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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第四章 理想家オーズンの四人の後継者

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第129話 技術発表会~リハネ~

~前回までのリハネ~


クレスタ達と別行動する事にした。

カナミアと戦いたいというのも、確かにあったさ。

でもポノを探すには、強引な手が必要だと思ったのも本当だよ。


◇登場人物◇ ※●が視点者

__ゾトの勇者パーティー

●リハネ   :ゾトの勇者

〇サーチェ  :リハネの仲間

〇トドゥン  :リハネの仲間

〇ミュナ   :リハネの仲間


__勇者隊

〇ガットル  :ウーイングの勇者の仲間

〇リガーナ  :ゾトの魔王


__行方不明

〇ワッポノ  :マーアの勇者


__ヨダーシル

〇ラデューム :東区の区長

〇スーマミーサ:ラデュームの秘書

*リハネ視点*


 ライダ大陸に住む者ならば。

 クーラン大戦を知らない奴はいない。


 100年前、10人の勇者が仲間と共に魔王に挑み、全滅。


 しかし。

 その戦いは無駄ではなかった。


 彼らが魔王に深手を負わせたから、魔王に実力を認められたから。

 魔王はクーランから出てくる事はなく、ライダ大陸の三国は今も存続できている。


 なにより。

 不可能に挑んだ姿が、その意思が。

 そこへ至るまでの、生き様が。


 我々に勇気を与えてくれる。


 …私はこの話が嫌いだ。


 10人の勇者と仲間達は、魔王を討伐したかった。

 討伐した後の世界を目指していた。


 それが、まだ為されていないのに。

 何を美談のように、過去の話として語る?


 無謀と嘲笑うよりはよほどいい。

 それでも。


 (これじゃあ、まるで。諦めてしまったみたいじゃないか。)


