表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第四章 理想家オーズンの四人の後継者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

125/168

第124話 城塞都市ヨダーシル~南区~

~前回までのクレスタ~


私達3人は、列車に乗ってヨダーシルを目指す。

ヨダーシルは、東西南北の4区に分かれていて、それぞれに区長がいる。

その4人の区長が、新都市長になるべく選挙活動をしている状況。


◇登場人物◇ ※●が視点者

__勇者捜索隊

●クレスタ:フフゴケ商会、商会員

〇ツツジ :勇者隊、サポート員

〇リハネ :ゾトの勇者


□セイ  :色々できる腕輪型のデバイス。人工知能(AI)搭載


__勇者隊

〇リガーナ:ゾトの魔王


__行方不明

〇ワッポノ:マーアの勇者


__ヨダーシル

〇ユンゼス:南区の区長

 マーアを出発して、三日。

 列車は、ヨダーシルの南区の駅へ到着した。


 (こんな形で来る事になるとはね。)


 ヨダーシルとセンレイ会は、フフゴケ商会がライバル視している。

 いつかは視察に、と考えてはいた。


 魔王討伐を果たし、ようやく肩を並べられたと思ったけど。

 ここ数年のヨダーシルの伸びは凄まじく、完全に独走状態。


 (列車の窓から見た、ヨダーシルの外壁は高かった。

 魔王最前線のバクー王国の首都よりも。)


 正直、恐ろしい。


 (まあ、フフゴケ商会の目標は、世界一の商会になる事じゃない。

 つまり、ヨダーシルと対立する必要もない。

 気楽に見せてもらいましょう、世界一の技術を。

 それで、私達が断海を越える為の参考にさせてもらいましょう。)


 でもそれは、ポノ君を探し出した後の話だ。

 決意を新たに、一歩を踏み出して。


「リハネ~、そっちじゃないわよ~。」


 逆方向へ進む仲間に声をかける。


「魔物が見えたんだ。」


 首元の通信機からリハネの声。


「マーアでも見た、馬みたいなやつ。

 警戒しているのか、遠巻きに見ているだけで近づいてきていない。」


 彼女は、止まらず進み続ける。その先は線路だ。


「レールから離れている所為か、竜機兵りゅうきへいが出てこない。

 恐らく、近づかなければ撃退はしない考えなんだろう。

 しかし、魔物は残しておいていい事は何もない。

 ここを離れ、旅人を襲うかもしれない。

 だから、潰しておく。」


「OKよ。私もあなたの意見に賛成。

 でも物事には順序というか、手続きというか、そういうのもあってね。

 簡単に言うと、線路を逆走して国外に出るのは不味いわ。

 ちょっと待ってもらっていい?」


 返答はない。


 (真面目で行動力のある所は、美点でもあるんだけどね!)


 荷物をツツジちゃんに任せて、走る。

 リハネを止める為に。


「流石勇者様。立派な考えです。」


 私がリハネの前に立ちふさがった時、一人の男性が現れた。


 緑色の髪で、少しくたびれた深緑色のスーツを着た人物。

 その顔には、覚えがある。


「ユンゼスさん。」


「お久しぶりですクレスタさん。それから、リハネさんかな?

 ようこそ、ヨダーシルへ。」


 区長の登場に、リハネは足を止める。


「初めまして区長。

 いきなりで申し訳ないが、今から魔物の討伐に行く。

 許可がほしい。」


 本人に自覚はないと思うけど、リハネの態度は威圧的だ。

 対して、ユンゼスさんは柔和な雰囲気。


「それはありがたい。いくらでも許可しますよ。

 あと、少し遠いでしょう?魔走車を出しますから乗ってください。」


 そう言って彼は歩き出した。




 ツツジちゃんも呼んで、私達三人はユンゼスさんの車に乗せてもらった。


「ユンゼスさんは、どうして駅へ?」


 忙しいはずだ。

 まさか、出迎えに来てくれた訳ではあるまい。


「魔物を倒しにきたんです。

 ヨダーシルも、魔物を放置なんてしませんよ。」


「区長自らですか?責任感のある方なんですね!」


 ツツジちゃんの無邪気な感想。

 大丈夫。

 暇なんですか?みたいなニュアンスはない。


「実は開発物のテストも兼ねようと思いまして。

 でも、今回はゾトの勇者様が討伐してくれるとの事なので。」


 車が止まる。

 肉眼では見えないが、きっとこの先に魔物がいる。


「しっかり見学させてもらおうと思います。

 よろしくお願いしますね。」


 ユンゼスさんは機械を取り出して設置し始めた。


 (測定器、記録装置…。リハネのデータを取るのね。)


