第137話 北区VS東区~炎VS炎~
~前回までのリハネ~
ポノはどうやら、ろくでもない野郎に利用されているらしい。
まあ、あいつはまだ子供だしな。
引っぱたいて目を覚まさせてやるか。
◇登場人物◇ ※●が視点者
__ヨダーシル・東区
●リハネ :ゾトの勇者
〇ラデューム :東区の区長
__ヨダーシル・北区
●ワッポノ :マーアの勇者
〇ロミスオッド:北区の区長
□セイ :色々できる腕輪型のデバイス。人工知能(AI)搭載
*リハネ視点*
西区襲撃の翌日、午前中。
私達、東区の軍隊は北区へ侵攻を開始。
20人の兵隊と、30機の竜機兵タイプC(全長2.5m)。
それから、魔道具を積んだ魔走車。
二列に並んで、街中を闊歩する。
ゲートを越え、北区へ。
西区や南区なら、すぐに居住エリアだ。
しかしここは。
手入れのされていない、でこぼこした丘が広がっていた。
(壁一枚で、随分雰囲気が変わるものだ。
棲み分けが出来ている。というか、感覚的には別の街なんだろうな。)
長閑な風景を、武装した集団が無粋に進む。
そんな私達を出迎えてくれたのは、同じく無粋な武装集団。
(居住エリアはまだ先だな。思い切り戦っても、被害はでないか?)
こういう事を想定して、区を造ったんだろう。
少し尊敬する。私には、そんな長期計画は無理だ。
「東区、区長、ラデュームだ!
北区、区長、ロミスオッドに話がある!」
堂々と前に出て、道具は使わずに叫ぶ。
よく通る声で、迫力がある。
「何です?」
その声は、自分の着けているセイから聞こえた。
相手は姿を見せる気はないらしい。
「西区の襲撃、及び偽情報流布の犯人はお前だと分かっている!
証拠の映像だってあるんだ!
大人しく捕まり、裁きを受けろ!」
「奇遇ですね。証拠の映像は、私も持っているんですよ。」
セイがデータを受信する。
動画だ。
(私だな…。)
真夜中の西区で私とカナミアが戦っていた。
ラデュームの横槍でカナミアが倒れ、連れ去られる。
「すげぇな…。」
ラデュームが呟く。
私もそう思う。
当然、全く覚えのない事。
でも動画をみる限りだと、実際に起こった事のようだ。
「なあ!
折角のその技術!
真っ当に使う気はないか!
その気があるなら、便宜を図る!」
はは。こんな堂々と言ったらダメだろうに。
「お断わりです。
武力で押さえつけようとする輩に、従う気はありません。」
「…まったく、もったいないねぇな。」
ラデュームが、私を見た。
頷く。
大丈夫だ、やる事は分かっている。
「ロミスオッド!
多数の容疑で、お前を拘束させてもらう!」
それが開戦の合図。
私は、全力の噴出炎。
誰よりも速く、敵中に突っ込む。
敵の布陣は、武装魔走車が3台に、竜機兵が12機。
街中にあるには物騒だが、勇者を相手にするには力不足。
光弾を発射する為に向けられた腕を斬り落とし、胴体も薙ぐ。
あっという間に、1機の竜機兵がスクラップになった。
そのまま、もう1機お釈迦にしてやろうと剣を振るって。
それが、止められる。
黒い鎧の奴によって。
もちろん、私は手を抜いたりしていない。
でも私の剣は奴の剣に阻まれて、力を、魔力を込めても振りぬけない。
「♪~。」
思わず、口笛が出る。
楽しくなってきたじゃないか。
黒の鎧を、思いっきり蹴っ飛ばして距離を取る。
追撃はされない。
「…黒いの発見。白いのは見当たらない。」
連絡を入れる。
果たして目の前の連中は、第一防衛ラインなのか、囮なのか。
何にせよ私は。
ここで戦うだけだ。
「なあ、お前。そこの、黒いの。」
ただ。
戦う前に、確かめたい事がある。
「お前、ポノなんだろ?
