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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第四章 理想家オーズンの四人の後継者

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第137話 北区VS東区~炎VS炎~

~前回までのリハネ~


ポノはどうやら、ろくでもない野郎に利用されているらしい。

まあ、あいつはまだ子供だしな。

引っぱたいて目を覚まさせてやるか。


◇登場人物◇ ※●が視点者

__ヨダーシル・東区

●リハネ   :ゾトの勇者

〇ラデューム :東区の区長


__ヨダーシル・北区

●ワッポノ  :マーアの勇者

〇ロミスオッド:北区の区長


□セイ    :色々できる腕輪型のデバイス。人工知能(AI)搭載

*リハネ視点*


 西区襲撃の翌日、午前中。

 私達、東区の軍隊は北区へ侵攻を開始。


 20人の兵隊と、30機の竜機兵りゅうきへいタイプC(全長2.5m)。

 それから、魔道具を積んだ魔走車。

 二列に並んで、街中を闊歩する。


 ゲートを越え、北区へ。


 西区や南区なら、すぐに居住エリアだ。


 しかしここは。

 手入れのされていない、でこぼこした丘が広がっていた。


 (壁一枚で、随分雰囲気が変わるものだ。

 棲み分けが出来ている。というか、感覚的には別の街なんだろうな。)


 長閑な風景を、武装した集団が無粋に進む。


 そんな私達を出迎えてくれたのは、同じく無粋な武装集団。


 (居住エリアはまだ先だな。思い切り戦っても、被害はでないか?)


 こういう事を想定して、区を造ったんだろう。

 少し尊敬する。私には、そんな長期計画は無理だ。


「東区、区長、ラデュームだ!

 北区、区長、ロミスオッドに話がある!」


 堂々と前に出て、道具は使わずに叫ぶ。

 よく通る声で、迫力がある。


「何です?」


 その声は、自分の着けているセイから聞こえた。

 相手は姿を見せる気はないらしい。


「西区の襲撃、及び偽情報流布の犯人はお前だと分かっている!

 証拠の映像だってあるんだ!

 大人しく捕まり、裁きを受けろ!」


「奇遇ですね。証拠の映像は、私も持っているんですよ。」


 セイがデータを受信する。

 動画だ。


 (私だな…。)


 真夜中の西区で私とカナミアが戦っていた。

 ラデュームの横槍でカナミアが倒れ、連れ去られる。


「すげぇな…。」


 ラデュームが呟く。

 私もそう思う。


 当然、全く覚えのない事。

 でも動画をみる限りだと、実際に起こった事のようだ。


「なあ!

 折角のその技術!

 真っ当に使う気はないか!

 その気があるなら、便宜を図る!」


 はは。こんな堂々と言ったらダメだろうに。


「お断わりです。

 武力で押さえつけようとする輩に、従う気はありません。」


「…まったく、もったいないねぇな。」


 ラデュームが、私を見た。


 頷く。

 大丈夫だ、やる事は分かっている。


「ロミスオッド!

 多数の容疑で、お前を拘束させてもらう!」


 それが開戦の合図。


 私は、全力の噴出炎ジェットファイアー


 誰よりも速く、敵中に突っ込む。


 敵の布陣は、武装魔走車が3台に、竜機兵りゅうきへいが12機。


 街中にあるには物騒だが、勇者を相手にするには力不足。


 光弾を発射する為に向けられた腕を斬り落とし、胴体も薙ぐ。

 あっという間に、1機の竜機兵りゅうきへいがスクラップになった。


 そのまま、もう1機お釈迦にしてやろうと剣を振るって。

 それが、止められる。


 黒い鎧の奴によって。


 もちろん、私は手を抜いたりしていない。

 でも私の剣は奴の剣に阻まれて、力を、魔力を込めても振りぬけない。


「♪~。」


 思わず、口笛が出る。

 楽しくなってきたじゃないか。


 黒の鎧を、思いっきり蹴っ飛ばして距離を取る。

 追撃はされない。


「…黒いの発見。白いのは見当たらない。」


 連絡を入れる。


 果たして目の前の連中は、第一防衛ラインなのか、囮なのか。


 何にせよ私は。

 ここで戦うだけだ。


「なあ、お前。そこの、黒いの。」


 ただ。

 戦う前に、確かめたい事がある。


「お前、ポノなんだろ?