 テストを兼ねるとか言っていたから、当然持ってきている。


 リハネの方は、ストレッチ中だ。

 その彼女に近づく。


「リハネ。」

「どうした?」


「データを盗られるのが嫌なら、言うけど?」

「構わないさ。」


 獰猛な。

 と呼べるような笑み浮かべ、彼女は声を張り上げる。


竜機兵りゅうきへいなんて愉快な物をみせてもらった礼だよ。

 データでも、何でも、好きなだけ取ればいい。」


 言いながら駆け出して、強く踏み込む。

 噴出炎ジェットファイアー。斜めに火柱を上げながら、彼女は飛んだ。


「勇者とは、こういう者だ!」


 空高く現れたのは、巨大な火の鳥。


 ブレイブフェニックス。

 彼女の代名詞であり、必殺の魔法だ。


「これは、凄い…。」


 ユンゼスさんが呟く。


「ワッポノ君は、大変だなぁ。」


 もしポノ君が、本当に国から逃げ出したのだとすれば。


 実力差。

 それが、原因と考えられる。


 私達が拠点にしているチヨカ村。

 元は魔王軍に占領されていて、ポノ君も開放の為に二度ほど挑んだ。

 結果はどちらも敗走。一族の精鋭も多くやられてしまったらしい。


 それを。

 ふらっとやってきた勇者隊が、事故みたいな形で簡単に奪い返してしまった。


 存在意義が、揺れてしまった事だろう。


 自分など、いてもいなくても。

 魔王討伐に影響など、無い。


 (…。)


 地に降りた巨鳥は、魔物を一瞬で灰にした。


 戻ってきたリハネは、涼しい顔だ。

 その彼女を、ユンゼスさんは拍手で出迎える。


「いやはや、実に見事です勇者様。

 これは、竜機兵りゅうきへいじゃあ耐えられない。」

「その割には余裕そうだ。全然悔しそうに見えない。

 あれは、あんたの虎の子じゃないのか?」


「現状を越えられた事より、そのデータが取れた事が大きいですからね。

 参考にさせてもらいます。

 竜機兵りゅうきへいは、更に強くなりますよ。」

「そうかい。

 実は私も、まだ強くなるんだ。いつかは勝負をしたいな。」


 一触即発な空気を感じてか、ツツジちゃんがオロオロしだす。

 その手を握って安心させる。


「大丈夫、二人共あれで大人だから。ちゃんとわきまえているわ。」

 小声で、そっと伝えた。


 私にとっては、微笑ましい光景だ。

 私の仲間には、負けず嫌いが多いから。


 (きっとそういう所も、ポノ君には重荷だったのかもしれない。)


 誰もが同じ感想にはならない。

 私と、ツツジちゃんみたいに。




 無事魔物を討伐した私達は、そのまま魔走車で区役所まで行った。


 区長室に入り、促されたからソファーに座る。

 フカフカだ。


「改めて、ようこそヨダーシルへ。

 ここは南区。区長のユンゼスです。

 どうぞよろしく。」


 改めてとの事なので、私達三人も軽く自己紹介。

 そして、ポノ君を探してやってきた事も伝える。


「一応、私の方でもワッポノ君を探しました。

 結果、南区にはいませんね。」


 言いながら、ユンゼスさんは腕輪に触れる。

 私達の前のテーブルに、南区の地図が現れた。


 ホログラム映像というものではないだろうか。


 さぞ二人も驚いただろうと様子を見るが、あまり驚いていない様子。

 列車や竜機兵りゅうきへいは驚愕していたのに。


 (なるほど。これは、魔法っぽいからか。)


