第130話 技術発表会~前日、情報共有~
~現在の様子~
マーアの勇者ワッポノが行方不明。クレスタ達3人が捜索の為、ヨダーシルへ。
南区、西区、東区にワッポノはいなかった。後、いるとしたら北区。
それはそれとして今は選挙期間。一環として、明日は技術発表会。
◇登場人物◇ ※●が視点者
__ヨダーシル
●ユンゼス :南区の区長、愛称はゼス
〇ソルテローラ:西区の区長、愛称はローラ
〇ラデューム :東区の区長、愛称はデュー
〇ルムリート :ユンゼスの秘書
□セイ :色々できる腕輪型のデバイス。人工知能(AI)搭載
__勇者捜索隊
〇クレスタ :フフゴケ商会、商会員
〇ツツジ :勇者隊、サポート員
〇リハネ :ゾトの勇者
__行方不明
〇ワッポノ :マーアの勇者
*ユンゼス視点*
南区のやや外れに、お気に入りの飲食店がある。
隠れた名店というやつだ。
夜遅く、俺はそこにいた。
ラデュームと、ソルテローラの三人で。
「デューもローラも久しぶりだね、元気してた?」
二人を招待したのは、俺だ。
「ゼスさんが、すっっっごく美味しい店だって言うから、苦労してやって来たんです。
めちゃくちゃ期待してますよ。」
「…。」
うん。
予想以上に空気が悪い。
都市長の座を奪い合う二人だから、バチバチだろうと思ってはいたけど。
デューはずっと睨んでくるし、ローラも不機嫌である事を隠さない。
本題に入ろう。
「三点ほどあるんだけど、軽めなのからいこうか。
料理がくる前に終わりそうなやつ。」
二人に、資料データを送る。
「いよいよ明日は、技術発表会だ。
会場は、いい感じだよ。
だけど、確認しておきたい事があってさ。
まず、ラデューム。
昨日、模擬戦の代表選手の変更があったけど、間違いない?」
「間違いない。
東区の代表は、ゾトの勇者リハネだ。」
クレスタさんから、そうなるだろうという話は聞いたけど、その数分後に連絡がきて驚いた。
「流石は勇者といった実力だな。
前代表選手で、リベンジに燃える男と戦ってもらったんだが、相手にならなかった。
そのまま代表選手だった男も一蹴。
彼女を代表にしない理由がない。」
東区の代表選手は、もう5、6回変更されている。
東区は実力主義。だから、そこは、まあ、いいんだけど。
「模擬戦でリハネさんの魔剣を使いたいって、本気?」
あれで魔物を塵にするのを見た。
あれは、敵を滅ぼす為の武器で。模擬戦で使うような物じゃない。
「もちろん、本気だとも。
観客に被害が出ないように、最高レベルの魔防壁を頼む。」
なるほどね。
次にいこうか。
「ソルテローラ。
カナミアさんの武器、【雷光龍風】だっけ?
模擬戦で使いたいって、本当?」
「もちろんです。
魔防壁に、眩しさから目を守るための保護効果もあるといいですね。」
なるほど。
冗談じゃなかったらしい。
「二人は、勇者に殺し合いをさせたいのかい?」
だから、真面目なトーンで聞く。
「本人達の希望だ。
それに、本気の勇者同士の戦いは、見てみたいだろう?」
確かに興味はあるけれど。
「それで死んだら、どうするの?
ゾトとアイーホルと戦争する気かい?」
「そんな事は考えていませんよ。」
こっちにその気がなくても、結果次第では、そうなるよ。
「…仮にだ。
勇者が死んだとする。
それでも、大した問題にはならない。」
デューが、そんな事を言う。
大した問題にならないなんて事ある?
勇者は、国の代表だろ?
