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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第四章 理想家オーズンの四人の後継者

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第131話 技術発表会~勇者VS勇者~

~前回までのクレスタ~


北区への入区許可がもらえないまま、技術発表会の日になった。

明後日には、リハネ達が北区に立ち入り捜査をしてくれるみたいだし。

だから、今日は楽しみましょう。世界有数の技術の祭りをね。


◇登場人物◇ ※●が視点者

__勇者捜索隊

●クレスタ  :フフゴケ商会、商会員

〇ツツジ   :勇者隊、サポート員

〇リハネ   :ゾトの勇者


□セイ    :色々できる腕輪型のデバイス。人工知能(AI)搭載

□アニサ   :クレスタがカスタマイズしたセイ


__行方不明

〇ワッポノ  :マーアの勇者


__ヨダーシル

〇ユンゼス  :南区の区長

〇ソルテローラ:西区の区長

〇ラデューム :東区の区長

〇カナミア  :アイーホルの勇者

*クレスタ視点*


「これは、凄いわ~。」


 技術発表会、当日。

 私は満喫していた。


 ヨダーシルの新商品、開発中の魔道具に魔装具。

 そういった物が、そこら中にある。


 見ているだけでも楽しい。

 なにより、商会の仲間や勇者隊の皆に、お土産を披露した時の反応が楽しみで仕方ない。


 興味深そうな物を片っ端から買いあさった。

 予算は大幅オーバーだが、大満足。後悔なんて、微塵もない。


 (そろそろツツジちゃんと、合流しないとか。)


 彼女は休ませている。

 昨日は会場の準備で動きっぱなしで、疲れが残っている顔をしていたから。


 それにここは、彼女の村と比べ人が多い。

 そこまでヨダーシル製の商品に興味のない彼女は、きっと気疲れしてしまう。


 両手いっぱいの荷物を抱え、私は人込みを進んだ。




「お疲れ様です。随分、買い込みましたね。」

「ええ。ほら、お昼ご飯も買ったから、一緒に食べましょう。」


 会場の隅っこのベンチの上で、昼食だ。


 私のは、極彩色のサンドイッチ。

 折角だから、他では食べられそうにない物を食べたかった。


 対してツツジちゃんのは、マーアでよく見かけるような物を選んだ。

 体調もよくなさそうだし、食べなれている物の方がいいかと思ったけど。


 (…。)


 食の進みは、遅い。


 懸念はあった。

 中途半端に似ていると、故郷の味と比較してしまい、美味しいと思えないのではないかと。


 (ヨダーシルなら、やってくれるかもって思ったけど、ダメだったかぁ。)


 マーアの料理は、長時間煮込むものが多い。

 専門店ならともかく、出店に求めるのは無茶ぶりが過ぎるだろう。


 (というか、私が見た目で判断しただけだし…。

 あ~、私の所為か~。)


