第12話 後悔~真相~
~前回までのサニア~
今できる事は、情報収集ね。酒場に行くわ!
あなた、トバ?こんな所で昔の友達に会えるなんて思わなかったわ!
ガットル!?なんでいるの?あ、心配してくれたんだ。
会話パートです。
宿舎に戻った。早く状況が知りたい。
ガットルもそのつもりのようだったが、長くなりそうと言う事で、コーヒーを淹れてくれた。
ソファーに腰掛け一息つく。ガットルは隣に座る。
ガットルの手前にある用紙も気になるが、武装したままなのも気になる。アサルトフローも取らない。
何事か聞こうとした所で、ガットルが口を開けた。
「あの山火事の夜の事なんだけど、サニアが戻って来ないって俺が騒ぎ出したら、ディオルが、こっちだって言い出して、ついて行ったら、サニアを見つけた。」
「え?」
(見つけた?)
「火属性の魔法、熱検索。周囲の熱源?が分かるとかで。
形とか動きとかは分かんないけど、位置なら把握できる、みたいな?」
本当にあの男は何でも出来て、ムカつく。
「で、見つけたサニアは気絶しているみたいだった。
大丈夫か~って近寄ろうとしたら、ディオルに止められた。」
「なぜ?」
ディオルに苛立っていて、つい、きつめな応答になってしまう。
「近づいてくる人がいたんだ、それも複数。だから、俺達は隠れた。」
ガットルは私の態度を気にした素振りはない。心の中だけで反省する。
「顔とか隠している怪しい集団で、そいつらは、サニアを取り囲んだ。」
「うん。」
「…流石にやばいかと飛び出そうとした時、勇者が、大丈夫そうって言いだして。」
(レーラス?)
「風魔法で会話を聞いてるらしくてさ。殺される心配はなさそうだって。」
(そんな事も出来たの?)
「そしたらディオルが、チャンスだなって言った。」
(なんか言いそう。容易に想像出来る。)
「連中はサニアを縛り上げ移動を開始した。俺達は後を追った。」
(…あぁ、敵の正体を探る流れね。)
「いや、縛られている時、可哀想では?って話は出たんだ。
でも、ディオルが、『サニアはやわでは無い。信じてやれ』って言うから。」
想定内の言葉が、想定外の所で出たぞ。
何を信じろと?
まさか、辱められる事に慣れているから立ち直れる、とでも言いたいのかあの男は。
「連中はサニアを薄暗い洞窟に連れ込んで…、いや、もちろん、会話はずっと勇者が盗聴してたし、何かあれば、直ぐに突っ込む用意はしてた!マジで。」
赤くなるな。
恥ずかしいのはこっちだ。
「洞窟から出てきた奴らは二手に別れた。
これからアジトに戻るかもしれないから、追跡を続行したいけど、単独行動は流石に危険だ。
俺とディオル、勇者とクレスタでそれぞれ追ったんだ。けど、」
ガットルが頭を下げる。
「見失う危険があったんだ。
洞窟内をチラッとみて、サニアに外傷が無いことは確認出来たけど、助ける余裕はなくて、ごめん。」
まぁ、いいんだけど。けどね。
「今回悪いのは私だと分かっているし、私のミスを上手く利用したのも、寧ろありがとうだけど。」
言いたい事はある。
「余裕がなくて助けられなかった、じゃなくて、助けなかった、でしょう。」
ガットルは黙っている。
「見失う危険は大丈夫でしょう。
ディオルは熱、レーラスは動きや音、それぞれ探知系は得意みたいだし。
それに、音も無く柱を壊し、引っぱたいて私を起こす。
余裕でしょう、特にあの男なら。」
私は続ける。
「当てるね。
