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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第四章 理想家オーズンの四人の後継者

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第128話 技術発表会~理由~

~前回までのクレスタ~


東区にきた私達は、区長の協力を得る事に成功。東区にもポノ君はいなかった。

魔王討伐の旅で知り合った、スーマミーサと再会。彼女は区長秘書になっていた。

私達は南区へ戻る為、ゲートで順番待ちをしていたのだけど…。


◇登場人物◇ ※●が視点者

__勇者捜索隊

●クレスタ  :フフゴケ商会、商会員

〇ツツジ   :勇者隊、サポート員

〇リハネ   :ゾトの勇者


□セイ    :色々できる腕輪型のデバイス。人工知能(AI)搭載

□アニサ   :クレスタがカスタマイズしたセイ


__行方不明

〇ワッポノ  :マーアの勇者


__ヨダーシル

〇ユンゼス  :南区の区長

〇ソルテローラ:西区の区長

〇ラデューム :東区の区長

〇スーマミーサ:ラデュームの秘書

〇ルムリート :ユンゼスの秘書

「ユンゼスさん、何かあったんでしょうか?」

「…ちょっと聞いてみるわね。」


 南区区長ユンゼス氏、市長候補辞退。

 おそらく、一斉に発信されたメッセージ。


 周囲もざわついている。


「どう、アニサちゃん?」

『繋がらないわね。都市民からの問い合わせが凄いみたい。』


 でしょうね。


『でも、関係者には連絡済みだったみたい。

 急の思いつきや、突発のトラブルじゃなさそう。

 計画されていた事のようね。

 私の権限だと、これ以上は分からないわ。』


「ありがとう、助かったわ。」


 不安そうなツツジちゃんに微笑む。安心させるために。


「とりあえず、緊急事態ではなさそう。

 だから、予定通り南区のホテルに行きましょう。

 こんな時間だしね。

 一泊して、平気そうならユンゼスさんの様子を見に行きましょう。

 報告、お礼を兼ねてね。まあ、既にワッポノ君については知ってるかもだけど。」


 ツツジちゃんは頷いてくれる。


「リハネも、それでいいかしら?」

「悪い、クレスタ。」


 おっと?


「私は東区に残る。荷物は、すまないが部屋に置いておいてくれ。」


 なるほど。

 …ふ~ん。なるほどね?


「私達と別行動がしたいって事でいい?

 理由を話してもらえるかしら。

 あなたは、私達の護衛なんだから。」


「今日一日、様子を見てわかった。

 ヨダーシルにいる内は安全だ。護衛はいらない。

 ヨダーシルを出る時は護衛に戻るから、連絡をくれ。」


 護衛として、きてもらったのだ。

 必要ないからといって、勝手にやめていい訳はない。


 でも、そんな事はリハネも分かっている。

 だから、最初に悪いと言ったし、今も凄く申し訳なさそう。


「私が聞いたのは、別行動をしたい理由よ?

 東区にいたいのなら、皆で東区に残るという選択肢だってあるわ。」


 私一人ならともかく、ツツジちゃんがいるんだから。


「私達の目的は、ポノを探す事だ。」

「そうね。」


「南区、西区、東区にいないなら、あとは北区。

 しかし北区は、他の区と雰囲気が違う。

 お前も、感じているはずだ。

 そして、ポノがここにいるなら、面倒事に巻き込まれている可能性がある。」


 ツツジちゃんの様子を見る。

 心配そうではあるけど、取り乱したりはしていない。


「もしそうなら、協力なんてしてくれるはずがない。

 寧ろ、ポノの存在を隠すだろう。

 正規手順で、見つけられるとは思えない。

 だから、少し強引にいかせてもらう。」


「それで、東区?」


「そうだ、ラデュームに頼む。

 困ったらまた頼ってくれてもいいと言われたし、ここは実力主義だからな。

 これには少し、自信がある。」


 リハネは腕をポンポンと叩く。


「とはいえだ。

 北区は特殊なだけで、よい所の可能性はある。

 いい人そうに見えた三区の区長が、嘘をついている可能性もな。

 だから、手は増やした方がいい。」


「それで、別行動?

 東区を見極めつつ、北区を強引に捜索するって?」


「そうだ。

 …私一人なら、ヨダーシルを追い出されるくらい強引な手も打てる。

 クレスタ達が残っているから、全滅にはならない。」


「流石にそれは困るわよ。

 あなたはゾトの勇者なのよ?あなたが追い出されたら私達も帰るわ。」


「私なら町の外でも大丈夫だ。フフゴケ商会の通信機の範囲内で野宿すればいい。

 それに、浅慮でそんな事はしない。

 やるやらないは別として、手段の用意くらいはしておいた方がいいはずだ。」


 勇者の勘。

 なのかもしれない。


 この件は、観光していれば解決するような話ではないと。


 (監視カメラの改竄から、ポノ君の失踪を手助けした人物がいるのは間違いない。

 問題は、その人物が。

 ポノ君の家出を手伝った協力者なのか、無理やりポノ君を連れ去った不届き者なのかという事。

 確かにリハネの言う通り、最悪を考えて手段は増やしておいた方がいいか。)


 ツツジちゃんの表情的に、完全に納得はしていないが、ある程度の理解はした感じかな?