「ウーイングとマーアなら話は違だが、今回はゾトとアイーホル。
まずゾトについてだが、あそこは勇者を持て余している。
あの国にとっては、勇者がいない方がいい。
だから、文句は言ってこない。」
クレスタさんから聞いた事はある。
本来、ゾトに勇者の存在はなくて、リハネさんが無理いって勇者を認めさせたって。
「次にアイーホル。
あそこは、熱狂的な勇者支持の国だ。
勇者の全てを愛している。
つまり、戦い、死ぬという行為だって受け入れているんだ。
まあ、長くやっているから、彼女本人にもファンはいるだろう。
でも、真剣勝負に負けて命を落とすのならば、連中は納得する。
全力の、勇者VS勇者。寧ろ大喜びさ。
映像として記録して、送ってやろう。敗北して死亡した場合でも。」
そういう所なの?
アイーホルに詳しそうなローラの様子を伺う。
「カナミア様は負けません。ですので、心配は不要です。」
自身に溢れていた。
(デューも、ローラも、二人の勇者も望んでいる戦いか…。)
なら、俺に出来る事は。
「もしもの時は止めに入る。それが最低条件。二人共、それでいい?」
「私はそれで、いいですよ。」
ローラは即答。
デューは、鼻で笑った。
止められるといいな。そんな意味だろう。
構わない。
反対しなかったから、了承されたと捉える。
(戻ったら、魔防壁の見直しか…。)
模擬戦は午後だ。
何とか間に合うだろう。
その辺りで料理が運ばれてきて、話は一時中断。
とりあえず、このひとときを楽しもう。
食後のコーヒーを飲みながら、話し合いを再開させる。
「マーアの勇者、ワッポノ君の話だけど。」
二人共、反応がある事を確認し、続ける。
「まずは、探してくれてありがとう。
忙しい中、悪かったね。」
「あれぐらいなら大丈夫です。
カナミア様の知り合いみたいだったし。
早くみつかるといいですね。」
最初に比べるとローラの機嫌がいい。料理が口に合ってよかった。
「ほんとにヨダーシルにいるのか?
情報源はお前だと聞いたが、根拠は?」
改めて二人を見る。
これが、本命の話題だから。
「間違いなく、いる。
マーアと、ヨダーシルの駅の映像記録装置。
そのデータが書き換えられていた。」
この情報を二人に言ったのは、初めて。
案の定、驚愕の表情となる。
そんな事が出来るのは、区長の持つセイだけだ。
「タイミング的に、ワッポノ君は俺と同じ列車に乗ってヨダーシルに来た事になる。
列車の旅は、二泊三日。
道中、燃料補充で数か所の駅に止まる。
その都度、列車内は確認する訳だよ。
不正乗車者がいるかもしれないし。
結果、異常はなかった。
隠れられたら俺だと見つけられないけど、セイからも隠れきれるなんて考えられない。
それが出来るのも、君達の持つセイだけなんだよ。」
「その映像データ、今、もらえるか?」
「どうぞ。」
デューと、ローラにもデータを渡す。
二人は暫く、それを見て。
デューが大きく伸びをした。
「これは、いるな。」
「え?」
デューは頷いて、ローラは困惑している。
「ここまでして、いなかったら逆に怖い。
完全に隠しにきている。
これは、俺達のセイを持っていたとしても中々出来る事じゃないぞ。
現に、お嬢さんは未だ見つけられていない。」
ローラは、悔しそうにセイを操作している。
「該当箇所だけだから、俺は見つけられたが。
お前は、よくこれ見つけたな。」
「気になっちゃったからね。」
それに、17時間分しか探してないよ。
「それで、二人に聞きたいんだけどさ。
北区。いや、ロミスオッドを、どう思う?」
俺は、確かにワッポノ君を誘った。
でも、彼は俺に会いにこなかった。
二人も違うと思う。
選挙でそれどころじゃないだろうし、二人がやりたい事とワッポノ君との関係性が見えない。