久しぶりだな。ちゃんと食ってるか?」
反応は、無い。
「なあ、顔を見せてくれよ。
大丈夫だよ。再度、起動するまで攻撃なんてしない。
MDFを解かせて、その隙に倒そうとか姑息な真似、する訳ないだろ。」
本当に、中身がポノじゃない可能性もある。
そうなると色々変わってくるから、ここはハッキリさせたい。
挑発を続ける。
「ポノはさ。
私を倒したいだろ?
マーアの勇者は、ゾトの勇者に勝ったって言いたいんだろ?
でもさぁ。
この状態でお前が私を倒したとしてもだ。
私は、ポノに負けたなんて思えない。
だってポノかどうか、分からないんだから。
…実力で勝ったとしても、替え玉を使われたなんて、思われたくないだろ?」
ガラスが割れるような音がして。
ポノが、現れる。
「ふっ。」
笑ってしまった。
ポノが単純だからじゃない。
安心したからだ。
「なんだよ、いい顔してるじゃないか。」
『MDF、起動。』
「グレて、家出したって聞いたからさ。
なら、一発ぶん殴って連れ戻さないとって思ったけど。」
『DFD。』
「守るべきモノが、ある奴の顔だ。
なら、お互いの、譲れないモノの為に。」
黒い鎧が、突っ込んでくる。
「戦うだけだ!全力でな!!」
思い切り剣を振り下ろす。
*ワッポノ視点*
ロミスオッドに賛同した訳ではない。
あの男は何かを隠している。
だから、どこまでが真実かなんて分からない。
それでも。
あの男は、約束を守ってくれた。
俺を、強くしてくれた。
戦いの場を用意してくれた。
なにより。
北区の皆は。
俺を信じてくれている。
なら。
戦うさ。喜んで。
振り下ろされた剣を、横に移動して躱す。
そのまま火球を放つ。
「!?」
回し蹴りが飛んできた。
俺の火球を避けながら。
躱せず、受ける。
せめて体勢を崩さないように、踏ん張って。
「いってぇなっ!」
悪態をつきながらリハネが下がる。
DFDの装甲を甘く見るからだ。
追撃する。
火球を連続で放つ。
リハネは飛んだ。噴出炎で、空高く。
避けるには、大きすぎる動き。
そう、避ける為じゃない。攻撃の為の行動だ。
警告音。
上空に、高魔力反応。
(ブレイブフェニックス…!)
セイを使って、周囲の竜騎兵を下がらせる。
奴は、この辺り一面を焼くつもりだ。
(あいつが、俺に。ブレイブフェニックスを…。)
当然ながら。
模擬戦で使っていい魔法ではない。
だから、俺はもちろん、他の人にだって一度も使われた事はない。
けれど。
俺は知っている。
勇者隊の上位3名くらいとリハネが、偶にだが、隠れて戦っていて。
その時は、実剣で、しかもブレイブフェニックスも使っているという事を。
(今の俺は、あいつに、ブレイブフェニックスを使わせるほど、強い!!)