 あまり危険な事はしてほしくないけど、ポノ君を連れ戻せる可能性があるならお願いしたい、みたいな。


「OK、リハネに任せるわ。」


 リハネは東区に残り、私とツツジちゃんは南区へ戻る。


「まずはミーサに連絡しましょうか。」

「大丈夫だ、もう連絡した。迎えにきてくれるらしい。」


 流石のスピード感ね。


「リハネさん。あまり無茶をしないで…。」

「ああ。絶対にポノを見つけよう。」


 二人は握手して。


「健闘を祈るわ、また後で会いましょう。」

「そっちも。ユンゼスによろしくな。」


 私もグータッチして。


 それでリハネと別れた。


 南区は都市長候補を辞退した訳だから、東区と敵対はしないはず。

 そんな所も考えて、彼女はこの案を言い出した。

 そんな気がする。




「聞きましたよ。ワッポノ君、西区にも東区にもいなかったそうですね。

 すみません。まだ北区への入区許可が出てなくて。」


 ユンゼスさんがコーヒーを出してくれる。

 一夜明け、私とツツジちゃんは南区の区長室にいる訳なのだけど。


「私達の方は、いいですよ。

 それどころじゃあ、ないでしょう?」


 区役所前は人が凄かった。

 入るどころか近づく事も出来ないくらい。


「そこは気にしなくていいよ。

 自業自得で、想定の範囲内だし。」


 声の主は、ドア付近に立っている少女。


 名前はルムリート。

 オレンジ髪のボブカット、薄緑色のダボっとしたTシャツ、短パン。

 10歳くらいかな。ツツジちゃんよりも小さかった。


 遠巻きに眺めていた私達の手を引いて、ここまで連れて来てくれた子。

 ユンゼスさんの秘書らしい。…親族か何か、かな。


「騒ぎたい奴が騒いでるって感じ。

 ゼスを知っている奴なら、だろうなって思ってるよ。

 こいつが都市長とか、無理だって。

 区長が候補、みたいな雰囲気に流されただけ。」


 お菓子を取り出し、食べながら喋る。立ったまま。

 …自由な職場で、いいわね。


「…まあ、そういう事です。」


 苦笑いしながら、ユンゼスさんもコーヒーを飲む。


「よかったんですか?」


 この件に関しては部外者で。

 だから、ほじくり返す事でもないのだけれど。


 それでも聞いたのは。

 彼の雰囲気が、怖いぐらい落ち着いていたから。


 私は。

 彼の事情を知っている。


 トワの件を話した時、お返しに教えてくれたのだ。


 (ユンゼスさんは、前都市長のオーズンからヨダーシルを託された。

 彼の造るヨダーシルが楽しみだとも言われている。

 だからこそ、新都市長になりたいのだと思っていた。

 今でも、特別な存在である前都市長の期待に応える為に。)


 なのに、なぜそんな顔が出来るのか。

 その理由が知りたかった。


「ええ。

 ラデュームが造る町も、ソルテローラの造る町も。

 いいところだなって、思います。

 後は、好みというか、合う、合わないの話ですから。

 ヨダーシルの都市民が決める事です。」


「南区の、区長も辞めるとか…。」


 候補辞退のメッセージの最後に、ついでみたいに書かれていたけど。

 区役所前の人達は、どちらかというと、そっちが気になっている様子だった。


「ラデュームがですね。当選したら結構な人数を追い出す気なんですよ。

 そして落選したら、支持者を連れて自分が出て行くつもりで。

 私は、ここを出た人達の行き場所を、第二のヨダーシルを造る手助けをしたいんです。

 もちろん強制力なんてないですから、必ず行かないといけないなんて話はありません。

 だからこそ、行きたいと思ってもらえる、住んでよかったと思える町にしないと。」


 その発言に、迷いは無かった。

 この人は、期待に応えられなかったなんて考えていない。


 今も、期待に応える為に動いている。


 (ラデュームさんにとってのヨダーシルは、場所。挑戦する場所であり、生産、発展させる所。

 ソルテローラにとってのヨダーシルは、人。ツツジちゃんと一緒で。

 そしてユンゼスさんにとってのヨダーシルは、場所であり人。

 ヨダーシルも第二ヨダーシルも、同じヨダーシル。距離が離れていようとも。)


 やりたい事が出来るように。

 それによって悲しむ人を減らせるように。

 住み慣れた町を出る事になった人が、新しい町でも笑えるように。


 それがこの人の、町造り。


 (ひょっとすると三区の区長は、全員そのつもりで…?)


