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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第四章 理想家オーズンの四人の後継者

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第138話 北区VS東区~RAGE~

~前回までのワッポノ~


俺は強くなった。

リハネのブレイブフェニックスだって、破った。

それでも。俺はリハネには及ばない。


◇登場人物◇ ※●が視点者

__ヨダーシル・南区

●クレスタ  :ワッポノ捜索隊

〇ユンゼス  :南区の区長


__ヨダーシル・北区

●ワッポノ  :マーアの勇者

〇ロミスオッド:北区の区長


__ヨダーシル・東区

〇リハネ   :ゾトの勇者

〇ラデューム :東区の区長


__ヨダーシル・西区

〇カナミア  :アイーホルの勇者


□セイ    :色々できる腕輪型のデバイス。人工知能(AI)搭載

*クレスタ視点*前日、三人の話し合いの続き。


「もう少し、いいかしら?」


 情報共有は済んだし、明日に備えないといけない。

 だから、これで解散。


 そんな雰囲気だったけど。


「具体的な作戦を立てたいわ。」


 私達がディオルに勝てたのは、しっかりと作戦を立てられたからだと思うから。


「…リハネを呼ぶか?」


「まずは、この三人で。

 もちろん、最終的には彼女の意見も聞きたいけど。」


 あの子は、自分の動かし方は上手い。

 行動力、決断力、直感は素晴らしい。


 ただ、他の人の動きには無頓着というか。


 だからこの場に呼んで頭を使わせるぐらいなら、休んで魔力や体力を回復してもらいたい。


「まずは、そもそもの目的の確認なのだけど。

 私達の勝利は、ロミスオッドさんの拘束。

 その為に北区へ侵攻する。っていう事で合ってるかしら?」


「合っている。

 何をするにしても、それが最初だ。

 捕まえられれば、罪を白状させる事も、償わせる事も出来る。

 攻撃される事もなくなるから、この件は解決だ。」


「…敵は、居住区をいきなり襲撃した。

 そういう事をしてくる相手で、しかも偽情報をバラまくような工作も得意なんだ。

 だから、時間を与えたくない。

 今回はラデュームのやり方が、結果的に被害を抑えられると判断するよ。」


 そこは、まあ、同意かな。


「ラデュームさんは、東区は負けないと信じている。

 東区は実力主義で、当然、戦闘面にも力を入れていて。

 だからこその作戦だと思う。

 ただ、向こうにはマシンDFドラゴンフォームが2機。

 黒い方は勇者を追い詰め、白い方は勇者の仲間二人を倒している。

 こちらにはリハネがいて、竜機兵りゅうきへいタイプCが30機ある訳だけど。

 本当に押し切れる?勝てる?」


「勝てる。」


 即答とは、心強い。


「今の東区は、南区の支援を受けられている。

 つまり、物資、物量が北区と段違い。

 竜機兵りゅうきへい以外の魔道具だってある。

 そして、マシンDFドラゴンフォームには弱点が二つ。

 一つは、使用者が限定される事。

 もう一つは、魔力消費量が凄まじい事。

 もって30分。

 1機はリハネが押さえる。

 もう1機は物量で堪え切る。

 30分なら、確実にいける。」


 なるほどね。

 でも、そうなると。


「西区を襲撃すれば、東区と南区が組む事は予想できる。

 物量の差は向こうも承知のはず。

 でも、実行した。

 せざるを得ない事情があったのかも、っていう希望的観測を除くとね。

 物量の差を覆せる勝算があると考えるべき。」


 特に今回は、手際のよさからも周到に準備してきたのだと分かるしね。


「ユンゼスさん。

 マシンDFドラゴンフォームって、何機あるの?」


 開発が中止になった欠陥兵器。

 しかし既に、2機でてきている。


「…全部で4機。あと、未完成品が1機。」


「はぁ!?お前…。」


 ラデュームさんが勢いよく立ち上がり、着席した。


「最初に言えよ…。

 いや、俺も、そんな事にも思い至れないほど、血が上っていたか。

 悪かった、取り乱して。

 クレスタも、ありがとう。大敗する所だった。」


「いえいえ~。」


 頭を掻きながら、ラデュームさんはユンゼスさんを睨む。


「その未完成品を完成させていたら、最悪5機のマシンDFドラゴンフォームを相手にしないといけない訳だが、何か手はあるか?」


 勇者クラスの敵が、5人…。


 マーアに戻ってディオル達を連れてくる案が浮かんだけど、無理ね。

 往復で一週間近くかかる。


 それだけの時間があれば。

 おそらく大勢は決まってしまう。


「いや、5機が敵になる事は絶対にないよ。

 …でも、あと1機は、向こうにあるかもしれない。」


「絶対あるだろ。

 そう考えるなら、西区を襲撃するなんてバカな行動に納得できる。

 アイーホルの勇者を潰したんだ。

 彼女がいれば、こっちは3機のマシンDFドラゴンフォームに対抗できるから。

 まんまと各個撃破された訳だ。」


「カナミアの件でも、一つ気になる事があるわ。」


 まだ問題があるのか?みたいな空気になる。


 まあまあ。

 背けたって無くなる訳でもないし。

 洗い出しておきましょうよ。


「連れ去られたのよ。

 もちろん、生きているなら嬉しいわ。私達はね。

 でも、向こうからしたら、何故?という話よ。」


「普通に考えるなら、交渉材料にする為とか?