「ここまで頑張る必要が、あるんでしょうか…。」


 ぽつりと。彼女から言葉が漏れる。


「ここは凄いです。人は多いし、見た事のない物ばかり。

 どれも、あれば便利です。

 でも、なくても、困りません。

 少なくとも、マーアでは、私の村では。」


 言葉を、探しながらだろう。

 彼女は、ゆっくり喋る。


「どうしてポノは、ここに来たんでしょうか。

 なんで、まだ帰らないのでしょうか。

 ここは、私達の国よりも、よい所なんでしょうか。

 私には、わかりません。」


 列車に乗ってから、6日目。

 ポノ君が中々見つからなくて、ツツジちゃんは焦っている。


 他に出来る事がないのは分かるけど、こんな事をしていてもいいのだろうか。

 無事に見つけられたとして、連れ戻せるのだろうか。


 そういう不安で、いっぱいのようだ。


「私にも、わからないわ。」


 でも、話してくれたから。

 聞く事ができるし、会話が出来る。


 一番難しいのが、心を閉ざしてしまう事。

 おそらく、今のポノ君のように。


「だから、本人に聞きましょう。

 沢山、話をしましょうよ。

 ヨダーシルについて、マーアについて、それから、勇者隊について。」


 実はポノ君は、誘拐された可能性がある。

 でもそれなら、東区の捜査で発見できれば解決だ。


 だから今話すのは、家出少年の連れ戻し方。

 つまり、ツツジちゃんのケアだ。


「私の話は、聞いてもらえるでしょうか?」

「…。」


「私は、話しかけたんです、何度も。

 でもポノは、辛そうな顔をするだけで…。

 結局、私に何も言わずに、行方不明になりました…。」


 彼女に、そっと近づいて、軽く抱き寄せるようにする。


「私は、ダメな大人でね。

 ポノ君を、放っておいちゃったのよ。

 彼と、ほとんど喋ってないし、だから、彼の事はよく分からないの。」

「…。」


「でも、ツツジちゃんの事は少しは分かる。

 この一週間、ずっと一緒にいたからね。

 あなたは、他人を思いやれる、いい子よ。」


「私は、いい子じゃないです。」


「はい、ツツジちゃん。これあげるわ。」


 強引に、持っていたサンドイッチを渡す。


 是非、食べてみてほしい。

 そんな、ニコニコ顔で。


「…。」


 逡巡はあった。けど、それも少し。


 ツツジちゃんはサンドイッチを食べて。

 両目をつぶり、微かに震える。


 そう、これは。

 物凄く不味かった。


「…マーアでは、あまり食べた事のないタイプの、斬新な味でした…。」


 思わず、抱きしめる。

 最初は思いきり、そして苦しくなる前に緩めて、最後は優しく頭を撫でる。


 びっくりして硬直中のツツジちゃんに、伝える。


「ツツジちゃん、知ったかぶりの私を困らせようとしたでしょう?

 サンドイッチを食べて、不味いって言って、いい子じゃないアピールをしようとしたでしょう。

 でも、食べたサンドイッチが本当に不味くて。

 その衝撃で、考えていたプランが、どっかいっちゃったんでしょう。

 で、真っ白になった頭で、あなたが最初に考えたのは、このサンドイッチは不味いという事。

 そして、次に考えたのが、このサンドイッチを作った人、売った人、渡した私。

 それから、このサンドイッチを美味しいと食べる、いるかどうかも分からない人の事。

 そういう人達を、不味いの一言で否定したくなかったの。」


 それは、言われた側の、否定された側の痛みのわかる人。


 常にそういう考えであれ、とは言わない。

 どちらかといえば、考え過ぎなんじゃないかと個人的には思う。


 でもそれが。

 当たり前のように出来るこの子は。


「いい子よ、ツツジちゃんは。」

「…。」


「きっとポノ君にも、伝わるはずよ。」


 ポノ君も、余裕がなかったと思う。

 でも、ヨダーシルっていう、自分達の文化とまるで違う国へ来て。

 いい気分転換になって。


 離れた事で気づくのよ。

 ツツジちゃんという存在に。


 自分を気にかけてくれる人、好意的に見てくれる人がいる事は、嬉しいものだと。


 (そういう感じのシナリオでお願いしたいわ。)


 この、いい子が。

 笑顔で故郷に帰れるように。


 私達はしばらくそのまま、遠くの喧騒を、他人事のように聞き流して過ごした。




 午後。

 荷物をホテルへ送った私達は、模擬戦が行われる会場にやってきた。


 二人が戦う競技場は、トリッキーシューターのボックスのように透明の魔防壁で覆われている。流れ弾がこっちまでこないようにする為に。


 (コロッセオというか、サッカースタジアムというか…。)


 準備中にも思ったが、立派な建物だ。


 競技場を取り囲むように設けられた観客席に、ツツジちゃんと座る。


「予想はしていましたが、凄い人ですね。」


 午前中よりは顔色がいいツツジちゃんが、キョロキョロしながら言う。


「技術発表会なのに、これがメインみたいな…。

 確かに、戦闘の技術の披露ではあると思いますけど、二人共、ヨダーシルの人じゃないのに。」


「ふふ。

 そういう意見も多かったみたいね。

 ただ、ラデュームさんが是非にって。

 ほら、実力主義を掲げてるじゃない?