 土魔法や水魔法なら、似たような再現が出来そうだ。

 なまじ近未来的な世界観だから、ややこしい。


「どうやって探したんだ?」


 リハネが聞く。


「それはですね。

 …それを答える前に、こちらを着けてください。」


 一人に一つ渡されたのは、腕輪。

 腕輪と言うよりは、スマートウォッチを縦長にしたような感じ。

 ユンゼスさんがつけているようなやつだ。


「本当は入国の手続きの時に渡すんですが、ごたごたしてましたから。

 この国にいる間は、着けていて下さい。」


 着けて、軽く動かしてみる。

 重くもないし、違和感もない。


 …まあ私の場合、腕輪を結構つけてるから、一つ増えた所で感はある。


 ツツジちゃんも問題なさそう。新しいアクセサリーにウキウキしてるみたい。


 でも、リハネは着けようとしない。

 腕輪を睨んで、一言。


「監視の為か?」


 まあ。

 私も、そうかなと思ったけど、言い方よ。


「そうですね。監視の為です。」


 こっちもか。

 まあ、下手に隠さないほうがいいのかな?


「『神は見ている』とか、『お天道様が見ている』とか聞いた事ないですか?

 誰も見ていなくても、神や仏が、もしくは自分の良心が見ているのだから、悪事を働いてはならないという教訓です。

 まあ、この辺は地域差ですね。

 神や仏の概念の有無、神よりも魔王として伝わってたりもしますから。」


 笑顔で続けるユンゼスさん。

 えっと、なぜ監視用の腕輪を着けてもらうのかの説明。で、いいのよね?


「それは知っている。」


 リハネ、知ってるんだ。

 私も知ってるのよ。ウーイングだとそんな話はなかったけど、前の世界でね。


「…つまりあんたは、『超常の存在に見られているのだから、既に監視されているようなものだ』とでも言いたいのか?

 それとは全然違うだろ?

 いるかどうかも分からない奴ではなく、これは明確に監視を目的に、監視をしている。」


 リハネは不機嫌である事を隠したりしない。


「確かに。

 監視されている、という事に忌避感がある方もいます。

 一応、こちらの言い分としては、『【人間】が監視している訳ではない。』というのがありますね。

 そのデータを人間が見る事は、重罪ですから。」


「人間が監視しない?なら、何が監視するんだ?」


「この腕輪ですよ。【セイ】という名前です。」


 ユンゼスさんが左腕を前に出す。

 その腕輪の上に、ホログラム映像が現れる。


 銀色で長髪の女の子だ。サイズは掌ぐらいだろうか。


 (彼女がセイ。イメージアバターでしょうね。

 本来はプログラム。形はないはず。)


 セイは丁寧にお辞儀をして、姿を消した。


「基本的に、法に触れない限り何もしません。

 法に触れそうな時は教えてくれます。

 まあ、だから、知らずにやってしまったは通用しないんですが。」


 ユンゼスさんは、腕輪を優しく撫でながら続ける。


「希望があれば、色々やってくれます。

 聞けば答えてくれますし、話し相手にもなってくれます。

 音楽を流してくれますし、時間になると起こしてくれます。

 体調管理だってしてくれますよ。

 もちろん、何もしないもしてくれます。

 家の鍵に宿った付喪神だと思ってもらえたら幸いです。」


 装着理由は、あくまで犯罪防止の為。

 色々サービスだってついてますよ。って訳か。


 (監視カメラを導入するにあたっての説明会みたいね。)


 なんというか。

 世界観が違う。


 神とか仏とか、付喪神。そしてホログラムに超高性能AI。まるで私が元いた世界みたい。


 (元は私と同じか、近しい異世界からの転移・転生者の知識…。

 それを、こちらの技術で完成させた。フフゴケ商会のように。)


 だと思っていた。

 リガーナも、異世界人はいなくはないって言ってたし。


 でも伝わり方が偏っているというか、言語の壁はある中で、こんなに正確に伝わる事があるだろうか?