 …でも、そうか。」


「そう。

 誰と交渉するの?っていう話なのよ。

 ソルテローラさんは放置されている。

 ヨダーシル内で交渉するなら、影響力のある彼女を連れ去ったほうがいい。

 この戦いの後、勇者隊やアイーホルと交渉したいからっていう可能性は残っているけど、リスクの方が高いと思う。

 ラデュームさんも言ったように、彼女がこちら側なら、私達の勝率はグッと上がる。

 まず、彼女を助けて。

 その後に、正面からやり合えばいい。

 逆に彼女を殺してしまえば、その勝ち筋が消える。

 報復を恐れている?それはないと思う。

 そうなら、そもそも西区を襲撃したりしない。」


「あの場にはワッポノがいた。

 その場で殺すと、彼との関係が悪くなると思って、一先ず連れ去る事にして。

 だから、既に殺されている。その可能性は?」


「ないよ。

 こんな状況だからね。

 北区に探知魔法を使わせてもらったよ。

 そして、カナミアさんと思われる魔力反応があった。

 彼女は生きている。…1時間前の情報だけど。」


 そこまで生かされていたなら、殺される事もないでしょう。

 それに。


「ユンゼスさんは、言ったわ。

 『ヨダーシル内で、幻惑魔法を使えば痕跡を辿れる。この時『は』幻惑魔法を使っていない。』って。」


 二年前。

 魔王城からウーイングに戻る旅の途中。

 トワと色々話をして。幻惑魔法についても、それなりに聞いた。


「私の仲間に幻惑魔法に詳しい子がいるのよ。

 その効果はピンキリ。

 ちょっとした見間違いを起こさせるものから、世界の理に干渉するものまで。

 人を催眠状態に陥らせて、意のままに操れる。なんて、凶悪なものもあるそうね。」


「…おい、ゼス…。」


「…西区の襲撃の後に、幻惑魔法が使われた形跡はあった。

 おそらく、強制誤認フォースミステイク

 大掛かりで、個人差の大きい魔法だよ。

 発動するまで1時間くらいかかって、効果は48時間くらい持続する。…らしい。」


 ラデュームさんが、天を仰ぐ。


「手駒にする為に、連れ去ったって事かよ…。」


 …まあ、最悪は考えておくべきよね。


マシンDFドラゴンフォームの弱点の一つって、使用者が限定される事よね。

 魔力の質の問題で、多くの者は耐えられないから。

 …例えばなんだけど。

 魔力の質がやっぱりあっていなかったとして。

 でも、魔力制御がとても上手で。

 魔力の質の変化にも、魔力上昇にも耐えられる精神力がある人なら?」


 西区を襲撃して、上手く拘束できるとは限らない。

 逃げられる可能性もあるし、死んでしまう可能性も。

 だから、使用者は用意していたはず。


 でも、もしも。

 その使用者より、上手く使える人物がいたとしたら。


「カナミアって、マシンDFドラゴンフォームを扱える?」




*ワッポノ視点*現在


 マシンDFドラゴンフォームには、相手の魔力量を測定し、数値化、可視化できる機能がある。


 ただ、魔力量というのは一定ではない。


 例えば、魔法を使う時。

 周囲の魔力も使い魔法を使うなら上昇するし、放てば減る。