 久しぶりだな。ちゃんと食ってるか?」


 反応は、無い。


「なあ、顔を見せてくれよ。

 大丈夫だよ。再度、起動するまで攻撃なんてしない。

 マシンDFドラゴンフォームを解かせて、その隙に倒そうとか姑息な真似、する訳ないだろ。」


 本当に、中身がポノじゃない可能性もある。

 そうなると色々変わってくるから、ここはハッキリさせたい。


 挑発を続ける。


「ポノはさ。

 私を倒したいだろ?

 マーアの勇者は、ゾトの勇者に勝ったって言いたいんだろ?

 でもさぁ。

 この状態でお前が私を倒したとしてもだ。

 私は、ポノに負けたなんて思えない。

 だってポノかどうか、分からないんだから。

 …実力で勝ったとしても、替え玉を使われたなんて、思われたくないだろ?」


 ガラスが割れるような音がして。

 ポノが、現れる。


「ふっ。」


 笑ってしまった。

 ポノが単純だからじゃない。


 安心したからだ。


「なんだよ、いい顔してるじゃないか。」


マシンDFドラゴンフォーム、起動。』


「グレて、家出したって聞いたからさ。

 なら、一発ぶん殴って連れ戻さないとって思ったけど。」


ダークネスフレアドラゴン。』


「守るべきモノが、ある奴の顔だ。

 なら、お互いの、譲れないモノの為に。」


 黒い鎧が、突っ込んでくる。


「戦うだけだ!全力でな!!」


 思い切り剣を振り下ろす。




*ワッポノ視点*


 ロミスオッドに賛同した訳ではない。


 あの男は何かを隠している。

 だから、どこまでが真実かなんて分からない。


 それでも。

 あの男は、約束を守ってくれた。


 俺を、強くしてくれた。

 戦いの場を用意してくれた。


 なにより。

 北区の皆は。


 俺を信じてくれている。


 なら。


 戦うさ。喜んで。




 振り下ろされた剣を、横に移動して躱す。

 そのまま火球ファイアーボールを放つ。


「!?」


 回し蹴りが飛んできた。

 俺の火球ファイアーボールを避けながら。


 躱せず、受ける。

 せめて体勢を崩さないように、踏ん張って。


「いってぇなっ!」


 悪態をつきながらリハネが下がる。

 ダークネスフレアドラゴンの装甲を甘く見るからだ。


 追撃する。

 火球ファイアーボールを連続で放つ。


 リハネは飛んだ。噴出炎ジェットファイアーで、空高く。


 避けるには、大きすぎる動き。

 そう、避ける為じゃない。攻撃の為の行動だ。


 警告音。

 上空に、高魔力反応。


 (ブレイブフェニックス…!)


 セイを使って、周囲の竜騎兵りゅうきへいを下がらせる。

 奴は、この辺り一面を焼くつもりだ。


 (あいつが、俺に。ブレイブフェニックスを…。)


 当然ながら。

 模擬戦で使っていい魔法ではない。


 だから、俺はもちろん、他の人にだって一度も使われた事はない。


 けれど。

 俺は知っている。


 勇者隊の上位3名くらいとリハネが、偶にだが、隠れて戦っていて。

 その時は、実剣で、しかもブレイブフェニックスも使っているという事を。


 (今の俺は、あいつに、ブレイブフェニックスを使わせるほど、強い!!)


 1年前。

 『強くない』と言われた。


 大声を上げながら逃げ出したかった。クーランの魔王から逃げたように。

 情けなくて。


 だから、今のこの状況に。

 込み上げてくるモノがある。


 でもまだだ。

 あれに、あっさり殺されるようでは、結局何も変わっていない。


 (あんなに離れられたら、俺の火球ファイアーボールじゃ届かない。)


 妨害は出来ない。


 (俺のスピードでは、避けられない。)