 実力者は国を関係なく重用するという意思表明でもあり、そういった実力者とも繋がりをもっているというアピールでもあるのよ。」


 少し離れた観客席が騒がしい。

 客同士のトラブルみたいで、数人が警備の人に連行されていく。


 実は、会場入口付近でも乱闘騒ぎがあって、リハネやカナミアに挨拶するのは諦めた。

 お客さんのほうが、熱くなっている感はある。


 そこまでの意図はないはずだけど。

 選挙で争う、西区と東区の戦い。みたいな構図になっているから。


 ちなみに、その時の警備員はアクスとギリュウ。

 カナミアの仲間で、彼らには軽く挨拶した。


「誰も怪我することなく、終わりますように。」


 ツツジちゃんが、手を合わせて祈る。

 観客も、それから選手もだろう。


 まあ、選手に怪我するなは無理かもだけど、死ぬような事故は避けてほしい。


 (二人共、冷静なようで、頭に血が上るタイプなのよね…。)


 それから暫くして。

 模擬戦が始まる。


 西区代表、アイーホルの勇者カナミア。

 東区代表、ゾトの勇者リハネ。


 奇しくも実現した、勇者VS勇者。


 思惑ひしめく競技場で、実力者二人が激突する。




 開始の合図と共に、リハネが突っ込んだ。


 魔剣を振り下ろし、斬り上げ、薙ぐ。

 豪快な風切り音と共に、果敢に攻める。


 カナミアは、それを冷静に捌く。


 二人共まずは小手調べ、準備運動感覚なのだろう。


 尤も、観客からすれば最初からクライマックスだ。

 開始前の騒ぎが嘘のように静まり返る。


 それほど、二人は凄まじい。


 (どう見る、アニサちゃん?)


 正直、私だと速すぎて凄い事しか分からない。

 だから、解説を頼む。


 (カナミアが優勢ね。

 リハネは、ギアを上げている。緩急をつけ、ここで決める勢いで本気で攻めている。

 カナミアは、それら全てに対応できているのよ。

 しかも。)


 カナミアから鋭い突きが放たれた。


 リハネは何とか躱し、そのまま攻め続ける。

 しかし、完全に避けきれなかったようで、彼女のつけていた額当てが落ちた。


 (あれ、わざとよ。

 避ける事も予測して額当てを落としたの。

 リハネに、実力差を見せつける為に。

 そんな余裕まである。近接戦は、カナミアの勝ちよ。)


 意外だった。


 個人的に、近接戦はリハネが有利だと思っていたから。


 だって、毎日のように勇者隊メンバーと模擬戦をしていたのだ。

 対人戦に慣れている。


 逆にカナミアは。

 ラコボーンの戦いを経験しているけど、近年は魔物戦ばかり。


 1対1。しかも実力者との対人経験は少ないはず。


 (でも、そうか。)


 カナミアが相手にするのは、並みの退治屋では対処しきれない奴。

 厄介な奴とか、特殊な奴とか、新種の奴とかだから。


 初見での対応力が、相当磨かれているみたいね。


「!」


 戦況が動いた。


 近接戦では勝てないと判断したリハネが、距離をとったのだ。


 噴出炎ジェットファイアーを使い、猛スピードで後ろへ飛ぶ。

 超低空飛行で、警戒もしたままだ。


 そう、並みの実力者が相手なら、何の問題もない行動。

 しかし相手は、カナミアなのだ。


「な!?」


 立て続けに放たれる三発の雷矢ライトニングアローがリハネに追いついた。

 彼女は防御に成功するが、低空とはいえ空中だ。

 踏ん張りがきかず、体勢を崩してしまう。


 それを、カナミアが見逃すはずがない。

 雷矢ライトニングアローか、それ以上のスピードで距離をつめてくる。


 (ディオルが距離をとる時、自分ごと巻き込む獄炎ヘルフレイムを使うのは、追撃を警戒してるからなのよね。)