 (これひょっとして、別の可能性もあるかも…。)


 ある異世界があって。

 その異世界から影響を受けている。

 私の元いた世界も、この世界も。


 ある異世界。例えば。天上の国。


 (…なんて、今考える事じゃないわね。)


 リハネは腕輪を着けた。

 完全に納得はしていない。仕方なく、といった感じ。


「ここにいる間は着けないといけないなら、着けるさ。

 用事があるんだ。

 追い出される訳にはいかないし、無駄なトラブルを起こす気もない。」


『よろしくお願いいたします。』


 腕輪から声がして、リハネがビクっとなった。


 気づかなかった、ふりをしてあげよう。

 ついでに、自分のを少し弄ってみる。


 『よろしくお願いいたします。』の声が、前に聞いたユンゼスさんのと違ったから。


 (名前も同じだし、監視が目的ならネットワーク上で情報を共有しているはず。

 要は、根本システムは同じ…。)


 音声が違うということは、自分用にカスタマイズ出来そうだ。

 あ、見つけた。


 (声以外に見た目も変えられるのね。名前も変更可能と。あ、猫にも出来る。)


 とりあえず、サニアちゃんみたいな子にしてみる。

 名前はアニサ。

 かなりの完成度だと思う。


 (よろしくね~。)

 (よろしく。)


 これは、いいわね。


「では、話を戻しますね。

 ワッポノ君をどうやって探したか?

 セイには個人特定機能と位置特定機能がありまして。

 彼はセイを持っていない。

 つまり、いる場合は不法入国者です。

 南区にいる人間を、熱や魔力で見つけまして。

 そこから正規住民を除くと、残ったのが不正規住民となる訳です。

 で、結果は全員正規住民でした。」


 なるほど。

 私達が探すよりも正確でしょうね。


「そのデータみたいのを見せてもらう事は?」


 リハネは食いつくわね。

 でも、そうか。

 これくらい疑ってもいいのかも知れない。


 町ぐるみ、なんて可能性も否定できないから。


 (でも、それならここまで協力してくれないか。)


 そもそもポノ君をヨダーシルに誘った、なんて言わなければいい。


 それでも最悪を考えるなら。

 勇者隊の分断。それこそが、敵、の目的。とか?


「流石にご勘弁を。

 実は話すのも、グレーなんですよ。」


 笑ってくれているが、迷惑をかけてしまったようだ。

 それだけポノ君の件を親身に考えてくれている、のかな?


「もちろん、観光がてら南区を回ってもらっても構いませんよ。

 ただ。」


 ピロン、と。

 腕輪が鳴った。


「申請が通りました。これで皆さんは西区へ行けます。

 東区と北区は、もう少々お待ちください。」


 ちょっと、三人顔を寄せて相談。


「どうする?」

「一応南区は調べてもらったし、西区でいいんじゃないかしら?」


「すいませーん。」


 ツツジちゃんが挙手。


「他の区も、南区みたいな感じで探してもらえないんですか?」

「残念ですが、それは他の区の区長の許可がいりますね。

 勝手にやると、怒られます。」


 まだ聞きたそうなツツジちゃんに、一旦ストップをかける。


 ユンゼスさんなら、それが可能なら既にやってくれているはず。

 でも出来ていないという事は、気軽に頼めるものではないという事。


 今は選挙の時期なのだ。

 相手に頼りたくない。というのもあるかもしれない。


 つまり、この件は掘り下げない方がいい。


「西区に行った後、南区に戻れるのか?」


 リハネは挙手せずに聞く。


「ええ、その為のセイでもあります。

 一応、皆さんの拠点として南区のホテルを用意してあります。

 荷物もそこに運びましたが、西区に泊まる事も出来ますよ。

 その際は、セイに言って下さい。」


 私達は、もう一度、顔を見合わせる。

 そして。


「それじゃあ私達は、このまま西区へ向かいます。」

「了解です。よい旅を。」


 最後まで、ユンゼスさんは笑顔だった。

南区から、西区へ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