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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第四章 理想家オーズンの四人の後継者

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第130話 技術発表会~前日、情報共有~

~現在の様子~


マーアの勇者ワッポノが行方不明。クレスタ達3人が捜索の為、ヨダーシルへ。

南区、西区、東区にワッポノはいなかった。後、いるとしたら北区。

それはそれとして今は選挙期間。一環として、明日は技術発表会。


◇登場人物◇ ※●が視点者

__ヨダーシル

●ユンゼス  :南区の区長、愛称はゼス

〇ソルテローラ:西区の区長、愛称はローラ

〇ラデューム :東区の区長、愛称はデュー

〇ルムリート :ユンゼスの秘書


□セイ    :色々できる腕輪型のデバイス。人工知能(AI)搭載


__勇者捜索隊

〇クレスタ  :フフゴケ商会、商会員

〇ツツジ   :勇者隊、サポート員

〇リハネ   :ゾトの勇者


__行方不明

〇ワッポノ  :マーアの勇者

*ユンゼス視点*


 南区のやや外れに、お気に入りの飲食店がある。

 隠れた名店というやつだ。


 夜遅く、俺はそこにいた。

 ラデュームと、ソルテローラの三人で。


「デューもローラも久しぶりだね、元気してた?」


 二人を招待したのは、俺だ。


「ゼスさんが、すっっっごく美味しい店だって言うから、苦労してやって来たんです。

 めちゃくちゃ期待してますよ。」


「…。」


 うん。

 予想以上に空気が悪い。


 都市長の座を奪い合う二人だから、バチバチだろうと思ってはいたけど。

 デューはずっと睨んでくるし、ローラも不機嫌である事を隠さない。


 本題に入ろう。


「三点ほどあるんだけど、軽めなのからいこうか。

 料理がくる前に終わりそうなやつ。」


 二人に、資料データを送る。


「いよいよ明日は、技術発表会だ。

 会場は、いい感じだよ。

 だけど、確認しておきたい事があってさ。

 まず、ラデューム。

 昨日、模擬戦の代表選手の変更があったけど、間違いない?」


「間違いない。

 東区の代表は、ゾトの勇者リハネだ。」


 クレスタさんから、そうなるだろうという話は聞いたけど、その数分後に連絡がきて驚いた。


「流石は勇者といった実力だな。

 前代表選手で、リベンジに燃える男と戦ってもらったんだが、相手にならなかった。

 そのまま代表選手だった男も一蹴。

 彼女を代表にしない理由がない。」


 東区の代表選手は、もう5、6回変更されている。

 東区は実力主義。だから、そこは、まあ、いいんだけど。


「模擬戦でリハネさんの魔剣を使いたいって、本気?」


 あれで魔物を塵にするのを見た。

 あれは、敵を滅ぼす為の武器で。模擬戦で使うような物じゃない。


「もちろん、本気だとも。

 観客に被害が出ないように、最高レベルの魔防壁を頼む。」


 なるほどね。

 次にいこうか。


「ソルテローラ。

 カナミアさんの武器、【雷光龍風】だっけ?

 模擬戦で使いたいって、本当?」


「もちろんです。

 魔防壁に、眩しさから目を守るための保護効果もあるといいですね。」


 なるほど。

 冗談じゃなかったらしい。


「二人は、勇者に殺し合いをさせたいのかい?」


 だから、真面目なトーンで聞く。


「本人達の希望だ。

 それに、本気の勇者同士の戦いは、見てみたいだろう?」


 確かに興味はあるけれど。


「それで死んだら、どうするの?

 ゾトとアイーホルと戦争する気かい?」


「そんな事は考えていませんよ。」


 こっちにその気がなくても、結果次第では、そうなるよ。


「…仮にだ。

 勇者が死んだとする。

 それでも、大した問題にはならない。」


 デューが、そんな事を言う。


 大した問題にならないなんて事ある?

 勇者は、国の代表だろ?