 もちろんリハネも、このままやられる子じゃない。

 彼女は閃光フラッシュを使った。


 騙線トリックラインの発展魔法。

 自身を激しく発光させるだけの魔法。


 一瞬だけの目くらまし。タネがわかれば、次は効かない魔法。


 それでも、警戒したカナミアは必要以上に距離をとる。

 あのスピードで方向転換が出来る彼女は流石だが、リハネにとってはチャンスだ。


 体勢を立て直し、魔法の準備に入る。

 ブレイブフェニックス。彼女の最大の魔法。


 難点は、発動まで数秒かかる事。

 数秒もあれば、カナミアなら近づける。


 しかし彼女は、後ろに飛んだ。

 攻撃を避けた。


 (どこから?)


 当然この場には、カナミアとリハネ以外いない。

 そしてリハネは、必殺魔法の準備中。


 (最初の近接戦の時ね。)


 アニサちゃんが教えてくれる。


 (リハネは、沢山仕込んでいたみたい。

 地面に、そういう魔法球を。

 パワープレイが得意そうに見えて、中々器用なのね。)


 時間差で、相手に向かって飛んで行く魔法球?

 いや、相手に向かっていない。


 でたらめに飛び回っている。


 (おそらく、トリッキーシューターの技術。

 驚異的なのは、その数とスピード。)


 カナミアの放った雷矢ライトニングアローが、飛び回る球に当たり逸れた。


 無暗に突っ込めば、ダメージを受ける。無視するには大きすぎるダメージだろう。

 しかし、突っ込まなければ。防御に徹すれば脅威はない。


 ただし、リハネの魔法発動を許してしまう。


 カナミアは、剣を鞘に納めて身構える。

 彼女は現状を正しく理解し、選んだのだ。


 リハネの、必殺の魔法を迎え撃つ事を。


 (居合、かな?)


 彼女の愛剣、雷光龍風。

 私がいた世界でいう所の、東洋剣に似た形状だ。


 だから所謂、抜刀術とかも出来そうな形ではある。


 にわかで申し訳ないが、心身を整えるとか、そういう心構え的な話だったと思う。


 (集中している、のよね?)

 (ええ。魔力が研ぎ澄まされていくのがわかる。)


「ブレイブフェニックス!」


 リハネの突き出された剣から、燃え盛る炎の鳥が飛び立った。

 周囲を焦がし、飛び交う魔法球を蹴散らして、轟音と共に襲い掛かる、それを。


 カナミアは、真っ二つに斬り裂いた。


 多くの観客が、状況を理解できないまま。

 私も、(あ、魔法って斬れるんだ。)なんて間抜けな感想を抱いている中。


 雷矢ライトニングアローが奔る。

 障害物の消えた今、それは真っすぐリハネに飛んで行く。


 が、既にリハネの姿はない。

 彼女は必殺の魔法が斬られても、動揺する事なく次の行動へ移っている。

 勇者隊で散々叩きのめされているから、こういう事にはタフなのだ。


 火球ファイアーボールを放ちながら、烈火の如くカナミアに迫る。

 その間、右手に持つ魔剣の炎の勢いが増し続けていく。


 (最大魔法が効かないなら、中距離魔法戦は不利。

 となれば、やはり近接戦。

 最初の打ち合いは本気だったけど、魔法球の仕込みとかもやっていたから。

 今度は攻めきれると判断したようね。)


 アニサちゃんの解説の最中、リハネが飛んだ。


 (でも、カナミアに読まれている。)


 いや、飛ばされたのだ。カナミアの風魔法で。


 上空高くに打ち上げられて、しかも魔法の妨害つき。

 リハネは思うように動けない。


 その彼女に。

 カナミアは魔法の照準を合わせる。


 (雷矢ライトニングアローじゃない?)