「やる事全部終わらせないと、新しい町になんか行かせないからな。

 都市長選が終わったら、新しい区長選だぞ。

 ラデュームが勝ってもな。すぐに南区が消える訳じゃないんだから。

 列車だって最後まで面倒みさせるし、直近だと、技術発表会。

 もう少ししたら、現地に行くからな。」


 お煎餅みたいな物かな。

 ルムリートちゃんは、いい音を出しながら。

 ユンゼスさんの方へ歩きながら、喋る。


「分かってますよ。

 そして、それらの事に集中する為にも、まずはポノ君を見つけたい。

 セイ?」


『昨日と同じですね。

 申請は届いていますし、目も通されています。

 しかし、そこで止まっていて、許可が出ていません。』


「なるほど…。

 直接会いにいこうかな。」


「やめとけ。それで困るのは善良な職員だからな。」


 ユンゼスさんとルムリートちゃんが、セイを使って色々やってくれているけど、旗色はよくないみたい。


 リハネの言葉を思い出す。

 意図的に隠しているなら、申請は下りない。


「北区って、どんな所なんですか?」


 ツツジちゃんの、無邪気な質問が出る。


「閉鎖的で、何をやっているのかもよく分からない。

 よからぬ事を企んでる、なんて話もあるみたいですが?」


 う~ん、邪気があるかも。

 ポノ君捜索が滞って、焦ってそう。


「へ~。よく調べられましたね。」


 ユンゼスさんの方が無邪気だった。


「これ、めちゃくちゃいいですよ。

 持って帰ってもいいですか?」


 セイを摩りながら、そんな事を言うツツジちゃん。

 実は私も欲しい。


「残念ですが、セイの機能が使えるのはヨダーシル内だけです。

 セイが運用できる仕組みが、ヨダーシル全域にありまして。

 国外でも使えるのは、現状、区長が持つものだけなんです。

 量産にはお金が、ね…。」


 ユンゼスさんのセイをもう一つ造るには、町が一つ出来るくらいの額が必要って、聞いた事あるわね。

 だから町を造った方が、多くの人が利用できる。


 (でも、そうか…。)


 国外で使えるのは区長のセイのみという事は。


 防犯カメラの改竄、つまりポノ君と関係があるのは区長という訳で。


 東西の区長は多忙で、その行動を追いやすい。

 そもそも数日間、ヨダーシルを離れられない。


 数日いなくても気づかれないのは、北区の区長。


 (ユンゼスさんは、最初から北区を疑っていた?)


 いや、セイを部下に貸せばいいだけだ。

 三区の区長の疑いを完全には晴らせないか。


「外見も怖いですからね。よからぬ噂がよく立つんです。

 でも、北区は悪いところではないですよ。」


 外見。

 ヨダーシルの北門は、完全武装されていて。

 前都市長も、元魔王だったから。


 魔王城と呼ばれる事もある。


「南区や東区は、施設とか工場とかの割合が高いでしょう?

 だから、住居が西区だったりするんですが。

 騒がしいのが苦手な人だっています。

 そういう人が、北区に行くんですよ。

 北区は、田舎みたいな感じですかね。」


「ロミスオッドさんって、どんな人なんですか?」


 ツツジちゃんの質問に、ユンゼスさんは少し考えてから。


「真面目で、努力家なやつです。

 まあ、しばらく会えてないですけど。」


 その態度に、違和感を覚える。

 何かを隠しているような。


 ただ、言及するのは躊躇う。

 申し訳なさみたいのを、感じて。


「ダ~メだ。」


 ルムリートちゃんが、両手を上げた。


「埒が明かない。

 私は裏ルートを当たってみる。

 だから後は任せた~。」


 手を振りながら歩いて行く彼女に、ユンゼスさんが声をかける。


「え、でもこの後、現場…。」


「なあ、あんたら。」


 え、私達?


「ゼスを手伝ってくれよ。北区は、私が当たってみるから。」


 返事を聞かずに、扉から出て行った。


「勝手な奴で、すみません。」

「元気があって、いいじゃないですか。」


 北区に行けないのであれば、私達は手持ち無沙汰だ。

 彼女に任せて、手伝える事があるなら手伝った方がいい。


「技術発表会の現場へ行くんですよね?」


 そんな事を言っていた気がする。


「ええ。

 スペースの確認と調整、必要な物の洗い出し、及び準備。

 とかですかね。」


「クレスタさん、これ。」


 ツツジちゃんから、技術発表会の詳細が送られてきた。


 選挙の一環だ。

 区ごとに、いろいろと出し物をするみたい。

 開催日は明後日。


「下の方です。」


 言われた場所を見る。


 (東区と西区の代表選手による、模擬戦?)


 トリッキーシューターではなく、一対一の魔法戦だ。

 東区主導で行われるみたい。


 それがある事は問題ではないのだけど。


「なるほどねぇ…。」


 西区代表は、カナミア。


 色々言っていたけれど。

 嘘はついてないだろうけど。


 一番の理由って、これでしょう。

 リハネは、カナミアと戦いたかった訳だ。

第四章を、序盤、中盤、終盤に分けた時。

技術発表会が、序盤の山場。

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