「ウーイングとマーアなら話は違だが、今回はゾトとアイーホル。

 まずゾトについてだが、あそこは勇者を持て余している。

 あの国にとっては、勇者がいない方がいい。

 だから、文句は言ってこない。」


 クレスタさんから聞いた事はある。

 本来、ゾトに勇者の存在はなくて、リハネさんが無理いって勇者を認めさせたって。


「次にアイーホル。

 あそこは、熱狂的な勇者支持の国だ。

 勇者の全てを愛している。

 つまり、戦い、死ぬという行為だって受け入れているんだ。

 まあ、長くやっているから、彼女本人にもファンはいるだろう。

 でも、真剣勝負に負けて命を落とすのならば、連中は納得する。

 全力の、勇者VS勇者。寧ろ大喜びさ。

 映像として記録して、送ってやろう。敗北して死亡した場合でも。」


 そういう所なの?

 アイーホルに詳しそうなローラの様子を伺う。


「カナミア様は負けません。ですので、心配は不要です。」


 自身に溢れていた。


 (デューも、ローラも、二人の勇者も望んでいる戦いか…。)


 なら、俺に出来る事は。


「もしもの時は止めに入る。それが最低条件。二人共、それでいい?」


「私はそれで、いいですよ。」


 ローラは即答。


 デューは、鼻で笑った。

 止められるといいな。そんな意味だろう。


 構わない。

 反対しなかったから、了承されたと捉える。


 (戻ったら、魔防壁の見直しか…。)


 模擬戦は午後だ。

 何とか間に合うだろう。


 その辺りで料理が運ばれてきて、話は一時中断。

 とりあえず、このひとときを楽しもう。




 食後のコーヒーを飲みながら、話し合いを再開させる。


「マーアの勇者、ワッポノ君の話だけど。」


 二人共、反応がある事を確認し、続ける。


「まずは、探してくれてありがとう。

 忙しい中、悪かったね。」


「あれぐらいなら大丈夫です。

 カナミア様の知り合いみたいだったし。

 早くみつかるといいですね。」


 最初に比べるとローラの機嫌がいい。料理が口に合ってよかった。


「ほんとにヨダーシルにいるのか?