 なら、やる事は一つだ。


 納刀し、右手と左手。

 それぞれに、魔力を集める。


 俺の最大魔法、ペインフレア。


 ダークネスフレアドラゴンになってから編み出した魔法。

 ダークネスフレアドラゴンだからこそ使える魔法。


 そしてダークネスフレアドラゴンは、俺の力だ。


 リハネの剣から、炎の鳥が解き放たれる。

 真っすぐ、俺に落ちてくる。


 俺は、大声で吠えた。逃げる為じゃない。


 両手を上げる。その、くちばしを掴むように。


 最初に、衝撃が。

 次に、熱が。


 受け止められはした。が、このままでは蒸し焼きだ。


「ああああああ!!!」


 絶叫と共に、鳥のくちばしを上下に裂く。

 上がり続ける温度の中、魔法を引き千切る。


 瞬間、爆発が起きて。


 …ダメージはデカいし、魔力消費も相当だ。

 それでも。


「破ったぞ…ブレイブフェニックス…!」


 ダークネスフレアドラゴンは、砕けていない。


「見事だよ。ポノ。」


 地面に降り立った、リハネが言った。


「だが、次の猛攻は、どうだ?」


「望むところだ。」


「上等だよ。」


 燃える剣を振りかざし、一気に間合いを詰めて来て。


 繰り出されるのは、必殺の一撃。

 両断してやるぞ、という殺気の籠った一撃。


 ペインフレアを発動して迎え撃つ。

 掴んでやるつもりで手を伸ばす。


 失敗すれば両手が無くなり、敗北する。

 成功すれば武器破壊、勝利に近づく。


 炎と炎がぶつかって。

 爆発が起きて。


 失敗だ、掴めなかった。

 しかし、両手もある。引き分けか?


「!?」


 斬撃が迫る。

 魔力消費を上げ、装甲強度を上げる。


 右肩に激痛。

 大丈夫、取れていない。


 左腕を払う。

 それは彼女の腕を引っかき、出血させる。


 それに怯む事なく。

 再び斬撃が飛んできた。


 (ここで、決着させる気か!)


 猛攻って言ってたし。

 俺が倒れるまで、攻撃を続ける気だ。


 あるいは、自分が倒れるまで。


 向かってきた剣を裏拳で弾く。


 (掴むのは無理でも、これくらいなら。)


 スピードは、カナミア程じゃない。

 防御に徹すれば、何とかなるか?


 (ここは耐える。こいつの魔力と集中力が尽きるまで。)


 表示される魔力残量は俺の方が上。


 カナミアとの戦闘データを元に、昨日、再調整してもらった。

 魔力運用効率は更によくなり、その成果が早速でている。


 俺自身、あの戦いで学んだ事は多い。


 こいつもきっと、勝ち筋があるから攻め続けているんだ。

 切り札を、隠しもっているに違いない。


 油断はしない。

 魔力残量の確認も怠らない。


 (集中しろ!奴の切り札を防ぐまで、いや、この戦いに勝利するまで!)


「強くなったな、ポノ。」


 何発目かの攻撃を弾いた時。

 その声が聞こえた。


「なぁ、勇者って、何だと思う?」


 脈絡のない問いかけ。

 こちらの集中力を乱す気か?


「定義は、国とか時代によっても違うよな。

 国の代表だったり、国民の憧れだったり、単純に魔王を倒す者の事だったり。

 …勇気のある奴の事だったり。」


 鋭い一撃を、防ぐ。

 なんでこいつは、喋りながら戦えるんだ?


 余裕があるのか?


「あくまで、私の勇者像だけどさ。

 勇者って奴は、信念があるんだ。

 譲れないモノがある。

 それを成す為ならば、何だって出来るし、何だってする。」


 …そうだ。

 俺にもある。


 強くなって、皆を守って、皆の期待に応えて…。


「ポノ。

 お前、今、嬉しいだろ。」


 今、一瞬。

 魔力残量の数値が変だった。


「顔は見えないけど、わかるよ。

 伝わってくる。剣をぶつける度に。」


 見間違い?故障?


 違う。

 タイミング的に。雰囲気的に。


「強くなる事が目的の奴もいる。

 でも、お前は違うだろ。

 強くなる事は、手段のはずだ。

 手段を揃えただけで、何がそこまで嬉しい?

 目的は、まだ達成されていないぞ。」


 数値の変化は見逃さなかった。

 だから、その瞬間に逃げればよかったんだ。


 それが出来なかったから。


「お前はまだ。

 『勇者』の域に至れていない。」


 リハネの魔力残量が急上昇して。


 カナミアと同等か、それ以上の速度で斬撃が飛んで。


 そんなのに、俺が反応できるはずもなく。

この話から、視点が途中で変わる事が増えます。


なるべく時系列はバラバラにしないように。

分かりづらくならないようには注意していきたいと思います。

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