 (雷大砲ライトニングキャノン。カナミアの最大火力の魔法よ。)


 迸る雷光は、雷矢ライトニングアローの比ではなく。

 それが雷鳴と共に、身動きのとれないリハネに放たれた。


「舐めるな!!」


 風の拘束を破り、リハネが吠える。


 燃え続けた炎剣を空中で振り下ろし、放たれるブレイブフェニックス。

 直後、彼女自身は噴出炎ジェットファイアーによる急降下。


 カナミアを狙う気だ。


 そして、カナミアも同じ考えだったようで。


 上空で、雷と炎鳥がぶつかり大爆発。

 同時、リハネとカナミアの、互いの刀身がぶつかり合う。


 二人は、楽しそうに笑っていた。




 それから少しして。

 模擬戦は終わった。


 ユンゼスさんが止めたのだ。

 何でも、魔防壁が壊れそうだとかで。


 勝負がつかなかったのは残念そうだったけど、二人共、真面目だから。

 観客を危険にさらしてまで続けようとはしなかった。


 観客にも、文句を言う人や騒ぐ人はいない。

 凄い物を見せてもらったから。今日はもう満足したから。


 競技場は、大きな拍手に包まれた。




「いや、死を覚悟しましたね…。」

「ほんとだよ。斬る所だった。」


 ツツジちゃんと一緒に、選手の控室へ行くと、へたり込んだユンゼスさんに、リハネが説教をしている所だった。


「でも、戦闘音が凄すぎて、近づかないと聞こえないでしょう?」

「それこそヨダーシルの技術で何とかしろよ。

 フフゴケ商会の通信機は、戦闘時もクリアに聞こえるぞ。」


「まあまあまあ。」


 それくらいにしてあげてよ。

 ユンゼスさんも、必死だったんだし。


「リハネ、お疲れ様。

 ゾトの勇者としても、勇者隊のメンバーとしても、最高の戦いだったわ。」


「私は勝つつもりだったんだけどな。

 相手もよくやったよ。」


「私も、あなたには勝っておきたかったわ。」


 扉が開き、カナミアが入ってくる。


「ガットルはあなたより強いらしいからね。」


 勇者隊内の模擬戦の話?


 確かに、ガットル君はリハネに勝ったらしいけど、リハネは魔剣を使ってないし…。

 あ~、でも彼もアサルトフローは使ってないから、どうなんだろ?


「今はな。いずれあいつは追い抜くし、お前にも勝つ。」

「私もよ。次は決着をつけましょう。」


 リハネとカナミアは、固い握手を交わす。

 いいライバル関係じゃない?青春じゃない?これは、いいわ~。


 ていうか、ガットル君、やるわね。

 二人の勇者に意識されてるじゃん。


 カナミアは用事があるらしく、そのまま去っていった。

 ポノ君が見つかったら、打ち上げをしようと約束して。


 リハネも東区へ戻った。

 別れてからの話もしたかったが、お疲れだろうし引き止めたりはしない。


 明後日の北区への捜索には同行するらしいから、一先ずポノ君は彼女に任せる。


 (とりあえず、明後日の結果待ちか。)


 まだ何も解決していない。

 それでも、そこまで心配はしていない。


 ユンゼスさんや東西の区長は、いい人で。

 ツツジちゃんはいい子で、強い子だ。


 何よりこの町には、頼もしい勇者が二人もいるから。


 ポノ君の件は、もうすぐ解決できる。

 この時の私は、そう思っていた。




 翌日。


 南区の区役所は、かつてないほど慌ただしかった。


 ユンゼスさんが『都市長候補の辞退』及び『南区区長の辞任』を発表した時の比ではない。


「西区が?」


 私とツツジちゃんは、ルムリートちゃんから事情を聞く。


「本日未明、西区が何者かに襲撃された。

 区の詳しい被害状況は調査中。

 分っている範囲だと、まず、ソルテローラ区長は重傷。

 それで、アイーホルの勇者が…。」


 マーアの駅から列車に乗って、7日目。

 私達、ポノ君捜索隊は、とんでもない事態に巻き込まれてしまった。

西区はなぜ襲撃されたのか?

それを説明する前に。

次回から、あのキャラの話。

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