まあ、それを言ったら、ロミスオッドもそうなのだけど。
俺達四人は、オーズンに認められてヨダーシルを託された、同士なんだ。
「俺とあいつがどんな感じか、お前は知っているだろう。
あれから会ってないよ。
仕事のやりとりはあるが、それだけだ。」
「選挙活動も、ほぼしてないですね。
なのに、まだ候補者の一人です。
ゼスさんは辞退したのに。」
ローラは、直接会う事も、話した事もないかもしれない。
「別に隠す事でもないから、言うな。
技術発表会の翌々日、俺は北区の捜査に行く。」
「ワッポノ君を、探す為?」
「そうだ。リハネと約束をしたからな。
表向きの理由も、ちゃんとある。
お嬢さんも言ったように、都市長候補なのに選挙活動を怠っている。
どころか、入区希望者の審査の滞りなど、一般業務もこなせていない。
きっと、困った事になっているに違いない。
だから、助けてやろうという訳だ。
その為に、状況の確認に行く。」
強引だ。
しかしデューが本気なら、もっと早く動けるだろう。
やはり、選挙を気にしている。
そんな彼に、迷惑をかけたくない気持ちはある。
それでも。
そうしないといけない所まできてしまったのかもしれない。
ルムリートの裏ルートでも、北区へ入れなかった。
俺が思っているより、事態は深刻かもしれないのだ。
「推理小説だと、彼はミスリードで犯人は私達の誰か、とかありますね。
いいんですか、ゼスさん?
ラデュームさんが犯人だった場合、ロミスオッドさんに罪を擦り付けるつもりですよ。」
「お嬢さんはデータの改竄がわかったのかな?
つまらない妄想で遊んでないで、実力を磨いた方がいいんじゃないかい?」
「まあまあまあ…。」
ここまでにしよう。
確認も、情報の提供に共有も出来た。
次、皆で集まるのは、選挙が終わった後だ。
出来ればその場に、ロミスオッドも…。
「ラデューム。北区を、ワッポノ君を頼む。
クレスタさん達の為にも。」
「おう。」
「ソルテローラ。
確かに、ワッポノ君が誘拐された可能性はある。
その犯人がいる可能性も。
でも、ワッポノ君は家出しただけで、本人の希望で匿っているだけの可能性だってあるんだ。
ワッポノ君が無事見つかればそれでいい。
俺は犯人を捜す気はないよ。」
クレスタさん達は、ちょっとわからないけど。
(後で、改竄の見破り方を教えるから。)
デューに聞こえないように、彼女にだけ伝える。
「二人共、今日はありがとう。
楽しい食事会が出来て、嬉しかったよ。」
「ゼスさん。
用事は三点でしょう?
明日の事で一点、ワッポノさんの事で一点。
あと一つは?」
北区について、だったけど。
彼女の中では、ワッポノ君の事に含まれているようだ。
でも、わざわざ訂正するような事でもない。
「二人共。」
二人の顔を見る。
いい顔じゃないか。立派な新都市長になってくれるに違いない。
「選挙、頑張って。
皆で、いい国を造ろう。」
その想いは。
目指す場所は、同じはず。
ただ、進むスピードが。
早いか、ゆっくりかの違いがあって。
その影響は、大きい。
幸せになれる人も、辛い思いをする人も変わってくる。
だから、皆で決めるんだ。
与えられるのではなく、選べるように。
目指す場所に、近づけるように。
「お前にも期待している。
頑張れよ、第二ヨダーシルの開発総責任者。」
そう言って、デューは店を出て行った。
「私は勝ちます。それで、皆が笑顔になれる町にして。
師匠に、胸を張って報告しにいくんです。」
ローラも、店を出た。
(…。)
店の窓から見える空は、確かに星が見えている。
「大丈夫さ、俺達なら。」
一人残された俺は呟いて、ゆっくり立ち上がった。
三区の区長は、こんな感じの関係。
現状をまとめつつ、明日は技術発表会。