 クーランの魔王の討伐を。




 10年前、13歳。

 この頃の私は、剣や魔法の鍛錬に励んでいた。


 別に私は勇者じゃない。その末裔とかでもない。


 勇者になりたいとか、魔王を倒したいとか、魔物から村を守りたいとか。

 そういう理由じゃなかった。


 村はずれに、トドゥンという名前の爺さんが住んでいる。

 100年前の勇者の仲間の兄弟の末裔。そんな微妙な立ち位置。


 彼は、とある剣を継承していた。


 魔竜殺の炎剣。名を【灰塵】。

 勇者ドドルディアが使っていた剣だ。


 灼熱の炎を生み出すが、必要以上の魔力を敵味方問わずに吸収するという制御の難しい魔装具。


 命まで吸いつくす、呪われた剣。

 実際、ドドルディアの死因はこれだ。


 村祭りの日。

 飾られていた、その剣を見て。


 私は心を奪われた。

 剣をくれと、トドゥンに言いに行った。


 彼は言った。

 この剣は、近くに置いておくだけで危険な物。

 制御するには、相応の実力が必要だと。


 だから私は、鍛錬に励む。


 そう、私は。

 魔剣に魅入られた者だった。




 それから2年。15歳の時。


 村が魔物に襲撃された。

 第二防衛ラインが突破されたのは、6年ぶり。


 最終防衛ラインに戦力を集めつつ、非戦闘員は避難準備。

 突破されたら、村を放棄する感じだ。


 そんな中、私は走る。

 混乱に紛れて、魔剣を盗む為に。


 もしこんな日が来たらと、計画していたのだ。


 しかし、火事場泥棒は上手くいかなかった。

 トドゥンが、逃げずに陣取っていたから。


 彼は。

 このままでは村が滅ぶとか。

 灰塵の力を使えば村は助かるとか。

 でも子供に背負わせるには大きすぎるとか。


 色々言っていたけれど。


 私は、魔剣が振れればそれでよかった。


 だから、真面目な顔で言う。

 「私に、任せてほしい。」と。


 気づいたらベッドの上。

 魔力が無くなって倒れたらしい。


 村は無事だ。

 私が魔物を殲滅したそうで。


 トドゥンがいてくれたお陰で、私が村人を焼くなんて事もなかった。


 お見舞いにきてくれた人に、たくさんお礼を言われたけど、どうにも実感はなくて。

 でも、楽しかった事だけは、覚えている。




 それから私は、トドゥンの家で暮らした。


 一応、私は魔剣の継承者。

 使いこなす為の鍛錬が続く。


 湧き上がる感情がある。

 魔王を倒したい、という思いだ。


 おそらく。

 無念に果てた勇者の思念みたいなのが魔剣に宿り、それが私を駆り立てている。


 私も、この剣で強者と戦ってみたい。

 力を試したい。


 いつしか、私は勇者を目指していた。




 翌年、16歳の時。


 ゾトに、魔王が現れた。


 クーランの魔王は伝説的存在だ。

 それに挑む前の相手としては丁度いい。


 ゾトの王様に会って、勇者にしてくれと頼む。


 色々言われたが、要するに。

 実績が必要らしい。


 トドゥンと友達のサーチェと一緒に、勇者パーティー(仮)を結成。


 しばらくは、王国の指示で魔物退治。


 私としては。

 暴れられたから、満足だ。




 21歳の、冬。


 私は、ゾトの勇者になった。


 ゾトの勇者パーティーは、私と、サーチェと、トドゥンと、ミュナの4人。


 ミュナは、私達が壊滅させた盗賊団の一人。

 実力はあったし、改心したらしいから仲間にした。


 年齢的にも大人になった私は、もう暴れる事だけが好きな狂人ではない。


 魔力制御レベルが上昇し、魔剣を使いこなせてきたというのもあるけど。

 それより、仲間と冒険をするのが楽しかった。


 死線を乗り越え、打ち上げで喜び、どんどん仲良くなっていく。


 私達は強い。私達なら何でも出来る。

 ゾトの魔王を倒し、クーランの魔王も倒して。


 私達が、新しい伝説になる。

 その景色を、仲間で見る。


 そんな事を、夢見ていた。




 ゾトの魔王討伐の旅の、終盤。


 サーチェが死んだ。

 魔物に、殺された。


 私は八つ当たり気味に魔王に挑み、撃退に成功する。

 止めは刺せなかった。彼女の仲間が助けに来て、それで。


 魔王は。

 私より年下の女の子だった。


 (何をやっているんだ、私は…。)


 そもそもゾトの魔王は。

 魔王を名乗ってから4年間、国を害するような事は何もしていない。


 クーランの魔王と同じ、魔王を名乗ったから。

 腕試しみたいな感じで、こっちから仕掛けたのだ。


 不要な戦いをして、サーチェを死なせて。


 (本当に、何をやっているんだ…。)


 それでも、私は、ゾトの勇者だから。

 ゾトの魔王を倒すと、ゾトの国に誓ったのだから。


 責任が、ある。

 ゾトの魔王は倒さないといけない。


 だって、そうじゃなかったら。

 サーチェは何の為に死んだんだ?


 (ゾトの魔王を倒して、その後は…。)


 クーランの魔王に挑むのだろうか?


 あの魔王も、ここ100年間は大人しいのに?

 トドゥンとミュナが、死ぬかもしれないのに?


 今更ながら。

 戦いは、辛い事なのだと。

 私は、思い知った。




 ゾトの魔王の行方について情報を集めている時だ。

 ミュナが、信じられない情報を手に入れてきた。


 サーチェが死んだ、あの時の魔物。

 王宮が仕組んだ可能性があるという事。


 政治的対立がどうのこうの、勇者反対派が云々…。


 それが本当だとしたら。

 これほどの裏切りが、あるだろうか。


 最初の理由は、確かに自分勝手だった。


 でも、それは本当に最初だけ。

 私達が、どれほど、この国の為に戦ってきたと思っている?