 情報源はお前だと聞いたが、根拠は?」


 改めて二人を見る。

 これが、本命の話題だから。


「間違いなく、いる。

 マーアと、ヨダーシルの駅の映像記録装置。

 そのデータが書き換えられていた。」


 この情報を二人に言ったのは、初めて。

 案の定、驚愕の表情となる。


 そんな事が出来るのは、区長の持つセイだけだ。


「タイミング的に、ワッポノ君は俺と同じ列車に乗ってヨダーシルに来た事になる。

 列車の旅は、二泊三日。

 道中、燃料補充で数か所の駅に止まる。

 その都度、列車内は確認する訳だよ。

 不正乗車者がいるかもしれないし。

 結果、異常はなかった。

 隠れられたら俺だと見つけられないけど、セイからも隠れきれるなんて考えられない。

 それが出来るのも、君達の持つセイだけなんだよ。」


「その映像データ、今、もらえるか?」

「どうぞ。」


 デューと、ローラにもデータを渡す。


 二人は暫く、それを見て。

 デューが大きく伸びをした。


「これは、いるな。」

「え?」


 デューは頷いて、ローラは困惑している。


「ここまでして、いなかったら逆に怖い。

 完全に隠しにきている。

 これは、俺達のセイを持っていたとしても中々出来る事じゃないぞ。

 現に、お嬢さんは未だ見つけられていない。」


 ローラは、悔しそうにセイを操作している。


「該当箇所だけだから、俺は見つけられたが。

 お前は、よくこれ見つけたな。」


「気になっちゃったからね。」


 それに、17時間分しか探してないよ。


「それで、二人に聞きたいんだけどさ。

 北区。いや、ロミスオッドを、どう思う?」


 俺は、確かにワッポノ君を誘った。

 でも、彼は俺に会いにこなかった。


 二人も違うと思う。

 選挙でそれどころじゃないだろうし、二人がやりたい事とワッポノ君との関係性が見えない。


 まあ、それを言ったら、ロミスオッドもそうなのだけど。


 俺達四人は、オーズンに認められてヨダーシルを託された、同士なんだ。


「俺とあいつがどんな感じか、お前は知っているだろう。

 あれから会ってないよ。

 仕事のやりとりはあるが、それだけだ。」


「選挙活動も、ほぼしてないですね。

 なのに、まだ候補者の一人です。

 ゼスさんは辞退したのに。」


 ローラは、直接会う事も、話した事もないかもしれない。


「別に隠す事でもないから、言うな。

 技術発表会の翌々日、俺は北区の捜査に行く。」


「ワッポノ君を、探す為?」


「そうだ。リハネと約束をしたからな。

 表向きの理由も、ちゃんとある。

 お嬢さんも言ったように、都市長候補なのに選挙活動を怠っている。

 どころか、入区希望者の審査の滞りなど、一般業務もこなせていない。

 きっと、困った事になっているに違いない。

 だから、助けてやろうという訳だ。

 その為に、状況の確認に行く。」


 強引だ。

 しかしデューが本気なら、もっと早く動けるだろう。


 やはり、選挙を気にしている。

 そんな彼に、迷惑をかけたくない気持ちはある。


 それでも。

 そうしないといけない所まできてしまったのかもしれない。


 ルムリートの裏ルートでも、北区へ入れなかった。

 俺が思っているより、事態は深刻かもしれないのだ。


「推理小説だと、彼はミスリードで犯人は私達の誰か、とかありますね。

 いいんですか、ゼスさん?

 ラデュームさんが犯人だった場合、ロミスオッドさんに罪を擦り付けるつもりですよ。」


「お嬢さんはデータの改竄がわかったのかな?

 つまらない妄想で遊んでないで、実力を磨いた方がいいんじゃないかい?」


「まあまあまあ…。」


 ここまでにしよう。

 確認も、情報の提供に共有も出来た。


 次、皆で集まるのは、選挙が終わった後だ。

 出来ればその場に、ロミスオッドも…。


「ラデューム。北区を、ワッポノ君を頼む。

 クレスタさん達の為にも。」

「おう。」


「ソルテローラ。

 確かに、ワッポノ君が誘拐された可能性はある。

 その犯人がいる可能性も。

 でも、ワッポノ君は家出しただけで、本人の希望で匿っているだけの可能性だってあるんだ。

 ワッポノ君が無事見つかればそれでいい。

 俺は犯人を捜す気はないよ。」


 クレスタさん達は、ちょっとわからないけど。


 (後で、改竄の見破り方を教えるから。)

 デューに聞こえないように、彼女にだけ伝える。


「二人共、今日はありがとう。

 楽しい食事会が出来て、嬉しかったよ。」


「ゼスさん。

 用事は三点でしょう?

 明日の事で一点、ワッポノさんの事で一点。

 あと一つは?」


 北区について、だったけど。

 彼女の中では、ワッポノ君の事に含まれているようだ。


 でも、わざわざ訂正するような事でもない。


「二人共。」


 二人の顔を見る。

 いい顔じゃないか。立派な新都市長になってくれるに違いない。


「選挙、頑張って。

 皆で、いい国を造ろう。」


 その想いは。

 目指す場所は、同じはず。


 ただ、進むスピードが。

 早いか、ゆっくりかの違いがあって。


 その影響は、大きい。

 幸せになれる人も、辛い思いをする人も変わってくる。


 だから、皆で決めるんだ。

 与えられるのではなく、選べるように。


 目指す場所に、近づけるように。


「お前にも期待している。

 頑張れよ、第二ヨダーシルの開発総責任者。」


 そう言って、デューは店を出て行った。


「私は勝ちます。それで、皆が笑顔になれる町にして。

 師匠に、胸を張って報告しにいくんです。」


 ローラも、店を出た。


 (…。)


 店の窓から見える空は、確かに星が見えている。


「大丈夫さ、俺達なら。」


 一人残された俺は呟いて、ゆっくり立ち上がった。

三区の区長は、こんな感じの関係。

現状をまとめつつ、明日は技術発表会。

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