早足で進む彼の後を。

 少し離れて、ついていく。

ユンゼスの目指す、誰もが幸福な世界。

果たしてこの『誰も』は、どこまでが対象なのか。

別人とはいえ、並行世界の同一人物。友達と同じ顔だから、手を差し伸べるのか。

どうなのか…。

みたいな話です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