 他にも、出力を上げる事で一時的に上昇させる事も出来るし。

 なんなら平時でもだ。少し動いただけで上下はする。


 要するに、測定された値が絶対ではないという事だ。


 とはいえ、参考にはなる。

 いきなり半分になったり、2倍になったりはしないから。


 明らかな格上とか、格下とか。

 ハッタリ、空元気、やせ我慢。

 そういう判断材料としては優秀なんだ。


 だからこそ、驚愕する。

 リハネの魔力量の急上昇に。


 冷静に考えれば、簡単な仕掛けだ。

 増えたのではなく、隠していた。


 正しく測定されないように、魔力の出力を減らしたんだ。

 魔力制御が得意なら、そんな芸当も可能だろう。


 そんな事、本来ならする必要は全くない。


 おそらく、マシンDFドラゴンフォームに詳しい奴がいて、魔力測定機能も知っていて、だからこんな事をした。


 俺を、騙す為に。


 俺は、舐めプされている事に気づかず、打ち合えていた事に喜んで。

 まんまと術中にはまった。


 (強くなったとか、そういうのも全部!俺を嵌める為に言ったのか!)


 気づいた時には、もう遅い。

 リハネの剣は、恐ろしい速度で迫ってきて…。


 そして、俺に到達する前に何者かに弾かれた。


「♪~。」


 リハネが口笛を吹いた。


 俺は、情けなく尻もちをつく。


 その俺に。

 手が、差し伸べられる。


「大丈夫ですか?」


 金色の短髪と紫色のローブが、風に薙ぐ。


 アイーホルの勇者、カナミア。

 その両目は、どす黒く渦を巻いているみたいで。


 ロミスオッドから話は聞いている。

 彼女に幻惑魔法を使ったと。


 少なくとも、この戦いの間は味方として動いてくれると。


 その手を掴んで、立ち上がる。

 リハネを睨みつける。


 なぜか、楽しそうだ。

 分かっているのか?二対一なら、勝ち目はないぞ。


 (二対一で、戦うのか…?)


 それでいいのか?

 舐められたままで?


 このまま勝っても、何の自慢にもならない。


 (カナミアに、ここは任せてくれと、言うべきじゃないのか?)


 表示されるリハネの魔力量は、俺よりも、だいぶ高い。


「行ってください。」


「え?」


 カナミアが指さす方は、東区の本体がいる。


「北区の勝利の為に。」


 北区の勝利。

 それは、東区区長ラデュームの捕縛。もしくは、殺害。


「一人で、大丈夫なのか?」


 表示される魔力量はカナミアより、リハネの方が高い。

 昨日のダメージが、魔力消費が回復しきれていないんだ。


「大丈夫です。」


 カナミアは、リハネの方を向いて、言った。


マシンDFドラゴンフォーム、起動。』


 その音声は。

 彼女の腕から聞こえる。


ライトニングレイジドラゴン。』


 カナミアが、眩い光に包まれて。

 その魔力量が、バカみたいに上がって。


 現れたのは、金色の差し色が入った白銀の鎧。


 (…聞いていない…。)


 カナミアを仲間にしたのは聞いた。


 でも、俺の援護にくる事も、彼女がマシンDFドラゴンフォームを使える事も、知らなかった。


 (俺だけ、の力じゃないのか…?)