『こうなったのは、そもそもサニアが未熟だったせいだ。お灸を据える意味でも、ここは放置しよう。』って、ディオルが言ったんでしょう。」
ガットルは黙って、聞いていてくれている。
「もちろん怒ってない。繰り返しになるけど、今回悪いのは私。」
改めて、ガットルの目を見た。ガットルも見てくれている。
「ガットルは、置いて行かれたと聞いた私が、落ち込むんじゃないかと気を使って、助けられなかったって、ごめんって言ってくれたのは、分かる。
でも私は、言って欲しい。
駄目だった所も、足りなかった所も、隠さずに。
それで、私は、ちゃんと強くなるから。信じてほしい。」
仲間として。
「ごめん。サニアの事を侮った。変な気の使い方はやめるよ。」
ガットルはまた頭を下げる。
「洞窟内で磔にされた君をみて、クレスタが敵のセンスを褒めていた。
脱出出来ずに泣き叫ぶ姿も是非見たいと、魔力抑制装置なる物を君に着けようとするから、無理やり引っぺがして連れていった。」
「うん。それは言わなくていいやつだね。」
声を出して笑うガットルに、殺意が沸いた。ちょっとだけ。
「で、追跡した結果どうだったの?」
話の軌道を戻す。
「黒幕が分かった。」
正体がつかめた、ではなく。黒幕。
「黒幕なんていたの?例の魔王崇拝者達?」
ガットルは首を振る。そして言う。
「襲撃者を雇ったのも、山賊を扇動したのも、魔王崇拝の反勇者勢力の正体も、山に火を着けたのも、全部、ニージュ商会の仕業だ。」
私の仲間達は、私とニージュ商会の関係を知らない。
なんだかんだで、みんな大人だから。過去の詮索とかして来ないから。
クレスタが、商売敵、と言う単語を出した時から、不穏な予感はあったけど…。
「全部、か。」
「あ、いや全部は裏が取れてないな。だいたいとか、ほとんど。」
その訂正にあまり意味は無いのだろう。
「証拠を、見つけたの?」
「ああ。アジトというか、隠れ家みたいな所で、な。
ニージュ商会は、カルフラタとその周辺の町で、結構な悪事をやっている。それも、数年前から。」
(父さん…トバ…。)
正直、信じられない。いや、信じたく、ない。
「クレスタもニージュ商会の内情は知らないから、ニージュ商会全体がそうなのか、一部の独断かは判断が難しいらしい。
独断でやるレベルは超えているけど、カルフラタの町長がグルらしく、隠蔽は不可能では無いっていう見解。」
言いながら、数枚の用紙を渡される。
行っていたとされる悪事が書いてある。
最初は違法な取引だ。
それを続けているうちに、嗅ぎまわる者や揺する者、裏切る者も現れる。
そういう邪魔者は次々に消していった。武力で殺し続けた。
その中に魔王崇拝者達がいた。
魔王崇拝者のガワを隠れ蓑として使い、それらは更にエスカレートして行き、ついには町長も抱き込み、町を掌握した。
私は飲み込もうとしたし、動揺を外に出さないように努めたが、果たしてどれほど出来ただろう。
「今もしてる違法取引の中に危険な物があるんだ。
廃棄予定の物を、廃棄しなかったのか、隠れて造ったのかは分からないけど。」
ガットルは、私の様子がおかしい事に、気づいていたかも知れない。
それでも、伝えないといけない事は、まだ残っているようだ。
「高濃度の魔力を一定時間放出するやつだ。
魔物をおびき寄せる効果があるから、一網打尽にしたり、逃走時に使ったり。
退治屋や行商人が使うアイテムだな。
製造禁止された理由は、強力過ぎたから。
魔物が強くなったり、…生物の魔物化を引き起こした。」
(今、なんて?)