 私は。

 ゾトの国が許せない。


 魔王なんかよりも。


 二人は、私に任せると言ってくれた。ついていくと。

 だから私は、祖国に宣戦を布告しようとして。


 しようとした所で、ガットル達、ウーイングの勇者の仲間達がやってきた。

 ゾトの魔王と一緒に。


 私達は彼らと戦って、コテンパンにされて。

 私達の反逆は、始める前に潰された。




「それまで私は、魔剣を手にしてから負けた事が無かった。

 ゾトで、いや、ライダ大陸で私より強い人間はいないと、本気で思っていた。

 それで、あの様さ。

 ガットル達に興味が出た。

 なぜそこまで強いのか、なぜ戦うのか。

 だからついていったんだよ。

 正直、クーランの魔王は、大して興味ない。」


 それから一年半くらい。

 守りたいものを守れるように。それが、彼らの戦う理由。


 その気持ちは分かる。

 私も、もう二度と友達を、仲間を失いたくはない。


「リハネ!」


 ミーサの胸に、顔を埋められる。


「!?」


 ちょ、凄い力で引きはがせない!窒息する!?


 ジタバタして、ようやく脱出。

 本気で、死が、ちらついた。


「私はリハネを応援しまス!

 あなたは、勇者でス!」


「…ありがとう。」


 ちょっと、意味が分かりかねるが、その勢いに流される。


 (悪気はない、んだよな?)


 ここは東区、区役所の近くの訓練施設。


 人を待っている状況だ。

 で、その間、ミーサが私の事を知りたいというから、話した。


「一つ、気になったのが…。」


 コロコロ表情を変えながら、ミーサが聞いてくる。


「灰塵、でしたっケ?リハネの魔剣。

 ヨダーシルに持ってきてますよネ?」


「ああ。南区のホテルに置いてあるはずだ。」


「そんな所に置いておいて、大丈夫なのですカ?

 近くに置いておくだけで、周辺魔力を吸収するって話でハ?」


「専用の鞘に入れてあるからな。そこは平気だ。」


 封印の紐に魔力の補充が必要だけど、一週間くらいなら問題ないはず。

 それまでに回収しよう。


「なるほド、そっちは平気なんですネ。

 なら、もう一つの方は、どうですカ?」


「と、言うと?」


「魔剣なしで、試練を突破できますカ?」


 私がした、東区へ要求は二つ。

 一つは、北区の強引な捜査。

 もう一つは、明後日の技術発表会の模擬戦で、東区の代表にしてほしい。

 と、いう事。


 それらの返答は、シンプル。

 東区は完全実力主義だから、力を示せと。


 つまり、これからラデュームが連れてくる戦士を倒せばいい。


「確かに。ライダ大陸最強の自負は、魔剣込みでだ。」


 少なくとも1年半前、魔剣を持った状態ならリガーナを圧倒できた。

 が、魔剣を使わない場合、あいつに勝てた事がない。


「それでも、自信はある。

 最近は、魔剣なしの鍛錬の方が多いくらいだ。」


 勇者隊の中で、印象的な魔装具使いといえば、私とガットルだ。


 他にも魔装具を使う者はいる。

 それこそ一か月前に来た、あの女の剣もそう。


 でも彼女は魔装具があろうと、なかろうと戦い方は変わらない。


 私達は、魔装具があるから出来る戦法を軸に戦うから、魔装具の有無で戦い方が大きく変わる訳だ。


 勇者隊内で行われている模擬戦は、魔装具の使用が不可。

 つまり、不利。


 それでも、あいつは。

 ガットルは、そんな事を言い訳にはしない。


 出来うる最善を模索し、勝つ為の戦術を練った。


 その、ひたむきな姿勢が。

 サーチェに似ていて。


 …ともかく、今では私よりガットルの方が強い。

 得意武器が無いのは、言い訳にならない。


「あ、来ましたヨ。」


 ラデュームと、私の対戦相手。


「リハネ。負けないデ。」


「ああ。負けないさ。」


 ゾトの勇者として。勇者隊の一員として。

 こんな所で負けている場合ではない。

ゾトの勇者物語、ダイジェスト版でした。

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