1年前。
『強くない』と言われた。
大声を上げながら逃げ出したかった。クーランの魔王から逃げたように。
情けなくて。
だから、今のこの状況に。
込み上げてくるモノがある。
でもまだだ。
あれに、あっさり殺されるようでは、結局何も変わっていない。
(あんなに離れられたら、俺の火球じゃ届かない。)
妨害は出来ない。
(俺のスピードでは、避けられない。)
なら、やる事は一つだ。
納刀し、右手と左手。
それぞれに、魔力を集める。
俺の最大魔法、ペインフレア。
DFDになってから編み出した魔法。
DFDだからこそ使える魔法。
そしてDFDは、俺の力だ。
リハネの剣から、炎の鳥が解き放たれる。
真っすぐ、俺に落ちてくる。
俺は、大声で吠えた。逃げる為じゃない。
両手を上げる。その、くちばしを掴むように。
最初に、衝撃が。
次に、熱が。
受け止められはした。が、このままでは蒸し焼きだ。
「ああああああ!!!」
絶叫と共に、鳥のくちばしを上下に裂く。
上がり続ける温度の中、魔法を引き千切る。
瞬間、爆発が起きて。
…ダメージはデカいし、魔力消費も相当だ。
それでも。
「破ったぞ…ブレイブフェニックス…!」
DFDは、砕けていない。
「見事だよ。ポノ。」
地面に降り立った、リハネが言った。
「だが、次の猛攻は、どうだ?」
「望むところだ。」
「上等だよ。」
燃える剣を振りかざし、一気に間合いを詰めて来て。
繰り出されるのは、必殺の一撃。
両断してやるぞ、という殺気の籠った一撃。
ペインフレアを発動して迎え撃つ。
掴んでやるつもりで手を伸ばす。
失敗すれば両手が無くなり、敗北する。
成功すれば武器破壊、勝利に近づく。
炎と炎がぶつかって。
爆発が起きて。
失敗だ、掴めなかった。
しかし、両手もある。引き分けか?
「!?」
斬撃が迫る。
魔力消費を上げ、装甲強度を上げる。
右肩に激痛。
大丈夫、取れていない。
左腕を払う。
それは彼女の腕を引っかき、出血させる。
それに怯む事なく。
再び斬撃が飛んできた。
(ここで、決着させる気か!)
猛攻って言ってたし。
俺が倒れるまで、攻撃を続ける気だ。
あるいは、自分が倒れるまで。
向かってきた剣を裏拳で弾く。
(掴むのは無理でも、これくらいなら。)
スピードは、カナミア程じゃない。
防御に徹すれば、何とかなるか?
(ここは耐える。こいつの魔力と集中力が尽きるまで。)
表示される魔力残量は俺の方が上。
カナミアとの戦闘データを元に、昨日、再調整してもらった。
魔力運用効率は更によくなり、その成果が早速でている。
俺自身、あの戦いで学んだ事は多い。
こいつもきっと、勝ち筋があるから攻め続けているんだ。
切り札を、隠しもっているに違いない。
油断はしない。
魔力残量の確認も怠らない。
(集中しろ!奴の切り札を防ぐまで、いや、この戦いに勝利するまで!)
「強くなったな、ポノ。」
何発目かの攻撃を弾いた時。
その声が聞こえた。
「なぁ、勇者って、何だと思う?」
脈絡のない問いかけ。
こちらの集中力を乱す気か?
「定義は、国とか時代によっても違うよな。
国の代表だったり、国民の憧れだったり、単純に魔王を倒す者の事だったり。
…勇気のある奴の事だったり。」
鋭い一撃を、防ぐ。
なんでこいつは、喋りながら戦えるんだ?
余裕があるのか?
「あくまで、私の勇者像だけどさ。
勇者って奴は、信念があるんだ。
譲れないモノがある。
それを成す為ならば、何だって出来るし、何だってする。」
…そうだ。
俺にもある。
強くなって、皆を守って、皆の期待に応えて…。
「ポノ。
お前、今、嬉しいだろ。」
今、一瞬。
魔力残量の数値が変だった。
「顔は見えないけど、わかるよ。
伝わってくる。剣をぶつける度に。」
見間違い?故障?
違う。
タイミング的に。雰囲気的に。
「強くなる事が目的の奴もいる。
でも、お前は違うだろ。
強くなる事は、手段のはずだ。
手段を揃えただけで、何がそこまで嬉しい?
目的は、まだ達成されていないぞ。」
数値の変化は見逃さなかった。
だから、その瞬間に逃げればよかったんだ。
それが出来なかったから。
「お前はまだ。
『勇者』の域に至れていない。」
リハネの魔力残量が急上昇して。
カナミアと同等か、それ以上の速度で斬撃が飛んで。
そんなのに、俺が反応できるはずもなく。
この話から、視点が途中で変わる事が増えます。
なるべく時系列はバラバラにしないように。
分かりづらくならないようには注意していきたいと思います。