「俺は詳しく知らなかったけど、ディオルに聞いたんだ。
魔物は、魔力の異常供給とか、コントロール不全とか、所謂、魔力暴走で生まれるんだろ。
魔力の持ち主が、生きている、死んでいるに関わらず。」
ガットルの言う通りだが、そんな軽い感じではない。
魔力とは、どこにでもあるものだ。
自身で生み出すし、大気にもある。
食事や呼吸で取り込むし、魔法を使えば出ていく。
死んでいれば、魔力は生まれないし、循環しない。
しかし死骸に魔力は蓄積する。
魔力はエネルギーだ。それが蓄積し続ければ、動けてしまうのだ。
脳みそなんてなくても、本能かのように。
それが、魔物。
人でも動物でも死んだら弔う。
魔力が集まらないように、魔物にならないように。
祈り、灰にしたり、地中深くに埋めるのだ。
死者が魔物になりやすいのは、魔力のコントロールが出来ないからだ。
魔力のコントロールは、瞬きみたく、意識的にも無意識的にも行える物だ。
病気とかで、制御困難になる事もあるが、魔法が出せない、思ったよりも火力が出てしまうとかのレベルだ。
薬などの対処法もある。
魔力が大きければ制御が難しくなる。
つまり魔力を強化するには、制御の精度向上が必須だ。
とにかく魔法を使うという事は、コントロール強化の方法として正しい。
コツを掴むにはたくさん使ったほうがよい。
そもそも制御が下手なら魔力も大きくならない。
私が、魔力のコントロールが悪い、という評価なのは風評被害。
体外のコントロールが苦手なだけで、体内のコントロールは得意なのだ。
話を戻すと、コントロールが出来るから生者は魔物になりにくい。
逆をいえば、制御が不可能なほどの魔力を取り込んでしまったら、魔物になってしまうのだ。
それが魔力暴走。
しかし、制御が出来ず、意識を飛ばし、脳を焼き切るほどの魔力を、そう簡単に取り込める訳がないのだ。
もしもだ。
どんな者にも魔力暴走を起こさせる、そんな膨大な魔力があるならば。
その存在は、魔王、と呼ばれるに違いない。
「異常供給も魔力暴走も、そう簡単に起きない事よ。
ましてや魔物化まで持っていく装置なんて、正気とは思えない。」
私はコーヒーを一口飲む。もう味なんて分からない。
「この国は、『王国=俺達=フフゴケ商会』の図式が出来ている。」
確かに、私も酒場でも感じた。
「私達の功績は王国の功績、王国の罪は私達の罪、みたいな?」
苦笑いしてガットルが続ける。
「俺達、というか、ディオルとクレスタの考えたストーリーはこうだ。
1、ニージュ商会は町を掌握してウハウハ。
2、フフゴケ商会が進出してくる。
3、生意気だ潰そう。
4、フフゴケ商会がしぶとい。
5、そうだ、勇者を殺そう。進出も止められ、フフゴケ商会失墜も狙える。
6、勇者もしぶとい←今ここ。
おそらくこの、魔力放出装置は俺達を倒す切り札で、今、この町にある。」
(…いや、ないでしょう。)
装置の話ではなく、ニージュ商会がこの装置を街中で使う可能性に対してだ。
「こんな規模の話だとは俺達も思わなかったんだ。
だから暴いて、必要以上に追い詰めてしまった。」
「バレたの?調べている事が。」
ガットルが頷く。
「ビビった町長から接触があった。ニージュ商会は統率が乱れている。
一部が暴走するかも知れない。」
私が磔状態で起きるまでどれだけ経ったかは分からない。
そこから抜け出して、だいたい一日さまよった。
町に到着して一晩経過。
そして今日一日街にいて、夜ガットルに会う。
この期間で、状況は変わり続けたようだ。
「だからって街中で使うなんてことは、ないでしょう…?」
ただの願いだ。そうであってほしい。
「分からない。でも、町を人質にするくらい、やってもおかしくない。」
ガットルが、アサルトフローを撫でる。
「今、この町は危険かもしれない。特に俺達にとっては。」
私は、何も言えなかった。
この世界での、魔物の説明会。
一部例外を除いて、ゾンビみたいなものです。