 勇者に張り合える力だった。


 なのに、勇者がこれを使えたら。

 俺は。


「行ってください。」


 呆けた俺に。

 もう一度、彼女が言った。


「北区の為に。」


 俺は、移動を開始した。


 リハネみたいに、移動に便利な魔法は使えない。

 だから、走る。


 走りとはいえ、ダークネスフレアドラゴンだ。

 凄い速さで移動できる。


 でも、それが。

 全力で、逃げている気がして。


 あの日、魔王から逃げた時の事を思い出して。


 目の前が、ぼやけてくる。


 (違う!逃げてない!

 北区の為、北区の勝利の為に!

 敵の大将の元へ、駆けているんだ!)


 事実だ。間違っていない。


 それなのに。




 少し前。


 リハネのブレイブフェニックスを破った時。

 降りて来た彼女は、かなり魔力量が減っていた。


 それだけ、全力で放ったのだと思って。

 それに、俺は勝ったのだと思って。


 でも実際は。

 作戦だった。手を抜いていた。


 俺は、あいつの強さに迫れてなんかいなかった。


 そして。

 カナミア。


 昨日は、あと一歩まで追い詰めて。

 きっと、もう少しで抜けると思ったのに。


 さっき見た、彼女の魔力量は。

 俺なんて、相手にならない。




 気づけば敵の本陣だ。


 集中しないといけない。

 魔力量の消耗は激しいんだ。


 気を抜いて、敗れたりすれば。

 本当に、逃げて来たみたいじゃないか。


 2機の竜機兵りゅうきへいが飛び掛かって来る。

 

 ペインフレアは温存。臨界黒王牙で応戦。

 すれ違いざまに1機を両断。もう1機は無視し、前進。


 飛んでくる光弾を、最小限の動きで躱す。


 ついでに前方に火球ファイアーボール

 竜機兵りゅうきへいに命中し、爆発。


 そのまま突っ切ろうと思ったが、2機の竜機兵りゅうきへいに邪魔をされる。


 (くそ!!)


 残りの竜機兵りゅうきへいの数は、28機。

 全てを処理するには、魔力が足りない。


 (そこにいるのは、分っているのに!)


 ラデュームの魔力は、捉えている。

 しかし辿り着くには、障害が多すぎる。


「あああああ!!!」


 吠えた。

 誰もが、俺をバカにしている気がして。


 お前には無理だと。こんな事も出来ないのかと。

 そんな嘲笑が聞こえて。


 (舐めるな!!俺は、強くなったんだぞ!!)


 勝負に出る。魔力を、かき集め、突っ込む。


 4機の竜機兵りゅうきへいが俺を囲み、2機の竜機兵りゅうきへいが上から光弾を飛ばしてくる。


 構わず駆け抜けて。


 魔法を、使う。


 魔法名、フレアボム。


 効果は、シンプル。

 自身を中心に、爆発を起こす。


 所謂、自爆技。

 火力が分散されるから、ペインフレアよりも威力は劣る。


 それでも。

 周囲の邪魔者を消し飛ばす事には、成功。


 そして道が開けた事により。


 (見つけたぞ、ラデューム!)


 奴は、堂々と突っ立っていた。

 大将としての自覚があるのか?


 (弱いくせに!俺の一撃だって耐えられないくせに!)


 その態度に、怒りを覚える。


 (その、傲慢さを、あの世で悔め!!)


 最早、障害物はない。


 勢いのまま、言葉通り潰してやろうと。


 俺は駆け、剣を振りかぶり。


 そして。


「…なんだよ…。」


 俺の攻撃は、防がれた。


 ラデュームと俺の間に、割って入った何者かに。


 そう。

 何者か、だ。


 誰だかは分からない。見た事はない。そもそも、その顔は見えない。


 透明、いや、薄い水色。

 透き通るような、鎧のようなもので、全身を覆っていて。


 そう。

 正体は分からない。その名称も知らない。


 ただ一つわかるのは。


 俺の攻撃を。

 マシンDFドラゴンフォームの、ダークネスフレアドラゴンの一撃を防いだのは。


 マシンDFドラゴンフォームの、何かだ。


「誰なんだよ!お前は!?」


 俺は叫ぶ。

 悔しくて。


 俺の力は。

 全然、俺だけの力ではなかった。

勇者に助けられ、手を差し伸べられる。

今回のポノは、ガットルとの対比です。

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